軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

247話 キングな敵

エルフの村を出た俺たちは、森の中の湿地帯を進んでいる。

エルフたちが湿地の上に生えている木を倒して道を作ったものなのだが、なにせ足場が悪い。

丸太は腐っているし、苔も生えていて滑る。

只人グループは、俺がシャングリ・ラから購入したスパイクを靴に装着して進む。

「こんないいものがあるなら、最初から出してくれよ」

アキラがスパイクの効き具合を確かめながら、まだブツブツ言っている。

「俺だって落ちたんだからいいじゃないか。気が付かなかったんだよ」

「ちぇ」

どうもツィッツラの前で恰好悪いところを見せてしまったのを気にしているらしい。

どうでもいいけど、エルフにそんなに入れ込んで平気なのだろうか?

サクラに戻ったら血の雨が降りそうで怖い。

1本橋の上を歩くので歩みは遅く、橋のかかってない場所は、ハシゴや丸太を出したりして俺がなんとかしなくてはならない。

これがエルフと獣人たちだけなら、ひょいひょいと先に進んでしまうんだろうがなぁ。

森猫と獣人たちは先行して偵察をしてもらっている。

俺たちに合わせて歩いていたんじゃ、逆に疲れるだろう。

「エルフたちも先行して、湿地が終わる所で待っててくれてもいいぞ?」

「ええ? 僕はアキラと一緒にいたいから」

「私もぉ、ケンイチと一緒にいたいしぃ」

「それならいいけどな」

見渡せば見たこともないような大量のきのこや、美しい花。

可能なら調べて写真に撮ったりしたいところだが、当然そんな暇はない。

きのこは食材にも使えるが――その前に食えるかどうか、調べる術がない。

元世界には、触るだけでアウトなきのことかあったが。

「ツィッツラ、触るだけで毒が回るきのことか植物とかあるのか?」

「ああ、あるよ。そういうのは見つけたら注意してやるから」

「ありがとうな」

「カエンタケとか、そういうやつだろ?」

「そうそう、あとなんだっけ――葉っぱを触ると痛みで死んじゃう植物とか」

「ん~? ネットで見たな……クソして葉っぱでケツを拭いたら死んじまったんだっけ?」

「あ~それそれ」

「そんな怖い草とかあるの?」

アネモネが俺の服を掴まえて心配している。

「森の中って結構危険なんだぞ? 草むらとかは、なるべく入らないほうがいい」

「うん」

「ダニとか、刺す虫もいるしな」

「アマランサスも気をつけてくれよ」

「承知いたしましたわぇ」

特にアマランサスは、王宮からあまり出たことがない女性だ。

ダニなんて虫すら知らないだろう。

「アキラ、ダニに食われたことは?」

「ある! いつの間にか食いつかれて、ピンポン玉ぐらいになっててよ」

「それは怖い。沢山に食いつかれたら貧血で死ぬな」

「黒狼とかに取り付いて、ピンポン玉の塊みたいになっているやつを見たことがあるぞ」

「うわぁ、絶対に見たくねぇ」

ぶつぶつが駄目な恐怖症ってあったと思ったが、そういう人が見たら卒倒するな。

「ダニって伝染病持っていることも多いしな」

リケッチアとかツツガムシ病とか、ナントカ出血熱もそうじゃなかったか。

「ねぇ、ケンイチ」

「なんだい、アネモネ?」

「ピンポン玉ってなに?」

「ああ、それか」

俺はシャングリ・ラからピンポン玉を購入した。

カラフルなピンポン玉だが、沢山詰まってて1400円也。

こんなの買っても使わないと思うが、アネモネの遊びに使えるかもしれない。

「ほい、このぐらいの大きさの玉だ」

「わぁ!」

「ダニって虫が食いつくと――血を吸ってこのぐらいの大きさまでデカくなるらしい」

「怖い」

「あのダニはマジでヤバいぞ」

話をしながら列になって丸太の上を歩く。

「ふう……」

