軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第294話 魔王

ランスとララを見つけるより早く、背筋が寒くなるような邪悪な魔力を感知する。

慌てて駆けつけると、そこにはレグロッタリエとエイケントが居た。

なぜ彼らがここに居るんだ!?

しかもなんだこの魔力量は! 人がこれほどの魔力を持つことができるのか!?

レグロッタリエはオレとタイガに気がつくと、愉快そうに笑みを作る。

「随分遅かったな。もうこっちの用事はすんじまったぞ」

「オマエ、魔術は使えなかったはずだろう……どうして」

「だから言ってるだろ、『用事』はすませたって。ランスをぶち殺して、『魔法核』を奪って俺様が取り込ませてもらったんだよ」

確かに『魔法核』があれば、魔術師としての才能が無い者でも魔術を使うことができるようになるだろう。

しかしあのランスを殺害して、『魔法核』を奪うなんてできることなのか?

「なんだよ、その顔。疑ってるのか? まぁ気持ちは分かるけどな」

レグロッタリエが愉快そうに笑う。

「けど、内部協力者――ララのお陰で話は随分スムーズだったぜ」

そして彼はララから話を持ちかけられたことを話し出す。

『予知夢者』によれば――ランスがこのままだとザグソニーア帝国第一王女、ユミリア・ザグソニーアと結ばれる。そして彼女の献身で目的を忘れて、二人は幸せな家庭を築くらしい。

その際、今まで汚れ仕事を引き受けてきたララを簡単に捨てて……。だから、そうなる前に殺害してでも、ランスを自分のモノにしようとララは画策したらしい。

だが、下手に自分が動けば勘のいいランスに気づかれる。

そこでレグロッタリエに話を持ちかけた。

『魔法核』を渡す代わりに、自分の作戦に協力して欲しいと。

彼は最初、ララを疑っていたらしい。

当然だ。ランスの忠臣である彼女が、彼を裏切るとは考え辛い。何かの罠だと疑っていた。

だからいくつか交換条件を出した。

その一つに、復讐も兼ねて止めは自分に刺させて欲しいというものがあった。

ララは迷い無く同意する。

さらに彼女の言葉通り、ランスは今居る場所に瀕死の重傷で転移してきた。

その時、ララはレグロッタリエ達が用意した対魔力防止ナイフ――独自に調合した魔力封じの毒ナイフで、ランスを躊躇いなく背後から刺した。

そして約束通り、レグロッタリエの手によって止めを刺すことが出来た。その際、ララは妨害するそぶりは一切見せなかった。

「だが今更そんなことはどうでもいい。こうして無事『魔法核』を手に入れることができたんだからな。これで俺様の目的が果たせる」

「目的?」

「復讐だよ。俺様をこけにした奴ら、組織、国……その全てに復讐するのさ! その後はこの世界を支配して好き勝手にやらせてもらうつもりだ。女、酒、金、クスリ、権力! 全てを俺様がこの力で支配するのさ! 過去の魔王達のように!」

オレは彼の目的に思わず汚物を見るように眉根を寄せてしまう。

ここまで欲望を剥き出しにする奴も珍しい。

まるで一昔前の漫画やアニメに出てくる悪党そのものだ。

レグロッタリエは愉快そうな表情で視線を向けてくる。

「そういえばオマエにも恨みがあったな。折角だから力試しも兼ねてやらせてもらうのもありだな」

「そうか。なら力試しも兼ねて死んでろ!」

オレが返答するより速くタイガがレグロッタリエへと躍りかかる。

ランスにもおこなった縮地からの 10秒間の封印(テンカウント・シール) でレグロッタリエの魔力を封じようとするが――

「ッゥ!?」

「おい猫女、今何かしたか?」

レグロッタリエの体から溢れ出る黒い魔力に吹き飛ばされ、近づくことさえできなかった。

「タイガ!?」

吹き飛ばされた彼女へ視線を向けると、目と目が合う。

まだそれほど長い付き合いではないが、アイコンタクトで相手が何を望んでいるのか理解した。

オレは手にしていたAK47をレグロッタリエへと向けて発砲。

AK47の7.62mm×ロシアンショートは、レグロッタリエから吹き出る黒い魔力によって阻害される。オレは構わず発砲して、再装填し直した『GB15』の40mmアッドオン・グレネードを発砲する。

