軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第58話 レベルⅢ昇格クエスト

約1ヶ月半後――鬱蒼と茂った森の中をオレ達は、フル装備で疾駆する。

野戦服の腰にはベルトが巻かれ ALICE(アリス) クリップで留められた複数のポーチが装備されている。

オレ達の肘、膝には戦闘用プロテクターを装備。

戦闘(コンバット) ブーツの靴底がしっかりと地面を捕らえる。

シアを先頭に、スノー、オレ、一番後ろにクリスが並ぶ。

シアはアイプロテクション・ギア(ゴーグルタイプ)越しに事前準備していた的へメイヤ製造のAK47を向け、発砲。

ダン!

地面に置かれた的の中心部を吹き飛ばす。

オレとスノーはさらに枝にぶら下がる的をAK47で射抜いていく。

クリスは後方で周囲を警戒。

的を全て射抜くと、再び移動を開始する。

設置された的を全て破壊するまで訓練は続けられる。

最後の的はクリスが100メートル先からど真ん中を吹き飛ばした。

「おかえりなさいませ、皆様!」

訓練を終えたオレ達が森を抜け出すと、メイヤが待ち構えていた。

メイヤ邸のメイド達が準備した椅子、テーブル、パラソル等――簡易休憩所が設置されている。

ここは街の外、近くの森。

冒険者斡旋組合(ギルド) に断りを入れ、野外での訓練をおこなっている。

事前に粗方の魔物は排除。

それでも少しは残っていたようで、訓練最中に遭遇した魔物は全て処理させてもらった。

残っていた魔物を誰より早く察知したのはシアだった。

奴隷になる前、冒険者をしていた時も斥候役で誰より早く魔物の動きを察知していたらしい。

気配察知技術がずば抜けて高いのだ。

シアは『ボクは冒険者になって一度も不意打ちを受けたことがありません』と断言するほどだ。

彼女の言葉を信じて、今回は斥候役――前世の軍隊用語で言うなら 先導兵(ポイントマン) を担当してもらった。

結果は想像以上だ。

今度もこのフォーメーションで行動することになるだろう。

オレ達はアイプロテクション・ギアを外し、AK47やM700Pを手放す。

オレだけヘルメットを外し、椅子へ置いた。

メイドさん達から渡された濡れて冷えたタオルで顔や首を拭うと、土と汗ですぐに汚れる。

ALICE(アリス) クリップで留められた水筒の蓋を外して、ぬるくなった水を飲み干す。

水分を摂取すると、再び汗が噴き出し新たなタオルを受け取る。

暫し休憩を堪能した後、オレは皆に装備の具合を確認した。

「今回訓練してみて、装備の具合で気になる点とかあったか? 動きが制限されるとか、サイズが合わないとか、使い辛いとか」

「「『ヘルメットはやっぱりいらない(です)』」」

OH、女子全員から『ヘルメット、NO』を突き付けられた。

訓練前に渡したのだが、女子全員に不評で彼女達は訓練中一度も装備しなかった。

スノーは『耳が痛くなる』から。

クリスは『違和感があって射撃に集中できない』から。

シアには『邪魔』の一言で片付けられた。

一生懸命作ったのに……。

結局、現在使っているのはオレだけだ。

「ほ、他に意見はないか?」

『お兄ちゃん、このアイプロテクション・ギアはもっと見やすくなりませんか?』

「うーん、頑張ってはみたんだけど……」

アイプロテクション・ギアはゴーグルタイプの眼鏡だ。

戦いにおいて目に与えられるダメージは多い。砂埃や弾を撃った後に排出される空薬莢、近くに着弾した弾丸によって削られ飛び散る破片等。魔術なら爆風による破片などもある。目を痛めれば戦力は激減してしまう。そのために必要になってくる。

これは聞いた話だが、アメリカ軍等ではショットガンレベルならば耐えられる強度を持つ製品が存在するらしい(アイプロテクションの分野について最も有名な企業であるESSの製品等)。

