軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

239話 文化の違いはいかんともしがたい

転移門で飛ばされた俺たちは、深い森の中でエルフたちと出会った。

彼らから仕入れた情報では、ここは共和国の辺境らしい。

うすうすそんな気はしていたのだが、まさか本当にそうだとは。

共和国についての情報がなにもない俺たちは、しばらくエルフたちと一緒に行動して、情報を集めることにする。

彼らとの友好の証として仕留めたコカトリスを提供することになった。

水がある所でないと解体できないそうなので、近くにあるという川に向かう。

「行け~イケイケ~!」「うおお! はえぇぇ!」

俺の車の後部座席に乗っているエルフたちが騒いでいる。

昨晩にファーストコンタクトした、若いエルフとタレ目のエルフだ。

前に出会ったエルフたちも、やたらと距離感が近いのが気になったのだが、あの部族だけではなくてエルフ全体がこういう感じらしい。

エルフたちには個人の財産という概念がなく、全てが部族のもの。

道具があっても共有財産なので誰が使ってもOKらしく、こんな感じになるのだろう。

まぁ俺たち只人の感覚からすると、ちょっと距離感が近すぎて遠慮なさすぎなのだが、村で世話になるから仕方ない。

郷に入ったら郷に従わねば。

車の横には、獣人たちが走ってついてきている。

エルフたちも森の移動速度には自信があるのだろうが、スピードでは獣人たちに敵うまい。

しばらく車で進むと川が見えてきた。

かなり大きな川でゆったりと流れており、川幅も100mぐらいある。

前のエルフの村の近くにも川があったし、水源に近いってのは住む場所を決めるのに結構重要なことみたいだな。

川岸に車を止めたのだが、いつも利用している場所らしく草を刈ったりして整備されている。

いや、エルフだから魔法で草を生えなくしているのだろうか。

車から降りたので、アイテムBOXに収納した。

「ついたぜ~!」「やっぱりはえぇわ!」

エルフが2人、車の速さに喜んでニコニコしている。

「うひょー! でかい川だぜ!」「にゃ!」

獣人たちが川を眺めている場所は、ちょうど湾のようになっており、桟橋や船などもある。

向こう岸に渡ったりするのだろうか?

