軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第295話 新兵器の開発

オレは魔王となり飛び去ったレグロッタリエを呆然と見送ってしまった。

我に返ったオレがまず初めておこなったのは、レグロッタリエの後を追う準備ではない。

まず最初に皆の無事を確認することだった。

スノー達全員の無事を確認した後は、一度飛行船ノアに戻って状況を確認する。

シアがいつもの調子で居間に集まった皆の前に香茶と甘いクッキーを配膳する。配膳が終わり、彼女が壁際に待機するのを確認してから、現在の状況を告げる。

皆と情報を共有した。

「ララお姉様が嫉妬心からランスさんを裏切り殺害して、身を隠したなんて……」

やはり最初に反応したのはリースだった。

実姉の意外な行動に顔色を変える。

「ランスを裏切って殺害した現場を見た訳じゃない。あくまでレグロッタリエからの口から説明を聞いただけだ。もしかしたらオレ達を謀るために嘘をついている可能性もある」

「でも、レグロッタリエに嘘をつく理由がないよ。しかも実際、魔法核を取り込んで魔王になっちゃんたんでしょ? ランスが『黒』を作ってまで探した魔法核を手放す理由も思いつかないし」

スノーの指摘通りだ。

ランスがわざわざ手に入れた魔法核を手放す理由がない。

そうなるとやはりレグロッタリエの言葉は事実なのだろうか?

しかしオレ自身どうしても違和感を覚える。

まるで事前に用意された舞台演劇に、知らずに付き合わされているような感覚だ。

「わたしとしては魔王が復活したのも驚きです。まさかこの時代に魔王が復活するなど……これからいったいどうなってしまうのでしょうか」

元天神教の巫女だったココノは、六大魔王についての見識も深い。

それ故、一般の絵本や物語で綴られているものだけではなく、より具体的な情報も所持している。

『魔王復活』と聞いてこの先に起きる事態に怯えてしまっているのだ。

現に顔色は悪く、隣に座るクリスが心配そうに彼女の背中を撫でた。

そんなココノの心配が皆に伝播して場の空気が暗くなってしまう。

だが唯一、1人だけまったく意に返さず声高に断言する。

「怯えることはありませんは、ココノさん! たとえ魔王が復活したとしてもこちらには天神様すら超える 神大天才神(かみだいてんさいしん) であるリュート神様がいらっしゃいますわ! 魔王だろうが、大魔王だろうが、魔王軍だろうが、リュート様にかかれば指先1つで塵1つ残さず抹殺できること請け合いですわよ! むしろ魔王復活などリュート様の偉大さを世界全土に広げるための楽勝イベント程度の意味しかありませんわ!」

……『神』が3つも重なっちゃってるよ。テンポ悪いな。

でもメイヤのこういうところは素直に凄いと思う。

彼女はオレなら本当に魔王を倒すのなど、朝飯前だと信じ込んでいる。

そのためメイヤの言葉には説得力があり、聞いている相手も馬鹿馬鹿しいと苦笑いするが『もしかしたらそうかも』と微かに思ってしまう。

そのお陰で場の暗かった空気が明るくなり、前向きになれる。

こういう時、ムードメーカーの重要性を再確認してしまう。

いや、でも、メイヤはムードメーカーではなくオレの一番弟子なのだが……

とりあえず場の空気も変わったところで、今後についての話し合いをおこなう。

「メイヤの発言みたいに魔王を楽勝で倒せる訳じゃないが、オレは彼らと戦うつもりだ。放置して犠牲者を多数出すつもりはない。そのためにも犠牲者が出る前に、いったん本部に戻って武装と人数を整えてレグロッタリエの後を追うつもりだが、皆はどう思う?」

「……部外者の意見だけど、僕としては準備を整えて後を追うのとは別に、今すぐにでも全世界に魔王復活を伝えるべきだと思う」

タイガが挙手して告げてくる。

「魔王なんて規格外の怪物がうろついているのを知っていて通達しなかったら、後々何を言われても弁解できないと思うんだけど。そのための既成事実ぐらいは作っておいた方がいいと思うよ」

