軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第309話 ガンシップ

前世、地球には『ガンシップ』と呼ばれる航空兵器がある。

ガンシップはベトナム戦争中に米国で開発された機体で、主な任務は近接航空支援、武装偵察などだ。ベトナム戦争では八面六臂の活躍を見せた。

だが当時、その活躍にも関わらず、世界の他の国はガンシップを作成しようとしなかった。

あまりにも特殊な航空機だったからである。

どれだけ変わっているかというと――まず正面の敵、目標物を攻撃することができない。

なぜなら左側の側面にしか火器を搭載していないからだ。

では、どうやってガンシップは敵を攻撃するのか?

最新型であるAC-130Uを例にあげると――まずは飛行しながら敵を探す。

敵を発見したら、上昇し左側側面を地上へ向けて傾ける。

照準が完了したら25mmガトリング砲(毎分1800発発射可能)や105mm榴弾砲、40mm機関砲を目標へと叩き込む。

目標を中心に左へ定点旋回、つまりグルグルと回りながら火力を集中させるのだ。

ガンシップは各種火器――25mmガトリング砲、105mm榴弾砲、40mm機関砲を搭載しているため航空機の搭載火器として史上最強だとも言われている。

これだけ聞くと他国、特にソ連がマネして作り出さなかったのが疑問に思うかもしれないが、もちろんガンシップにも欠点は多い。

まず図体が大きい。

AC―130Uの全長は29.8m、全幅(翼幅)は40.4mもあるのだ。

そのため能力を十全に発揮するためには、味方が制空権を確保している必要がある。

また基本的に図体が大きいため、ガンシップの活動は目立ちにくい夜間が多いと言われている。

オレはブローニングM2機関銃の製造に踏み切った際、『ではM2を効率よく活躍させるためにはどうすればいいのか?』と考えた。

M2は重く、本体重量だけで38.1kgある。

台座の 三脚(トライポッド) は約20kg。

合計で58.1kgとかなりの重量になる。

リースの無限収納を使用すれば、持ち運びは可能だし、魔術師なら肉体強化術で無理矢理持つことも可能だが、効率は悪い。

すぐに思いついたのは、M998A1ハンヴィー(擬き)に設置することだ。

しかし、ハンヴィーにM2を一丁載せても現状あまり意味がない。

そこで思いついたのが新型飛行船ノアをガンシップに改造する案だ。

これならM2を大量に配置できるし、速やかに目的地へと移動させ、地上の敵目標を一方的に叩くことができる。

ザグソニーア帝国へ魔王レグロッタリエの報告があったため、飛行船ノアのガンシップ化はルナに一任した。

現在、飛行船の脇腹を改造し、3台のM2が等間隔に並んでいる。

マウントからM2本体を外し、代わりに 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) を設置することも可能だ。

今回はグレネードだと味方まで傷つける恐れがあるため、M2オンリーで行く。

将来的には前世、地球のガンシップAC-130Uのように105榴弾砲×1基、40mm機関砲×1基などを設置したいな。

さて将来の夢想に浸っている暇はない。

オレ、クリス、リースはそれぞれのM2の前に立ち発砲準備を整える。

まずフィード・カバー(蓋のようなもの)を開くため、フィード・カバー・ラッチを押して上へと押しオープンにする。

次にベルトに繋がった12.7mm(12.7×99mm NATO弾)の第一弾薬を給弾口に差し込む。

後はフィード・カバーを閉じて、M2本体右脇についているコッキングハンドルを力一杯引き戻す。

これで準備完了だ。

後は両手でハンドルを握り、トリガーを押せば発射される。

ちょうど準備が整うと、ココノが船を左側を傾け急造で作った壁に沿うような飛行コースに入る。

「クリス! リース! 壁の内側に居る敵だけを狙うんだ! 間違っても味方にあてるなよ!」

『了解です!』

「はい! 気を付けます!」

射撃センス溢れるクリス、PKMを扱い慣れているリースなら問題は無いだろう。

新型飛行船ノア・セカンドは速度を落とし、オレ達が射撃し易いように気を遣ってくれる。

視界に敵が入り込んだ。

「ファイアー!」

オレが叫ぶと同時にクリス、リースが両手でハンドルを握り親指でM2のトリガーを押し込む。

銃口から弾頭だけで43gもある12.7mm(12.7×99mm NATO弾)が、初速約900m/秒で壁を超えようとしていた魔王軍無機物の兵士達を容赦なく撃ち倒していく。

まさに金属の雨霰だ。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!

