軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

221話 洗濯

アストランティアにある、カナンのアトリエで一泊した。

なぜか邪魔なエルフも一緒だったが、カナンとセテラは仲がいいようだ。

寿命が大きく違う友人というのは、どのぐらい付き合えるものなのだろうか。

それはエルフにしか解らないかもしれない。

サクラでやることが山積みなので、淡々と仕事をこなす。

まずは、アイテムBOXに入っている住宅の設置だ。

俺のアイテムBOXから家を出すだけなのだが、設置場所が水平じゃない所が多い。

そのため事前の公共事業として、作業員を使っての地ならしが行われることになった。

ユリウスの指示によって、住宅設置場所の整備が先行して行われ、敷地が確保されていれば俺1人でも設置ができる。

そのあと、大工たちが回って家屋の修理場所を調べていく。

すごく地味な作業だが、少しでも前に進まないと絶対に終わらない。

国は百年の計、千里の道も一歩からというが、1日1歩ずつでも歩いていれば、いずれは目的地に到着する。

逆にその場から動かない者は目的地に絶対に到着できない。

やるしかない――話は簡単だ。

家も増えてきたので、下水を設置する。

すでに俺の家やマロウ商会の店舗、メイドの宿舎などは、塩ビ管を使った下水に繋がれているのだが、それに他の家もつなげるわけだ。

生活排水は石製の汚水槽に一旦貯められて、水石という石で浄化されたのち、地面に埋めた塩ビ管で湖まで行く。

サクラの地は崖から湖までゆるい傾斜がついているので、そのままで自然に流れる。

大きな都市は、大型の下水を備えている場所もあるのだが、ここで深い下水を作ってしまうと湖面のほうが高くなってしまう。

そんなわけで、ここでは浅くて細い下水が標準になる。

俺が死んで塩ビ管が手に入らなくなっても、石材のU字溝などを使えば問題ないだろう。

大型のコ○ツさんじゃ小回りが利かないので、小型のユ○ボを出して溝を掘り、シャングリ・ラで買った塩ビ管を埋めていく。

埋戻しはシャベルを持った作業員が行う。

工事の早さと公共事業を両立させ、彼らの仕事を作るのも領主の大切な仕事だ。

埋戻し作業にたくさんの作業員が働いているのだが――その中に、なぜかミャレーとニャメナもいる。

そのせいなのか男たちに落ち着きがなく、作業がはかどっていない。

一応、ミャレーたちに注意してみた。

「お~い、お前たちまで作業に加わることないだろう」

「暇だからいいにゃ」「そうだよ、旦那」

そう言う彼女たちだが、作業員たちから不満の声が上がる。

力仕事なので、筋肉ムキムキマッチョマンの獣人の男たちが多い。

「領主様の愛人が、こんな所で働いて俺たちの仕事を奪うこたぁねぇだろ?」

シャベルを肩に乗せたグレーで虎柄の男が不満を述べた。

身体がデカいので、シャベルが小さく見える。まるで玩具だ。

「なんにゃ? ケツの穴の小さい男だにゃ」

ミャレーの言葉に男が反応した。

「なんだとぉ! それじゃ言ってやらぁ! そんな艶々な毛皮で、いいにおいさせやがって! 俺たちの身にもなってみやがれってんだ!」

「そうだそうだ!」

不満を言った男に同調するやつらが増えた。

「それならウチに手を出して、首を刎ねられればいいにゃ」

「冗談じゃねぇや!」

「首が切られるのが嫌なら、チ○○でもいいにゃ」

「ざけんなぁ!」

