軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

203話 船大工のヒオウギ

俺たちは南にある港町、オダマキにいる。

ここの大店であるシュロの紹介で、船大工の所にやってきて話をしている段階だ。

俺が貴族だと伝わっているとは思うが、こういう職人は、相手が貴族だろうが誰だろうが、気に入らん仕事は受けない。

それにこの工房は、いわゆる独占企業なのだろう。

ここしか頼める場所がないので、いくら強気に出ても問題ないというわけだ。

それで腕が悪かったら頼まないところだが、シュロの話では腕もいいらしい。

それにしても目の前にいる親方――背はちょっと低いが色黒で、髭が白い。

スキンヘッドだが、ちょっと残っている髪の毛も白い。

腕はごついし――まるでドワーフのような……。

「親方、ちょっとつまらんことを聞くが――ドワーフじゃないよな?」

「わっははは、よく言われるが、俺はドワーフじゃねぇ」

「そうか、すまんな。あまりに印象が似てるもんでな」

「お貴族様は、ドワーフに会ったことがあるのかい?」

「俺の領に住んでいるし」

「ドワーフが?」

彼らが天然の洞窟の中に住み着いていることを彼に話した。

「奴らの打つ鉄器はできがいいってのは本当なのか?」

「見てみるかい」

どんなことでもいい、彼と話せて親交を深められればいいのだ。

俺はアイテムBOXから、ドワーフが打った短剣を取り出した。

キラリと刃が光を反射する。

こいつをアイテムBOXの買取に入れれば、普通じゃ考えられないような付加価値を生む、打ち出の小槌だ。

「ほう、こりゃ確かにすげぇ……お貴族様と付き合えば、こういう刃物が作ってもらえるのか?」

俺はその言葉にピンときた。

「なにか欲しいものがあるのか?」

「ああ、道具が足りねぇ」

俺はシャングリラで、大工道具を検索した。

何が欲しいか解らんが、とりあえずのこぎりと 鉋(かんな) を買ってみた。

のこぎりは、昔ながらの両刃のものはあまりなくなって、片刃でしかも交換式なんだな。

切れなくなったら捨てて、昔のように鋸を研いだりすることもないらしい。

鉋は安いものもあるが、1万円ぐらいの鍛造の物を購入してみた。

1挺10万円もする高級品もあるが、はっきりいって違いが解らん。

「こういうものならある」

親方にのこぎりと鉋を見せた。

「なんじゃこりゃ、のこぎりか? こんな薄いペラペラ――」

親方が鋸をビヨンビヨンさせていたが、やにわに角材を切り始めた。

まぁ、新品なのでよく切れる。

「異国のものだが、よく切れるだろう?」

「はぁ――なるほど異国の大工道具か……だが仕組みは俺たちが使っているものとほとんど変わらねぇ」

「それでよければ、やる」

次に親方は鉋も試してみるようだ。

この世界にあるものとどう違うのかは不明だが、彼は鉋を後ろから見て刃の出方を調節している。

準備ができると――彼は角材に鉋を当てて引いた。

薄い紙のような木くずが宙を舞う。

「凄い!」

商人たちが職人技に息を呑んだ。

「おほっ! すげぇな」

アキラも驚いている。

「どのぐらいだ?」

彼の言葉の意味を汲むのが難しいが――おそらく数のことだろう。

「そちらの望む数を揃えよう」

「……」

しばらく親方は腕を組んでいた。

目の前にいる変な貴族が、どのぐらいのものか値踏みしているのだろう。

「それじゃ、のこぎりが10本、鉋が5挺」

「解った」

この世界だと道具なんて全部手作りだろうから、1本金貨1枚とかするんだろう。

金を出して手に入るなら、まだいい。

作る人がいなければ、どんなに金を積んでもいいものは手に入らない。

俺はシャングリラから、彼のいう数の道具を揃えた。

「これでいいか?」

彼は落ちてきた大工道具をじっと見ている。

「あんた何者だ?」

「ただの貴族だが」

「ただの貴族が、こんなものを持っているのか?」

彼の視線は疑いのそれだ。

「俺は、 独自(ユニーク) 魔法使いだ――とだけ言っておこう」

「ははぁ――なるほどなぁ。それで貴族っぽくない男が貴族になったのか」

「ははは、そういうことだ」

ズケズケと色々と言ってくるが、実直で嫌味は感じない。

