軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第314話 想定外

レシプロ機が限界高度まで上昇する。

前席にはパイロットのココノ、後部座席にはリースが座っていた。

レシプロ機は通常のモノではなく、本体の下に籠が無理矢理セットされている。

なぜならその籠の中にダン・ゲート・ブラッドが収まっているからだ。

本来であれば彼もレシプロ機内部に座らせるべきなのだが、あいにくスペースが無い。 苦肉の策としてこのような形になってしまった。

雲を抜けるとそこは真っ青な青空が広がっている。

現在、飛んでいるレシプロ機のほぼ真下に黒毒の魔王レグロッタリエが根城にしているグラードラン山が存在する。

ココノは、無理矢理上昇したレシプロ機を水平に保つ。

通常の機体であれば旋回などしなければその場に留まることはできないが、この機体は魔石によって浮遊している。

そのためヘリコプターのように一ヵ所にじっと滞空し続けることができるのだ。

リースが腕を伸ばし、『無限収納』からあるモノを取り出す。

それは大きな杭のようなモノだった。

一目で重量があると分かる杭のようなモノは、『無限収納』から解放されると一瞬だけ滞空。

すぐに自らの重力に引かれ、落下を始める。

リースは自らの仕事を成し遂げると、レシプロ機の下に待機しているダン・ゲート・ブラッドへと告げる。

「ご武運を!」

「ははっははっはは! 後は任せよ! とう!」

ダン・ゲート・ブラッドは迷わず籠から飛び出し、落下を開始する杭にしがみつく。

「ふん!」

彼は杭にしがみつくと、足の裏を爆発させ速度を加速。

前回の対魔王戦で 爆発反応装甲(リアクティブ・アーマー) のような全身を覆う魔力の壁を自ら爆発させることで攻撃に転用していた。

今度はそれを攻撃ではなく、加速するための推進力に転用しているのだ。

一度では終わらない。

何度も何度も魔力を注ぎ込み、継続的に爆発させ速度を加速させる。

分厚い雲に触れると、速度、はたまたダン・ゲート・ブラッド自身の熱量のせいか、雲は一部消失してしまう。

加速はまだまだ止まらない。

すでに音速を突破。

空気の壁を突き破り、ソニックブームを巻き起こし、摩擦熱で赤く発熱する。なのにダン・ゲート・ブラッド本人は 爆発反応装甲(リアクティブ・アーマー) で守られているせいか余裕綽々の表情を浮かべていた。

まるで彗星のように、杭は高速でグラードラン山へと突撃する。

しかしこのままでは流石にダン・ゲート・ブラッド本人ごと激突してしまう。

彼は落下の途中で、杭の底部へと右手を支える。

右手に力を込めたのか、筋肉が膨張。

魔力も注がれ尋常ならざるエネルギーを発している。

ぼこぼこと右腕の筋肉が血管を浮かべ、深い渓谷を作り出す。

「ふんぬばぁああッ!」

気合い一閃!

杭はさらに速度を加速させ、レーザー光線のごとくグラードラン山へと真っ直ぐ突き刺さる。

杭は魔王城化していたグラードラン山へと深く、深く食い込み――最後は内側から大爆発を起こす。その爆発は今まで PEACEMAKER(ピース・メーカー) が作り出してきたどの兵器よりも激しい爆発を伴っていた。

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バンカー・バスターという兵器の名前は、軍事に興味が無い人でもテレビニュースやネット、映画などで耳にしたことがあるだろう。

英語で書くと『Bunker Buster』。

地下塹壕(バンカー) を破壊するための兵器である。

では、それは一体どんな兵器なのか?

第二次世界大戦時中、イギリスが地下施設破壊を目的として開発したのが始まりである。

バンカー・バスターの祖となるのがグランドスラム(Grandslam)とトールボーイ(Tallboy)と呼ばれる二つの超大型爆弾だ。開発者はバーンズ・ウォリス。

どちらの爆弾も地中深く貫き入ってから爆発して強烈な衝撃波を生み出し、地中内部にある施設を根こそぎ破壊するものだ。

トールボーイ(Tallboy) の重量は約5400kg。

炸薬は約2360kg。

高度5500mから投下するとほぼ音速(時速約1200km程度)へと達し、地中へとめりこみ、その後遅延信管によって炸薬が爆発し、地下施設を破壊するのだ。

トールボーイ(Tallboy) は1944年6月に初めて使用され、第二次世界大戦が終わるまで多数投下された。

ちなみに グランドスラム(Grandslam) は、重量が約10トン。炸薬量は約5トン。トールボーイが戦果をあげたことによって、バーンズ・ウォリスの手によってさらに大型化したものが開発され、陸橋や潜水艦の基地等の破壊に使用された。

そして、これらのアメリカ版がバンカー・バスター(Bunker Buster)と呼ばれる航空兵器である。

正式名はGBU―28バンカー・バスター(Bunker Buster)。ディープスロート(Deepthroat)とも呼ばれている。

GBU―28バンカー・バスター(Bunker Buster)は意外にも、余剰の203ミリ榴弾砲の砲身を利用して作られている。

構造はシンプルで信管、誘導装置を付け、爆薬を入れただけだ。

なぜこんな適当――げふんげふん、現状ある物で知恵を絞り出し作り出された兵器なのかというと、ちゃんと理由がある。

1990年にイラクがクウェートに進軍し、1991年1月に多国籍軍によって湾岸戦争が開始されると、アメリカは地下深くにあるイラク地下施設について、航空攻撃にて破壊する手段がないことに気づかされた。