騒ぎになりそうなので、さすがに止めることにした。

ミャレーのやつが煽りすぎだ。

「すまん皆。矛先を収めてくれ」

「領主様、頼みますぜ。こんないい女が目の前でウロウロされたんじゃ、作業に身が入らねぇ」

「そうだぜ、さっきなんて危うく勃ちそうになっちまったぜ」

まぁなぁ。俺も目の前で色っぽい女がウロウロしてたら、そりゃ気になる。

「――というわけだ。2人共、狩りにでも行ってくれ」

「しょうがないにゃぁ」「旦那の頼みじゃ仕方ねぇ」

獣人の女2人は、森に狩りに行くようだ。

「俺っちも、あんないい女とヤりてぇ!」

そう、ピカピカの毛皮を羽織ったミャレーとニャメナは、獣人たちの間では極上の女なのである。

只人にたとえるなら、化粧してドレスで着飾った女――という感じだろうか。

「くそぉ! 今日の仕事が終わったら、サンタンカに女を買いに行かなきゃ収まらねぇ!」

「おう!」「俺もやるぜ! 畜生!」

獣人たちは涙を流さないが、股間にテントを張った男たちは泣いているようにも見える。

本当に事故でも起こって襲われたりしたら洒落にならん。

彼女たちにも、自重してもらわないと。

彼らが言っているのは、サンタンカにある水産加工場のことだ。

そこの女子工員の中に身体を売って小銭を稼ぐ者がいるので、彼女たちの世話になろうと言うのだろう。

この世界では普通に行われており、需要と供給で成り立っているので止めろとも言えん。

今日稼いだ日銭を投げ出す男たちと、強かに金を稼ぎホクホク顔でダリアやアストランティアに帰っていく女たち。

そんな女たちの中には、サンタンカやサクラで相手を見つけて、定住する者も出始めた。

朝夕にサクラの桟橋から船が出ており、サンタンカまで往復している。

船にはカールドン製のコアモーター船外機が取り付けられて実験が始まった。

俺の船に装着していた船外機の真似をして、旅行の間にコンテナハウスの中で作っていたらしい。

船に取り付けられた船外機によってゆっくりと加速、時速10kmほどで湖面を進む。

遅いといえば遅いのだが、湖畔を歩いて通うよりはいい。

歩けば1時間かかる距離が、黙って座っていれば30分で到着するのだ。

その船で、水産加工場で使う材料などの運搬も行われ始めた。

船外機の成功に気を良くしたカールドンは、馬車にコアモーターを装着しての自動化の実験を行なっている。

板バネを使ったサスペンションを装備した車体の開発は、マロウ商会が受け持っているので、完成すれば装着されて実験が行われるだろう。

彼には頼みたいことがたくさんあるのだが、彼の身は1つだ。

できることからやってもらうことにしよう。

彼のどの研究もサクラの糧になることは間違いないのだから。

そのまま塩ビ管の埋没作業は順調に進み、夕方になると男たちはサンタンカまでダッシュで向かった。

あのまま飯も食わずにやるつもりだろうか。

彼らの心配をしている場合ではない。俺もやる仕事が色々と山積みになっている。

1つ1つ潰していかなければ……。

下水の工事は3日ほどかかり、全てが完了した。

普通の下水ではこんな短期間で工事を終えることはできない。

塩ビ管の接続なら溶剤を塗って差し込むだけなので、教えれば獣人たちでもできる。

鼻がいい彼らは、溶剤のにおいには泣いていたが、なんとかなった。

俺が重機で掘って、獣人たちが塩ビ管を並べて埋め戻す。

チームワークはバッチリだ。

働きっぷりがいいので、チュ○ルや甘いものでサービスをする。