いつも車移動なのだが、運動不足ということはない。

元世界にいたときに比べたらかなり運動量も増えてるし、祝福の力もあるからな。

飯さえ食えれば疲れ知らずだ。

アイテムBOXから飲み物を出そうとした、そのとき――。

「ん? 叫び声が聞こえる!」

ツィッツラの耳がピコピコ動いている。

獣人たちほど自在に動くわけではないが、エルフたちの耳もそれなりに動く。

身構えていると、前から丸太橋の上を獣人たちが走ってくる。

かなり必死なので、なにかから逃げているようなのだが……。

「ええ? またか?」

魔物を引っ張ってくるのは止めてほしいのだが――とはいえ、この湿地帯じゃ逃げ場所がない。

この場所で彼女たちを責めるのは、ちょっと酷だろう。

「なんだケンイチ?! 魔物か?!」

「解らん! なにから逃げてるんだ?!」

そのとき、獣人たちの後ろがゆらゆらと揺れているように見え、丸太橋を飲み込むような形でこちらに向かってくる。

「なんだ?! なにか透明なものだ」

「聖騎士様、あれはスライムではないのかぇ?!」

「スライムか?! でも、かなり大きいぞ?」

幅は10mぐらいはありそうに見える。

「スライムキングか、キングスライムか。それが問題だ」

アキラがボケるが、非常事態なので彼に突っ込んでいる暇はない。

スライムといえばスライム避けがある。

相手がデカいとなれば、スライム避けもデカいほうがいいだろう。

俺はアイテムBOXから、大ゴーレムを作るためのコアを取り出した。

こいつはスライム避け用に作ったものじゃないが、同じように使えるだろう。

「アネモネ、これをスライム避けにしてくれ」

「うん! むー!」

その間にも、スライムは結構な速さで押し寄せてくるが、その前に獣人たちが俺たちの頭上を飛び越えた。

「ぎゃぁぁ!」「にゃぁぁぁ!」

「できた!」

「よし!」

丸太の上に巨大スライム避けを設置して、走って逃げる。

このときにも鉄製のスパイクがいい仕事をしてくれた。

普通の靴じゃ、走って逃げることなんてできないだろう。

巨大な透明なジェルが、スライム避けの近くまでやって来たのだが、怯むことなくスライム避けの上を通過した。

「おわぁ! 止まらないぞ?!」

「聖騎士様どうするのじゃ!」

剣で切ったりしても死なない。

ただ分裂して増えるだけだし。

「アネモネ、魔法は使うなよ!」

「うん!」

魔法で攻撃しても効き目が薄いし、命中しても分裂してしまう。

乾燥(ドライ) の魔法なら使えるかもしれないが、動き回る敵には使えないし、こんなデカい敵を乾燥させるには時間がかかる。

電撃は効くが……コントロールが難しいらしい。

「ほんじゃ、俺のマヨパワーで! マヨパワー全開!」

アキラの構えた指から大量のマヨネーズが噴射された。

黄色いヌルヌルの束が巨大スライムに向かう。

「マヨが効くか?」

「解らん」

彼の行動に半信半疑だったのだが、スライムの動きが止まり、透明だった身体の中に黄色いものが溜まり始めた。

「美味い餌があったんで、どんどん食っている?」

「まぁ、成分は卵と油だからな。そりゃ美味いだろう」

透明な身体の中にカスタードクリームのような黄色いぷよぷよが浮かんでいる。

その光景は美味そうに見えるのだが、そんな呑気なことを言っている場合ではない。

「おりゃぁぁ! どんどん食え!」

「腹が一杯になったら、俺たちのことなんてどうでもよくなるかな?」

「おそらく――けど、ケンイチ。満腹になって栄養補給を完了したスライムは、分裂するぞ?」

アキラがマヨ噴射を続けて5分ほど経過。

透明な魔物は、それ以上は黄色い餌を食べなくなり、動きが完全に止まった。

丸太橋にぶら下がるような形で左右に分かれて、下は水面に届いている。

「つまり満腹ってことか……」

