軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第315話 被害状況の確認

旦那様の協力による『マジック・バンカー・バスター』により魔王レグロッタリエの根城であるグラードラン山が崩壊。

黒煙結界(ネグロ・ドィーム) も、あたかも最初から無かったように霧散してしまった。

高々度からパラシュートも無しで飛び降り、『マジック・バンカー・バスター』を投げつけた旦那様はどうなかったと言うと―― 黒煙結界(ネグロ・ドィーム) 内部で待機していたギギさん&タイガに無事に保護されていた。

オレ達も飛行船ノア・セカンドを旦那様達の元へと近づける。

飛行船を下りると、旦那様はいつもの豪快な笑顔で出迎えてくれた。

「ははははははあ! どうやら作戦は上手くいったようだな! さすがリュートの作り出した魔術道具。たいした威力だ!」

「いえ、むしろ今回は旦那様のお力添えがなければ、どうにもなりませんでした。自分がやったことなど本当にささやかなものです」

「リュートよ、謙遜はもちろん必要なものだが、し過ぎるのもどうかと思うぞ。もっと自分の功績に対して胸を張るがいい!」

旦那様の言葉にオレは苦笑いを浮かべる。

謙遜なんかではない。

本当にオレがやったことなど投擲用の『マジック・バンカー・バスター』をメイヤ&ルナと一緒に用意しただけだ。

黒煙結界(ネグロ・ドィーム) を破壊したのはどう贔屓目に見ても、旦那様の功績である。

「しかし我輩もまだまだだな。着地に失敗し怪我を負い、足を挫いてしまうとは。魔力もほとんど使い切ったせいで治癒もできなかった。もしギギとタイガ殿が助けてくれなければ満足に歩くこともできなかっただろう。二人ともあらためて礼を言うぞ!」

ギギさん&タイガは、旦那様のお礼に微妙な笑顔で返す。

気持ちは分かる。

高々度から落下し、あんな攻撃をしておいて擦り傷と足を挫く程度で済むなんでどう考えてもおかしい。

しかもギギさんは、旦那様よりは低いところからとはいえ同じように飛び降りている。その際、着地の衝撃がどれほどのものか文字通り身をもって知っているはずだ。

なのに足を挫く程度で済んでいるとか、どう考えてもおかしいだろ!

確か前世、日本のとある陸上自衛隊隊員が、降下訓練中にパラシュートが十分に開かず落下。

しかしその隊員は、300m以上上空から落ちたにもかかわらず無傷で訓練を続行したという話を思い出した。

当時、『いつからサイボーグ技術が完成していたんだ?』と思わずツッコミを入れた覚えがある。

いや、本気で、心の底から、凄いと思うけど。

桁が違い過ぎて理解が追いつかないのだ。

旦那様に対してもそんな感情抱いてしまう。

ちなみに聞いた話では第二次世界大戦、当時のソ連が日本に侵攻した際、下が雪だからと言って兵士がパラシュートを付けず飛び降りたらしい。

結果、部隊が全滅したとか。

そんな雑学を思い出していると、旦那様が反省した台詞を告げる。

「我輩もまだまだトレーニングが足りないようだ! 今回の一件が終わったらトレーニングメニューを増やさなければな!」

「師匠、その際は是非、私にもお付き合いさせてください!」

「ははははっはあ! もちろんだ! 一緒に筋肉を育てよう!」

ウイリアムが参加を願うと、旦那様はいい笑顔で同意する。

ちなみになぜウイリアムがオレ達と一緒に行動しているかというと、『師匠の雄志を間近で見て勉強したい!』と言い付いてきたのだ。

あまり身内以外に手の内を明かしたくないのだが、旦那様が豪快に笑い許可したので断る訳にはいかなくなった。

しかし普段見ている以上の筋肉トレーニングをするって……あれ以上したらむしろ逆効果じゃないのか?

むしろあのトレーニングに付いていき、さらに特別トレーニングにも参加しようとしているウイリアムの正気を疑う。

よくよく見ると、分類すれば細マッチョだったウイリアムが全体的に厚みを増している気がする。

まだ短い時間とはいえ、旦那様のトレーニングに食らいついているだけはある。

集まっていたオレ達の元にレシプロ機で飛んでいたリース&ココノが合流。

レシプロ機を『無限収納』に仕舞い、装備を調える。

魔力を使い果たしている旦那様、非戦闘員のココノ&メイヤ、遠距離担当のクリス、火力担当のリースにも飛行船ノア・セカンドに乗ってもらう。

地上に残ったオレ達は『マジック・バンカー・バスター』により破壊されグラードラン山へ、魔王の生死を確認しに向かう。

完全な不意打ち攻撃だったのと、地下道だろうが破壊する威力だったため、逃げる隙はなかったはずだ。

武器を構え慎重に近づく。

地上から徒歩でグラードラン山へ近づくと、より一層威力の凄まじさを実感した。

爆心地は大小岩石や砂、破片などの山に変わっていた。

側に結集していた魔王配下達は衝撃波と岩石の雪崩に巻き込まれ粉々、または下敷きに。

ボーン・ドラゴンさえ逃れられず、1匹残らず全滅である。

(この破壊力、バンカー・バスターの威力を確実に超えているだろう……。むしろ『神の杖』レベルじゃないか?)

