軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第91話 PEACEMAKER

アメリカの西部開拓時代に使われた銃、コルト社のシングル・アクション・リボルバーには色々な銃身長、口径があると同時に呼称がある。

もっとも有名なのが『コルト・ピースメーカー』だろう。

『コルト・ピースメーカー』は有名過ぎて、誤解も多く生まれた。

『ピースメーカー』の由来は、新約聖書のマタイ福音書第5章9節『 平和を作る者(ピースメーカー) は幸いです。その人は神の子どもと呼ばれるからです』から来ていると一般的には考えられている。

だが、それは誤解だ。

コルト社を立ち上げたサミュエル・コルトの妻、エリザベスが信心深かったから『ピースメーカー』という名前を、聖書から付けたと誤解されたのだ。

実際に名前を付けたのは販売代理店で『Peacemaker』には仲裁人、決着をつける者――という意味もあり、そのため『西部に平和をもたらすもの』ではなく、『争いにケリをつける道具』という意味の方が強いらしい。

オレはもちろん、 軍団(レギオン) 名に付けた『 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 』は、聖書に書かれてある通り『 平和を作る者(ピースメーカー) 』としてやって行ければという願いを込めて付けている。だが、同時に『決着をつける者』という意味を持つことを忘れることは無い。

これで 軍団(レギオン) は決まった。

残るは 軍団(レギオン) 旗、名誉士爵としての家名と紋章デザインだ。

それらの相談にウッドキャッスル内に与えられた客室で、スノー達と相談していた。

部屋にはオレ、スノー、クリス、メイヤ、シア、リース、ルナが揃っている。

シアはメイド服姿で給仕に徹している。

司会進行役は自然とオレが務めることになっていた。

「それじゃまず家名でいい案はあるか?」

「無難なところでわたし達の出身地の『ホード』はどうかな?」

スノーが一番初めに答える。

リュート・ホードか。

語呂は悪くないかな?

「ですが、ホードは他者の領地ですよね? 人の領地名を勝手に名乗るは不味いと思いますよ」

「確かにそうだ。ならホードはなしだ」

リースの指摘にオレはすぐさま『ホード』を却下した。

『私の実家の家名を使ってはどうですか?』

クリスの実家の家名は『ブラッド』。

リュート・ブラッドか。

語呂も問題なさそうだが、これでは入り婿的になるのか?

悪くはない! 悪くはないが『ブラッド』は一旦保留かな。

次に勢いよく手――どころか立ち上がったメイヤが鼻息荒く提案してくる。

「ではリュート様、我が家名の『ドラグーン』など如何でしょうか?」

「リュート・ドラグーンか、響きは悪くないけどそれって……」

オレの視線にメイヤは顔を赤くして、

「いえ別に特別な意味があるわけではありませんわ。ただ1つの! 1つの案として出しているだけですわ。ちなみに我が家名は、彼の竜人大陸を統べるドラゴン王国の遠縁。ですから音の響きが近い『ドラグーン』を名乗らせて頂いていますわ。つまり! 歴とした名誉ある家名なのですわ。大天才魔術道具開発者のリュート様が名乗ったとしても決して格が劣らないと自負させて頂きますわ!」

「わ、分かった。一応一案に入れておくよ」

メイヤは鼻息荒く、一気に押し切る。

思わずその迫力に押されてオレは頷いてしまった。

他にもルナから、絵本に出てくる勇者の家名などをあげられたがさすがに却下した。クリスなどは、ルナの案に前向きだったがオレとしてはちょっと恥ずかしい。

他にも良い案は出ず、とりあえず家名や紋章などは後日また案を考えるということになった。

次は戦勝パーティーについてだ。

「戦勝パーティーに呼ばれるのは有り難いが、ダンスなんてやったことないぞ? みんなは?」

「わたしもやったことないな」

『私は昔、小さい頃、お父様とお母様から少しだけ習いました。今でも踊れる自信はちょっとありません』

スノーとクリスがそう言うと、横のメイヤとリースが口を開く。

「わたくしは淑女として嗜んでおりますわ」

「私とルナも公式の場に出ることが多いので、大丈夫です」

つまり、オレとスノーは未経験、クリスはブランクがあるということか。

シアはその日、給仕に立候補しているので関係ないらしい。

「ならクリスちゃんにはルナが教えてあげる! 当日も一緒に踊ろうね!」

『はい、宜しくお願いします』

クリスとルナが楽しそうに笑顔で手を取り合う。

この2人は眺めているだけで微笑ましい。

「では、若様とスノー奥様には姫様がお教えしてはどうでしょうか?」

「し、シア!?」

シアの申し出にリースが赤い顔で声を荒げる。

負けじとメイヤが挙手する。

「リュート様にはこのわたくし! 一番弟子にして、右腕、腹心のわたくしがお教えしますわ!」

「確かに姫様もお2人同時にお教えするのは骨でしょうから、メイヤ様にもご助力頂ければ幸いですね」

「だな。それじゃリース、メイヤ、オレ達にダンスの踊り方を教えてくれ」

「頑張って覚えるよ」

オレとスノーは2人にお願いする。

メイヤはいつも通り張り切っているが、リースは顔を赤くしてシアを怨みがましく見つめている気がする。

当のシアが涼しげに流しているのだから問題ないだろうとは思うが……。

そう思いながらリースの横顔を見る。

リースがふとオレの方に気づくと、

「…………っ」

真っ赤になって瞳を逸らす。

リースの耳まで赤くしているその表情は、とても可愛かった。