「ここにコカトリスを出していいのか?」

「まぁ、仲間が来るまで待っててくれ」

「解った」

しばらく待つことにすると、ニャメナがやってきた。

「旦那! 俺、いいことを思いついたぜ!」

「なんだ?」

「この川を下っていけば、海に行けるだろ?」

「ああ」

「そこから、海岸沿いにオダマキに行けばいいんじゃね?」

「おお? そこに気がつくとは、やはり天才か……」

「いやぁ……」

珍しくニャメナがくねくねして照れている。

「そいつは止めたほうがいいかなぁ?」

ニャメナの意見に異議を唱えたのは、タレ目のエルフだ。

「なにか問題があるのか?」

「ああ、川はスライムだらけだ」

「それは知っている。王国の湿地帯もスライムだらけだし。スライム避けの方法もある」

「なんだって? その方法は?」

彼らの表情を見ると、ここのエルフたちもスライム避けの方法を知らないようだ。

「友好の証はコカトリスで払っているから、その他の情報には対価が必要だぞ?」

「ちぇ! それじゃ、ここらへんの地理についての情報と引き換えってのは?」

「よし、乗った」

エルフの話では、下流に行くと大型の魔物が生息しているらしい。

陸上ならいくらでも戦いかたもあるが、船の上で戦闘は不利だな。

今は4人しかいないし。

もう1つ、川を渡るとかなり遠いが只人の村があるらしい。

「そこと取引しているのか?」

「ああ、たまに小麦粉やら塩やら……でも貧乏な村なんで、いつも、かつかつみたいでなぁ。取引もままならないんだよ」

ここらへんは未開拓地域だと思っていたが、共和国の開拓団が入っているらしい。

情報をもらったので、スライム避けの方法を教えてやることに。

俺はアイテムBOXからゴーレムのコアを出した。

「こいつに微弱な魔力を流し続けることで、スライムを避けることができる」

「こんなもんで?」

「エルフはゴーレムを使わないのか?」

「使わないなぁ――でも、そういうことなら、代わりになるものがある」

エルフが、そこら辺の草をむしって魔法を使う。

青い草がみるみる茶色になった。

川岸の砂地に座り込むと、流れるような手付きで縄をなう。

あっという間に縄が完成すると、男はやにわに服の裾を捲って縄に小便を引っ掛け始めた。

黄金水なんて言われるが、エルフのそれは透明。

たまたまなのか、いつも透明なのかは不明だが。

「ちょっと……」

人前でこういうことを平気でするのがエルフらしい。

子供の前で――と思ったら、アネモネが俺の後ろからそのシーンをじ~っと見つめていた。

なにをしているのか興味はあるらしい。

「ほら、これだ!」

エルフが滴る縄を俺に差し出す。

「ちょ、ちょっとまったぁ!」

「ひゃ!」「うにゃ!」

俺と一緒に、獣人たちも飛び上がる。

いくら文化が違うとはいえ、少々リアクションに困るだろ。

「ああ、エルフの排泄物は、只人のみたいに変なにおいなんてしないぞ」

「そう、そうなのか? いや、でも勘弁してくれ」

「まぁいいや。お前の話が本当なら、こいつでも効き目があるはずだ」

男の話では、エルフの排泄物は微量の魔力を含んでいるらしい。

俺たちが困惑していると、残りのエルフたちがやってきて、そこに男が走っていく。

滴る縄を持って、なにやら説明をしていたのだが、エルフたちが一斉に散り始めた。

「いったいどうしたにゃ?」「エルフってのはなにを考えているか、さっぱりと解かんねぇ」

只人でいきなりものを股間から出して用を足しはじめたら、ただの変態である。

皆はエルフの言葉が解らないので、余計にそう感じるのだろう。

「彼の話だと、あの縄にスライム避けの効果があるらしい」

「そうなんだ!」

アネモネもエルフの行動を理解したようだ。

彼らの言葉が解るのは俺だけだしなぁ。

しばらくして、エルフたちが追い立てるように見つけてきたのは、透明なスライム。

「ああ、実験するためにスライムをさがしていたのか」

本来は透明なのだが、砂まみれになっていてその形がよく解る。

俺もそこに行くことにした。

「そのスライムで実験するのか?」

「さっきのことが本当ならな」

「本当だって」

手に持っていたコアをアネモネに差し出すと、魔力を少々注入してもらう。

まぁ、俺がやってもいいんだが……。

「こいつは、本来はゴーレムのコアなんだが、こいつを近づけると――」

スライムがすすすっと逃げていく。

「「「本当だ!」」」「スライムが逃げる」

「当たり前だ、これを船につけて実際にスライム避けとして使っているんだからな」

「そこで俺のこいつの出番だ!」

男が縄を近づけると、コアと同じようにスライムが逃げ始めた。

「「「おおお~っ!」」」「こんな簡単な方法でスライムを避けられるなんて!」

「朝一のを取っておけばいいってわけね」

昨日いた、エルフのリーダーもはしゃいでいる。

なんか下ネタでキャッキャウフフしているのを見ると――小学生か! ってツッコミを入れたくなってしまうが、それでスライム避けになるなら、「エルフ水」とかいって売れないかな?