そのため急遽イラク地下施設を破壊するための兵器開発が始まったのだ。

そしてGBU―28バンカー・バスター(Bunker Buster)を開発。

停戦するギリギリに各種試験が行われ完成し、1991年2月28日にイラク軍の地下施設に使われた(実際の開発期間は1ヶ月程度と言われている)。

間に合わせ的兵器であるGBU―28バンカー・バスター(Bunker Buster)だったが、その威力は予想以上だった。

これまでほとんど被害を与えられなかったイラク軍の地下塹壕を破壊することができるようになったのだ。

そのため、湾岸戦争終了後もアメリカ空軍は多数のGBU―28バンカー・バスター(Bunker Buster)を発注し、さらにはイスラエル軍や韓国軍にも輸出されている(イスラエルや韓国の仮想敵国が、地中深くに核施設等を持つと目されているため)。

見た目は細長く、先端が尖っており、漁船などで使用される銛のような形をしている。

全重量の約30%が炸薬が占めていると言われ、見た目の細さに比べてコンクリートなら約6m、土なら30mまで貫通することができるのだ。

このようにバンカー・バスターは、その高い破壊力から『破壊力は核兵器に次ぐ』とさえ言われている兵器である。

しかし性能上地面深くに埋まり爆発するため、普通なら僅かな煙があがる程度のはずだ。

なのに現在、オレ達が居る飛行船を揺るがすほどの爆発が起きていた。

甲板で様子を確認していたオレ、スノー、クリス、メイヤ、シア。そしてなぜかウイリアムが居た。

他、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバーは、帝国を守ってもらうために残ってもらった。

カレンに指揮を任せ、ルナもさすがに危険なため残してきた。

そんなオレ達は爆発の衝撃により揺れる飛行船から落とされないように、反射的に近くにあるものへと捕まる。

揺れが収まり、飛行船上空からグラードラン山の様子を確認する。

頂上は消失し、そこを中心に大きく抉れクレーター状になっていた。大小の岩石がごろごろと転がり、まるで噴火のエネルギーに耐えかねて内側から壊れた火山のようだった。

問題の 黒煙結界(ネグロ・ドィーム) は爆風に吹き飛ばされたのか消失。

様子を観察するも、再び 黒煙結界(ネグロ・ドィーム) が再構成される気配は微塵もない。

さらにグラードラン山周辺に集まっていた魔王の僕化したアンデットやスケルトンなどの魔物達は土砂と爆風に飲み込まれ全滅している。

「ま、まさかこんなことになるなんて……」

オレは自分が立てた計画が、予想以上の成果を出した喜びより、驚愕が勝り思わず声音が震えてしまう。

魔王レグロッタリエに骨カラスを通して挑発された後、オレはリースや旦那様を前に 黒煙結界(ネグロ・ドィーム) 攻略を思いついた。

その攻略方法は、バンカー・バスターによって内部からグラードラン山を破壊することだった。

バンカー・バスターを使用すること自体は初期の頃から考えていたが、上空から投下するにしても誘導装置や推進力などが作り出せなければ意味が無いため、お蔵入りしていた。

しかしアルトリウス戦で、ギギさんがラヤラに抱きかかえられ上空から降下。そのまま勢いを殺さずアルトリウスを蹴り飛ばし、エル先生を助け出した。

そのことを思い出し、『なら旦那様にバンカー・バスター本体を直接持ってもらって、誘導装置&推進力などの代わりになってもらえばいいのでは?』という発想に至ったのだ。

地上、地下からもいけないのなら、高々度から兵器による破壊――というなかなか強引な方法になってしまった。

だが、誘導装置&推進力の代わりになるのはいいとして、『投下後、旦那様の安全はどうするのか?』という問題が発生する。

旦那様へ素直にその話をすると――

『ははははっはあ! 心配は無用! 我輩には筋肉があるからな! だからリュートは細かいことを気にせず我輩に頼るがいい!』

と、豪快に笑っていた。

オレは旦那様の言葉を信じて、メイヤ&ルナの手を借りてバンカー・バスター作成に取り掛かる。

作成と言ってもあるだけの魔術液体金属を持ち出し弾体を作成。

推進力、姿勢制御装置、誘導装置、操舵翼などは旦那様に頼りで排除し、オレ達は兎に角弾体を投下し易い形にしつつ先端を尖らせて重くし、内部に可能な限り魔力で炸薬を詰めこんだ。

最後に信管を底部に設置。

これは弾体がなるべく内部まで潜り込んでから爆発させたいため、信管を後ろに設置することで遅延化させたのだ。

重量を増やしたのは運動エネルギーを増大させるためだ。

結果、10数トンはある弾体が出来てしまった。

こんな重い物を計れる秤は無いため、正確な重さは分からないが。

こうして完成したのが『マジック・バンカー・バスター(Bunker Buster)~旦那様を添えて』だ。

高度な制御装置や誘導装置などを全て旦那様に頼る形になった。

前世地球のバンカー・バスターに比べたら、兵器と呼べる代物ではないが、現状、魔術を使用してもここまで再現するのが限界である。

さすがにマジック・バンカー・バスター(Bunker Buster)をレシプロ機に搭載して飛行することは不可能なため、リースの『無限収納』に一時的に入れておく。

レシプロ機に旦那様が乗るスペースが無いため急遽、籠を作り設置した。

後は飛行船ノア・セカンドでグラードラン山側へ移動。

レシプロ機の魔力を節約するためである。

そして結果はご覧の通りだ。

個人的な予想では前世地球のバンカー・バスターぐらいの威力が出れば御の字と考えていた。

しかし、目の前に広がる光景は……明らかにそれ以上の被害を与えている。

バンカー・バスターの枠を明らかに逸脱している。

旦那様が張り切って全力で投擲したから? もしくは旦那様の魔力が弾体にこもり中身の炸薬と変な反応を起こしこのような事態になったのかもしれない。

明らかに物理法則を超えているような……。

だが、『旦那様だし』と考えると納得してしまう自分がいた。