だがこの異世界にそんな物は存在しない。

オレとメイヤが協力して試行錯誤した結果、ゴーグルタイプのアイプロテクション・ギアを選択。グラス部分を魔術液体金属で作った蜂の巣状にしている。残る隙間の間には、後頭部に設置した水の魔石の力で水膜を張ることで細かい埃、砂塵などを防げるよう工夫した。

しかし実際に使ってみると確かに視界はあまりよくない。

だが蜂の巣部分の升目を大きくすると、防げない破片などが出てくる。水膜はそれほど強度は高く無いから、今後はバランスを見極める実験を繰り返すしかないようだ。

「分かった、もう少し見やすくなるよう工夫してみるよ。他にはあるか?」

「わたしはこの防弾ベスト? っていうのがきついかな。特に胸の部分が」

防弾ベストは前世の世界と名前は一緒だが、銃弾ではなく剣、槍、弓矢などを防ぐ目的で作っている。

使っている素材はドラゴンによく似た翼竜という魔物で、両手が翼になっている。

ドラゴンよりは防御力が落ちるが、値段はそこそこ張る鱗を並べ合わせ、カーキ色の防護布を貼り合わせ作った。

軽く、防御力も高い一品だ。

しかし伸縮性はかなり低い。

スノーの今なお成長している胸には窮屈だろう。

夜になるとベッドでハッスルするオレが悪いんだけどね!

「わ、分かった善処しておくよ。他にあるか? シアはAKに問題は無いか?」

「まったく問題ないよ」

「当然ですわ! なにせわたくしとリュート様共同で作った師弟愛篭もった一品なのですから! 大切に扱ってくださいね、シアさん」

そう。シアが使っているAK47は、オレとメイヤが一緒に作った。

メイヤはオレと出会い、ずっと銃器の勉強をしてきた。

さらに時間があれば鉄板を頭でなく、体で覚えるためひたすら触ったり、舐めたり、匂いを嗅いでみたり、強度を体感するため殴ったり、囓ったり、頬を押し付け冷たさも実感した。

そんな努力の結果、ようやく鮮明にイメージ出来る力を得るに至ったのだ。

そしてスノーのAKをオレが、シアのをメイヤが担当し、部品を確認しつつ一緒に作り、組み立てた。

ここで意外にも魔術液体金属の問題点、弱点が発覚する。

魔力を注げば注ぐほど強固になると思われた魔術液体金属だが、ある一定以上の魔力を越えると途端に脆くなってしまう性質があったのだ。

オレとメイヤが同じ部品を作ると、なぜか彼女の物だけ異常に脆くなる場合が多々あった。

最初は鮮明にイメージしていないせいかと思ったが、注ぐ魔力量が多すぎたらしい。

うろ覚えの知識だがアルコールも90%だと、殺菌力が逆に落ちる。

70~85%程度が尤も殺菌能力が高いものになると某医療マンガで学んだ。

恐らく魔術液体金属も似た性質を持っているのだろう。

魔術師Bマイナス級のメイヤが作るから気付いた特性だ。

魔術師の才能が無いオレだけが使っていたら気付かなかっただろう。本当に自分は魔力量が低いのだと認識させられた一幕だった。

だが、注ぐ魔力量の調整で解決出来る問題だ。

メイヤが注ぐ魔力を調節することで強度の問題は無くなった。

またAK制作にあたって、小さい部分だが彼女達の持つ個性に合わせたデザインにしてある。

スノーはほぼオレと同じデザインだ。

唯一違う点は、黒色ではなく白だと言うことだ。

スノーは名前のせいか白色を気に入って使っている。

だから、誰のか一目で分かるように色を変えた。

シアの場合はストック(銃の一番後ろにある肩にあてる部分)がメタルフレーム式ではない。空いた穴を埋めて、自分達のより重くしている。

本人曰く――軽すぎて持っている気がしないのが嫌らしい。

訓練後、皆に一通り聞いてみたが、特別不都合はないようだ。

「それじゃ明日、レベルⅢのクエストがないか 冒険者斡旋組合(ギルド) へ行ってみるか」

皆も賛成の声をあげる。

いよいよレベルⅢに上がるためのクエストを開始だ。

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翌朝、朝食を4人――オレ、スノー、クリス、シアで済ませる。

