軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第83話 汎用機関銃2

「シア、準備が整うまで援護をお願いします!」

「了解しました!」

シアはリースの指示に従ってAK47を構え、PKM―― 汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) のショックから立ち直り再度突撃して来る竜騎兵達に向け発砲する。

その間にリースは銃身とボックスマガジンの交換を素早くおこなう。

銃身は銃器の種類などでも変わってくるが、200~300発砲後に交換するのが普通だ。

リースは 銃身(バレル) に付いている取っ手――キャリングハンドルを掴み、新しいのと交換する。

交換を終えた湯気が昇る 銃身(バレル) は捨てたりしない。

数本交換している間に最初に取り外し交換した 銃身(バレル) が使用できる程度まで温度が下がっているので、再び利用する。

リースの場合は最悪、使い捨ててもいい。

なぜなら彼女の『精霊の加護』――『無限収納』に予備を何本も入れておくことが可能だからだ。

「準備、終わりました! シア、下がってください!」

「了解!」

再度、 銃身(バレル) とボックスマガジンの交換を終えたリースが、シアと交替する。

銃口を向かってくる竜騎兵達へ向け 引鉄(トリガー) を絞る!

ダダダダダダダダダダダダダダダダンッ!

再度7.62mm×54Rが嵐のように発射され、群がってきた竜騎兵達を薙ぎ払う。

『ガギャア、ギャァギャァアァッ!』

先程の焼き直しのように竜騎兵達が倒れ、後ろで兵士達が歓声をあげる。

だが、リースは2回目のPKM―― 汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) の発砲で疑念が確信へと変わった。

(このままでは竜騎兵達の物量に負けて突破されてしまいます……ッ)

機関銃(マシンガン) はとても強力な武器である。

前世のある本には『兵士3人に機関銃1丁で、敵約1000人の行動を止めことができる』と書かれてあるほどだ。

しかしいくら 機関銃(マシンガン) が強力な武器でも、その性能を発揮する使い方をしなければ意味がない。

現在は突撃してくる竜騎兵を正面から 機関銃(マシンガン) で撃ち倒している。だが実際、発砲した弾丸が全て敵に当たるわけではない。

必ず数匹は弾丸の隙間をぬい生き延びる。

それを倒すためにさらに弾丸を発砲するが、これでは効率が悪い。

本来、こういった陣地を防衛する場合、機関銃は敵を正面から発砲するのではなく、斜め――敵を一列に並べて側面から撃ち倒せるように配置しなければならない。

敵を側面から撃つ役割に配置した機関銃のことを『側防火器』と呼ぶ。

では、どうやって敵を一列に並べて側面から撃つのか?

事前に味方陣地前に鉄条網を設置すればいいのだ。

この場合、鉄条網を敵に対して横一列、一直線に張るのではない。ノコギリの刃のようにジグザグに設置するのだ。

すると敵は突破しようと鉄条網に沿ってV字のように左右一列に並ぶ。

並んだ敵側面の延長線上に 機関銃(マシンガン) を配置。発砲すれば敵を効率良く倒すことが出来る寸法だ。

竜騎兵は知能が低く、気性が荒いせいでただ真っ直ぐ突っ込んでくるだけだから、今はいい。

だが、さすがに 機関銃(マシンガン) の脅威に気付き、死んだ仲間を楯にしたり、さらに左右に広がり迂回する方法を採ってくる。

リースが慌てて指示を飛ばす。

「左右から迂回してくる竜騎兵を兵士達に担当させなさい! 決して私の前に立たないよう注意を徹底にすること! 貴方達の背後には力を持たず、事態の危機も知らず眠る守るべき民が居ることを知りなさい!」

「はッ!」

エルフの指揮官が指示に従い、部下を左右から迂回してくる竜騎兵に向かわせる。

リースは叫びながらも手を止めず、3回目の発砲準備を整える。

牽制を終えたシアが彼女の側に寄ってくる。

彼女も現状の危機をリースと同じぐらい認識している。

「姫様のお陰で兵士達の混乱は収まり、戦準備は十分に整いました。PKMはボクが代わりますので、姫様は脱出のご準備を」

「それは出来ません」

「姫様!」

「今、私が後方へ下がれば折角上がった兵達の士気は再び下がります。そうなれば戦力差と士気の低下で前線は簡単に崩壊してしまいます」

「――ッ」

シアは反論の言葉を返せなかった。

リースの指摘通りだ。兵士達にとって、本来自分達が守護すべき第2王女が、最前線で戦っている。さらに 機関銃(マシンガン) という圧倒的火力で、竜騎兵をばったばったと倒していく。その姿を見て士気の上がらない者はいないだろう。

