軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

191 聖獣「不死鳥」 8

上空まで飛翔した魔物たちは、空中で旋回を始めた。

魔物の体を包んでいた炎は、体表の一部を焦がしたものの、いつの間にか消えてしまっている。

飛竜(ワイバーン) たちが空中に留まり、こちらをうかがう様子を見せたため、ラカーシュは無言のまま炎の壁を消滅させた。

規格外の大きさと威力を誇る炎の壁だ。

魔力消費量が尋常でないことは簡単に想像できるため、無駄な魔力消費を抑えるための正しい選択だろう。

次はどう出るのかしらと、息を詰めて成り行きを見守っていると、突然、真横で不死鳥が威嚇するような声を上げた。

「ピイイイイイ!」

はっとして顔を向けると、不死鳥はばさりと翼を広げ、躊躇することなく空に向かって飛び立っていく。

―――はるか昔より、人々から「聖獣」と崇められてきた存在だ。

悪しきものを駆逐しようという善なる思いを備えているはずで、だからこそ、不死鳥はこの山に棲みついて以降、全ての魔物を追い払ってきたはずだ。

恐らく、不死鳥はあらゆる種類の魔物を駆逐できるほどに強いのだ。

そう期待する一方で、優雅に上昇する姿を目にしたことで、不死鳥はこれまでどうやって魔物を駆逐してきたのだろうと疑問が湧く。

なぜなら不死鳥の神々しい姿は、戦いに向いているようにも、強そうにも見えなかったからだ。

「でも、実際にこの山には魔物が一頭もいないのだから、そのことが不死鳥の強さを証明しているのよね」

そう自分に言い聞かせていると、 飛竜(ワイバーン) の間近に迫った不死鳥が、一切勢いを落とすことなく、くちばしから突っ込んでいった。

どん! という鈍い音とともに不死鳥が 飛竜(ワイバーン) の胸部分にぶつかり、その羽根が空中に飛び散る。

衝突の衝撃で魔物は後方に下がったけれど、大きなダメージを受けているようには見えなかった。

むしろ、 飛竜(ワイバーン) の1頭が素早く不死鳥の後ろに回り込んだことで、聖獣が2頭の 飛竜(ワイバーン) に挟み込まれる形になる。

遠目でもはっきり分かるほどに、 飛竜(ワイバーン) の方が不死鳥よりも体が大きかった。

数の上でも、体格的にも不利なことは明らかだったため、焦る気持ちを覚えていると、不死鳥がばさりと大きく羽ばたいた。

その瞬間、大きな炎が2つ発生したかと思うと、それぞれが狙い定めたように 飛竜(ワイバーン) の体の一部を包み込む。

「えっ、聖獣が炎を生み出したわ!」

不死鳥の金と赤の羽は、まるで炎のようだと思ったことはあったけれど、聖獣自身が炎を発生させ、操ることができるとは思いもしなかった。

そのうえ、聖獣が放った炎は、その体色と同じく金色混じりの赤であることから、特別の炎のように思われる。

そして、実際に、ラカーシュが生み出した炎の壁が魔物の体に燃え移った際には、わずかな時間で消えてしまっていたけれど、聖獣の炎は魔物の体の上で消えることなく、燃え広がり続けていた。

全身を炎に包まれた 飛竜(ワイバーン) は苦しむ様子を見せたけれど、炎を消すための行動を取ることはなかった。

その場から退避することもなく、魔物は目をぎらりと光らせると、大きな口を開けて、不死鳥の肩に牙を立てる。

「まさか、体が燃え続けているのに攻撃を続けるの!?」

命あっての物種だから、まずは何よりも自分の命を優先させるのが、魔物の基本行動のはずだ。

それなのに、2頭の 飛竜(ワイバーン) は全身を焦がしながらも、さらに攻撃を続けていた。

魔物の行動が理解できずに、目を凝らして観察していると、 飛竜(ワイバーン) が動くたびに、その額がきらきらと光っているのが目に付いた。

「そうだったわ! 魔物の額には石が埋め込まれているのだったわ」

額に石を埋めた魔物など、これまで見たこともない。

そのため、この2頭は私の知らない種類か、私の知らない何らかの力が加えられた魔物のはずで、だからこそ、行動パターンが他の魔物と異なっているのかもしれない。

そう推測している間にも、 飛竜(ワイバーン) たちは聖獣を攻撃し続けていた。

大きな牙で聖獣の体を嚙み千切り、鋭い爪で引き裂いている。

一方的な蹂躙の様を見て、思わず顔が歪む。

―――不死鳥はこれまで、1頭きりでこの聖山を守ってきた。

当然、1頭対多数の戦いを何度も経験しているはずで、その全てに勝利してきたからこそ、この山に他の魔物の侵入を許していないのだ。

そのはずなのに、今回、明らかに不死鳥が押されていた。

「どうして? 今回の魔物が特に強いのかしら? それとも、不死鳥が弱くなっているの?」

答えは分からないものの、どちらの可能性もあり得るように思われる。

なぜなら魔物の額には不気味な石が光っていたため、私には不明の力が加わっていて、他の魔物より強くなっているかもしれないからだ。

不死鳥にしても、これまでにないほど聖山の炎を食しているとのことだったから、普段にない体調なのかもしれない。

ああ、一体どうなっているのかしら、と焦る気持ちで空中の3頭を見つめていると、同じように焦ったような王太子の声が響いた。

「なぜ聖獣が押されている? 私は以前、不死鳥が魔物と戦う姿を見たことがあるが、もっと圧倒的な攻撃力を持っていたぞ! 聖獣は弱っているのか!?」

はっとして王太子を見つめると、彼はぎりりと奥歯を嚙みしめ、空中にいる魔物に向かって攻撃の姿勢を取った。