軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

238話 こういう種族らしい

転移門で、どこだか解らん土地に飛ばされた。

とりあえず人里に向かうために真西に出発。

丘の上を占領していたコカトリスを撃破して、そこでキャンプをした。

その夜、キャンプをお客様が訪れる。

近くに住んでいるらしい、エルフたちだ。

彼らの話によると、ここは共和国の一角であるという。

なんてこったい。

愚痴を言っても始まらないが――まさかと思っていたが、よりによって共和国とは。

王国と共和国は国交も貿易もない。

一応貿易をしている帝国とは一線を画する、一番近くて一番遠い国ってやつだ。

エルフたちに敵意がないことを解ってもらえたので、彼らの村に向かうことにした。

ここでキャンプするよりは安全だろうという判断だ。

寝ているアネモネを起こして、2つのコンテナハウスを収納。

新しい相棒となる白いラ○クルを出す。

「おお?!」「なんだ?」「馬なしの馬車?!」

「こいつは、俺の鉄の召喚獣だ。馬よりも速く走ることができる」

「はっ? 馬よりも?」「只人は身の程知らずで、ホラ吹きだと聞いていたが……」

ここのエルフにはそんな調子で伝わっているのか。

まぁ、論より証拠。鉄の車の能力を見せてやればいい。

「ミャレーとニャメナ」

「旦那、俺たちは走っていくよ」

「解った」

獣人たちは暗闇でも見えるしな。

俺とアネモネが車に乗り込むと、エルフたちがニヤニヤしていたのだが、エンジンの咆哮を聞くと飛び上がった。

「吠えた!」「なんだ?!」「本当に生きているのか?!」

暗いのでライトを点ける。

「うおっ!」「眩しい!」「魔法の光か?!」

俺は窓を開けて、あたふたしているエルフたちに話しかけた。

「後ろをついていくから、先導してくれ」

「……」

「どうしたにゃ?」「大方、旦那のことを馬鹿にしていたのに、すげぇ魔法とか、鉄の魔獣とか出したんでビビっているんだろ」

「いつものことだにゃ」「まぁ旦那もなぁ、普通のオッサンにしか見えないからな……ふひひ」

エルフたちは顔を見合わせていたのだが、結論が出たらしい。

丘を降り始めたので、車を走らせてついていく。

「アネモネ、大丈夫かい? 寝てていいよ」

「うん……」

彼女はうつらうつらして眠そうだ。

危険がないと解っているので、寝てても大丈夫。

エルフが、後ろをついていく俺たちのほうをチラチラ見ているが、鉄の魔獣の走り方が気になるようだ。

ヘッドライトにエルフたちの白い身体が浮かぶ。

その姿は本当に妖精のよう。暗い森の中を走るでもない歩くでもないが、只人が普通に歩くよりはかなり速い。

これじゃ俺とアネモネが歩いてついていくのは一苦労だな。

――とはいえ、俺たちが徒歩であれば、合わせてくれたと思う。

それに少々恰好悪いが、獣人たちに背負ってもらう手もある。

まぁそれが一番速いとはいえ、俺がおぶられるのは、かなり抵抗がある。

やっぱり男としてはなぁ――おぶりたいけど、おぶられるのはちょっとな。

運転席の隣に最初に会った若いエルフが来たので、窓を開けて走りながら話す。

「その窓はガラスなのか? すげぇな」

「どうだい、只人も中々やるもんだろ?」

「ああ!」

若いせいなのか、他のエルフたちよりも車に興味津々のよう。

なんか、前もこんなシーンがあったな。

新しいものに興味を示す者が一定数いるってことなんだろうけど。

「興味があるのか? なら乗ってみるか?」

「いいのか?」

「もちろん」

車を停めると、降りてドアを開けてやる。

若いエルフはおそるおそる後ろの座席に乗り込むと室内を見回している。

「只人が乗っている馬車みたいだな」

「はは、馬がいなくても進む以外は似ているな」

元々、車の原型は馬車だと思うし、似ていて当然だな。

「よし、行くぞ」

