軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43 入口〜第三層【Side:レオンハルト】

「マジかよお前?! アイテムに釣られてんじゃねーよ!」

「ディーの言うとおりだ」

「は?」

「失敗はできない。使えるものはなんでも使う。復活アイテムは重要だ」

リゼット救出には時間がない。

時間がかかるほど状況は悪化していく。一秒でも早くリゼットの元に行く必要がある。

絶対に失敗はできない。となれば復活アイテムは非常に重要だ。

そしてダグラスは腕が立つ。単身で第三層まで降りた経験がある。前衛戦力としても貴重だ。

その上リゼットへの心酔ぶりを見れば、裏切ることはないだろう。

「ありがとうございます。命を尽くして戦いましょう」

差し出された手をレオンハルトは固く握り返した。

「ああ、よろしく頼む。リゼットがいるのは六層のドラゴンの場所だ」

「六層……そんなところまで」

「補給を整えたらすぐに出発しよう。とにかく時間が惜しい」

早速ダンジョン内で使うアイテムや調理道具、調味料、食材を集めに行こうとしたレオンハルトの前にディーが割り込んでくる。

「おい、もちろんオレも行くからな。お前らだけだと罠や仕掛けが解けるか不安で仕方ねーし」

「ディー、ありがとう。心強いよ」

「ふん……」

ディーは顔を逸らす。

大通りに向かおうとすると、向こう側から二人の人物がこちらに駆け寄ってくる。見覚えのある姿だった。

「レオンハルト!」

「レオンハルト様」

間違えることのないほど、何度も聞いた声。

「ギュンター、ヒルデ……」

レオンハルトの元仲間の戦士ギュンターと回復術士ヒルデは、レオンハルトの元まで駆け寄ってくると、レオンハルトの姿を見て涙ぐむ。

「良かった……ご無事で……」

ダンジョン内でレオンハルトは二人に国に帰るように言った。

――どうしてまだノルンにいるのか。

だがそんなことはいまはどうでもよかった。

レオンハルトは二人に頭を下げる。

「頼む! 力を貸してくれ!」

「えっ?」

「仲間がひとりでドラゴンのところにいる。助けにいきたいんだ。お前たちの力を貸してほしい……!」

親族以外に頭を下げるのは初めてだ。

それだけ必死だった。

二人は冒険者として優秀だ。ギュンターはやや迂闊なところがあるが戦闘能力に長けている。

ヒルデの回復術は国でもトップクラスだった。レオンハルトでは蘇生できない死体も復活できる。

「顔を上げてくれ、レオンハルト」

「リゼットさんのことですよね。彼女の手配書を見ました。リゼットさんは私たちにとっても恩人です。お願いします。一緒に行かせてください」

「すまない……本当に、ありがとう」

「感謝するのはおれたちの方だ。元からお前が気になってここから離れられなかったんだ。また誘ってもらえるなんて……」

「ギュンター……相変わらず涙もろいな」

前衛三人、後衛二人の五人パーティができあがる。バランスの取れた、ほぼ理想的なパーティだ。

物理主体のパーティで魔法が足りないことがやや心もとないが、ダグラスが付与魔法を使えるらしく、ヒルデも補助魔法が使える。

できる限りの補給も整えた。

これからダンジョンに入り、最速で第六層を目指す。

(リゼット……今度は俺が君を助ける)

絶望の中で死にかけていたレオンハルトを救ったのはリゼットだった。道を踏み外しかけたレオンハルトを導いてくれたのはリゼットだった。

リゼットを深い暗闇の中に取り残したりはしない。必ず助け出す。

そう決意して、レオンハルトは残っていたスキルポイントのすべてで【聖盾】の強化を行い、再びダンジョンに向かった。仲間と共に。

第一層の森エリアは最速で駆け抜けた。

第二層の水エリアはヒルデの浮遊魔法で移動しながら、いったん休息を取って焼いたウォーターリーパーを食べる。

食事と休息はきちんと取る。それが鉄則だった。時間は惜しいが今回ばかりは失敗できない。

リゼットが死んでいたとしてもヒルデの回復術なら骨の状態でも蘇生できる。しかし死体のまま時間を置きすぎると、死体がダンジョンと同化する。そうなれば蘇生は不可能だ。

そうさせないためにも絶対に失敗はできない。

(この階層でリゼットと出会った……)

レオンハルトはウォーターリーパーを食べながら、懐かしい気持ちで海水の満ちるエリアを眺める。

最初は、最初の一瞬だけはリゼットのことを女神の使いだと思った。食べたスープにユニコーンが入っていたと知るまでは。

――ユニコーン。

レオンハルトは馬とも関わりが深いので、馬系モンスターのユニコーンを食べるのは拒否感が強かったが、空腹には勝てなかった。

そしてそれはとてもおいしかった。

――あのとき。

復讐心にとらわれて、ダンジョン内で再会したギュンターとヒルデを助けていなければ、いま再び二人とダンジョンに潜ることはなかっただろう。

(リゼットのおかげだな……)

彼女にどれだけ自分を、運命を変えられたかわからない。

その変化はレオンハルトにとって何物にも代えがたい喜びだった。

第二層を通過して、第三層。また構造が変わっていたので地図を描きながら迷宮を攻略していく。見つけたミミックは物理で倒して調理した。

どれだけ固いモンスターでも、前衛三人がかりで殴れば砕ける。

「ミミックに同情したのは初めてだぜ……」

ミミックを解体しながらディーが呟く。

「レオンハルト様。もしかしてずっとモンスターを食べながらダンジョンを……?」

ヒルデが泣きそうな顔で聞いてくる。

「ああ。俺も随分料理に慣れたよ。ミミックが頃合いだ。そろそろ食べよう」

茹でられて赤くなったミミックを見て仲間を呼ぶ。今晩はミミック鍋だ。