「なぁ、それって効果どのぐらい保つんだ?」

俺の質問にエルフの1人が答えてくれた。

「徐々に魔力は抜けると思うから半日ぐらいじゃね?」

「お昼頃にまたひっかければいいよね?」

女のエルフも平気でそんなことを言う。

「あ~そうかぁ。スライムに引っ掛けて逃げたのは、小便が嫌じゃなくて魔力から逃げてたのか」

「俺もやったわ、ははは」

エルフたちは、スライムの行動に合点がいったようであるが、半日しか保たないんじゃ売り物にはならないな。

スライム避けはおまけだ。

ここにやってきた目的である、コカトリスを出す。

アイテムBOXから白い魔物を出すと、水しぶきが上がる。

「「「おお~っ」」」

とりあえず、エルフたちが解体する約束なので、彼らにまかせる。

エルフたちは、コカトリスの周りでバシャバシャと水をかけ始めた。

「コカトリスを濡らすのか?」

「ああ、濡らしてから、魔法で冷やす」

「濡らすのなら、俺たちがやってやるよ」

ここはアネモネの出番だ。

ゴーレムコアを川に投げると、彼女の魔法が発動して青い光が川に集まっていく。

コアの周りに水が集まり、まるで透明で巨大なスライムのように盛り上がった。

「「「おおお!」」」

「その小さい彼女がやっているの!?」「中々やるじゃねぇか!」

エルフも驚くアネモネの魔法で、盛り上がった水がコカトリスの上に覆いかぶさり、川岸に大きな波が押し寄せる。

白い羽毛がずぶ濡れになった。

「よし! ほんじゃ俺たちの出番だぞ」

リーダーの掛け声で、コカトリスの周りにエルフたちが集まって、冷却の魔法を使い始めた。

沢山の青い光が宙に舞う。

これだけの魔法を使えるエルフがいるなら、あっという間に冷えるだろうな。

冷やし作業が完了すると、エルフたちが白い魔物に群がり始めた。

剣を立ててコカトリスの腹を裂くと、赤い内臓が水の中にこぼれ落ちる。

「毒腺を傷つけるな!」

リーダーが作業するエルフたちに指示を飛ばしているので、近くで見学をさせてもらう。

「コカトリスの石化の毒ってどういう仕組みなんだろう?」

「アレは、毒と魔法の複合だな」

「へぇ、それじゃその毒腺があるってことなんだな」

「そのとおり、傷をつけて毒に汚染されると、肉が食えなくなる」

「エルフでも鳥の肉は食うんだろ?」

「ああ」

「こいつは尻尾が蛇なんだが、蛇の肉は?」

「たまに食う。鳥みたいな味だから、違和感はない」

まぁ、鳥類って恐竜などの爬虫類から分岐した生き物らしいからなぁ。

図鑑で見る始祖鳥とか、羽の生えた恐竜だし。

エルフたちは手慣れた作業で、コカトリスをどんどん解体していく。

美男美女揃いで全員魔法が使え、知能も運動能力も高い。

究極の二足歩行生物なわけだが、この世界を支配するみたいな話はまったく聞かない。

むしろ俺たち只人の生活圏から離れて、交わらないようにする文化だ。

たぶん、そういうのには興味がないんだろうな。

平和といえば平和だが、まったく新しい進歩がない生活のように思える。

エルフたちに気になることを質問してみた。

「エルフってのは、ずっとこういう生活をしているのか?」

「まぁな」

「いつ頃から? この地に只人が入植してから1000年って聞いているが……」

「はは、ここの国やら、その前の王国ができてから1000年だが、その前にも入植が繰り返されて滅んだりしているのさ」

「じゃぁ、エルフたちは、それを遠くからずっと見物していたわけか……」

「只人ってのは、野花のように蔓延ったと思ったら、パッと咲いてパッと散る。そして、また野原に逆戻り」

エルフの男が手を広げて呆れている。

「あ~、エルフから見るとそう見えるかもなぁ……そのエルフは、何年ぐらいここにいるんだ?」

「俺たちは――」

彼らから聞いた話によれば、エルフたちがこの世界に入植してから5000年ほどたっているという。

日本で言うと、縄文時代から現代までず~っと同じ生活をしてきたことになる。

「まさか5000年も生きているわけじゃないんだろ?」

「はは、俺たちの寿命は、せいぜい1000年ぐらいだ。古エルフたちはそのぐらい生きたって話もあるが」

「へぇ~」

1000年でも十分に長生きだ。

人間の10倍だからな。平安時代から現代まで生きてるって感じか。

「うちにも物好きなエルフがいるんだが、そんな話をしたことがなかったからなぁ」

「へぇ、只人と一緒に暮らすエルフねぇ。そりゃ物好きだな。只人なんてすぐに年老いて死んじまって、森に帰る羽目になるのに」

「その物好きは、なんて名前なんだ?」

他のエルフも話に入ってきた。

作業に飽きたらしい。

「セテラだけど……」

「「「……」」」

皆の動きが止まって、無言になる。

「どうした?」

いったいどうしたというのだろう。

「エルフってのは、名前である程度家系を辿れるんだ」