彼らは酒を欲しがっているのだが、仕事中は駄目に決まっているだろ。

すべて作業を終えて、ユ○ボをアイテムBOXに収納すると、家に戻ってきた。

「「「おかえりなさいませ、ご主人様」」」

「はい、ただいま」

テーブルには素晴らしい料理が並び、俺の家族もテーブルについている。

笑顔が並ぶその中に不機嫌そうな顔がいる――プリムラだ。

俺のことをまだ怒っているらしい。

埋め合わせをするつもりだったが、色々と作業が山積みになっていたので、後回しになっていた。

時間がたてば機嫌が直るだろうと思っていたのだが、甘かったな。

食事が終わったので、プリムラを誘ってみる。

「プリムラ、上に行かないか?」

俺は崖のほうを指差した。

「……今日は、体調が優れませんので……」

その言葉を聞いたアマランサスが、俺に抱きついてきた。

「ほう! それでは、今日は妾が聖騎士様を独り占めじゃな?!」

俺に抱きつき頬ずりをするアマランサスに、プリムラの顔が引きつっているが、答えは翻らないらしい。

そのまま家に戻ってしまって、取り付く島もない。

それを見たリリスも俺の所にやってきた。

「ふむ? ケンイチ、なにかあったのかぇ?」

2人に、サンタンカであったことを話したのだが……アマランサスが反応した。

「ほほほ、青いのう。聖騎士様のように競争相手が山程おるところで、そのような駆け引きをしても、掠め取られるだけじゃ」

「母上の言うとおりじゃの」

「君たちは、どうだ?」

「ん? ケンイチが妾と出会う前にしたことについてかぇ?」

「ああ」

「そのようなことで腹を立てておっては、王侯貴族の正室なぞ務まらぬ」

リリスが笑っているが、そうなのだろうなぁ。

「旅先で愛人を作っては、隠し子を箱に入るほど作る――それが男じゃからのう」

「言っておくが、隠し子はいないぞ?」

「解っておる」

「いくら遊んでも構わぬが、遊び相手に本気になり妾たちを捨てるというのであれば、怒らざるをえんわぇ」

俺はアマランサスの言葉をすぐさま否定した。

「そんなことはしないよ」

「どうだかのう」

リリスは俺の言葉を疑っているようだ。

まぁなぁ――元世界の知り合いで、省庁に入って出世街道まっしぐらだったやつが、なにもかも捨てて不倫相手と駆け落ちしたこともあったし……。

今のところ説得不可能だと解ったので、プリムラの件はなにか考えなくてはならない。

アマランサスと一緒に崖の上の離れに行く。

ベッドの上に乗ると、裸になってアマランサスが飛び込んできた。

「今日は、聖騎士様を独り占めじゃぁ!」

「そんなに独り占めしたいなら、奴隷を止めて、正室でも側室でも主張すればいいだろ?」

「……」

アマランサスが黙って横を向く。

奴隷の身分で主人の命令に嫌だと言うと転げ回るので、黙っているのだ。

アマランサスが俺から離れてベッドの上に座ると――彼女が自分のアイテムBOXから出した耳と尻尾をつける。

容量が少ないのに、そんなものを入れなくてもいいだろうと思うのだが。

「別に耳と尻尾は要らないぞ?」

「なう~ん」

俺の言葉を聞こえないふりをして、アマランサスが抱きついた。

このぐらいでは、奴隷紋は反応しないようである。

耳や尻尾のことより、プリムラの説得をどうするかなぁ。

彼女には贈り物などよりも――やっぱり、商売になりそうなものだよな。

商売にして儲かりそうなものを考えることにした。

------◇◇◇------