「それで? どういう船が作りたい?」

どうやら、変わった貴族が作りたいという船に興味を持ってくれたようだ。

彼に説明するのが難しいが――俺は、開いているスペースを借りると、アイテムBOXに入っていた船を取り出した。

いつも湖の桟橋にあるのだが、サンプル用にアイテムBOXに入れておいたのだ。

船外機がついたボートが大きな音をたてて、石畳の上に落ちてきた。

「なんじゃこりゃ!」

親方が落ちてきたボートに大声を上げて驚く。

「俺の領には大きな湖があるんだが、そこで使っている船だ」

「う~む……木じゃねぇな」

彼が、FRPの船体をペタペタと触っている。

「俺が魔法で作り出した素材だ」

「こんなもんが作れるなら、あんたが船を作りゃいいじゃねぇか?」

「あいにく、これ以上大きな船が作れなくてな。それに魔法のための材料も尽きてしまった」

もちろん嘘で、シャングリ・ラに売ってないだけ。

それに、これ以上デカいものはアイテムBOXに入らないし、俺たちが欲しいのは、漁船じゃなくて帆船だ。

「ふーむ、俺たちが作る船と構造的には変わらねぇ」

「古今東西、機能を突き詰めると似たようなものになるんだよ」

「このケツについているのは?」

「それは魔法で動く魔道具だ。そいつで風がなくても進むことができる」

「魔法で勝手に進むのか?」

「ああ、だが扱いが難しいので、もっと簡単に誰でも扱えるものを、あの男が作った」

俺はカールドンを指差すと、彼が軽く会釈をした。

それを見せるために、アイテムBOXから水の入ったプラケースを出す。

そこに船の模型を浮かべた。以前、マロウに見せたものと同じものだ。

魔石とコアモーターの組み合わせで、誰でも簡単に動力が取り出せる。

問題としては魔石の確保があるが、それもスライムで光明が見え始めた。

船に魔石を入れて水に浮かべると、模型が水面を走り出す。

「魔石で動くのか?!」

「そうだ。これなら魔石さえあれば、誰でも扱えるってわけだ」

それを見たシュロが叫んだ。

「な、なんだと、マ、マロウ! 昨日、あの話は出ていなかったぞ?」

マロウが、シュロの肩を掴んでニヤリと笑う。

いくら親しい間柄でも、切り札は最後まで見せない――そんな感じだろう。

性格が悪いというなかれ、お人好しでは世の中は渡っていけない。

俺も、お人好しだと散々言われているのだが、自分では厳しいつもりなのだが。

とりあえず俺の船をアイテムBOXに収納した。

「こんなデカイものが入るアイテムBOXとは……あんたがものを運べばいいじゃねぇか」

「それもいいが、それに頼って俺が突然死んだらどうする? 領民がいきなり路頭に迷うだろ」

「うぐ……そうだな」

「注文としては、さっきの船の2倍ほどの大きさの帆船だ。風のある場所では帆で進み、凪になったら魔道具で進む」

「う~む。それでアニス川を遡ろうってのかい?」

「そうだ」

「さっき、魔物避けって言ってたが……」

「正確にはスライム避けだな」

俺とアキラで、アニス川まで行って効果を試したことを説明してやった。

「あんたが、直々に行ったのかい?」

「魔法の効果やらは、直に見ないと解らないだろ? それに俺のアイテムBOXがあれば、実験道具や宿泊の装備を運べるしな」

「解った――仕事を受けるぜ。俺は船大工のヒオウギだ。よろしくな」

「俺のことはケンイチでいい」

「それじゃよろしく、ケンイチ様よ」

一応、様は付けてくれるらしいが、彼がなにか考え込んでいる。

「どうした?」

「ああ? アストランティアの近くに新しい領ができたって……」

「そこが俺の領だ」

「妙な魔法を使って、ワイバーンやらを倒して、陛下から領地をもらったという――」

「それが俺だ」

「ははぁ、なるほどなぁ。吟遊詩人のつまらん作り話かと思っていたら……本当にいやがるとは……」

彼の話に俺はピンときた。

「もしかして、女の吟遊詩人が歌ってたのか?」

「まぁな」

あまりに荒唐無稽な話なので、この親方は信じていなかったようだ。

「ほんじゃ、仕事を受けてくれるっていうんで、お礼に酒をやる」

シャングリ・ラからブランデーのVSOPを購入した――4000円ぐらいだな。

