軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

133 兄妹デート 3

兄が目的を持ってレストランに連れてきたことは分かっていたけれど、それでも食事の間は核心的な話をしないだろうことは予想がついた。

なぜなら兄は、どこからどこまでも貴族なのだ。

食事の間はウィットに富んだ楽しい話をして、相手を楽しませることがマナーだと考えているに違いない。

果たして私の予想通り、兄は食事の間中、にこやかな態度でホストの役を果たし続けた。

そのため、私はゆったりとした気持ちで、食事と景色と兄との会話を楽しんだ。

けれど、楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、あっさりとデザートまで食べ終えてしまう。

あ、やばい、先延ばしにしていた時間がきてしまった。

というか、給仕が新たな紅茶をサーブした後、兄が人払いをして、私たち以外の全員を部屋の外に退出させてしまった。

兄がわざわざ2人きりで行おうとしている話だ。

間違いなく、私の心の平穏が脅かされる内容に違いない。

話を聞く心積もりができていなかった私は、追いつめられた気分になって、最後の時間稼ぎにと、ここ数日、疑問に思っていたことを質問する。

「お兄様、1つ質問をしていいですか? 先日、ラカーシュ様から発言された内容についてなのですが、彼は自分がウィステリア公爵家の晩餐会に呼ばれた理由が分からないと言っていました。そして、考えた結果、お兄様がラカーシュ様に経験を積ませ、魔術師として成長させてくれようとしたのではないかとの結論に達したと。事実でしょうか?」

兄は手に持っていたカップをソーサーに戻すと、面白そうに口元をほころばせた。

「やあ、ラカーシュ殿はすごいな。ほとんど何のヒントもないところから、そこまで導き出すとは。だが、その結論に達したのだとしたら、彼はお前のことも言っていただろう。お前を守るべき魔術師を育てるために、私がラカーシュ殿を育てようとしたのだと」

確かにラカーシュはそのようなことを言っていた。

え、どうして分かるのかしら? と、兄が言い当てたことに驚き、目を見張る。

それから、恐る恐る質問した。

「……じ、事実、なのですか?」

口にした瞬間、まるで私が大事なのかと尋ねるような質問内容であることに気付き、図々し過ぎるわと頬が赤くなる。

けれど、兄はそんな私にかまうことなく、天気を答えるかのような気安さで返事をした。

「事実だ」

「うっ!」

まさかこれほどストレートに肯定されるとは思っていなかったため、驚いて声が漏れる。

そんな私を、兄は呆れた様子で見つめた。

「何を驚いている。お前は私の妹なのだから、当然のことだろう」

それから、兄は考えるかのように目を眇めた。

「お前の恋愛観がどうなっているのか分からないが、私が思うに、お前は人生で一度だけ恋愛をするのが似合うタイプだな」

「えっ、いっ、一度だけですか? 2度でも、3度でもなく、一度だけですか??」

た、確かに元喪女の私にとっては、人生に一度きりの恋愛でもありがたいことだけれど、その一度きりの恋愛に失敗したら、残りの人生を一人きりで過ごせとか、そういうことだろうか。

恋愛については驚くほど何の経験もないため、玄人っぽい兄の意見を参考にしようと、息をつめて返事を待つ。

「ああ、そうだ。多ければいいというものでもあるまい」

すると、あっさりと肯定されたため、「ぐふう」と変な声が漏れた。

そ、それは選り取り見取りのお兄様だからこそ言えるセリフであって、私のような数少ないチャンスを拾っていく者にすれば、少しでもチャンスが多い方がいいように思うのですが……。

そうは思ったものの、正面切って言い返す度胸はなかったため、曖昧な回答を口にする。

「そ、そういう考え方もあるかもしれませんね」

そんな私を前に、兄は小さくため息をついた。

「ルチアーナ、分かっているだろうが、お前に恋人ができるまでは、お前を守ることは私の役割だ。そのため、お前が選んだ相手に引き渡すまで、私は全力でお前の 守護者(ガーディアン) たろう」

「えっ!」

兄がそんなつもりでいたなんて、これっぽちも気付かなかった。

驚いて目を丸くしていると、気付いていなかったのかとばかりに、じとりとした目つきで見つめられた。

「ルチアーナ、お前は……気付いていなかったのかもしれないが、私は魔術師であることに誇りを持っている。誰彼構わず、我が身を差し出すことはない」

全くごもっともだと思い、神妙な顔をしてぺこりと頭を下げる。

すると、兄は感謝が欲しいわけではないとばかりに、片手を振った。

「そうではない。お前はまず、私がお前をどう思っていて、どれほど真剣にその役目を果たそうとしているかを、正しく理解するべきだということだ。そのうえで、……私が与える庇護がどのようなものかを十全に理解したうえで、それを丸っと失ってもいいと思える男性に出逢った時に初めて、その男性の手を取るべきだ」

「……あ、ありがたい話ですね」

つまり、私に恋人ができるまで、兄は全力で私を守ると言ってくれているのだ。

兄はある意味最強だと思うので、その兄が無条件で守ってくれるのならば……あれ、悪役令嬢として断罪される可能性がある間は、一切恋愛をせずに兄に引っ付いているのが正解じゃないだろうか?

いや、でも、兄が言っているのは物理的な攻撃に対する守護のみのはずだから、侯爵家お取り潰しだとかの社会的な制裁については、自分で何とかしなければならないことは変わらないし。

だから……。つまり……。

う――ん、と眉を寄せて考えていると、兄はさり気ない様子で言葉を続けた。

「ここで本題だ。ルチアーナ、お前は恋愛に関して、何か制約があるのか?」

「えっ?」

私は思わず聞き返すと、兄を見上げた。