「ははは、みたいだな」

「すご~い! アキラ!」

ツィッツラが、帝国のドラゴンスレイヤーに抱きついた。

「動かなくなっただけぇ?」

「そうみたいだが、回り込むとなると水の中に入らないとダメだし――マヨを消化したらまた追ってくるかもしれん」

「乾燥させるのは?」

アネモネがスライムを指差す。

「魔法で乾燥させるにはデカすぎるな」

「アネモネちゃん! あのスライムをゴーレム化するってのは」

「やってみる!」

アキラの言葉にアネモネがうなずいた。

俺も一瞬いい考えだと思ったのだが――彼女の魔法で青い光が舞うも、変化なし。

どうやら、いきものでゴーレムは作れないらしい。

つまり人間を集めてゴーレムにしたりはできないってことだ。

「う~ん」

俺は、アイテムBOXから以前に使った鉄筋を取り出した。

「お~い! ニャメナ!」

ぐるりと見渡したのだが、どこにもいない。

いったいどこまで逃げたんだ。

「しゃーない。アキラ、以前渡した力の指輪を試してみないか?」

リッチを倒したときに手に入れた指輪の一つをアキラに渡してある。

「ああ、あれか」

彼が自分の袋から指輪を取り出して、それに合う指を探していたのだが、面倒になってテキトーに押し込めた。

まぁ、どの指でもはめてりゃいいのだろう。

「おし、やってみるか」

彼が俺から鉄筋を受け取ると――投げやりのように振りかぶり、それをスライムに向かって投げつけた。

結構な重さがあるので普通に投げるのは難しいと思ったのだが、結構勢いよく飛んだ。

これが指輪の効果か?

重い鉄の棒は半分ほどスライムにめり込んだのだが、攻撃を受けたはずの敵はまったく動かない。

ダメージがないのか、腹いっぱいなので動きたくないだけなのか。

それともアキラが言ったように、分裂の準備に入っているのだろうか?

「聖騎士様、どうするのかぇ?」

アマランサスも剣を構えているが、彼女の剣でもこいつには敵わない。

「セテラ、雷撃の魔法を撃ってくれ。ここからなら、あの鉄の棒に雷が落ちるはずだ」

「解ったぁ……青き雷よ――」

青い光が舞い、彼女の金髪がひらひらと宙になびいたあと、魔法が顕現して青白い稲妻となった。

「我敵を切り裂く剣となりて宙を走れ―― 電撃(ライトニング) !」

不規則な光の束がスライムに向かい、アキラの突き刺した鉄筋に落雷した。

攻撃を受けた敵は一瞬飛び上がり、俺たちにも緊張が走ったのだが、すぐ動かなくなり白い煙を上げている。

以前、スライムに電撃を食らわせたときと同じように、甘い香りが漂ってくる。

「あ~、なんかこのにおいを嗅ぐと食いたくなるんだがなぁ」

アキラが漏らす言葉に俺は同意した。

「食っても、多分甘くないと思うが――においはいいよな」

スライムの粉末を加熱したものを香料に使ったりできるかもな。

「それはいいとして――ケンイチ、死んだか?」

「解らん。試してみよう」

俺はゆっくりと、スライムに近づくと叫んだ。

「収納!」

叫んでみたが、アイテムBOXには入らない。

入らないってことはまだ生きているわけだ。

それとも、収納の大きさ制限に引っかかっているのかもしれないが――目を凝らしてみると、中ではなにかが動いているような気がする。

小さなスライムなら、セテラの電撃で致命傷になったが、これだけ大きいと麻痺にとどまるようだ。

「だめか?」

アキラが心配そうに見ている。

「それでも瀕死状態には違いないと思うが」

「アキラの黄色いのって毒なの?」

「いや、毒じゃないんだが……」

ツィッツラにどうやって説明しようか、アキラも困っている。

まぁ指からマヨネーズってのはなぁ――俺でも意味不明だ。

格好悪いところを見せてしまったので、汚名返上といきたかったところだろうが、果たしていいところは見せられただろうか?