ヒオウギは、俺が出した黒い瓶のブランデーを受け取ったのだが、栓の抜き方が解らないようだ。

「持ってひねるんだよ」

彼が蓋をひねると、ブランデーの栓が開いた。

それを鼻の所に持っていくとクンカクンカしている。

「こりゃ、たまらん匂いだぜぇ」

「すごく強い酒だから注意してな。ドワーフに飲ませたら、彼らの火酒より強いと言っていた」

「ふん……」

鼻を鳴らしたヒオウギが、そのままブランデーをラッパ飲みした。

「プハッ! これは、すげぇ強い酒だな!」

流石に彼も驚いたのか、目を丸くした。

「だから言ったろ」

「なんだよ、こんないい酒があるなら最初から出しやがれ」

彼がジロリと俺を睨む。

「酒を出したら、すぐに受けてくれたのかい?」

「そりゃ気分によるな」

結局、酒は関係ないようだが、ヒオウギの酒を見てシュロがソワソワしている。

「ケンイチ様! 恐れ多くも、私にもその酒を――」

「ああ、解った。お前には世話になっているから、帰ったら渡すよ」

「ありがとうございます!」

「わはは、シュロのやつも酒には目がないからな」

「ケンイチ様、この酒は市場には……?」

「これは出していない。贈り物に使っているだけだが、ドワーフたちが俺が教えた方法で酒を作っているので、それが市場に出回る可能性はある」

「はは、奴らが飲んで余った分だろうけどな」

アキラが笑う。

「まぁ、その通りだよ。大量に作っても、マジで飲んじまうからなぁ……」

ヒオウギと話していると、職人たちも集まってきてワイワイとやっていたのだが、そこにカールドンがやってきた。

「ケンイチ様。私の部屋をここに出していただけますか?」

「解った」

アイテムBOXから、カールドンの部屋を出してやる。

「「「おおっ! こんなデカいものまで?」」」

「なんじゃこりゃ、鉄の箱?」

ヒオウギが、コンテナをベシベシと叩いている。

「彼の部屋として利用しているものだよ。領にある彼の部屋をそのまま持ってきたんだ」

「こいつはたまげた……」

「ケンイチ様、私はここに泊まります」

俺はカールドンの言葉に耳を疑った。

「えっ?!」

「ここにいる職人たちと、設計の打合せをしたいのです」

「確かに、それはそうだなぁ。カールドンがやってくれれば一番確実だ」

「おれも、さっきのコアナントカに興味がある。あんなのが船につくとなれば、天地がひっくり返る可能性がある」

「構造はお教えいたしますよ。簡単ですから」

彼の言うとおり構造は簡単だが、コアを作るときに魔法が必要なので、魔導師しか作れない。

「そりゃ、おもしれぇ」

ヒオウギも断然乗り気だ。

頑固な職人だが、頭は堅くなく新しい技術にも貪欲らしい。

素晴らしいねぇ。これは見習わないと。

爺になっても、どんどん新しいことに挑戦したいところだな。

俺たちはカールドンとマロウたちを残し、船大工の工房を後にすることにした。

「待たせたな」

車の所に女たちが待っていた。

「船は作れそう?」

「大丈夫だよ、アネモネ」

「カールドンがおらぬようじゃが」

アマランサスが、カールドンを探している。

「彼は残って、船大工たちと船の設計を検討するようだ」

「ほう」

そこにキキョウがやってきた。

「ここの親方は相当な難物なのですが、初めての人から仕事を受けるなんて」

「ははは、まぁ、うちの領にもドワーフたちっていう難物がいるからな」

「そうじゃのう」

アマランサスが、自分の扇子でパタパタしている。

「え? ケンイチ様の領にドワーフたちがいるんですか?」

「ドワーフだけじゃなくて、エルフもいるぞ」

「ええっ?! エルフがいるんですか?」

「ああ、いるぞ――そうだ」

俺は、アイテムBOXからタブレットを取り出した。

エルフたちの写真がその中に入れてある。

「ほら、これがエルフだ」

「すごーい! これって絵ですか? まるで生きてるみたい!」

キキョウは、画像の美しさに感激している。

「エルフを見るのは初めてかい?」

「はい! すごく細いですねぇ。私なんて太ってるから」

女の子だと、そういうのが気になるお年頃か。

「そんなことはないと思うけどな。エルフは俺たちと違うから、彼らと比べるのは間違ってるぞ」

「でも……」

「ほら、エルフの男たちもいる」