確かにタイガの言うとおりだ。

実際、戦力を整えて戦って本当に勝てるかどうか分からない。

取り逃がした後、『そちらの国に魔王が行きましたよ』なんて遅れて連絡を入れられた国からしたらたまったものではないだろう。

報告・連絡・相談は社会人としての基本だ。

特に帝国には知らせておいた方がいいだろう。

レグロッタリエが何を目的にしているか分からないが、去り際、『帝国云々』と言っていたし。

帝国とは妖人大陸にあるザグソニーア帝国のことだろう。

しかし、オレ達にザグソニーア帝国へのツテがない。

まさかいきなり乗り込んで『魔王が復活して、帝国が狙われています!』とか言って信じてもらえる可能性は0だ。

さてどうしたものかと、頭を悩ませているとリースが提案する。

「ならばお父様、エノール経由でお知らせするのはどうでしょうか?」

エノールは、リースの母国であるハイエルフ王国のことだ。

彼女の父、国王を通して帝国に危機を伝えるのはありだ。

またついでに全大陸に『魔王復活』の知らせもしてもらおう。

軍団(レギオン) トップの 始原(01) を破ったと言っても、やはり PEACEMAKER(ピース・メーカー) の知名度はさすがにまだ低い。

エノール国王と PEACEMAKER(ピース・メーカー) では、やはり前者の方が説得力が高いのはしかたないだろう。

基本方針も決まったところで一路、ハイエルフ王国・エノールへと向かう。

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久しぶりにハイエルフ王国・エノールへと戻ってくる。

リースにとっては久しぶりの帰省だ。

ルナも連れて来れたらよかったのだが、遊びに来た訳ではないのだからしかたがない。

オレ達は国王と会い、今までの経緯を報告する。

そして各国に魔王が誕生したことを知らせて欲しい。特にザグソニーア帝国が狙われている可能性が高いことを知らせて欲しいと伝える。

国王は二つ返事で了承する。

今日は城へ泊まることを勧められたが、魔王問題があるため申し訳ないが固辞させてもらった。

ちなみにリースの弟はすでに産まれて、王族としての教育を受けているらしい。

彼女だけは出発前に時間を作り、弟と話をしてきた。

リースが戻るのを確認してから、オレ達は獣人大陸ココリ街にある本部へといったん戻る。

本部へ戻ると、皆にはいったん休憩を言い渡した。

オレはミューアの元へと行き事情を説明。

彼女の諜報部隊を使い魔王がどこへ行ったのか情報を集めてもらう。

魔王がどこに居るのかも分からないと、移動のしようがないためだ。

ミューアは魔王誕生に驚きつつも、二つ返事で了承する。

情報収集は彼女に任せておけば安心だ。

ミューアに指示を出した後、オレはメイヤを連れてルナと一緒に研究所兼工房へと移動する。

今回は魔王となった対レグロッタリエ用の武器開発に乗り出す。

「それでリュート様、いったいどんな銃器を開発するおつもりなのですか?」

「今回開発するのは『ブローニングM2』だ」

対ランス用にバレットM82を開発したが、その 弾薬(カートリッジ) である50口径(12.7mm)を使用する機関銃が『ブローニングM2』である。

アメリカの設計者であるジョン・M・ブローニングが開発。

1933年にアメリカ軍に制式採用された。

口径が50口径であることから『キャリバー50』と呼ばれたりしている。

『ブローニングM2』の驚くべき点は、採用されてから約80年以上が経過しているのに、現役で使用されていることだ。

普通は廃れたり、後継が出てきたりなどして消えるものなのだが……

元々、『ブローニングM2』は第一次大戦時代中に誕生した。

目的は当時の最新兵器である『戦車』を破壊するためだが、戦車の発達により、まったく通用しなくなった。

さらに朝鮮戦争後の1950年代にはミサイルなどの技術向上により『ブローニングM2不要論』さえ出てきた。

しかし現在でも使用されていることから分かる通り、その考えは誤りである。

なぜこれほど使用されるかというと――ライフルでは威力が足りない距離を高速で移動する敵と相対する際、その速さ故にミサイルや無反動砲では撃破しそこねてしまうことが多い。まさに帯に短したすきに長しで、どれも『ブローニングM2』の代替品にはなりえない。

他に代替がないため『ブローニングM2』は現在でも使用され続けているのだ。

重機関銃=ブローニングM2と言っても間違いではないレベルである。

あまりに長年使われ、代替が無いため『代替なき老兵』とも呼ばれているとか。

またブローニングM2は、重機関銃としてだけではなく狙撃銃とてしても優れている。

使用される50口径(12.7mm)の43gと重い弾頭が、初速898m/秒で発砲される。その威力は約2km先の人をも殺害する力がある。

またブローニングM2はフルオート射撃以外にも、1発ずつ撃つ単発射撃も可能だ。

三脚(トライポッド) の上に本体を置くため安定する。

M2自体の重量も約38kg、 三脚(トライポッド) は約20kgあるため発砲しても反動がほとんどない。

撃つだけなら小学生でも出来るレベルである。

つまり、構造上、狙撃にとても向いているのだ。

実際の例をあげると――M2による長距離狙撃の公式記録は約2.3kmだ(アメリカ海兵隊カルロス・ハスコック、ベトナム戦争時によるもの。この記録は35年間破られることがなかった)。

こうした点から、前世ネットで聞いた程度の知識だが――アメリカ軍では対物ライフルより、M2の方が好まれているらしい。

長距離射撃は問題無いし、重機関銃のため弾も沢山撃てるからだとか。

遅まきながらブローニングM2機関銃のスペックは以下になる。

口径 :12.7×99mm

全長 :163.5cm

バレル長:114・3mm

重量 :38・1kg

発射速度:450~600発/分

初速 :898m/秒

射程距離:約4km(有効)、最大は約6km

装弾数 :100発金属リング(弾薬箱)

レグロッタリエはバレットM82の狙撃で、胴体から真っ二つになったが、すぐに自己再生した。

今思い出してもあの回復速度は異常だ。

しかし逆に言えばバレットM82でも一度は致命傷を与えることができるということである。

いくら魔王といえど無限に自己再生できる訳ではない。

だったらレグロッタリエが二度と再生できなくなるまで攻撃を加えれば、そのうち倒すことができるということだ。

そのためにM2を開発しようと考えたのだ。

「さすがリュート様ですわ! バレットM82の 弾薬(カートリッジ) を無数にばらまく重機関銃なんて! あぁぁぁあ! 想像しただけで体が火照ってしまいますわ!」

なぜ、体が火照る。

メイヤは自分で自身の体を押さえてくねくね動き出す。

前世、手を叩くと音に反応して動く人形のようだった。

そんな彼女を脇に置き、ルナが納得していない表情で問いかけてくる。

「でも、M2だけで本当に魔王に勝てるのかな……。ちょっと不安なんだけど」

「もちろんルナの不安も分かるよ。だから念のため他にも兵器を開発する予定だ。とりあえず先にM2を作ってからそっちに取り掛かるつもりだよ」

「今からM2以外にも兵器を作るの? 時間足りないんじゃないかな……」

「大丈夫、その辺も考えているよ」

オレは心配するルナに片目を瞑り、M2製作後に作る兵器について教える。

その兵器とは――