――アマランサスと遊んだ次の日。

皆でテーブルを囲み朝飯を食う。

プリムラはいるが、朝から不機嫌な様子。

う~ん、困った。

「ケンイチ~」

アネモネが俺の所にやってきた。

「ん? なんだいアネモネ」

「抱っこ」

「はぁ?」

俺が困っていると、リリスが割って入ってきた。

「アネモネ、そこは妾に譲るがよい!」

「や!」

「聖騎士様~」

俺の首に抱きついてきたのはアマランサスだ。

「にゃー」

俺の足下には、ベルがやって来て黒い毛皮をスリスリしている。

「ちょっと待て、なんなんだ。どうしたんだ?」

そこに獣人たちも飛びかかってきた。

「なんにゃー! 今日は、ケンイチに甘えていい日なのきゃ?!」「旦那! 俺も俺も!」

「ちょっと待ちなさいっての!」

その様子を見ていたプリムラが、テーブルを叩き勢いよく立つと、スタスタと家に戻ってしまった。

「ほら! プリムラの機嫌が余計に悪くなってしまったじゃないか」

「ふ~ん、私は別に構わないし」

アネモネがツンと横を向いていると、獣人たちと一緒に飯を食っていたニャレサがやってきた。

「旦那、お嬢の機嫌を直してやってくれよ。怖くて仕方ねぇ」

「今日から、プリムラが喜ぶものを作ってみるつもりだ」

「食い物とかにゃ?」「クロ助、違うだろ? 宝石とかだよ」

「あの娘が、果たしてそんなもので喜ぶかのう」

「アマランサスの言うとおりだな」

「ふにゃ~、プリムラは意外と根に持って、面倒くさい性格してるにゃ~」

「ミャレー、それを本人の前で言うんじゃないぞ?」

彼女はニヤニヤと笑っているが、大丈夫だろうな?

ここにいる女性陣は、プリムラのことを心配していないようだ。

それもそのはず、女性情報網などを持っていても、最終的にはライバル。

脱落するなら、それでもいいと思っているのかもしれない。

真相は怖くて聞けないが……。

飯を食い終わったので、早速工作を始める。

一応、寝ながらあれこれと脳みそを使っていたのだが、俺の出した結論は――洗濯機。

樽とコアモーターがあればすぐに作れそうであるし、魔法で 洗浄(クリーン) をできるといっても、普通の家庭じゃ魔法を頼んだりはできない。

大きな屋敷でも、樽や洗濯板で洗濯しているのだから、洗濯機の需要はあるはずだ。

昔の日本でも、三種の神器なんて言われてたぐらいだしな。

ちなみに三種の神器ってのは、テレビ、冷蔵庫、洗濯機だ。

テレビと冷蔵庫の再現は、ちと難しいだろうが、魔法で冷却もできるので冷蔵庫もありそうな気がするのだが見当たらない。

加熱するほうは魔法のコンロなども市販されているのだが、魔法の冷蔵庫は存在していないのだ。

魔法で加熱するより冷却するほうが難しくて、魔法陣などが大きく複雑になるため、採算が取れないらしい。

理由が採算の問題なので、作ろうと思えば作れるようであるが、断熱材などの問題があるために実用化されていないようだ。

日本でも初期の冷蔵庫は木製で、氷を入れて冷やすものだった。

この世界でも魔法で作った氷を使えるなんて、王侯貴族や金持ちだけだ。

まずは、シャングリ・ラで樽を買う――7000円だ。

樽ならこの世界でも手に入るので使えるだろう。

そして、洗濯機の肝である羽。

一応、サイトを覗いてみるが、洗濯機の羽なんて売ってない。

安い洗濯機を買って、その羽を利用する手もあるが――そのために洗濯機を買うのも馬鹿らしい。

お椀型になっていて突起がついていればいいんだろ?

