軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第451話 軍オタアフター 新婚旅行の終わり

レシプロ機(擬き)の残り魔力がそろそろ底を突きそうになる頃、無事に湯の町リリカーンへ帰還することができた。

港には地元民だけではなく観光客や冒険者達まで詰めかけている。

今日が漁場を占領しているクラーケン退治の日だと知って、一目オレ達の姿を見ようと集まったのだ。

観光地のせいか商売人の性か、港のあちこちには集まった人達に商品を売る売り子や屋台が並んでいて、一種のお祭り状態と化している。

オレ達は手を振りながら、レシプロ機(擬き)で 白銀邸(はくぎんてい) へと向かった。

反跳爆撃作戦が上手くいったからよかったが、もしこれでクラーケン討伐に失敗していたら PEACEMAKER(ピース・メーカー) の名に傷がつくのは避けられなかっただろう。

新人受付嬢は本当に余計な問題を起こしてくれたものだ……。

――ちなみに後日、撃破したクラーケンの巨体が湯の町リリカーンで解体される。

『レシプロ機(擬き)のどこにも積んでいなかったのに、どうやって運んだのか?』という話題が一時町で話題になったが、クラーケン解体を前にすぐに沈静化したらしい。

もちろんリースの『無限収納』で運んできたのだが。

クラーケンは完全な状態で運ぶことは不可能だった。

各種爆弾で吹き飛ばしたため、胴体は半壊、触手も半分は海中へと沈んでしまった。

とはいえクラーケンなど自然死以外では滅多に出回らない貴重なもの。

冒険者斡旋組合(ギルド) 側は迷惑料込みの高値で買い取ってくれた。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) の会計担当である3つ眼族のバーニー・ブルームフィールドがほくほく顔だったことから、相当な金額だったと推測できる。

白銀邸(はくぎんてい) に戻ってきたオレ達は、レシプロ機(擬き)を『無限収納』にしまった後、部屋で待っていたスノー、クリス、メイヤと合流する。

互いに無事を喜んですぐ、馬車を準備してもらい湯の町リリカーン 冒険者斡旋組合(ギルド) 支部へと向かう。

冒険者斡旋組合(ギルド) 支部へ着くと、再び個室へと通された。

挨拶もそこそこに先輩受付嬢と新人受付嬢が頭を下げる。

「今回はご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした」

「申し訳ありませんでした!」

「頭を上げてください。とりあえず誰も傷を負わず、死者も出さず無事にクラーケンを倒すことができたのですからよしとしましょう」

本当は色々文句や抗議もしたいところだが、すでに終わったこと。

それにあまり追いつめて『 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長が受付嬢をいびっていた』なんて脚色されても対応に困る。

オレの返答に顔を上げた新人受付嬢があからさまにホッとした表情を作る。

一方、先輩受付嬢はというと――。

「過分なお言葉ありがとうございます。ですが、安易に許されるほどこの子の罪は軽くありません。なので一年間の減給と私自ら彼女の指導につきたいと考えております。二度とこのような事が無いよう改めて教育しなおす所存です」

先輩受付嬢の言葉に新人受付嬢が安堵の表情から一転、青くなる。

これから行われる新人教育の厳しさに顔色を悪くしているようだ。

そんな彼女の表情を前にして、オレ達は思わず微苦笑を漏らしてしまった。

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クラーケン退治をしたばかりのため、疲れが溜まっている。

話を終えると早々に席を立ち宿へと戻った。

本来であれば 白銀邸(はくぎんてい) から今日出立するはずだったが、クラーケン問題があったため宿泊期間を延長する。

延長分の支払いをしようとしたが、 白銀邸(はくぎんてい) 側から町を救ってくれたお礼ということで一泊分無料にしてくれると申し出てくれたのだ。

この申し出にオレ達はありがたく受けた。

正直に言えばクラーケン退治が決まってから、オレとメイヤはレシプロ機(擬き)の予備部品組み立て、反跳爆撃用爆弾の研究&開発にかかりっきりで、ココノも爆撃練習で疲労が溜まっていた。