「ふわぁ! まるで女の人みたい……」

「この男の子が、彼と仲がいい」

俺はアキラを陰で指差した。

「え? 本当ですか?」

キキョウがひそひそ話をしている。

「本当」

「ケンイチ! くっつきすぎ!」

アネモネが、俺とキキョウを分ける。

金を出す商人たちも居残って打合せをするようだが、シュロは娘のキキョウを呼んでなにやら話している。

どうやら、後で迎えを寄越すように彼女に伝えたようだ。

それじゃ俺は、明日になったらカールドンとコンテナハウスを回収すればいいんだな。

カールドンは明日の昼ごろの迎えを希望しているので、そのときにくればいい。

車に乗ったアキラから連絡が入る。

『ケンイチ、俺の車は空になったから、遊びに行っていいか?』

「おお、いいぞ~。また可愛い子を探しに行くのか?」

『はは、釣りだよ釣り』

なるほど、可愛い子を釣り上げるわけだな。

「オッケー!」

アキラの車は海に向かったようなので、本当に釣りをするようだ。

俺たちの車だけでシュロの屋敷に戻ると、獣人たちがいない。

アマナの話では、暇なので遊びに行ったらしい。

ベルとカゲが日陰で寝転がり、大きな口を開けてあくびをしている。

「旦那、仕事は上手くいったのかい?」

残ったアマナが暇そうにしている。

「ああ、大丈夫だ」

「ケンイチ様、そろそろお昼です」

コンテナハウスから、マーガレットが出てきた。

「それじゃ昼飯でも食うか。どうだ、キキョウも一緒に」

「ええ? いいんですか?」

「いいけど、ゲテモノを出されて泣くなよ」

「大丈夫です!」

「プリムラとアマナ、手伝ってくれ。アネモネはパン焼きな」

「うん」

海岸で、黒狼とコウモリの唐揚げを作るって話だったが、シュロに差し入れてもらった海鮮が嬉しすぎてすっかりと忘れていた。

予定に戻って唐揚げにしよう。

獣人たちも食べたいだろうから、ちょっと多めに作るか。

皆で協力して、唐揚げを山のように作って食べた。

黒狼とコウモリの唐揚げも中々の美味だったな。

食事のあとはやることもないので、デッキチェアを出して庭でのんびり。

とりあえず、船を作るという仕事は上手くいきそうだ。

船の建造が終わったら、また来なくてはならないだろうけどな。

プリムラの話では――ここの主であるシュロは、マロウ商会で導入された伝書鳥に非常に興味を持っていたらしい。

すぐに取り入れたいと言っていたので、伝書鳥が導入されれば連絡はスピーディーに行われるに違いない。

――夕方。

マロウとシュロが馬車で帰ってきた。

馬車といっても、巷にあるような箱型の馬車ではなくて、オープンタイプの軽量化されたものだ。

軽くしないと坂道を登れないのだろう。

彼らの表情を窺うと、計画は順調に進んでいるようだ。

シュロに約束の酒を渡す。

「おおっ! ありがとうございます!」

彼が、酒瓶を掲げて小躍りしてる。

彼らと今後の計画の打合せをしていると、アキラが戻ってきた。

「お~い太公望、なにか釣れたか?」

「ウヒヒ、これこれ!」

彼が自分のアイテムBOXから、黒くて平たい魚を出した。

「え? ヒラメかカレイか?」

「どっちでもないような」

どちらかといえば、アンコウのような魚がさらに平らになったような印象だ。

「これはソコオチバですね。美味しいですよ」

キキョウが、魚の名前を教えてくれた。

ここで、あることに気がついた。

俺のアイテムBOXは、ものを入れるとアイテム名が表示されるのだが、アキラはステータスウインドウが開けないため、それが解らないらしい。

アイテムBOXを持っている人は他にもいるのだが、アイテム名が解るってのは俺だけのチートなのか。

アキラと魚を見ていると、獣人たちも戻ってきた。

「おおい、唐揚げを沢山作ったから食べてみろ。美味いぞ」

「やったにゃ!」「やったぁ! 旦那、エール!」

「ケンイチ、俺もビール」

「この前、6本渡さなかったっけ?」

「ぜんぶ飲んじまったわ、ははは」

「あいよ」

アキラと獣人たちにビールを渡した。

食事は、アキラの釣ってきた魚を捌いて食ってみたのだが、ふにふにした柔らかい肉で刺し身では食えず。

鍋にしたら、いい出汁が出てうまかった。

――飯も食い終わって夜になる。