普通のいきものなら、マヨパワーで万物窒息が使えるだろうが、相手がスライムではそうもいかない。

ちょっと怪しいが、ツィッツラの表情を見ていると、アキラの作戦は上手くいったようだ。

「まぁ、食いすぎればなんでも毒だけどな」

「そうだな」

俺はしばし考えたが――前と同じ作戦でいくか。

シャングリ・ラで購入したシリカゲル入りの猫砂をぶっかけて、スライムの水分を奪う作戦だ。

シャングリ・ラで、猫砂を買う。5Lの袋に入っているものが4袋セットで2500円。

こいつを2セット買う。

購入ボタンを押そうとしたが、ここで押すと落ちてくるのは一本橋の上。

足場がないので下に落っこちてしまう。

「う~ん? そうだ!」

アイテムBOXから、触手のときに使ったゴムスーツを出して、穿く。

「ケンイチ、どうするんだ?」

「まぁ、見てろって」

一本橋の上にアルミハシゴを出すと、スライムに立て掛けた。

それによじ登ると、シャングリ・ラからブルーシートを買う。

なんだかんだで、このブルーシートってやつは便利だ。

購入ボタンを押して落ちてきたブルーシートをスライムの上に広げると、その上に乗ってみる。

ハシゴが当たる部分にもブルーシートを入れる。

素手で触ると、スライムの刺胞がまだ残っているかもしれない。

それを防ぐために、この青い膜を使ったわけだ。

「おおっ! ポヨンポヨンだ!」

その場でジャンプすると、ちょうどいい反発具合。

こりゃ、トランポリンの代わりになる。

「ケンイチ! それ、私もやりたい!」

どうやら俺が楽しそうなので、アネモネもやってみたいらしい。

「ブルーシート敷いたから大丈夫だろ。注意して登ってくるように」

「うん」

「僕も僕も!」

ツィッツラが一緒になって手を挙げている。

100歳近いはずなのだが、アネモネと同じぐらいの精神年齢なのではあるまいか。

「私もぉ!」

5000歳のBBAもやってみたいらしい。

皆でハシゴを登ってきた。

「すごーい!」

アネモネがスライムの上で、ポンポンとジャンプしている。

この世界にはトランポリンなんてないから、こんな経験は初めてだろう。

ベッドの反発もこんなに激しくはないしな。

「おもしれー!」「あははは!」

2人のエルフもジャンプしながらはしゃいでいる。

それよりも俺にはやることがある。

スライムは麻痺状態だが、止めを刺さないと復活する可能性もあるしな。

俺はさっきカートに入れた大量の猫砂の購入ボタンを押した。

「ポチッとな」

ブルーシートの上にドサッと落ちてきた猫砂を拾い上げる。

「おおい、遊んでないで、こいつをぶっかけるのを手伝ってくれ」

「ああ、猫砂をかけて乾燥させるのか?」

「アキラ、この砂はなに?」

「これか? これは水分を吸い取る砂だ。こいつを使ってスライムの水分を吸い取るわけよ」

「すげー!」

皆で袋を開けると、バサバサとスライムにかけ始めた。

俺たちはスライム山の頂点に立っているから、ここから撒けば、まんべんなく猫砂をかけられる。

「アネモネは、乾燥の魔法をかけてみてくれ」

「うん、解った! むー! 乾燥(ドライ) !」

これだけ大きなものだから、魔法を使っても簡単には乾燥できないだろう。

「僕も手伝うよ。 乾燥(ドライ) !」

どうやらツィッツラも魔法でサポートしてくれるようだ。

もうひとりの5000歳は、面白がって砂をかけまくっている。

「聖騎士様、スライムの身体を切り裂いて、中にこの砂を流し込んではどうかの?」

「ええ? 切って分裂しないだろうな」

「真っ二つとかじゃなければ大丈夫じゃね? それにさっきの電撃で全体的に麻痺しているようだし」

「それじゃやってみるか」

アマランサスにブルーシートに切れ込みを入れてもらい、アキラと一緒にめくる。

スライムの肌がむき出しになったので、そこに猫砂を撒きアマランサスに頼んだ。

「アマランサスやってくれ」

「かしこまりました――やっ!」

彼女が振る広い刃が、猫砂まみれになったスライムの肌を切った――と思う。

ゴムスーツに覆われた手を突っ込むと確かに切れているが、弾力があり過ぎて傷口を開くのが難しい。

「こりゃ、傷口を開くのが大変だ」

「ケンイチ、ゴーレムのコアを一つ出して」

「ん? いいぞ? なにか思いついたのか?」

「えへへ」

彼女は笑っているが、青い光とともにコアに猫砂を集めはじめた。

魔法でできた砂の川を、そのままスライムの傷口に詰め込んでいく。

「ああ、なるほど――猫砂をゴーレム化して、傷口に入れているのか」

「うん」

「こりゃ、すごいぞアネモネ!」

彼女の頭をなでてやるが、考えようによっては傷口に塩を詰めるような極悪なことをしているな、こりゃ。

「ふわぁぁ」

俺に頭をなでられて集中力が切れたのだろうか?

ゴーレムがただの猫砂に戻ってしまった。

「ねぇ! 私もぉ! そのふわぁってやつをやってよぉ!」

5000歳がそんなことを言ってくるので、しかたなくなでてやる。

「ふわぁぁ~これ、好きぃ!」

「聖騎士様ぁ! 妾もしてたもれ!」

「あ~はいはい」

仕事が進まないじゃないか。

こんなことしてて、スライムが復活しないだろうな?

