軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第59話 決闘

冒険者斡旋組合(ギルド) からレベルⅢのクエスト――魔術道具を積んだ荷馬車の護衛を受注した翌朝。

同行する他の護衛者や依頼主と顔合わせするため、昼少し前に 冒険者斡旋組合(ギルド) へ足を運んだ。

建物内に入って案内嬢に声をかけると、応接間へと通される。

暫くして依頼主と他護衛者の4人と、立ち会うためかいつもの魔人種族の受付嬢が顔を出す。

「依頼主のゴムゴです。魔術道具関係の商いをしています。明日の護衛、宜しくお願いします」

依頼主のゴムゴは頭に2本の角を生やしている。

竜人種族らしい。

中年で白髪は生えていないが、顔の皺が目立つ。背丈は170センチほど、鼻の下に毛虫のような髭を生やしている。

人の良さそうな人物だ。

「冒険者レベルⅡのリュートです。レベルⅢにあがるためのテストですが、それとは関係なく全力で仕事を務めます。こちらこそ宜しくお願いします」

そして、冒険者タグを見せた後、握手を交わす。

スノー、クリス、シアもオレの続いて挨拶をした。

ここまでは和やかな挨拶だった。

「ゴムゴさん、いくら人手が足りないからって、こんな子供達に護衛の仕事を依頼するなんて金の無駄だ」

最初に着任していた護衛者の3人――全員頭部に角が生えているから竜人種族だろう。兜に穴をあけ、そこから角を伸ばしている巨漢の男。背がオレより低い、すばしっこそうな男。その隣にいるリーダー格らしき人物が横やりを入れてくる。

リーダー格の男は身長も180センチはあり、無駄な脂肪がない鍛えられた筋肉が私服の上からでも分かる。顔立ちも他2人と比べれば整っているほうだ。

少しだけ伸びた髪を後ろで縛り、腰からは私服のラフさに見合わない高そうな剣を下げている。

全員、見た目から如何にもベテラン冒険者と言った風格だ。

「シミルさん、いくら何でも失礼じゃ……」

「俺は本当のことを言ってるだけさ。冒険者家業は子供の遊び場じゃない。こいつらがどうなろうと知ったことじゃないが、下手をしたら俺達だけじゃなく、ゴムゴさんまで危険に陥るかもしれない。だから、こういうことははっきり言ってやる方がいいのさ」

リーダー格の男――シミルの言い分も理解出来る。

レベルⅢの運搬警護は、個人ではなく集団の仕事だ。

1人のミスが全員を危機に陥れることもある。

またオレ達が、彼らに面倒な仕事を押し付けて賃金だけ抜こうと考えている子供だと思われるのも無理はない。

実際、シア以外はまだ14、13歳の子供なのだから。

魔人種族の受付嬢が口を開く。

「シミル様、彼らは 冒険者斡旋組合(ギルド) がレベルⅢを受けても問題無しと認められた冒険者です。現にシア様はBプラス級の魔術師。スノー様に至ってはAマイナス級の魔術師です。見た目で判断するのは如何かと思いますよ?」

「Bプラス級に! Aマイナス級だと!?」

シミルの後ろに控える男2人も驚愕の表情を作る。

依頼主のゴムゴは棚からぼた餅的笑顔を浮かべた。

「それは心強い。Aマイナス級の魔術師に警護に就いてもらえるなんて。今回の安全は保証されたようなものですね」

「くッ……!」

雇用する権利を持つゴムゴが、完全に雇う気になっている。

こうなったら雇われる側であるシミル達がいくら騒ごうが、判断は覆らない。

むしろあまり騒ぐようであったら、彼らの方が契約を切られてもおかしくはない。

彼らからしてみたら完全に冒険者として面子を潰された形になる。

受付嬢はさらに火に油を注ぐ。

「しかもスノー様とクリス様は、リュート様の奥様でもあるんですよ。こんな美少女と結婚出来て本当にリュート様は羨ましいです。本当に……ねたましいほど……羨ましい」

怖い怖い。

まるでジャパニーズホラー映画に出てくる怪物みたいな暗い怨念を放射し出す。

なんか彼女が結婚出来ない理由がだんだん分かってきた気がした。

「し、しかもこんな美少女2人と重婚だと……!」

さらにシミル達は驚愕に震えた。

「えへへへ、リュートくん美少女だって。わたし達、美少女だって」

『照れちゃいます』

スノーとクリスは嬉しそうに両脇からデレデレしてくる。

スノーなどさりげに匂いを嗅いできた。

こらこら人前でふがふがは止めなさい。

「い、いちゃつきやがって……」

シミル達は歯ぎしりが聞こえてきそうな程の苦渋顔をする。

自分達が文字通り命がけで努力し、ようやくレベルⅢへ到達。

なのに下から自分達より若い男が、圧倒的美少女を連れてレベルⅢに上がろうとしている――しかも連れている1人はAマイナス級、一握りの天才がようやく到達出来る魔術師だ。