スライムの世話をすると、コンテナハウスのベッドに潜り込む。

今日、ダブルベッドの上で一緒なのは、プリムラだ。

「船を作ってもらえそうでよかったよ」

「はい!」

「それにしても上手くいくだろうか?」

「新しいことをするのに困難はつきものです。それを恐れていては、新しい道は開けません」

「そうだけどなぁ。失敗したら損害がデカいような」

「それは、新しい商売に乗ったマロウ商会の責任ですから、ケンイチの責任ではありませんよ」

「そう言われてもなぁ」

やはり気になるよな。

俺の道楽に沢山の人を巻き込んでしまったようで、気が引ける。

「それはいいとして――プリムラ」

「なんでしょう?」

彼女が俺の胸に顔を埋めている。

「君まで耳や尻尾をつけることはないんだが……」

そう、アマランサスの真似をしているのか、プリムラも耳と尻尾をつけているのだ。

「だって、ケンイチはこういうのがお好きなのでしょう?」

「まぁ――大好きなんだけどね」

そうして夜はふける。

------◇◇◇------

――船を建造するのが決定した次の日。

皆で朝食を摂る。

この街にやってきた最大の目的である、船の建造を頼むという仕事はクリアした。

現在、カールドンが船大工に泊まり込みで、設計についての打合せを行なっている。

昼になったら回収に向かわねば……。

残るは――この地方の領主であるハナミズキ男爵に会うという仕事が残っているが、当然いきなりアポ無しで行っても会ってくれないと思うし、少々礼儀知らずだ。

まぁ面会が叶わなければ、男爵と顔見知りであるシュロに贈り物だけ預けて、帰路についてもいい。

シュロのツテを使って、男爵に面会を申し込んでいる最中なので、そのうち結果が出るだろう。

それまでは少々暇なので、屋敷の庭でまったりとする。

それにしても日差しが強い。

ベルとカゲは日陰で寝転がっている。

黒い毛皮は暑そう……。同じく毛皮を着ている獣人たちも暑いだろうな。

うちの女性陣も麦わら帽子や日傘を差したり、希望者には日焼け止めを渡す。

アマナはテントの中に潜り込んで日除けをしているようだ。

やることもないので、アイテムBOXからドローンを出して飛ばしてみた。

青い海と白い壁が並ぶ街の様子がよく分かる。

この映像を使えば、地図も作れそうだな。

「面白ーい!」

「街の様子がよく解りますね」

「ふむ、こんなものを王都で飛ばしたら、すぐに拘束されて牢獄行きじゃの」

アマランサスが物騒なことを言う。

プリムラも言っていたが、王都の地図ってのは軍事機密扱いらしいし。

遊んでいると昼になったので、車を出してカールドンを迎えに行く。

工房に到着すると白い壁についているドアを開けて挨拶をした。

「ちわー、カールドン迎えにきたぞ」

「おおっ! お貴族様! いいところに来てくれた! こいつを連れて帰ってくれ」

どうしたのか、船大工の親方から泣きが入った。

「いえいえ、まだ聞きたいことが沢山あるのです。ケンイチ様、あと2日ぐらいお願いいたします」

「勘弁してくれぇ!」

どうやら、カールドンのしつこさに、親方が音を上げたようだ。

彼の研究も大事だが、親方にへそを曲げられても困る。

親方にわびの酒を渡すと、カールドンとコンテナハウスを引き取った。

やれやれ。

親方のヒオウギも、カールドンに悪気がないことは理解しているので、あまり邪険にもできないのだろう。

いわゆる似た者同士だと思われるし。

カールドンを車に乗せた。

「まぁ、まだ機会はある。今回は諦めてくれ」

「そうですねぇ。ちょっとがっつき過ぎましたか。でも、コアモーター技術には、大変興味を示していただけましたよ」

「それはよかった。船の推進機関の革命になるかもしれないからな」

「その通りです。そして海だけではありません。馬車に取り付ければ、このケンイチ様の召喚獣とも互角に戦えるようなものを作ることが可能になるでしょう」

「そうだな」

技術ってのは発明は大変だが、なされると進歩は早い。

コアモーター技術が、この大陸の定番になる日も近いかもしれない。

――そして、2~3日シュロの屋敷に滞在したのだが、男爵と面会できるとの連絡を受けた。

よし――男爵に会ったら、今回の仕事は終了だな。