温泉にも満足に入る時間がなかったので、彼らの申し出は本当にありがたい。

翌朝、早朝。

朝靄が立ちこめる中、リースの『無限収納』から出したクラーケンを 白銀邸(はくぎんてい) 警備員達が荷台に載せて運び出す。

解体所は狭すぎるため、海水もある浜辺で解体作業をおこうなうらしい。

オレとリースは、運ばれていく姿を見送った後、あくびをして再び寝床へと戻る。

結局、オレ達が眼を覚ましたのは昼を大分過ぎた頃だった。

朝食兼昼食を摂り、帰り支度を済ませると馬車で町の外まで送ってもらう。

馬車の窓から湯の町リリカーンの様子を窺うと、町に活気が戻っていた。

一時はクラーケンのせいで町に活気がなくなってしまった。

反跳爆撃開発時、気分転換も兼ねて一度町へと下りた時は大通りに人気は少なく、店も疎らに開いているばかり。

一番酷いのは港で、沖に出られない漁師達が暗い顔で酒精をあおっていた。

現在は、漁師達が威勢良く捕ったばかりの新鮮な魚介類を売りさばき、砂浜ではクラーケン解体の様子をみるべく大勢の人々が集まっている。

観光客達も土産物屋で金銭を落としていく。

再び町に活気が戻ってよかった。

こういう光景を見ると、自分達が頑張った甲斐があったと強く思う。

湯の町リリカーンを出た後、馬車は止まらず移動する。

最初にオレ達が降り立った広場まで馬車で送ってもらうのだ。

広場に辿り着くと、飛行船ノアを『無限収納』から出す。

飛行船ノア左翼は相変わらず破損しているため、飛行速度は従来に比べて圧倒的に遅い。

とはいえ、一般的な飛行船に比べればまだ速いほうだ。

オレ達は飛行船ノアに乗り込むと、馬車で送ってくれた 白銀邸(はくぎんてい) 警備兵士達に手を振り、ハイエルフ王国エノール領地を後にしたのだった。

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「はぁ……疲れたな」

「ですね」

新・純潔乙女騎士団本部。

オレ達が私室に使用しているソファーでスライムのようにぐったりとしながら1人呟く。

その独り言を隣に座るリースが耳にして同意の声をあげた。

湯の町リリカーンを後にして3日。

左翼が壊れた飛行船ノアに乗って無事に獣人大陸、ココリ街へと戻ってくることができた。

団員達はオレ達の帰りが遅いのを心配しており、戻ってきたら飛行船ノアが壊れている。

『いったいなにがあったのか!?』と本部が騒然となった。

詳しい説明はシアに任せて、オレと妻達は私室へと戻ったのだ。

「まさか町に受付嬢さんの親戚がまた居るなんて……しかも、そのせいかどうかは分からないけど、クラーケンと遭遇するし。とんだ新婚旅行だったな」

さらに新型飛行船ノアまで破損された。

修理代はクラーケンの素材があるため十分補填できるが、問題は飛行船ノアを修理しなければならないため、その間使用できないことだ。

この世界で飛行船ノアほど速力、航続能力、輸送能力などが高い飛行船は存在しない。

それが当分使えないのは痛い。

「……でも無事にクラーケンを倒せて、町に活気が戻ってよかったよ」

オレの隣に座るリースとは反対側に居るスノーがしみじみと呟く。

正面ソファーに座るクリス、ココノもスノーの言葉に同意するように無言で頷いた。

今回の一件は PEACEMAKER(ピース・メーカー) の理念――『困っている人、救いを求める人を助ける』に合致した、ある意味手本のようなクエストだった。

無事、クエストを達成でき、自分達の眼で活気を取り戻した町を見ることができた。

スノーの言葉通り、新婚旅行は酷いものになったが、町が元通りに戻って本当によかった。

だが、新婚旅行の殆どをクラーケン退治に費やしたのは事実。

一生に一度の思い出がこれではあんまりだ。

「折角だから新婚旅行をやり直すか? 明日明後日ってわけにはいかないが、日を改めてもう一度やり直しても罰はあたらないと思うぞ?」

オレの提案に妻達は喜びではなく微妙な反応を示す。

上座に置かれた1人掛けソファーに座ったメイヤが代表して答える。

「お気持ちは嬉しいのですが暫く旅行は十分かと……」

「また旅行に行った先に受付嬢さんの親戚が居るかもしれないしね……」

メイヤの言葉にスノーが付け足す。

オレは2人の言葉を否定できず黙り込んでしまう。

リースがフォローするように話す。

「それにやっぱり我が家が一番ですから」

旅行から帰ってきた定番台詞をハイエルフの口から聴き、思わず苦笑を漏らしてしまう。

確かにリースの言う通りだ。

旅行に行くのも楽しいが、やはり我が家であるココリ街、新・純潔乙女騎士団本部が一番過ごしやすい。

リースの言葉を体現するように自宅にいる安心感から正面ソファーに座るクリスとココノは旅行の疲れが出たのか、互いの体を支えにいつの間にか眠っていた。

オレは2人が寝入ったのに気付き、起こさないようにそっとソファーから立ち上がり毛布を取りに向かう。

湯の町リリカーンや 白銀邸(はくぎんてい) で過ごした時間もよかったが、やはりこうして自室でのんびり過ごすほうが性に合っている。

シアが夕飯の時間を告げに来るまで、眠ったクリスとココノを起こさないよう静かに談笑した。

こうして新婚旅行は終わりを告げたのだった。