車を発進させる。

「おお! すげぇぇ! 馬なしで動いている!」

「エルフって、暗闇でも目が見えるのか?」

「目というか精霊の力を借りて、見えないものを見ているって感じかな」

「へぇ~」

しばらく走っていると、また俺の隣にエルフがやってきた。

このエルフは、俺が治療してやったタレ目のエルフ。

「あ~、ツィッツラ! お前、なに乗ってんだ?!」

「へへ~っ! いいだろう!」

「なんだよ、俺も乗せろよ!」

「べぇ~っ」

後ろを見れないが、外に向けて舌を出しているらしい。

エルフでも舌を出したりするのか。

窓を開ける。

「お前も乗るか?」

「いいのか?」

「まだ乗れる」

「やったぁ」

車を停めてドアを開けると、タレ目のエルフが乗り込んできた。

「すげー!」

最初のエルフと同じように、車内を見回す。

エルフが2人いると車内に草の香りが充満する。

「よし、発進!」

ドライブに入れてアクセルを踏み込むと、車が咆哮を上げて前に進んだ。

「おおっ! 馬もいないのに進む! 魔法なのか?!」

「俺の 独自(ユニーク) 魔法ってやつだ」

「は~、噂には聞いたことがあるが、只人には変わったやつがいるんだな」

エルフが車内でキャッキャウフフしているので、うるさいのだろう。

アネモネの機嫌が斜めだ。

「村はまだなのかい?」

「もうちょっと先だ! もっと速く走れないのか?」

タレ目のエルフがはしゃいでいる。

「走れるが――道が解らんからな」

「俺が教えてやるよ」

「これに乗ったままで解るのか?」

「ああ、大丈夫だ。このまま真っ直ぐだ!」

精霊の力ってやつか。

前の村では、その話は聞かなかったからな。

俺が聞かないから、話題に出なかっただけかもしれないが、サクラに帰ったらセテラに聞いてみよう。

先行するエルフたちを追い越すと、ライトを点けてラ○クルが森の中を疾走する。

草をなぎ倒し木の根っこを乗り越えると、倒木が見えてきた。

「こいつは越えられない。迂回する」

車は回り道をしたが、エルフと獣人たちが、ぴょんぴょんと倒木を飛び越えていく。

「平地は速いけど、大きな段差は駄目か」

「そのとおり、なんにでも弱点はある」

倒木をクリアすると、再びスピードを上げてエルフたちに追いついた。

結局、同じスピードで走っていることになるな。

しばらくすると村の周辺に到着したようだ。

「ここで待っててくれ。ちょいと族長に報告してくる」

「頼むよ」

タレ目と若いエルフが、車を降りて暗闇の中に消えていった。

エルフの集落の近くなので、村に入れてもらえないとしても、ここらへんは安全なのだろう。

車で待っていると獣人たちがやってきた。

「旦那、ここで待つのかい?」「にゃ?」

「ああ、彼らの族長に報告するようだ」

「……」

助手席が静かだと思ったら、アネモネはスヤスヤと寝ていた。

まぁ、深夜だし仕方ない。

「ふわぁぁぁ!」

30分ほど待ち、ニャメナが大きなあくびをするとエルフが戻ってきた。

「待たせてすまないな。族長がお会いになる」

「こいつで乗り込んでいいのか?」

「ああ」

車に乗り込むと、ライトを点けてエルフの集落に入る。

広場の手前で車を停めると、エルフの案内で族長の家に向かう。

以前訪れたエルフの村と同じように草や木でできた家が並んでいるのだが、その中でも少々目立つ大きな家に案内された。

すだれのような草で編まれたものを捲り中に入ると、中も草で作られていて枯れ草のにおいが充満する。

ちょっと納豆っぽいか。

蒼白い魔法の光でうっすらと明るい部屋――その一番の奥に長いストレートヘアのエルフがいた。

キラキラと美しい金髪が床に流れており、横すわりのような恰好で草でできた枕に肘を載せている。

前に訪れた集落の族長は 裃(かみしも) みたいな服を着ていたが、ここのお偉いさんは、他のエルフと同じようなチャイナのような服。