『ロズ・フロム・ゴッド』――『神の杖』とは核に代わる次世代の兵器として開発・研究中の代物である。

低軌道上にある人工衛星から、タングステンやチタンなどの金属棒を発射。

巨大な運動エネルギー弾として地上を攻撃する兵器である。

『核兵器に匹敵する威力』と言われているが、実際のところそこまで威力はない。

しかし、『神の杖』とほぼ同種の兵器にヘルストーム――『地獄の嵐』というものがある。

ヘルストームは『神の杖』にも使用されているタングステンを、約2万平方メートルに数千発落とすという兵器である。

ここまで来ると下手な核兵器より質が悪い。

話を戻す。

だが、改めてグラードラン山の惨状を目の前にすると、『神の杖』の威力を超えている気がする。

もしかしたら『核兵器』クラスの威力に到達しているかもしれない。

……つまり旦那様は条件さえ整えば、『核兵器』クラスの攻撃が可能ということか?

どんなチートキャラだよ!

オレは思わず片手で両方のこめかみを押さえる。

「リュートくん、大丈夫? 頭痛いの?」

近くに居たスノーが心配そうに声をかけてくる。

「大丈夫、ちょっと自分の常識と目の前で起きた事象の摺り合わせに混乱しているだけだから」

「? そう。もし痛かったら無理せず、飛行船で休んでね」

オレの言葉にスノーは首を捻りつつも、心配そうな声音を残し警戒に戻る。

彼女が警戒に戻ると――ちょうどグラードラン山のほぼ中心地が、内側から爆発するように大小岩石を飛び散らせる。

「……ッ!」

もちろんこんな芸当ができるのは1人しかない。

爆発の中心から、魔王レグロッタリエが姿を現す。

『くそがぁぁあァァぁぁああアアっッッ!!』

さすがの魔王レグロッタリエも瀕死の重傷を負っていた。

右顔の3分の1から半分が削り取られ、左足が欠損。それを補うようにエイケントが取り込まれている最中だ。

それでもエイケントにまだ意識はあるようで、魔王の右顔に張り付きながら口をぱくぱくと動かし助けを求めているようだった。

正直、目を背けたくなるほどグロイ。

むしろあんな攻撃を受けて生きていることに驚く。

オレ達はすぐさま臨戦態勢を取る。

だが、魔王はそんなオレ達を意に返さず、怒り狂った声で非難してきた。

『ふざるなよ、貴様ら! いくら 黒煙結界(ネグロ・ドィーム) に手も足も出ないからって、核を使うとか馬鹿じゃねぇのか! 剣と魔法の世界でそんなもん使うんじゃねぇぇぇよ! クソがぁああああぁあッッ!』

「…………」

魔王レグロッタリエは体を再生しながら滅茶苦茶キレていた。

最初は体を再生するための時間稼ぎとも思ったが、だったら治癒が終わるまで隠れていればいい。

むしろオレ達が近づいてきたことに気が付き、文句を告げるためわざわざ出てきたようだ。

気持ちは分かる。

絶対に安全な地下城に居たと思ったら、次の瞬間衝撃と共に天井が崩れ内側から爆発。

魔王が持つ耐久力のせいで、意識を保ったまま強烈な爆発と衝撃波を味わうはめになった。

その爆発力から彼は『核兵器』を使用されたと勘違いしたのだろう。

『核』云々と騒ぐレグロッタリエに、スノー達は皆一様に『?』を浮かべていた。

魔王がキレている理由を十全に理解できるのは、この場ではオレしかいないだろうな。

しかも悲しいことに、『核兵器』は使用していない。魔王の勘違いである。

オレ達が使用したのは『マジック・バンカー・バスター』で、想定以上の威力になったのは旦那様のせいだ。

オレ達は何も悪くない。

旦那様の筋肉がある意味原因である。

そのことを魔王に説明しても理解するのは無理だろう。

第一、わざわざ説明してやる必要もない。

魔王はキレ、叫び続ける。

『もう少しで軍の準備が整って、帝国に攻め入ることが出来たんだぞ! 軍と共に帝国へと攻め入って殺害した魂を使い 黒煙結界(ネグロ・ドィーム) を広げる速度をあげ、妖人大陸全土を飲み込む予定だったのによぉおおっ! 邪魔をしやがって、このクソ共がぁぁあああぁアアッ!』

魔王の言葉を信じるなら、このタイミングで『マジック・バンカー・バスター』の発想にいたり、攻撃を加えられたのは僥倖だ。

帝国に攻め入る魔王軍を撃退するのは、こちら側に旦那様が居れば難しくはない。

だが攻められれば、確実に死傷者が出ていたはずだ。

無駄な血が流れずに済み本当によかった。

『殺してやる! 殺してやるぞ! 人間共ぉおおッ! ぐちゃぐちゃの挽肉にして帝国上空からばらまいてヤルッ!』

「誰が殺されてやるもんか。こっちこそいい加減、オマエを倒して引導を渡してやるよ!」

オレは手にしている愛銃のAK47を構える。

周囲に散らばるスノー達や上空で待機している飛行船ノア・セカンドからも戦闘準備を終えた気配が伝わってくる。

魔王レグロッタリエとの最後の戦いの火ぶたが切って落とされた。