だからこそ圧倒的戦力差をはねのけ、ギリギリ持ち堪えることが出来ているのだ。

家の大黒柱が抜けたら倒壊するのに時間は掛からないのと同じ理屈だ。

リースは自分の最も信頼する護衛メイドに、柳眉を下げ謝罪する。

「ごめんなさい、シア。こんな酷い戦いに付き合わせたりして……」

「いえ、ボクは姫様専属の護衛メイドですから。当然のことをしてるまでです。だからお気になさらないでください。それにきっと、もうすぐ若様が助けに来てくださいます」

「そうね。リュートさんは約束してくださったものね。絶対にルナも、私達も助けてくださるって」

いつも失敗ばかりで、『傾国姫』と陰口を叩かれている自分を、大切な仲間と断言してくれた。姉が予言した未来を防ぐことが出来る唯一の存在。そんなリュートが、絶対に助けに来ると断言したのだ。それは姉の予言――それ以上に確かな約束だ。

リースとシアは気持ちを改めて、再び意識を戦場へと戻す。

PKMの 引鉄(トリガー) を絞る。

だがついに数体がPKMの弾丸をくぐり抜けリースへと接近。

咄嗟にシアが体を割り込ませ、AK47をフル・オート射撃する。

『ガギャア、ギャァギャァアァッ!』

しかし1体を撃ち漏らし、距離を縮められる。AK47の弾倉は先程の射撃で撃ち尽くしてしまう。シアはとっさに飛び出し、敵の棍棒の一撃をAKを楯に受ける。

「くッ!」

銃身がその一撃でひしゃげる。

竜騎兵はそのままシアを力任せに押し込もうとするが、彼女は逆らわずAK47を手放す。竜騎兵は突然、力を押し込んでいた先が消失し前のめりにバランスを崩した。

シアはその場で一回転、同時に腕を振るう。

メイド服の裾から『wasp knife』が暗器のように飛び出し、彼女は右手で握り締める。

「姫様には指一本触れさせない!」

一回転し振り向きざま『wasp knife』の刃を竜騎兵の眼孔に付き立てる。さらにスイッチを押すと、『wasp knife』の内部に溜め込まれたガスが噴射され、頭部内部をズタズタに引き裂く。

竜騎兵は頭部を内側から破壊されて、血液を噴き出し完全に絶命してしまう。

「グがぁ!?」

「シア!?」

だが、竜騎兵もただ殺されるだけでは終わらなかった。竜騎兵は絶命の瞬間、シアの後頭部を棍棒の柄で殴り飛ばしたのだ。

オークや 大鬼(オーガ) に負けない怪力を持つ竜騎兵の腕力で殴られたせいで、シアは後頭部から血を流し倒れてしまう。

リースは慌てて彼女に駆け寄り、回復魔術をかける。

「手に灯れ癒しの光よ、 治癒なる灯(ヒール) 」

シアは温かな回復の光を浴びながら、リースに再度告げた。

「ひ、姫様……ボクのことは構いませんから、姫様だけでも逃げてください……」

「シア、喋らないで。今、傷口を癒してますから!」

シアは傷口を完治させるも、殴られた衝撃により意識を落とす。

さらにタイミング悪く――

「おい、見ろ! バジリスクが2体も結界石から出てきたぞ!」

兵士の指摘通りバジリスクが2体、破壊された結界石から姿を現す。

そのうちの1体は眼下の戦場など意に介さず、早々に湖外の街へと向かってしまう。

さらに結界石からはPKMで倒した以上の竜騎兵が這い出てくる。

さすがに兵士達も目の前の事態に士気が下がってしまう。

だが、唯一1人だけ希望を捨てていない人物がいた。

リースだ。

彼女は気絶したシアを抱きかかえたまま、迫り来る竜騎兵達を睨み付ける。

「絶対にリュートさん達が……仲間達が助けに来てくれます。ドジで、不器用で、皆の脚を引っ張ることしか出来ない私ですが――それまでハイエルフ王国、エノールの第2王女、リース・エノール・メメアが絶対にこの場を死守してみせます!」

彼女の叫びと同時に――空を舞っていたバジリスクの頭部が内部から爆砕する!

『!!!???』

頭部を内部から砕かれたバジリスクは力を失い、重力に従って地面へと落下する。

その場に居た全員が起きた事態を飲み込めず、ただ驚愕していた。

「お姉ちゃーーーん!」

上空から聞こえてくる叫び声。

皆がその声に振り返ると、いつの間にか一隻の飛行船が空から近づいてくる。

声の主は誘拐されたはずのハイエルフ王国、エノールの第3王女、ルナ・エノール・メメアだ。元気よくブンブンと手を振っている。

飛行船にはルナだけではなく、クリス、スノー、メイヤ、サーベルウルフのレクシ――そして、リュートが揃っていた。

リースは安堵から自然と涙を零す。

彼女は頬を伝う雫を拭いながら、無意識に愛しげな声で呟いていた。

「信じていました―― 私の勇者様(●●●●●) 」