たしか、そんな形だったぞ。

そうはいったものの、電子書籍で本も探してみよう。

洗濯機の歴史なんて本があれば、羽の形状も載っているはずだ。

サイトを検索すると、電子書籍で最強の家電300! という本があったので、ポチってみる。

本を読むと洗濯槽の中にある羽も載っていたので、こいつを参考にしよう。

アイテムBOXから丸太を出すと、チェーンソーで輪切りにする。

こいつをお椀型に加工するのだが――さて、どうやったら早いかな。

ちょっと悩み、シャングリ・ラを検索すると陶芸用のろくろを買ってみた。

そいつに輪切りを固定して、ぐるぐる回しながらチェーンソーで加工すれば――それっぽい形になった。

お椀型で、4つ長い突起が羽に刻まれた。

「よし、それっぽいぞ」

形は少々いびつだが、回転するものなのでバランス取りをすれば、問題ないだろう。

なにせ試作なのだから、最初はこれでいい。

俺が何やらやり始めたので、メイドや獣人たちが覗きにきているのだが、その中にプリムラの姿がチラチラと見える。

やはり気になると見える。

そりゃ金になりそうだったら、根っからの商人の彼女が見逃すはずがない。

次に角材を加工してのコアの製作。

完成したので、アネモネを呼んでゴーレム魔法でコアモーター化してもらう。

「アネモネ~コアモーターを作ってくれ」

「うん」

コアモーターを羽に取り付けて、樽の底に軸を取り付ければ完成だ。

試しに魔石を近づけるとくるくる回りだす。

「ケンイチ、これはなぁに?」

「これは、洗濯をする魔道具だよ」

「へ~」

早速、試験をするために水を入れたのだが――失敗。

羽が木製なので、浮いてきてしまうのだ。

これは、軸受けを工夫して浮かび上がらないようにしなくてはならない。

アイテムBOXから発電機と電動工具を出して加工する。

しばし悩む――。

「そうだ!」

円形の板にコアモーターと羽を取り付けて、抜けないようにする。

そいつを樽の底に固定すれば、水を入れても浮かんでこない……はず。

早速、水を少々入れてみたが、大丈夫だ。

魔石を近づけると――回る。

ガタガタもしてない。

とりあえずの試作品だ。耐久試験などをして、耐久性が欲しいところは鉄などで作る必要があるのだろう。

大きな問題は、木製の洗濯機の寿命がどのぐらいかってことだよなぁ。

それが心配の種ではあるが、この洗濯機に必要なのは樽と羽とコアモーターのみ。

そんなに高いものにはならないはずだ。

「お~い、メイド」

「はい、なんでしょうか?」

マイレンが俺の所にやってきた。

「洗濯物はあるか? 何枚か持ってきてくれ」

「承知いたしました」

メイドが持ってきたのは、雑巾や布巾、拭き布など。

彼女たちが、日常に使っているものだ。

毎日、見えない所で、タライなどを使って洗濯しているに違いない。

できた洗濯機に洗濯物を放り込むと、シャングリ・ラで買った洗濯石鹸を入れる。

これは、この世界にある石鹸でもいいし、かまどの灰でもいい。

実際に、洗濯ではかまどの灰が使われていて、灰のアルカリが油汚れを落とすのだ。

魔石を近づけると、洗濯物がぐるぐると回りだした。

こいつの欠点は反転ができないことか。

「おもしろ~い!」

アネモネが洗濯機を覗き込むと、メイドたちも集まってきて、一緒に回る水に見入っている。

「ケンイチ様、これは?」

「これは洗濯する魔道具、洗濯機だ。こうやってぐるぐると回しているだけで、汚れ物が綺麗になる」

「それでは、回したまま放置してもよろしいってことですか?」

「そうだ。その空いた時間で他のことができるだろ?」

「「「……」」」

メイドたちが黙り込んでいる。

ピンと来なかったのだろうか?

「凄いですわ! ケンイチ様!」

「本当に、放っておいて綺麗になるんですか?!」

「なるはずだぞ? 10分ほど回してみよう」

なんだか、途端にきゃあきゃあ言い出した。

家事をしないアネモネはピンときていないようだが、メイドたちにはその重要性が解るのだろう。

10分たったので、洗濯機を止める。

「洗濯物は石鹸まみれなので、今度は水を捨ててすすぎをする」

水抜きの穴を作ってないので、樽を倒して水を捨てる。

とりあえず試作なので、排水をそのまま流してしまっているが、これはマズいな。

ちゃんと水石の入った汚水槽に入るようにしないと。

普通の街も、生活排水は汚水槽から下水に流れるようになっている。

「これも見ていればいいんですか?」

「そうだな。すすぎは水を何回か入れ替えたほうがいいだろうが、それがちょっと大変かな? こいつをガチャポンプの傍に置けば、水を簡単に入れられると思うが……」

すすぎも10分ぐらいして、取り出して絞ってみる。

この洗濯機では脱水はできない。

昔の洗濯機にあったような、ローラー式の脱水機はないだろうか?