パッと見美人に見えるのだが、男――だろうな。

さすがのエルフも眠いと見えて、普段でも細そうな目がより細く見える。

「夜分に申し訳ない。商人のケンイチという者だ」

「族長のエイリラだ。ウエェラの話によると、王国から転移門で飛ばされてきたと……」

やっぱり声が男だ。

「まぁ、信じてもらえないかもしれないが、そうなんだ」

「 古(いにしえ) に失われてしまった転移門の技術だが、まだ動くものがあったとは……」

「ダンジョンにリッチがいてな、そいつが管理か研究をしていたものらしい」

「リッチ?! そのような化け物を相手にしたのか?」

細いエルフの目が見開いたのだが、彼はリッチを知っているらしい。

「ああ、俺の他にも強い仲間がいてな。そいつらと離れ離れになって、俺たちだけ飛ばされてきた」

「ふ~む……なるほど、事情は解った。ここに滞在していくがいい」

「寛大なお心に感謝する。礼として俺たちが仕留めたコカトリスを進呈しよう」

「それも聞いたが……本当に仕留めたのか?」

彼は少々疑っているようだ。

明日の朝、アイテムBOXから獲物を出してやれば納得することだろう。

「ああ、アイテムBOXの中に入っているが――その話は明日でいいだろうか? 何しろ眠くてな」

「はは、それは私もそうだ。それでは詳しい話は明日ということで――最後に1つだけ聞いてよろしいか?」

「なんだろう?」

「そのエルフの指輪を誰からもらった?」

族長が言っているのは、俺の指にはまっている翻訳の指輪だ。

「前に訪れたエルフ村の族長からだ……え~と、名前はなんだったかなぁ……確か、メーサラだったような……」

「あいわかった、休むがよろしい」

納得したらしい。

知り合いなのだろうか?

「感謝する」

一礼すると族長の家から出て皆の所に戻る。

ニャメナが車にもたれかかり、ミャレーはタイヤの下にしゃがんでいた。

「旦那、どうだった?」「にゃ?」

「大丈夫だ、滞在の許可をもらったよ」

「さすが旦那だぜ」「偏屈なエルフとよく交渉なんてできるにゃ」

俺の印象ではそんな感じはしないのだが、彼らとの話は元世界の契約やら取引の概念と近いのだろうか?

個人的には、そんなに違和感を覚えていない。

むしろ、そのあとだ。

仲間と認識されると、途端に距離感がゼロになるのが、すごく気になる。

まぁ、そういう文化なので仕方ないのだが。

郷に入れば郷に従えって言うしな。

アイテムBOXからコンテナハウスを出すと、車の助手席からアネモネをお姫様抱っこしてベッドに移す。

「お前達もここで寝てくれ」

獣人たちがやってくるとベッドに飛び込んだ。

「ふわぁぁ! まさかエルフとまた一緒になるとは」「そうだにゃ」

「この森には森猫がいないのかな?」

「さてねぇ」「いるかもしれないにゃ」

俺は外に戻ると車を収納した。

その様子を若いエルフが見ている。

「そいつは自在に呼びだせるのか?」

「そうだ、詳しい話は明日にしてくれ。眠いしな」

「はは、俺もそうだ。ウエェラのやつが夜襲をかけるってうるさくてな。まぁ怪しいやつじゃなくてよかったよ」

強力な 爆裂魔法(エクスプロージョン) を使う連中が敵だった――なんてことになれば、大変だからな。

彼らが警戒するのも理解できる。

エルフは手を振ると、自分の寝床に戻るようだ。

さて、俺も寝るか。

向こうも警戒しているだろうが、こちらも警戒している。

いきなり知り合った連中を100%信用するのもなんだが、悪意は感じない。

エルフと付き合ってみても、裏があるような連中でもないし、ベルもエルフは信頼していたしな。

俺が神経質だけな気がするが――なにか異変があれば、獣人たちが気づくだろう。

彼女たちは悪意や殺意に敏感だし。

「ふわぁぁ……とりあえず寝よう」

まったく波乱万丈すぎるぜ。

それよりも、アマランサスやアキラはどうしただろうか?

サクラに戻れたかな?