クエストをすぐにこなす訳ではないため、AKなどを持たず護身用のガンベルトを下げるだけの私服姿で 冒険者斡旋組合(ギルド) を尋ねた。

シアと来るのは初めてだったが、彼女は慣れた手つきで数字番号が焼き印された木札を受け取る。

すぐにオレ達の番号が呼ばれた。

「……チッ、いらっしゃいませ、また奥さんが増えたんですか?」

毎度お世話になっている魔人種族の受付嬢お姉さんは、すれた態度で応対してくる。

「いえ、彼女は嫁じゃないですって。そろそろ自分達も冒険者レベルⅢにあげるため、彼女を雇っているんです。僕達はまだまだ初心者で、色々冒険者としての知識がありませんから」

公衆の面前でシアをわざわざ奴隷として紹介する必要はないだろう。

腕に押された魔術陣を隠し、首輪を外していれば見た目から判断できない。

魔術師の奴隷を従えているということで、面倒が起きても困るからだ。

その事は本人にも伝えてある。

シアは首からタグを取り出し、受付嬢に渡す。

「ボクはシア。宜しく」

「失礼しました。こちらこそ宜しくお願いします。シアさんはレベルⅢなんですね。今回は他の皆さんがレベルⅢにあがるためのクエスト受注で宜しいでしょうか?」

「はい、お願いします」

シアの返答に受付嬢は流れるように書類を捲っていく。

仕事が出来て、容姿、性格もいいのになぜ結婚出来ないのだろう……。

受付嬢が1枚の書類を差し出す。

彼女は書類を見ずに書かれてある条件を暗唱する。

「それではこちらのなど如何でしょうか? 依頼内容は荷物運搬の警護。目的地はここから竜人鉱山を経由して竜人王国まで。約16日、拘束時間が長いため今回は1人金貨2枚となります。飲食は各自用意。馬車のみ雇用主側が用意するそうです。出発は明後日の朝。もし受注されるのであれば、明日顔合わせのため昼頃までに 冒険者斡旋組合(ギルド) へ来て頂くことになります」

運ぶ荷物は魔術道具関係。

すでに護衛を務める1チームは決まったが、雇用主側が念のためもう1組求めているらしい。やや急なためレベルⅢへの昇格に使われても問題無し――とのことだ。

確かにオレ達にとって都合がいい。

シアが内容を確認し、受付嬢に受諾を伝える。

「では、これをお願いします」

「分かりました。では、皆様のタグをお貸し下さい。またレベルⅢからは預け金が発生します。今回は人数分×銀貨1枚となっております」

今回のクエスト受諾に関しては、手続きをオレ達の中で唯一レベルⅢのシアに一任している。

オレ達はタグと預け金(銀貨4枚)を受付嬢に手渡す。

彼女は魔術道具の羽ペンで淀みなくクエストを書き込んでいく。

書き終えると、タグを返してくれる。

「それでは明日、昼頃までに 冒険者斡旋組合(ギルド) にお越し下さい」

「了解した。それと雇い主に、ボク達側の馬車は必要ないと伝えておいてください」

「分かりました。お伝えしておきますね」

シアは用事が済んだとばかりに席を立つ。

オレ達も後に続いた。

「なぁシア、なんでわざわざ用意してくれる馬車を断ったんだ?」

断ってしまったため、自分達で準備しなければならない。

その分、余計に経費がかかってしまう。

シアは歩きながら説明してくれた。

「こちらで準備しなければ、他のチームと一緒に安い馬車と角馬を宛がわれるんです。雇い主も無駄な出費を抑えたいですから。ボク達の安全のためにも馬車は借りるか、自前で用意するのが冒険者の基本なんですよ」

お金の無い冒険者は宛がわれた馬車と角馬を利用するらしい。

オレ達にはこういう知識がかけている。

シアを購入して本当によかった。

そしてオレ達は馬車屋へと向かう。

馬車を借りたら、他にも必要な物を買いに市場へと行くつもりだ。

明後日のレベルⅢクエストのため、オレ達は準備を開始する。