オレだってあちらの立場だったら、同じように……いや、それ以上に嫉妬して、妬み憎悪しただろう。

「……分かった、彼女達の実力は認めよう。だが、しかし! この少年だけは認める訳にはいかない! 今すぐ俺と勝負して実力を示せ!」

だから、こうなるとはなんとなく予想はしていたよ。

オレは溜息をつき、こちらからも条件を出す。

「分かりました。勝負はしましょう。但し! 勝っても負けても恨みっこ無し。以後、挑発するような言動は互いにしない。あくまで仕事として今回のクエストを行う――それが条件です」

「分かった。冒険者の名に誓おう。だが、もし貴様が負けたら、今回の仕事中は全て俺達の指示に従って貰うからな」

「分かりました、理不尽な命令でなければ、オレが負けた場合はクエスト中はあなた方の指示に従ってあげますよ。もちろん、勝てればの話ですけどね」

「いい度胸だ。お前の悔しがる姿が楽しみだよ」

こうして、オレとシミルの決闘が決まった。

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決闘場所は 冒険者斡旋組合(ギルド) の裏手にある練習場だ。

普段は引退した元冒険者が、新人冒険者達に訓練をつけたり、また 冒険者斡旋組合(ギルド) 職員に護身術などを教える場所である。

広さは体育館ほど。

壁の端には資材や木材、練習用に刃が潰されている剣、槍、大剣などが置かれている。

オレとシミルは5メートルほど距離を開き対峙していた。

立ち会い人を務めるのは魔人種族の受付嬢だ。

「互いに普段使っている武器、魔術道具を使うとのことですが、スノー様、シア様のご厚意で治癒魔術を使ってくださるとのことです。大抵の怪我は治りますがくれぐれも相手を殺害しないよう注意してください」

オレ達は彼女の言葉に頷く。

オレはガンベルトから下げている『S&W M10 4インチ』リボルバーを、シミルは腰に下げている剣を使う。

彼は剣をゆっくり抜きながら、語り出す。

「始まる前に言っておく、俺の名はシミル。『疾風のシミル』とは俺のことだ」

いや、知らないし。

「風の魔術が込められたこの魔剣『疾風剣』に切り刻まれるがいい!」

つまり、あの剣には風の魔術が込められた魔石が組み込まれていて、名前からして鎌鼬とか、風の刃なんかを飛ばす力を持っているようだ。

なんで手の内をわざわざ口にするのかな。

しかもただ単に魔石をつけただけの剣を疾風剣と呼ぶとかダサすぎる……。自分で名前をつけたのだろうか、センスが疑われるな。

オレの呆れを怯えと捉えたのか、シミルは余裕の笑みを浮かべる。

受付嬢さんが右手を高々とあげた。

「それでは始め!」

「うぉおおおぉ! 切り刻め! 疾風け――ぎゃぁ!」

オレは念のため5秒だけ肉体強化術で身体全体を補助。

1秒に満たない早撃ちで、シミルの肩を射抜く。

彼は突然の痛みと発砲音に驚き、振り上げた剣を手放し肩を押さえる。

「き、貴様……ッ」

現役冒険者だけあり、痛みに強いらしいシミルは動かない動かない肩とは反対側の腕で、落ちた剣を拾おうとする。

タンッ。

「ッ!?」

伸ばした腕と剣の間に、再度 38スペシャル(9mm) を撃ち込んだ。

「……まだ続けますか?」

脅しのため銃口を向け、低い声で呟く。

「ま、参った!」

彼はすぐさま勝てないと悟り、負けを宣言する。

こうして無事認められることになり、オレ達はクエストを受注することが出来た。

憮然とした表情のシミルに改めて自己紹介し、彼らの冒険者タグを確認する。

シミル達は冒険者レベルⅢだった。