ここの族長も、他の族長の名前を出しただけで解ったみたいだしな。

「それじゃ、辿れる家系がない系統の名前だっていうのか?」

「もしくは……」

エルフたちの疑いの眼差しが俺に向く。

俺の言っていることが嘘だっていうことらしい。

「ケンイチ、どうしたの?」

言葉は解らないが、雰囲気が怪しくなったのが、アネモネにも解ったのだろう。

「おい、俺の所にエルフがいるってのは、嘘じゃないぞ? ――あ、そうだ」

俺はアイテムBOXから、タブレットを取り出した。

前にセテラを写した写真があったはずだ。

そいつをエルフたちに見せた。

タブレットの中に、金髪の耳の長い女が映る。

「生きているみたいな絵だな!」「こりゃすげぇ!」「魔道具か?!」

「その女のエルフが一緒にいるんだ」

「「「……」」」

騒ぎに作業を止めてしまったエルフが集まってきて、セテラの写真を覗き込む。

「なんか、おかしいのか?」

「いや、これだけのものを見て疑うわけじゃないんだが……」

この大陸に入植した「始まりのエルフ」たちは全部で50人。

その内、女性が20人で19人が子孫を残したという。

エルフの子どもは母親の資質を継ぎ、それが代々伝承されるらしい。

「つまり――この大陸にいるエルフは全員19人にたどり着く?」

「その通りだが……」

「こいつにはそれがないってことよ」

横から別のエルフが出張ってきて、タブレットの絵をツンツンした。

「おっ! 絵がデカくなるぞ!」

「ああ、こうやって、指2本で開くようにすると――」

「マジだ! すげぇ!」

すぐにタブレットの操作を覚えてしまって、指をスライドさせて他の写真も見始めた。

「ちょっと、只人にはプライバシーってもんが、プライバシーじゃ解らんか――え~と、なんて言うんだ?」

「おっ?! 他のエルフもいるぜ!」「これは森猫だぜ!」

エルフにはプライバシーってものがないらしい。

――とはいえ、俺はエルフではないので、タブレットを返してもらった。

「このエルフは、集落では普通に暮らしていたがなぁ」

「そうなのか」

「俺のことを信じられんというなら、村から出るが……」

「いや、これはエルフの問題なので只人には関係ない。いずれ、そいつに会う日もくるだろうし、そのときに聞けばいい」

「エルフの指輪をもらっているのは確かだし、エルフと付き合いがあるのも確かなんだろう」

「それは間違いないぞ」

俺は指にはまっている指輪を見せた。

ちょいと、エルフとの間が微妙になってしまったんだが――あのセテラめ。

帰ることができたら話を聞かんとな。

エルフたちと変にギクシャクしていると、叫び声が聞こえてきた。

「うにゃぁぁぁ!」「クロ助待ちやがれ!!」

獣人たちが見えないと思ったら、森の中に入っていたらしい。

ミャレーが叫び声を上げながら走ってくる。

そのあとをニャメナが追っかけているのだが、手になにか黒いボールのようなものを持ってくる。

「にゃ!」

ミャレーが俺の陰に隠れると、俺の胸で黒いボールが炸裂した。

「いてぇ!」

胸の辺りをチクチクする感触。

見ると俺の胸から腹にかけて、5cmぐらいの黒い板のようなものが多数ぶら下がっている。

腕を上げると、そこにも黒いものが。

「クロ助! てめぇ旦那の陰に隠れやがって!」

獣人たちが俺の周りをぐるぐると周り始めたのだが、ミャレーの背中に黒いボールが炸裂した。

「ふぎゃ!」「へへへ! ざまぁみさらせ!」

見れば、ニャメナの身体にも多数の黒い板がぶら下がっている。

当然、黒いボールがぶつかったミャレーの背中もだ。

一枚引っ張ってみると、プチンという抵抗とともに板がとれた。

2本の足が生えた板状で、中央部分が少し膨らんでいる。

「なんだこりゃ、デカい だっこんび(引っ付き虫) か?」

色々な呼びかたがあるとは思うのだが、引っ付き虫で通じると思う。

衣服につく雑草の種だ。

うちの地元では、だっこんびという。

「ケンイチ、それってなに?」

アネモネが俺の服についている板を取った。

「これは草の種だよ。獣などにくっついて遠くに運んでもらい、勢力を拡大するんだ」

「へぇ~よくできてるね」

「それで――どちらが先にやったんだ?」

「こいつ……」

ニャメナがミャレーを指差した。

「それじゃ、ミャレーが悪いな」

「にゃははは!」

ミャレーは、まったく応えてない。

「まったくもう、どうやって取るんだ」

「どうやってって、一枚一枚取るしかねぇよ。旦那」

「頑張るにゃ」

「あ~あ、うちの男どもと似たようなことをやってるぅ~」「あはは」

板だらけになった俺たちを見て、女のエルフたちがニヤニヤしている。

どうやら、この引っ付き虫遊びは、ここのエルフの男どもの定番のいたずららしい。

くっついてしまったものは、しょうがない。皆でプチプチと引っ付き虫を取り始めた。

