軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

連続更新SS 団員達の居酒屋話

「いらっしゃいませ! 空いている席へどうぞ!」

酒場に入ると元気なウェイトレスの声が響く。

彼女達、新・純潔乙女騎士団団員、二名が休みを利用し、夜、息抜きのため酒場へと繰り出す。

「お姉さん、酒精と唐揚げ、まよねーず多めでお願いしますニャ!」

「私も酒精に唐揚げ3人前、ポテトチップスに、タルタルソースのフライドポテトで」

「はい、ありがとうございます!」

「……相変わらず小柄な割に食べるニャ」

「ラヤラ団長と比べたら小食よ、小食」

「ラヤラ団長は別格ニャ。焼き肉屋で、全種類10皿ずつ食べた強者ニャよ」

「いやいや、全種類10皿ずつって普通に考えて嘘でしょ」

新・純潔乙女騎士団団員二名。

語尾に『ニャ』を付けるのは、獣人種族、 猫人(ねこびと) 族のアリーシャ。

猫人族というだけあり、猫の獣人で猫耳と尻尾が特徴である。

彼女の向かい側の席に座ったのが、人種族のミラだ。

ミラはアリーシャの指摘通り同世代に比べて背が低い。童顔で胸も小さく、栗毛の髪をお下げに結んでいるためか、見た目以上に若く見られる。

2人は純潔乙女騎士団へ同時期に入団した。

所謂、同期である。

性格、波長も合うため 軍団(レギオン) でも特に仲が良い。

注文の品がテーブルへと並ぶ。

2人は酒精が入った木製のカップを重ねると、互いに口を付ける。

酒精は早々にアリーシャは熱々の唐揚げにマヨネーズをたっぷりと付けて被りつき、酒精で流し込む。

「美味い! 美味すぎるニャ! 唐揚げとまよねーずを作り出したウチの団長は天才ニャ!」

以前、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長であるリュート・ガンスミスが『ウォッシュトイレ資金』を溜めるため一時的に店を開いた。

その時の料理メニューが好評で、現在はココリ街の酒場に広がっている。

もちろん軍団会計の3つ眼族のバーニー・ブルームフィールドが、アイデア料を店から幾ばくかもらっているとか、いないとか。

下っ端団員の2人はそんな上の話など気にせず、久しぶりの休みで羽根を伸ばしていた。

「アリーシャって本当に唐揚げ好きよね」

「好きじゃなくて大好きニャ! 絶対にウチの両親や弟や妹も大好きになるはずニャ!」

すでに唐揚げの山を半分ほど食べたミラが、声量を落として問う。

「あのさ……ウチの団長って本当に『人間』なのかな?」

「突然、何言い出すニャ。もう酔ったのニャ?」

「この程度で私が酔う訳ないでしょ」

ミラは健啖家で、酒精も強い。

食事量ではラヤラには負けるが、酒精量なら勝てると自負している。

ミラはフライドポテトにたっぷりとお気に入りのタルタルを付けて、食べながら話を続けた。

「だってウチで使っている魔術道具――AK47をリュート団長は子供の頃に作ったって話でしょ。魔術道具だけじゃない。リバーシをはじめとした玩具やこの新しい料理まで作ったんだよ? 天才とか、優秀とかの枠を超えているでしょ。ただの人間にできることじゃないわよ」

「ただの人間じゃないなら、何者なのニャ?」

ミラは『よくぞ聞いてくれた!』というドヤ顔で告げる。

「私の予想じゃ千年は生きたハイエルフ族の賢者様ね。長い間ずっと研究をしていたからAK47やリバーシ、料理とか色々凄いのよ。だからハイエルフのお姫様のリースさんをお嫁さんにもしているのよ」

