作品タイトル不明
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「…本当にその色でいいの?」
学園について馬車から降りる前に、もう一度確認してしまう。
カイルの髪と目の色が元に戻されたままだった。
昨日は休みだったし、王宮内のものはカイルの元の色を知っている者も多く、
それほど気にならないようだったけれど、学園では目立つことになる。
銀髪碧眼の私と銀髪緑目のクリスだけでも目立っていたのに、
これに銀髪碧眼のカイルまでいたら間違いなく目立つ。
じろじろと見られるの嫌なんじゃないかと心配していたら、
カイルは笑って私の頭を撫でた。
「大丈夫だよ。もう気にしないことにした。
姫様の王配になるなら、誰からもふさわしいと認められなきゃいけないだろう?
少なくとも王家の色だったら文句を言われることはない。」
「カイルが気にしないならいいけど…。」
「ほら、行くぞ。」
急かされるようにして馬車から降りると、ダグラスが待っていてくれた。
ダグラスはカイルの変化に驚いた顔はしたが、何も言わずに挨拶を交わす。
「ソフィア様、おはよう。」
「おはよう、ダグラス。今日はどうしたの?」
「いや、今日から他国の王族が編入してくるって聞いたから、
少しでもソフィア様のそばにいたほうがいいんじゃないかと思って。
人目が多ければ無茶なことされにくいだろう?」
「あ、それで朝から待っていてくれたんだ。
ありがとう。なるべく会わないようにさけるつもりだけどね。
何かあったらごめん。」
「いいよ。さ、教室に行こう。」
私とダグラスが歩く前にクリスがつき、後ろにはカイルとルリがつく。
目立つ六人で歩いていると、他の学生たちの視線を感じる。
それでも嫌な感じがしないのは、
それだけこの学園に馴染んできたのかもしれない。
一学年の教室は他の学年とは少し離れた場所にある。
第三王子に会うとしたら朝、昼休憩、授業後の可能性が高い。
警戒するに越したことは無いとみんなのそばを離れないように歩いた。
「報告が来たようだよ。
ココディアの第三王子、ハイネス王子というらしい。
金髪緑目はココディアの公爵家の色だね。
イディア妃と同じだ。
イディア妃の姉の子だから、似ていてもおかしくはないが。」
「お母様と同じ金髪緑目…。
サマラス公爵家出身のアデール王妃の第三子よね?」
「そう。顔立ちが似ているかどうかまでは判別できなかった。
イディア妃は公式行事にほとんど出ていなかったからな。
確認に行った者はイディア妃の顔を見たことが無いらしい。」
「それは仕方ないわよ。
私だって、月に一度食事会で見ただけだったし。
お母様の顔って言われても…綺麗だったような気はするけど。
ハイネス王子に会ったら思い出すかな。」
前世の記憶が戻るまではぼんやりと過ごしていたし、
思い出してからも月に一度の食事会の時に見るだけだった。
話すことも無かったし、目を合わすことも無かったと思う。
横顔を思い出そうとしてもうまくいかない。
「まぁ、顔はどうでもいいけどな。
成績はA教室の最後のほうに滑り込めたようだ。
魔力量と魔術の腕前は普通、剣術も普通。
侍従を一人連れてきているが、護衛騎士は待機室にいさせているらしい。」
「学園内は侍従と二人で動いているの?」
「一応、案内役としてデニスをつけたんだが、一日でもういいと言われたそうだ。
向こうの情報を知るためにも、
デニスにずっとそばにいさせるつもりだったんだけどな。」
「こちらの貴族にそばにいられちゃまずいことでもあるのかな。
それとも人見知りするだけ?」
「わからない。離宮に滞在させているが、
ココディアから護衛騎士として小隊二つ連れてきている。
離宮の情報が入ってくることは期待できなさそうだ。」
通常なら王宮に滞在させてもいいのだけれど、
ハイネス王子が連れてきた護衛騎士の数が多すぎた。
さすがに他国の騎士を王宮内で自由にさせることは難しい。
それならとお母様が使っていた離宮に案内し、
離宮内は好きに使わせることにしたようだ。
こちらとしても王宮内で第三王子に何かあれば責任を追及されるし、
離宮の警護をすべてココディアの護衛騎士がしてくれるのであれば、
あとは何があってもココディアの責任になる。
情報が入って来ないのは、お互い様だろうから、
王宮内で顔を合わせることがないとわかりほっとした。
朝、昼、帰りと第三王子に会わないように警戒して五日目、
昼食を食べ終えて個室からでたところで、
待ち構えていた第三王子につかまってしまった。
「もしかして、君がソフィア王女?」
そんな風に私に軽々しく声をかけてくるものはいない。
嫌な予感がしたものの、振り返らないわけにもいかず、
立ち止まって声をしたほうを向いた。
サラサラの長い金髪を結ぶことなく流した、
人形かと思うような整った顔立ちの男性が笑顔を向けてくる。
あ、お母様に似ている。
忘れていた記憶がよみがえるように、お母様の横顔を思い出した。
ただし、こんな風に笑顔を向けられたことは一度もなかったけれど。
なんだろう。むかむかと嫌な気持ちになってくる。
忘れていたお母様を思い出したから?
初対面なのになれなれしく声をかけられたから?
顔に出さないように、王女の微笑みを心掛けるけれど、
本音は一刻も早く立ち去りたい。
「やっぱりそうだろう?イディア様にそっくりだからすぐにわかったよ。
俺はハイネス・ココディア。
イディア様の甥ということはソフィア王女の従兄弟になる。
学園ですぐに会えると思っていたのに会えなくて。探したよ。」