軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

160 白百合領訪問 1

「お兄様、収穫祭の『甘い言葉収集ゲーム』は、思ったよりも厳格だったんですね!」

思い通りにことが進んだ嬉しさも手伝い、私は上機嫌で、一緒に廊下を歩いている兄に話しかけた。

「まさか皆様から、スティックを向けるか向けないかを、それほど厳格にチェックされているとは思いもしませんでしたわ」

純粋な驚きでそう言うと、兄はおかしそうに微笑んだ。

「やあ、お前は何とも可愛らしいな」

「えっ?」

私が可愛らしい?

そんな話は一切していないのに、一体どういうことかしら? と首を傾げていると、兄が丁寧に説明してくれた。

兄の話によると、昨日のイベントにおいて、対象者の前でスティックを振り忘れた女子生徒は私だけではなかったらしい。

むしろ、目の前のイケメンにぽーっとして、スティックを振り忘れた女子生徒は大勢いたらしい。

けれど、そこは世慣れたイケメンたちなので、誰もが定められた『定型文』を口にして、スムーズにイベントを進行させたということだ。

その中の唯一の例外が、私だったらしい。

どういうわけか、男性陣の全員が全員とも、定められた言葉と異なるものを口にしたのだから。

そのことを兄から説明された私は、一体何の嫌がらせかしらとむっとする。

もしかしたら兄だけは、作為的に悪戯をしたのかもしれないと思っていたけれど、そうではなくて、全員だったとは!!

嫌な予想だけれど、全員が全員とも、私はからかいがいがあると思って、悪戯を仕掛けてきたのだろうか?

私の予想は当たっていそうに思われて、ぷりぷりしながら歩いていると、兄がよしよしと頭を撫でてきた。

「……何ですか?」

じろりと睨み付けると、兄は笑みを零した。

「お前は可愛らしいと思ってな。恐らく、他の者もお前の素直な反応が見たくて、つるりと言葉が滑ったのだろう。お前が回ったのは高得点者ばかりだろう? だとしたら、彼らは100名以上の女子生徒に対して、『定型文』を口にしなければならなかったのだ。それほど繰り返したのであれば、同じセリフを口にすることに飽いていたのだろうな」

「なるほど、それもそうですね」

確かに、彼らレベルのイケメンになると、全ての女子生徒が列を作って並びそうだ。

そして、実際に、彼らの前には大勢の女子生徒が並んでいた。

そんな女性生徒に対して、同じ雰囲気を作り、同じセリフを100回も繰り返したら、さすがに飽きるわねー、と納得していると、兄がおかしそうに口の端を上げた。

「やあ、たったこれだけで納得するのか。単純すぎて心配になるな」

「えっ、何ですって?」

「いや、お前はまだしばらく、私の庇護下にいるべきということだ」

上機嫌でそう答える兄を、私はじろりと睨み付ける。

「まあ、子ども扱いして!」

「うむ、実際、驚くほどの子どもだからな」

兄はそう答えた後、声を出してひとしきり笑っていた。

それから、優し気な表情で私を見つめてきた。

「お前が何を考えて白百合領に行きたいと申し出たのかは不明だが、……あの場所は王都から離れているし、空気が澄んでいる。聖獣が棲まわれている聖山もあるから、気分転換にはもってこいの場所だ。ルチアーナ、ゆっくりしておいで」

「はい、お兄様、ありがとうございます」

私はにこりと微笑んだ。

エルネスト王太子が聖獣を従えさせられないことを、兄は知らない。

そのため、先ほどの絶好の場面で、王太子に聖獣の力を貸してもらえるよう申し出なかった私を見て、聖獣のことを完全に諦めたと兄は考えたのだろう。

おかげで、聖獣が棲まう白百合領に行くと言い出しても、私が聖獣に興味があるとは全く考えもしないようだ。

……ほほほ、ですがお兄様、私はこれっぽっちも諦めていないんですよね!

私は心の中でそう高笑いをしたけれど、表面では穏やかな笑みを浮かべると、辿り着いた『夏の庭』で花を眺めた。

それから、兄とともにゆったりと庭園を回ると、撫子の花を楽しんだのだった。

―――その後の数日間、私はとてもおとなしくしていた。

そして、その翌週に、エルネスト王太子の一族が所有する白百合領に、他の生徒たちとともに出発したのだった―――なぜかラカーシュ付きで。