心配なのだが、ここで心配しても始まらない。

俺たちは俺たちで、王国に戻る努力をしなくては。

共和国の連中と対峙して戦闘――なんてことになるのは勘弁してもらいたいんだけどなぁ。

相手が魔物ならともかく、生身の人となると……。

それでも家族を守るために、相手が人間でも躊躇はしないつもりだが。

------◇◇◇------

――エルフの村に来て次の朝。

朝起きると、窓の外から沢山のエルフが覗き込んでいた。

「うわ!」

前もこんなことがあったな。カーテンをつけたほうがいいか。

一応、ドアには鍵はついているので、中に入ってくることはないと思うが。

初めてなので愛想よくしないと――第一印象は大切だ。

昨日の連中から事情は聞いているとは思うけどな。

俺はドアを開けると、外に出てにこやかに挨拶をした。

昨日の夜は男ばかりだったが、女性もいるが身体の凹凸は少なく、どちらか判断に迷う者も多い。

「おはようございます。商人のケンイチでございます」

「ねぇねぇ! コカトリスを倒したって本当なの?」

俺の近くにやってきたのは、長い金髪を真ん中わけにした女性。

声が女なので、女――だと思う。

服装は全員がチャイナみたいな服で統一されているようだ。

男もその服装なので、余計に男女の判別が難しい。

人数は30人ぐらいか。

エルフってのは小分けで暮らす種族らしい。

「ああ、今見せてやるよ。ちょっと広く空けてくれ。下敷きになっちまうぞ」

エルフたちに、十分なスペースを空けさせると、アイテムBOXからコカトリスを出した。

「よっと!」

白い羽毛に覆われた魔物が出てくる。

「「「おお~っ!」」」「すごーい!」「本当にコカトリスだ」「え? なに?! どこから出たの? アイテムBOX?!」

男たちは昨日見たやつらが多いので、声が少ない。

今、驚いているのは女性陣だ。

コカトリスの尻尾は蛇なので、そこに驚く声も聞こえる。

「そうだ、アイテムBOXから出した」

「こんなに大きなものが入るアイテムBOXなんて」

エルフたちが白い魔物に群がりはじめた。

「昨夜、族長にも話したが、お近づきの印にこいつを贈呈する」

「本当にもらっていいの?」

コカトリスに群がるだけではなく、上によじ登るやつまで出てきた。

お山の大将気取りか、まるで子どもだ。

うちの獣人たちでも、そんなことしないぞ。

「ああ、俺たちには人手がなくてな。こんなの解体できないし」

「解体は川でする必要があるんだが、運んでもらえるか?」

昨日のリーダーだったエルフがやってくると、上に乗っていたエルフに降りるように伝える。

色々と部材が傷むかもしれないし、正しい判断だと思う。

「ああ、朝飯を食ったらいつでもいいぞ」

「助かる」

「それから欲しいものはないか? 小麦粉、塩、砂糖、色々とあるぞ」

「ありがたいが、皆で話しあって決めてからでいいか?」

「もちろん」

俺の所に女のエルフたちがやってきた。

当然、耳が長く美女揃いで、身体は細く皆が元世界のモデルのよう。

華奢に見えるのだが、これで結構パワーもあるしスタミナもあるという、このファンタジー世界に君臨している究極の二足歩行生物だ。

「ねぇねぇ、昨日の夜にさ、ツィッツラが甘いチェチェを食べたって自慢してたんだけど……」

ツィッツラというのは、若いエルフだな。

「これか?」

俺はシャングリ・ラの履歴から、昨晩と同じ業務用チョコを購入した。

「これなの?!」「わあぁ!」

女たちが透明なチョコの袋に群がる。

「おいおい、外の食い物を勝手に食って、族長に怒られないか?」

「大丈夫!」

「これってどうやって開けるの」

「こうやってやるんだよ」

昨晩の若いエルフがやって来て、得意げに透明なパッケージを開くとチョコを口に放り込んだ。

「ずるい!」「私も!」

次々とエルフの女たちがチョコを口に入れていく。

「あまーい!」「おいひい!」「すごい!」

「口に合ったようでよかったよ――あ、そうだ。ちょっと聞きたいことがある」

俺はリーダーをしていたウエェラというエルフに声をかけた。

「なんだ?」

「俺が前に訪れたエルフの集落では、チェチェの木の病気で実が採れなくなって困っていたんだが、ここは大丈夫なのか?」

「……いや、そうか――他の地域でも病気が広がっているのか……」

エルフの表情からすると、ここらへんでも木の病気が広がっているようだ。

「早めに植林や隔離して、手を打ったほうがいいぞ?」

「解った、族長に伝える」