「お姉さん、唐揚げと酒精お代わりニャ」

「ちゃんと話を聞きなさいよ! 私も唐揚げと酒精追加!」

「まだ食べるニャんて……」

ミラの目の前にあった料理は全て無くなっていた。

アリーシャは彼女の食欲に呆れてしまう。

注文を終えて改めて、彼女は向き合った。

「リュート団長がハイエルフの賢者様ニャ~。どこからどう見ても人種族にしか見えないニャ」

「それは魔術道具で姿を変えてるからでしょ」

「だからってわざわざハイエルフ族が、人種族に姿を変える意味が分からないニャ。それが本当だとして、ハイエルフ族のリースさんを嫁にしたら意味が無いニャ」

「それはそうだけど……」

ミラはすでに飲み干した酒精の木製カップを両手で弄る。

ウェイトレスが追加注文と空き皿を交換した所で、アリーシャが尋ねた。

「ミラはリュート団長のことが嫌いニャ?」

「なんでよ」

「だって、人種族じゃないとか疑ってるからニャ。もしくは怖いニャ?」

「嫌いでも、怖くもないわよ。リュート団長には純潔乙女騎士団を救ってもらった恩義もあるし、優しいし、優秀な人だし、愛妻家だし。むしろ尊敬してるわよ。訓練は厳しいけど」

ミラは新しい酒精を一息で半分ほど飲んでしまう。

アリーシャは新しい唐揚げと酒精を堪能しつつ、同意した。

「確かにリュート団長には恩義もあるし、尊敬してるニャ。力があるのに威張らないし、無理難題を押しつけないし、奥さん達に隠れて夜呼んだりしないニャ。訓練は厳しいけどニャ」

団員間でのリュートの評判は彼が考える以上に高い。

純潔乙女騎士団を救ってくれた恩義もあるが、力がある 軍団(レギオン) にも関わらず威張らずに、団員達に差別なく接してくれる。

食事も彼女達と同じ物を食べ、同じように仕事をして、無理難題を押しつけない。

さらにこの異世界、リュートクラスの権力者にエッチな行為――軽いセクハラ、場合によっては肉体関係を強引に迫られたら泣き寝入りするしかなかった。

特に団員達は、貧しい農村出が多い。

村にも戻れず、他に資金を稼ぐ当てもない。

冒険者で稼げるほどの技量もなく、後は文字通り体を売るしかなくなる。

だったら、ある程度、何をされても我慢した方がマシだった。

当時、純潔乙女騎士団特別顧問ガルマは、年齢が高く、愛妻家で娘&孫命だったので団員達も変な要求をされないと安堵していた。

なのでリュートが新・純潔乙女騎士団を受け入れた際、団員達は別の意味で緊張感を持っていた。

蓋を開けてみたら、心配することはまったくなかった訳だが。

「しかも、衣食住のお金を天引きされず、技術指導もしっかりしてくれる上、お給料ももらえるなんて最高ニャ。お陰でウチに仕送りも出来て、にゃーの兄弟、姉妹を身売りさせずに済んだニャ」

純潔乙女騎士団時代は、衣食住全て給金から引かれていた。

故に彼女達の手に残る金はまさに雀の涙だ。

しかし、現在は天引きもなくしっかりと給金が支払われている。

「にゃーは別にリュート団長が人種族でも、 妖精種族(ようせいしゅぞく) でもついていくつもりニャ。ここは最高の軍団で、リュート団長は理想の団長ニャ。後、唐揚げあるから最高ニャ」

ぐびりとアリーシャが喋って乾いた喉を酒精で潤す。

ミラはそんな彼女を前に居心地悪そうに追従する。

「わ、私だって、リュート団長は尊敬してるって言ったでしょ! 当然、最後まで団長についていくわよ!」

「うんうん、それがいいニャ。賢明ニャ」

アリーシャはほろ酔い状態で、ミラの言葉に適当な相づちを打つ。

だが、突然、表情を引き締めた。

「でも、ウォッシュトイレだけは理解できないニャ」

「同感」

ミラも彼女の台詞に即座に同意する。

「ウォッシュトイレの使い心地はいいけど……改良点やノズル位置、使い心地とか聞いてくるの勘弁して欲しいよね」

「にゃー達の反応を見て楽しむとかじゃなくて、純粋に技術者として冷静に意見を聞いてくるから始末が悪いニャ。あの人、どうしてトイレにあそこまで真剣になれるニャ? 人生懸けてる勢いニャよ?」

「分かる訳ないでしょ、私達のような凡人にリュート団長の頭の中なんて」

「まぁー完璧超人より、一つぐらい欠点があった方が親しみが持てていいことだけどニャ」

アリーシャはマヨネーズまみれの唐揚げをほおばる。

ミラは彼女の言葉に同意するように、頷きながら無言で酒精の一滴もまでも飲み干し、新たに追加の注文をする

こうして少女達の息抜きの時間が更けていく。