「アキラぁ! 僕もあれやってぇ!」

「おう」

アキラが、彼に抱きついたツィッツラの頭をなで始めた。

「ふわぁぁ……」

どうやら男にも効くようだ。

そのあと、アマランサスの剣で切り刻みまくり、アネモネのゴーレム魔法で猫砂を突っ込むという作業を繰り返し、スライムの巨体は徐々にしぼんでいった。

その間にエルフ2人により乾燥魔法もかけている。

「おお、すげーカラカラになったぜ」

アキラがスライムに蹴りをいれているが、カサカサと乾いた音がする。

乾燥した皮膚には亀裂が入り、アカギレのようになった所から、ドラゴンスレイヤーが飲ませたマヨネーズが流れでていた。

「色々な複合攻撃をしたからな」

「聖騎士様、これで仕留めたといってもよろしいのかぇ?」

「よし、皆スライムから降りてくれ」

元の大きさでは、アイテムBOXに入れるのは少々怪しい大きさだったが、乾燥してかなり縮まった。

皆がスライムから降りると俺は叫んだ。

「収納!」

目の前からカラカラになった砂まみれのスライムが、アイテムBOXの中に吸い込まれた。

「やったぜ!」

アキラがガッツポーズしたところに、エルフが抱きついた。

「すげーよ! あんな大きなスライムを倒すなんて!」

「まかせろ!」

「それじゃ私はぁ、ケンイチに抱きつくぅ!」

「こら」

「私もぉ!」「妾もじゃ!」

アネモネとアマランサスが俺に抱きついていると、一本橋の上をトボトボと歩いて獣人たちが戻ってきた。

「お前ら、どこまで行ってたんだ?」

「「……」」

2人は耳を伏せ尻尾を垂らし、しょんぼりとして俺の前に立っている。

叱られた子供のようだ。

「ほらほら、2人ともおいで。怒ってないから。見てみろ、スライムもやっつけたぞ? もう、怖くないから」

2人を抱き寄せて、なでなでしてやる。

「旦那ぁ……」「うにゃぁぁ……」

2人が泣いているのだが、この土地にきてから情緒不安定のような気もするな。

まったく未知の土地ということで、微妙にストレスを感じているのだろうか?

彼女たちのためにも、王国に早く戻りたいのだが……。

障害物をクリアしたので、そのまま進むことにする。

「アキラのマヨネーズがスライムから漏れているが、大丈夫だよな?」

「卵と油だし、化学物質は含まれてないと思うから、汚染とかは問題ないだろ?」

「動物や虫の餌になるか」

「そう思うぜ」

「あのアキラの黄色いのってなんなの?」

セテラがマヨネーズの正体を気にしているようだ。

「なんなの? って聞かれても、美味しい魔法……かな?」

返答に困る。

「俺にも解らんよ。こんな能力をつけた管理者だか神様ってやつに言ってくれ」

「まぁ、そうだよな。普通はマヨネーズ能力なんてつけないしな」

「絶対に面白がってるに違いねぇ」

アキラが神様に恨み言を言っているが、生体無限油田と考えると半端ないチートなのは間違いないのだ。

彼1人いれば、南の島で栄枯盛衰を突っ走ったナウルのような、モノカルチャー経済の国が出来上がる。

それに気がついてた為政者が、この世界にはいなかったわけだ。

「アキラ1人いれば、中東のような国が作れるんだぞ?」

「そういう文明があればな。生体油田として使われるなんてまっぴらごめんだが」

一応、彼もその可能性について考えてはいたらしい。

「美味しいって食べられるのぉ?」

セテラは、アキラの黄色いウネウネに興味があるようだ。

「ああ、美味いぞ?」

「僕は食べさせてもらったよ! すごく美味しいんだ!」

ツィッツラは、アキラのマヨネーズを食べたらしい。

意気消沈している獣人たちを従えつつ、和気あいあいと話をしながら丸太橋をクリアしていると――湿地の終わりが見えてきた。

ゴール地点の木の根元に黒い影がいる――森猫だ。

彼女たちも俺たちに気がついたらしく、丸太の上をこちらまでやってきた。

さすがのバランス感覚。

丸太の上でも、普通の地面と同じように歩く。

そりゃ、飼い猫だって塀の上を平気で歩くしな。

このぐらいは余裕か。

「お母さんたち、待っただろ?」

「にゃー」

待ってはいたが、暇はしてなかったようだ。

「デカいスライムと遭遇したんだが、お母さんたちは見なかったか?」

「にゃー」「みゃ」

どうやら遭ってないらしい。

俺たちは、ちょうどタイミングが悪かったか。

色々とあったが湿地帯をクリアしたので、また車が使える。

ほっと胸をなでおろすが、心配ごともある。

あの突撃虫ってのに、車が標的にならないだろうな?