朝の挨拶は済んだので、コカトリスをアイテムBOXに収納したあと、コンテナハウスに戻って飯を食おうとしたのだが……。

俺の後ろをついて、エルフたちがぞろぞろとコンテナハウスに入ってきてしまった。

「なんにゃ!」「うおっ!」

突然のエルフの訪問に、獣人たちが驚く。

狭い部屋の中が、草に似たにおいでいっぱいになる。

「へ~、中はこんな感じなのねぇ」「鉄の家か~」

「ねぇねぇ、この鉄の家もあなたのアイテムBOXの中に入っているの?」

「そうだ。そうじゃないと、こんなの持ち運べないだろ?」

「すごい~、これならどこにでも行けそうねぇ」

「こいつで海に行ったり帝国に行ったりしたぞ」

これは少々誇大表現だ。

帝国に行ったときは、ログハウスのキットの家だったし。

「「「へぇ~」」」

エルフたちは興味津津なのだが、俺たちは朝飯を食いたいんだがなぁ……。

「ほら、これをやるから」

「コレってパン?!」「柔らかい!」

エルフたちにパンを与えて、コンテナハウスから追い出した。

「エルフってみんなああなのにゃ」

「そうみたいだな、はは」

「でも旦那。こんな見知らぬ土地で、味方になってくれるのはありがたいぜ」

「そのとおりだな」

アネモネが不機嫌そうだが仕方ない。

無礼無作法というなかれ、これがエルフたちの文化なのだ。

いつも外で飯にするのだが、外はエルフたちでいっぱい。

ベッドをアイテムBOXに収納して、コンテナハウスの中で食事にすることにした。

シャングリ・ラでいつも買っているパンと、インスタントのスープ。

獣人たちは肉が食いたいようなので、ハムを買ってやった。

「美味いにゃ!」「酒が欲しくなるな」

「だめだぞ」

「ケンイチ、これからどうするの?」

パンを頬張りながら、アネモネが心配そうな顔をしている。

「とりあえずエルフと付き合って、この土地の情報を引き出す」

「なにも解らないのは困るしね」

彼女の言うとおりだ。

「共和国の話なんて聞いたことがないにゃ」「街の酒場にだって、そんな噂も聞こえてこないぜ」

帝国の話は結構入ってきているのだが、ソバナで貿易もしているし、一応国交もあるのだが――共和国は違う。

「そりゃ共和国に行ったやつも、向こうからやって来たやつもいないわけだし」

――かの国から伝わっている情報といえば、チル将軍という英雄が王政を倒して、エルフの原始共産制を模倣した共和国を作ったということ。

その共産制は上手くいっておらず、国は赤貧にあえいでいる。

贅沢三昧をしていた王侯貴族が皆殺しになって最初は喜んだ平民たちだったが、そのあとに訪れたのはより過酷な爪に火を灯すような暮らし。

かの将軍は、皆が幸せになれる理想の国をマジで作ろうとしているのかもしれないが、世の中そんな甘くはない。

理想や理念だけで飯は食えないのだ。

飯を食い終わったのでエルフたちと一緒に川に行く。

なにせ巨大な獲物なので、村にいる暇なエルフが全員で行くらしい。

獣人たちやアネモネもついてくるようだ。

「川は遠いのかい?」

「いや、それほど遠くはない」

エルフの距離と只人の距離は違うので、俺は車を出した。

「おおっ?!」「なんだ?」「鉄の箱?!」

エルフたちが驚くのだが、一々説明してられない。

昨夜、俺たちと一緒にいたエルフから説明を受ければいいだろう。

エルフたちに構わず、発進することにする。

「ミャレーとニャメナは?」

「ウチらは、走っていくにゃ」「おう!」

車に乗り込みエンジンをかけると、不意に後ろのドアが開く。

振り向くと、昨日の若いエルフとタレ目が乗っている。

「おいおい」

「いけいけ~!」「コレに乗ったほうが楽チンだぜ」

下手に知能が高いから、一度ドアを開けただけで操作の仕方を覚えてしまったらしい。

「やれやれ……」

俺は、構わず車を出した。

「あ~っ! なんであんたたちが鉄の箱に乗ってるの?!」

車に乗り込んだエルフを見て、女たちが指を差してギャーギャー言っている。

「へへ、こいつは鉄の魔獣なんだよ」「馬なしで馬車みたいに走るんだぜ」

「なにそれ!」「ずるいんだけど!」

自慢する2人に、他のエルフたちが不満を漏らしているが、まるで中高生だ。

セテラがいたあの村だけかと思ったのだが、エルフという種族はみんなこんな感じらしい。

まともに相手をしていられない。

これで皆が数百歳の爺婆ばかりなんだからな。

まぁ、エルフに歳を聞くのは無礼らしいので聞かないが。

川の場所は後ろに乗っているエルフたちが知っているそうなので、俺は車を森の中に入れた。