軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第466話 軍オタアフター 男女逆では?

封印都市マドネスに眠る古代の魔王が、一時的に復活してしまう。

復活と言っても完全なモノではない。

魔王は完全な復活を一時的に諦めて一部だけを結界外に無理矢理押し出したのだ。

結果、魔王の左手の骨だけが地上に姿を現す。

左手のみとはいえ魔王は魔王。

この地に封印されている魔王は『練金、変質に特化した魔王で、5大魔王の中でも随一の不死性を持つ。彼の大陸に多種多様な魔人種族が存在するのも、この魔王の力のせいだ』とか。

現代兵器や攻撃魔術が当たっても別の物質に変化させられてしまった。

しかしタイガの 10秒間の封印(テンカウント・シール) &『腐敗ノ王』の力で魔王の力を一時的に封印。

オレやメイヤ、ルナが急遽製作した『大型ナパーム弾』を旦那様が投擲し、なんとか倒すことに成功した。

魔王の左骨は旦那様の魔力で変な反応をして強化された『大型ナパーム弾』の極炎に灰も残らず蒸発するが、現場に黒い塊が残った。

『腐敗ノ王』関係者曰く、力を一時封印され姿(骨)を保つことが出来ないほどダメージを受けたため、防衛本能が働きこの黒い塊に凝縮・生存を選んだとか。

後はこの塊を墓地穴の結界内部に放り込み、綻びを修正すれば今回の一件は解決らしい。

彼らは言葉通り、黒い塊(元魔王)を墓地穴へと運び結界外へと入れた後、綻びの修正作業に入る。

結界内部に居る魔王は新しいモンスターをけしかける余裕もないほど弱っているのか、結界の綻びを修正する作業をおこなっても何のリアクションもない。

どうやら問題なく、今回の一件が解決しそうだ。

ここまで来たらオレ達、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) に出来ることはもうない。

飛行船ノアに荷物を詰め込み撤退作業へと入る。

倉庫側で運び込む荷物の指示出しをしていると、ジオ・クライネルこと『腐敗ノ王』が顔を出す。

「お疲れ様です、勇者にして英雄殿。少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「どうもお疲れ様です、『腐敗ノ王』殿。何か問題でも起きましたか」

再び結果内部の魔王が動き出したのかと身構えたが、最初から 面頬兜(フルフェイス) を被っていない『腐敗ノ王』が美少女笑顔で否定する。

「先程結界の綻びを修繕することができました。これでもう魔王が蘇ることはありません。そのご報告に来たのです」

「わざわざありがとうございます」

「むしろお礼を言うのはぼくたちの方です。勇者にして英雄殿達が居なかったら、間違いなく魔王や魔物達を城壁外へと逃がしていましたから……。これだけよくしてくださったのに、緊急クエスト代金しか支払えず本当に申し訳ありません」