背丈5m以上の人型の巨像、ゾンビ、スケルトン、人型ゴーレム、ガーゴイル、リビング・デッド、リッチ達、魔王軍兵士達を有象無象区別無く掃討していく。

ゾンビ、スケルトン、人型ゴーレム、ガーゴイル、リビング・デッド、リッチ達は為す術もなく倒されていく。

元山賊であるゾンビが反射的に金属製盾を構えて防御しようとするが、その盾ごと撃ち抜き破壊していく。

オレ達が通った後に残ったのはグチャグチャになった魔王兵士達の残骸だ。

唯一、堪えたのは人型の巨像だけだ。

他は運良く弾丸が当たらないか、腕足などが千切れた魔王兵士達のみ。

彼らはほぼ無力化されたと言っていいだろう。

オレ達は黒玉関係なく破壊したため、壁の内側には黒煙が溢れ出る。

その煙はギギさんの風魔術で安全に散らしてもらう。

オレ達自身は飛行船内のため黒煙の影響を受けることはない。

壁を通り過ぎたため、ココノは速度を上げて2周目に入るため舵を切る。

攻撃が止んだのを切っ掛けに、破壊を免れた人型の巨像が攻撃をしかけてくる。

岩を掴み投げてくるが、投げた先にはすでに飛行船ノア・セカンドの姿はない。

よしんば姿があっても、岩の届かない高度に達しているためどちらにしろ意味がないが。

ココノが高度を下げ、左側を傾け再び飛行コースに入る。

オレ達も再びM2のトリガーを押し込む。

相手の攻撃が届かない空から一方的に攻撃を叩き込むため、完全に作業ゲー状態に陥る。

まだ破壊を免れている巨像の群れがあったため、そこに火力を集中する。

ココノもオレ達の意図を察したのか、今度は真っ直ぐ壁を抜けず、巨像の群れを中心にグルグルと回り出す。

先程は単純に壁に沿って飛び去ったため、本来のガンシップの使い方ではなかった。

今回は人型の巨像の群れを中心に、左へ定点旋回しながら火力を集中させることができた。

本来のガンシップの使い方を今まさにしているのことになる。

巨像達も腕を交差して耐えようとするが、M2×3が周囲をグルグルと回り雨霰と12.7mm(12.7×99mm NATO弾)を叩き込み続ける。

さすがに頑丈な巨像でも耐えられるものではない。

見事、巨像の群れを一網打尽にすることができた。

素晴らしい成果だといえよう。

なのにグルグルと回り、巨像の群れを殲滅している最中、なぜか味方であるはずの人種族連合の兵士達が青い顔でオレ達を見上げていた。

兵士達は、黒い煙を吸った戦友を助ける手も止めて、『あれがもし自分達に向けられたら……』と想像し顔色を悪くしているようだ。

個人的には飛行船ノア・セカンドはまだまだ改造途中のため、現状そこまで驚愕するほどの性能があるわけではないのだが……。

むしろ個人的には、旋回途中で見える旦那様vsエイケントの戦いの方が驚愕してしまう。

主に旦那様に対してだ。

飛行船ノア・セカンドがぐるりと周り、再び旦那様とエイケントの戦いを見ることができる。

人種族だったエイケントだったが、現在は背中から黒々とした羽根が生え、足も人のものではなく山羊のような形をしている。さらに背丈が倍になり、筋肉の厚さも2倍以上になっている。

そんな『怪物』と呼んで差し支えない姿に変貌しているエイケントだったが、彼はそれ以上の怪物――ダン・ゲート・ブラッドに手も足もでなかった。

「ははっっははっはあ! どうした! どうした!」

エイケントが手にしている大剣を肉体強化術も併用し、周囲から発生させた黒い魔力の壁を剣にまとわせた一撃を旦那様へと振るう。

旦那様はその一撃を防ぐ素振りも見せず、分厚い胸板で受ける。

正確には旦那様の全身を包む魔力の壁によって、大剣は受け止められ皮膚すら傷つけることができずにいた。

しかし仮に魔力の壁がなくても、あの筋肉に大剣が刺さるとは到底思えない。むしろ折れるんじゃないだろうか。

「はははは! 次ぎは我輩から行くぞ! フンヌバぁ!」

旦那様は拳を固めて振り抜く。

フェイントもなにもないただの大振りパンチ。

しかし、エイケントが大剣&黒い魔力で防ごうとするが、カタパルトに載せて発射された戦闘機のごとく地面を削りながらぶっ飛ぶ。

エイケントの手にしてた大剣は半ばから折れて、彼の腕も変な方向へ曲がっている。

口から黒い血すら吐き出していた。

まさに鎧袖一触という言葉が相応しい状況である。

エイケントも物理攻撃が効果無しと判断すると、吐血しながらも腕を治癒。

腰から下げていた袋から黒い玉を複数取り出し自ら割る。

溢れ出た煙を、自身の黒い魔力と混ぜ合わせ旦那様へと向かわせる。

咄嗟にギギさんが魔術で風を作り出し、吹き飛ばそうとするが黒い魔力に守られているのかびくともしない。

そのまま旦那様へと殺到する。

黒い煙が旦那様を包み込む。

ギギさんがここからでも分かるほど、青い顔で旦那様へと声をかけていた。

そんなギギさんに旦那様は――

「ははっははっははは! 安心しろ、ギギ! 煙を浴びたとしても吸い込まなければどうということはないのだ!」

喋っているということは、今まさに呼吸をして煙を吸い込んでいるのではないのか?

もしかしたら旦那様を守る魔力の壁が、黒い煙を弾き空気だけ選別し取り込んでいるのかもしれない。

だとしたら本当に常識外の人だな……

エイケントにぼこぼこにされて、現在ギギさん&タイガに守られているウイリアムが、そんな旦那様の姿に目を輝かせていた。

まるで将来、自身が目指す理想像を目の前にした少年のような瞳だ。

こうやって旦那様ファンは増えていくんだろうな。

一方、憧れの対象である旦那様はというと、エイケントを殴った手を納得いかなそうに動かしている。

何か問題でもあったのだろうか?

いぶかしんでいると事態が急変。

部下の劣勢を悟ったためか、エイケントの背後に黒い煙が溢れ出て集束していく。

黒い煙はとある姿へと形を作る。

魔王レグロッタリエが姿を現した。