ローラーが縦に2本並んでいて、洗濯物をそれに挟んでハンドルを回すと脱水ができるという代物だ。

シャングリ・ラを探すと――アンティークで売っていたのだが、値段が2万5千円……。

少々高いが、サンプルとして見本があったほうがいいだろう。

購入してみた。

ガチャと、ローラー式の脱水機が落ちてくる。

懐かしい。死んだ婆さんの家にこいつがあって、ガキの頃にいろんなものを潰して遊んだもんだ。

「ケンイチ様! それは?!」

「これは、洗濯物を絞る機械だ」

俺がローラーに洗った雑巾を挟んで、ハンドルを回すと水が押し出されていく。

「おもしろ~い! 私にもやらせてください!」

「いいぞ」

メイドたちが、キャッキャウフフとローラーのハンドルを回し始めた。

「ほら、綺麗になってないか?」

俺は洗った雑巾を広げてみせた。

「わぁ! 本当に綺麗になってます!」「放置していれば綺麗になるなんて、まるで魔法ですねぇ!」

時間的には手で洗ったほうが早いとは思うのだが、時は金なり。

放置して別のことができるってのは大きい。

元世界で俺は、食洗機を使っていたのだが――確かに手で洗えば5分ぐらいで洗えるし、食洗機だと30分以上はかかる。

時間の無駄だと言う人もいるかもしれないが、放置しておけば他のことができるってのは大きいのだ。

俺の説明に、いつの間にかプリムラが近くまでやってきて、覗き込んでいた。

その後ろに、彼女のお付きのメイド――マーガレットもいる。

彼女のところまでいくと、強引に腰を抱いて洗濯機のところまでやってきた。

「どうだいプリムラ、こいつは儲かりそうじゃないか?」

「プリムラ様! これは女なら絶対欲しいですよ!」「そうですよ! 洗濯物を放置している間にお掃除ができるんですよ」

「ええ……」

メイドたちの問にも、プリムラは生返事をしている。

「プリムラ、ごめんよ。これで埋め合わせをしてくれよ」

「プリムラ様、お話は聞きましたよ。ケンイチ様と知り合う前の話なんでしょ?」「それで男の方を責めるなんて――ねぇ?」

「別に責めてませんけど!」

プリムラがメイドたちの言葉に怒る。

「それじゃ、これは止めにするかぁ」

「「「えええええ!?」」」

俺の言葉に、メイドたちが絶叫する。

「ケンイチ様ぁ! せめてメイドの宿舎には取り付けてくださ~い!」「お願いいたしますぅ!」

「誰も、コレが駄目だとは言ってません!」

「それじゃ、やるのかい? こいつは試作なので、商品化するなら耐久性などを調べないと」

「それは、マロウ商会でやりますから! 早速、馬車を手配して、ダリアに運びます!」

プリムラを強引に抱き寄せて、口づけした。

「ごめんよ、プリムラ」

「……」

返事をしない彼女に、メイドたちが騒ぎ始めた。

「きゃぁぁ! ケンイチ様ぁ! プリムラ様が駄目なら、私にしてください!」「ずる~い! 私にも!」「私よ! 私!」

「誰も、駄目とは言ってません!」

「ははは……」

「わ、私のわがままなのですから、ケンイチが謝る必要はないのです……」

「そんなことはない。全部、俺が悪いんだ」

すべてが、俺が黙ってダリアを去ってしまったことに起因している。

彼女の気持ちにも気づいていたが、それに応えず去ってしまったのだから、俺に非がある。

――とはいえ、言い訳になってしまうが、いいところのお嬢さんには手は出せなかったんだよなぁ。

スローライフしたかったし、商会に入って商売する気もなかったしね……。

「うう……」

プリムラは困った表情をしている。

色々と心の中でせめぎ合っているのだろう。

後ろにいたマーガレットが、プリムラの所にやってきた。

「お嬢様、意固地になっているとケンイチ様に嫌われますよ」

「解っています!」

「プリムラ、面倒くさすぎ~!」

アネモネが、皆が思っていることを口に出してしまった。

「うぐっ!」

アネモネのツッコミにプリムラは言葉を詰まらせる。

顔を赤くした彼女は、そそくさとその場から立ち去ってしまった。

これで大丈夫かなぁ……。

ちょっと心配である。