数百枚はあるだろう。ひたすら無言で取る――くそ面倒くせぇ。

「あ、そうだ」

俺は地元で聞いた話を思い出して、シャングリ・ラを検索した。

あるものでなでると、すぐに取れるという話を思い出して、そいつを購入したのだ。

落ちてきた白いもので、服をなでると――。

「まぁ、なんということでしょう~引っ付き虫が綺麗に取れたではありませんか~」

俺が買ったのはウエットティッシュ。

こいつでなでると、引っ付き虫が全部ウエットティッシュに移るのだ。

どうやら服の繊維よりウエットティッシュの繊維のほうが絡みやすいためらしい。

「なんだい旦那! それって魔法かい!」「うにゃ!」

「ほら、お前たちも使ってみろ。この濡れ布で拭くと取れるから」

俺からウエットティッシュをもらった獣人たちが、自分たちの毛皮をなで始めた。

「すごいにゃ!」「マジで、なでるだけで取れるぜ!」

「アネモネ、獣人たちの背中を拭いてやってくれ」

「うん、解った」

アネモネがウエットティッシュを持って、ミャレーの背中を拭き始めた。

「なにそれ!」「魔法の布?」

俺たちを見ていたエルフたちも集まってきて興味津々。

「お前ら、解体はいいのか?」

「こっちのほうが面白そうだし」「冷やしているし、夕方までに終わればいいよ」

アバウトだなぁ。

有言実行なのか――エルフたちの言うとおり、コカトリスの解体も夕方までに終わり、俺たちは肉を100kgほどもらった。

エルフたちも保存が利かないので、沢山はいらないらしい。

彼らの話では、塩漬けするようだ。

――そして、空が赤く染まる中で、もらった肉を使い唐揚げを作った。

癖もなく、旨味も豊富で大変美味。

エルフたちも唐揚げを食べている。

「おおっ! これが只人の料理か!」「カリカリで美味い!」

「鳥と卵と小麦粉だから、エルフも大丈夫だと思うが」

「大丈夫、大丈夫! これだけ美味しいなら、なにが入っててもいいよ!」

結構アバウトだな。

男女ともに好評なので、一安心。

その唐揚げを、獣人たちも美味しそうに食べていたのだが、いつもと少々違う。

テンションがすごい高いのだ。

特にミャレーが。

「ケンイチぃ~にゃーゴロゴロゴロ……」

飯を食っているときでも俺の身体に抱きつき、喉を鳴らして色っぽい目で俺に迫る。

「おい、これってもしかして、獣人たちの女のアレか?」

「にゃははは!」

「旦那――実はなんか俺も……ハァハァ、もう我慢できねぇ!」

ニャメナ、お前もかい!

2人とも俺に迫ってくる目つきが尋常じゃない。

獣人特有の発情期ってやつだ。

以前にあったときから、もう1年たったのか?

アネモネに事情を話すと理解してくれたので、ちょっと離れた場所にコンテナハウスを出した。

ここには、男の獣人たちがいるわけではないので、襲われる心配はないと思うが……。

発情期を迎えた2人の相手をするのは、かなり大変だ。

噛みまくられて爪を立てまくられて、全身血だらけになった。

まぁ、こんな状態になっても、祝福があるのですぐに血は止まるし、飯を食えばすぐに復活する。

いやぁマジで大変。

2人ともこの状態では狩りもできないし、森の中を移動もできない。

なにもできないので、エルフの村でしばらく過ごすことにした。

日がな一日ベッドの上で裸になっている彼女たちは、大きな猫みたいな感じ。

言葉も少なく、ただひたすらに俺の身体を求めてくる。

発情期は5日ぐらいと聞いていたのだが、ずっと相手をしてやったせいか、3日ほどで落ち着いた。

――彼女たちが正気に戻った朝。

「め、面目ねぇ! 旦那!」

アネモネが寝ていたコンテナハウスで朝飯を食う前に、ニャメナが手を合わせた。

「別にいいよ。獣人たちの身体がそうなっているんだから」

「でもよぉ……旦那にあんなことやこんなことや……ああ」

かなりの状態異常だが、記憶はあるらしい。

ニャメナ的にはかなり恥ずかしかったようだ。

「元々スケベなんだから、もう諦めるにゃ」

「うるせぇ、クロ助!」

「ウチは楽しめたにゃー。いつも、アレが来ると嫌な思いしかしにゃいけど、ケンイチと一緒にいられて、よかったにゃー」

「お、俺だってそうだ」

ニャメナが胸を張る。

「まぁ、周りが危ないときに、アレが来なくてよかったよ」

「そうだね」

しばらく放置になってしまったアネモネには悪かったが、不機嫌な様子はない。

獣人たちのことを理解してくれているようだ。

さてさて、これからどうするか。

川を下るか、川を渡って人里に行くか。

人里といっても、俺らは敵国の人間だしなぁ。

コンテナハウスの中でテーブルを出し食事をする。

これからの決断を迷っていると、獣人たちの耳がピンと立った。

警戒して、レーダーのようにくるくると回している。

「どうした? 敵か?!」

「これは……アキラの召喚獣の音にゃ」「そうだ、旦那!」

「ええ?!」

マジで?