軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後継者、争い? 短編宣伝シナリオ

「「かんぱーい!」」

景気よく木製ジョッキがぶつかりあう音が酒場に響く。

新・純潔乙女騎士団団員、2名が休みを利用し、夜、息抜きのため酒場へと繰り出す。

2人が美味そうに酒精を飲み、ジョッキから口を離すと獣人種族、 猫人(ねこびと) 族のアリーシャが機嫌良さげに声をあげる。

「めでたい! 実にめでたいニャ! ついに団長とリース隊長の子供が産まれたニャ!」

「だねぇ。無事に産まれて本当によかった。リース隊長も自分のドジを自覚しているくせに何でも1人でやろうとして……。本当に胃が痛かったわ。シア隊長がいなかったらいったいどうなっていたことか……」

アリーシャの台詞に向かい側の席に座った人種族のミラが深く同意する。

ミラは同世代に比べて背が低い。童顔で胸も小さく、栗毛の髪をお下げに結んでいるためか、見た目以上に若く見られる。

2人は純潔乙女騎士団へ同時期に入団した。

いわゆる同期である。

性格、波長も合うため 軍団(レギオン) でも特に仲が良い。

アリーシャは手をひらひらと手を振り、フォローを口にする。

「過ぎたことはもういいニャ。それより無事、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の後継者のリンク様誕生を祝うニャ! 北部開発もリース隊長が抜けて、最初はまごついたニャが、今では落ち着いて順調ニャ。これでにゃー達も安泰ニャ!」

「後継者ね……」

「? にゃーは変なこと言ったかニャ?」

親友のミラの声音変化を敏感に感じ取り、アリーシャが首を傾げる。

ミラは暫し黙り込み自分の考えを纏めてから、口に出した。

「……リンク様が産まれたのはめでたいけど、スノー隊長、メイヤ隊長の出産も近いわよね。クリス隊長、ココノ隊長もまだだけど将来的には2人の赤ん坊が産まれるでしょ。もし皆のお子さんがリンク様同様に男子だったら、団長は誰を PEACEMAKER(ピース・メーカー) の後継者にするのかしら?」

PEACEMAKER(ピース・メーカー) は魔王を倒し、大陸を救った勇者で英雄のリュート・ガンスミスが立ち上げた名実とも世界一の 軍団(レギオン) である。

しかし PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長の座はひとつ。

下級貴族でも後継者争いは起きる。

そう考えれば、下手な王侯貴族より地位、名誉、権力などが高い PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長の座の争いが起きてもまったく不思議ではない。

「い、いや……いやいや。ミラの心配は分かるニャ。でも、隊長達の仲は凄く良いニャ。噂話でよく聞くような、貴族様の座を巡った争いみたいなのが起きるはず無いニャ……」

口にしながらも、アリーシャ自身、後継者の座を争う姿を生々しく想像できてしまった。

ミラが苦そうな顔で、酒精を飲み下す。

「普通に考えたら、長男のリンク様だけど……付き合いの長いスノー隊長にお願いされたら団長も断り辛くない?」

「……それを言い出したら団長はクリス隊長のご両親に奴隷から救われた恩があるニャ。それにメイヤさんだって、出会ってからずっと支援してきて結婚するまで長かったら『子供は~』って口にされたら団長も迷うはずニャ」

「あとココノさんとの子供は団長同様に人種族になるわけだから、2代目として内外含めて印象はいいわよね。体制に変化は無いっていう安定感、後継者感もあるし……」

ミラ、アリーシャは思わず嫁達の立場、関係性、恩や義理人情含めて、『将来、誰の子供が PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長の座つくのか』の意見交換をしてしまう。

皆、長所短所はあるが、決定打に欠けているとも言えた。

「「…………」」

2人は黙り込んでしまう。

ザワザワ、ガヤガヤと暫し2人の間を酒場の喧騒が埋める。

「……この話は危険だから止めましょう」

「そうニャ。それがいいニャ」

2人は黙って話題を忘れるように酒精を飲み干す――が、

「あっ、もう1人後継者を忘れていたわ」

「にゃ? 他に誰か居たかニャ?」

「……ルナちゃん」

「あー」

ミラの指摘に、アリーシャが納得した表情で同意する。

ルナは『ハイエルフ王国エノールの第3王女』にもかかわらず、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) に留まり武器・兵器開発、研究をおこなっている。

本人もそれらに嵌っていて、将来的にも国には戻らず PEACEMAKER(ピース・メーカー) で研究職につく気満々だ。

メイヤが妊娠を切っ掛けに一線を退いたせいもあるが、最近では『リュート・ガンスミスの右腕』と目されている。

ルナはハイエルフ族のため寿命が他種族より長い。

長期スパンで考えた場合、『勇者、英雄であるリュート・ガンスミスの技術を受け継いだ』彼女こそ PEACEMAKER(ピース・メーカー) の団長に相応しいという声があがってもおかしくはない。

「でもルナちゃん本人的に興味なさそうなのが問題かな?」

「だにゃー、団長になるより引きこもって研究・開発に没頭している姿が目に浮かぶニャ」

「なら、ルナちゃんと結婚した人が次の PEACEMAKER(ピース・メーカー) の団長候補ってことになるのかしら?」

「えぇ……将来的なことはともかく、次の世代ぐらいならその辺りは気にしなくてもいい気がするニャ」

『この話は止めよう』と口にしながらも、ついつい酒の勢いで話し込んでしまう。

2人の危険な会話は、酒場の喧騒に紛れ暫く続いたのだった。