軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

195 聖獣「不死鳥」 10

「いつまでも 飛竜(ワイバーン) を網の中に閉じ込めておくのも、魔力の無駄遣いよね☆☆」

カドレアはそう言うと、天に向かって両手を上げた。

それから、それらの手をくるりとひっくり返す。

たったそれだけの動作で、彼女の風魔術が解除されて魔術の網が霧散した。

自由になったことを理解した 飛竜(ワイバーン) は素早く二手に分かれると、上空からカドレアを睨みつけてくる。

それから、大きな口を開けると、威嚇するかのように咆哮した。

「ギィイイイイイ!!」

「ギャアギャア!!」

魔術の網の中に閉じ込められていた間ずっと強風を受け続けていたためか、あるいは不死鳥が弱ったためか、 飛竜(ワイバーン) を包んでいた炎はいつの間にか消えている。

そのことで再び力が漲ってきたのか、飛翔高度を保てなかった方の 飛竜(ワイバーン) も空中に留まることができるようになっており、力強く羽ばたいていた。

カドレアはそれらの様子を面白そうに眺めた後、王太子とラカーシュの2人に顔を向ける。

「あなた方2人は魔法使いの 守護者(ガーディアン) 候補なのかしら? だとしたら、力を見せてわたくしを納得させてちょうだい。わたくしの大事なルチアーナを預けるに足りる人物なのだということを示さなければ、とても彼女を任せられないわ☆」

まあ、カドレアは相変わらず自分の都合だけで話を進めているわよ。

それから、いつの間にか私の保護者のようなことを言い出したわよ。

呆れる私を知らぬ気に、彼女は長い腕を伸ばすとぱちりと指を鳴らした。

「さあ、わたくしのあげた魔力を使い切ってちょうだい。その2頭を倒すのよ★★」

カドレアの言葉を聞いた2人は、彼女の言葉に従うかのように魔物に向かって腕を構えた。

2人の頭の中は疑問だらけで、聞きたいことも言いたいこともたくさんあるのだろうけれど、まずは目の前の敵を殲滅することに集中するようだ。

こういうところを見るにつけ、この2人は本当に優秀だと思う。

多くの不明点、疑問点が浮かんでいても、優先順位を間違えずに、やるべきことに集中できるのだから。

けれど、2人とも既に魔術陣を使用してしまったから、しばらくの間は使うことができない。

そのため、先ほどよりも状況は悪化しているように思われた。

心配になって2人に視線をやったけれど、エルネスト王太子とラカーシュは超上位者だけあって、不安そうな様子は一切読み取れなかった。

「さすがに次期国王と『歩く彫像』だわ。ポーカーフェイスはお手の物ね」

さらに、2人は魔術発動の構えを取ったまま魔物に視線を固定し、2頭が接近してくるのを冷静に待っていた。

その様子を見た私は、この2人であれば何とかしてくれるような頼もしい気持ちになって、手元に視線を落とす。

2人が気になるのと同様に、腕の中にいる不死鳥も気になっていたからだ。

見下ろした不死鳥はやっぱりくたりとしていたので、居ても立っても居られない気持ちになり、もう1度頼んでみる。

「ねえ、お願いだから、回復薬を飲んでちょうだい。少しは楽になるはずよ」

王太子の話では、不死鳥は人の言葉を話すし、人の言葉を理解できるということだった。

だから、薬を飲もうとしないのは不死鳥の意志なのだろう。

けれど、怪我をしているのに、どうして治したいという気持ちにならないのだろうか。

無理矢理くちばしをこじ開けるわけにもいかず、途方に暮れていると、いつの間にか戦闘が始まったようで、鮮やかな炎が空中で弾けた。

はっとして顔を上げたけれど、カドレアが目の前に立っていたため、視界を防がれる。

「さすがね、ルチアーナ。契約者以外には触れさせない聖獣が、簡単に接触を許すなんて☆」

「えっ」

不用意に触れてしまったけど、触ってはいけない相手だったのかしら。

そう心配になったけれど、腕の中にいる不死鳥からは敵意を感じなかった。

「もしかしたら不死鳥は怪我をしているから、触らせてくれたのかもしれないわね。でも、薬を飲んでくれないのよ」

カドレアに現状を訴えると、彼女は長い髪を後ろに払った。

「聖獣は炎以外を体に入れることはないわ☆☆」

「……そうなのね」

不死鳥は名前通り不死だと、カドレアは言っていた。

だから、薬を飲まなくても怪我が治るということだろうか。

何かを見落としているような原因不明の焦燥感に襲われ、答えを探して不死鳥を見つめる。

本来ならば聖獣はもっと強いのだと、エルネスト王太子は言っていた。

何が聖獣を弱らせているのだろう。

目をすがめて不死鳥を見つめていたけれど、すぐにはっとして目を見開く。

なぜなら1枚、また1枚と不死鳥の羽根が目の前で抜け落ちていったからだ。

不死鳥の羽根は既にあちこちが抜けていたけれど、それは 飛竜(ワイバーン) との戦闘によるものだと思っていた。

けれど、それだけではなく、自ら抜け落ちていたものもあったのかしらと、驚いて目を見張る。

「えっ、羽根の生え変わりの時期、というわけではないわよね。どうしてこんなにたくさん……」

考えをまとめるため、心の裡を言葉に出していると、ひときわ大きな炎が空中で炸裂した。

どん! という大きな音とともに、空一面に炎が飛び散る。

「あら、思ったよりも早かったわね☆☆☆」

カドレアの声に顔を上げると、エルネスト王太子とラカーシュの攻撃が 飛竜(ワイバーン) に命中したところだった。

2人が放った炎の攻撃は、魔物の体を貫通して反対側に抜けていく。

目を離したのは長い時間ではないのに、と驚いていると、一拍置いて2つの鈍い音が響いた。

同時に、2頭の魔物は砂埃を上げながら、地面に倒れ込んだのだった。