『腐敗ノ王』が笑顔を消し、深々と頭を下げる。

いくら魔王封印を担う一族だからと言って無限に資金が有るわけではない。

今回、緊急クエストに参加したオレ達や他冒険者達に支払う資金&経費は膨大な額になる。

さらに一部壊れた城壁や墓地穴建物などの復興など――お金がいくら合っても足りない状況だ。

ちなみに『大型ナパーム弾』の被害に関しては魔王を倒すためということで、既に無罪放免を勝ち取り済みである。

今回の緊急クエストでオレ達 PEACEMAKER(ピース・メーカー) は大活躍をしたが、どれだけ功績をあげても無い袖は振れない。

だから『腐敗ノ王』は、申し訳なさそうに頭を下げているのだ。

生臭い話をするなら、この緊急クエストの謝礼金&経費代の一部負担を足しても赤字である。

とはいえオレ自身は文句を言うつもりはない。

封印されている古代の魔王が復活するよりは被害が少ないし、圧倒的にマシだからだ。

また元々の原因はランスとララが遠因である。

なので PEACEMAKER(ピース・メーカー) としては多少の赤字くらいなら全く問題ない。

オレは笑顔を作り、

「気にしないでください。我々軍団が掲げる理念に従って行動したまでです。金銭の多寡など関係ありませんよ」

「さすが勇者にして英雄殿! 勇者、英雄とはやはりなるべくしてなる者なのですね!」

彼は美少女顔を興奮気味に赤らめ、瞳を輝かせて距離を縮めてくる。

微苦笑を作りつつ一歩後退った。

オレにその手の趣味はないから勘弁して欲しい。

「リュート・ガンスミス、ちょっといいかしら? ……忙しいようならまた後でしておくけど」

『腐敗ノ王』が興奮気味に詰め寄ってくると、再び客が顔を出す。

タイガ・フウーが旅マントに荷物を手にした姿で声をかけてきたのだ。

彼女の格好を目にすると、すぐに用事の内容を理解した。

「いや、大丈夫。話はすでに終わっているから。それよりタイガ、もう旅に出るのか?」

「ええ。緊急クエストの報酬ももらったしね。食料や衣類とか必要な物を融通してもらってありがとうね」

「お礼なんていらないよ。別にたいしたことじゃないから」

オレ達はもう獣人大陸ココリ街に戻るだけだ。

食料や衣類など荷物を減らすことが出来て逆にありがたいぐらいである。

またタイガは今回の一件で 防毒マスク(ガスマスク) を気に入ったのか、予備を含めて2つほど欲しがった。

断る理由もないため、素直に彼女へと融通済みだ。

「あ、あのタイガ殿……」

オレとタイガの会話が一区切り付くと、『腐敗ノ王』が満を持して彼女へと声をかける。

『腐敗ノ王』は先程オレに詰め寄ったのとは違う理由で頬を赤く染め、瞳を潤ませモジモジと体を揺すっていた。

どうも彼は魔王退治の際、『大型ナパーム弾』から救ってくれたタイガに好意を抱いているらしい。

端から見れると丸わかりだ。

「旅に出るというお話ですが……もし永住の地をお探しなら、こ、この街に住みませんか? タイガ殿ほどのお方なら皆喜んで賛成くれますし、ぼ、ぼくも居てくださると大変心強いですから……」

「悪いけど断らせてもらうわ。貴方達が魔王の封印を維持・監視する使命があるように旅をする目的があるから」

一方タイガは彼の好意になどまったく気付かず、一刀両断で要望を斬って捨ててしまう。

彼女は真剣な表情で拳を固く握りしめ、怨嗟に満ちた声音を漏らす。

「今回戦った魔王――いえ、あの魔王以上の存在をどうにかするための方法を探さないといけないから」

「あの魔王以上ですか!? まさかタイガ殿がそんな使命を帯びていたなんて……」

タイガの台詞に『腐敗ノ王』が息を呑む。

実際はエル先生の妹であるアルさんをどうにかする方法を探しているだけだ。

オレやタイガにとってはある意味で魔王より厄介な存在なのは確かのため、間違ってはいないが……。

彼は同じ魔術師S級のタイガも自身に似た使命を帯びていると誤解したらしい。彼自身も封印都市マドネスから動くことはできないため、彼女を引き留められないと表情が語っていた。

それでも諦めきれないのか、僅かに躊躇った後、憂いを帯びた美少女顔で改めてタイガへと向き合う。

彼はまるで恋する乙女のごとく、祈るように手のひらを組ながら願った。

「そういう理由があるのなら引き留めることはできませんね……。で、ですがもし使命をまっとうした後、良かったらこの街に永住して頂けないでしょうか?」

「え、やだ」

一瞬の躊躇いもなくタイガは拒絶する。

魔術師S級『腐敗ノ王』のことジオ・クライネルは、今まで一番ダメージを受けたかのように絶望した表情を浮かべる。

どうやらタイガは完全に彼の好意に気付いていないらしい。

個人的にタイガは知り合いで友人だが、ジオの扱いがあまりに酷すぎる。

男としてジオを慰めたくなるほどだ。

「挨拶も済んだし、そろそろ行くわ。リュート・ガンスミス、またね。吉報をまっていなさい」

タイガは落ち込んでいる『腐敗ノ王』を放置して、背を向けると振り返りもせず歩き出す。

さすがにこのまま『さようなら』は問題があるだろうと、彼女を呼び止めようとするとタイガの足が止まる。

彼女は面倒臭さそうに溜息を漏らすと背中越しに振り返り、

「永住はできないけど、暇になったら遊びに来るわ」

「!? ま、待ってます! ずっと待ってますから!」

この言葉に絶望し項垂れていたジオは頭を上げ、乙女顔で叫ぶ。

タイガは彼の返事を聞くと軽く手をあげ再び歩き出した。

ジオはその背中を潤んだ瞳で見送る。一時の別れに胸を裂かれながら、再び出会えることを信じて涙を流さず飲み込む。

(ある意味、感動的な場面なんだろうけど……これ男女が逆じゃないか?)

オレだけではなく、飛行船ノアに荷物を積み込む作業をしていた団員達も似たような視線をジオへと向ける。

しかし彼はオレ達の視線に気付かず、1人自身の世界に浸っていた。

さらに問題はタイガ自身、彼の好意に全く気付いていないことだ。

彼女の反応はギギさんがタイガの好意に気付かなかった時の態度に似ている。

本人は意図してやっている訳ではないだろうな……。

(タイガとジオ、『腐敗ノ王』……ボーイッシュ系と男の娘系で相性は意外といいのか?)

互いに魔術師S級のため外聞や立場的にも問題はない。

もしかしたらアルさんをどうにかして、気持ちに余裕が出来たら2人は付き合い出すのかもしれないな。

オレは未だにタイガとの別れに浸るジオこと『腐敗ノ王』を眺めながら、2人が付き合い・結婚する未来をつい想像してしまったのだった。