流石にレグロッタリエも片腕を前に突き出し、魔力を意図的に吹き出す。

お陰で40mmアッドオン・グレネードが直撃しても、彼自身は傷ひとつ負っていなかった。

「ひゃはははっははあ! マジ凄いな魔術っていうのは! あれだけの爆発を受けても傷一つつかないなんて!」

「それは魔術じゃない。ただ魔力を垂れ流しているだけだよ、馬鹿者め」

「!?」

レグロッタリエの背後から少女の声が聞こえてくる。

タイガがいつの間にか彼の後ろに回り込み体に手を触れていた。

AK47の銃弾、40mmアッドオン・グレネードも意識と魔力の流れをオレに向けさせるための囮だ。

その隙に彼女が魔力の出が薄くなった背後に回り込んだのだ。

タイガとはまだ短い付き合いのはずなのにアイコンタクトだけでよくここまで意思疎通ができたものだと、自分自身を褒めたいぐらいだ。

10秒間の封印(テンカウント・シール) により、レグロッタリエの魔力が封じられる。

嵐のように吹き荒れていた黒い魔力が嘘みたいに消失する。

「こ、この雌畜生があぁあぁぁッ――グガァア!?」

振り向きざまタイガに殴りかかろうとしたレグロッタリエだったが、タイガは相手にせずすぐさま距離を取る。

そして程なく、バレットM82の12.7mm(12.7×99mm NATO弾)、50口径弾が撃ち込まれ胴体から真っ二つにへし折れる。

クリスが狙撃したのだ。

「うぇ、ぐ、グロい……」

50口径弾の場合あまりの威力に人体が真っ二つになると聞いたが、実際目の当たりにすると驚くより、グロさが際だつ。

だが、それ以上にショックな出来事が目の前で起きた。

まるで逆回し再生のようにレグロッタリエの体が再生し、千切れた上半身と下半身がくっついたのだ。

さらに再び黒い魔力風が流れ出す。

これに一番驚いたのはタイガだ。

「そんな! 僕の 10秒間の封印(テンカウント・シール) はどんなモノでも10秒間は魔力を封印することができるのに! まだ10秒経っていないのに魔力の封印が解けるなんてありえない!」

「さぁ知らねぇよ。魔力の値が大きすぎて防ぐ時間が短くなったんじゃねぇの」

レグロッタリエは心底興味なさそうに千切れた箇所を撫でる。

そこはすでに傷一つなく再生し、破れた衣服だけが怪我を負わせたことを物語っていた。

彼は殺されかけたことに怒らず、反省するように頭を掻く。

「魔術を使っていると思ったら、これ魔術じゃないのかよ。魔術師じゃなかったから、違いがよく分かんねぇなぁ。これはしばらく自分の力を確認して練習する必要がありそうだな」

彼がオレ達に視線を向ける。

反射的にオレ達は構えた。

「そう怖い顔するなよ。今日はもう止めだ。とりあえず俺様はしばらく魔術の練習をするわ。復讐はその後だ」

レグロッタリエは地面に手をつき魔力を注ぎ込む。

彼の下の地面が隆起しドラゴン型のゴーレムへと姿を変える。どうやら溢れ出る魔力で強引にドラゴン型ゴーレムを作り出したらしい。

「魔術の練習がてらオレ様を虚仮にした奴らをまずは皆殺しにしてやる。最終的に帝国の屑共を地上から消してやる。そして最後はオマエらだ。せいぜい残り少ない余生を楽しむんだな! ひゃはあははははははは!」

エイケントがドラゴンに飛び乗ると、ゴーレムはまるで生物のように羽ばたき空高く飛び上がる。

レグロッタリエの高笑いを響かせながら、彼らはその場から離脱してしまう。

オレやタイガ、他 PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバーは誰も彼らを追うことはできず、去る姿をただ呆然と見送ってしまった。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

ララは誰もいない場所で1人、ぺたりと座り込み泣いていた。

両手で顔を覆い童女のように涙をこぼしているのだ。

「私はなんてことをしたのでしょう……」

後悔、悲しみが涙のように後から後から溢れ出てくる。

そこに1人の青年がいつの間にか、ララの前に立っていた。

青年は彼女の前に片膝を突くと、そっと頭を優しく撫でた。

ララは手のひらの感触に赤くなった瞳で見上げる。

「ありがとう、ララ。作戦とはいえ辛い役目を押しつけてしまって」

「ランス様……」

レグロッタリエの手で心臓を剣で突き刺され、死んだはずのランスがそこにいた。

ランスの血色はよく、服を着ているため外見からは分からないが、ララやレグロッタリエに刺された傷は最初から無かったように治癒されている。

ランスはその表情に笑みを浮かべる。

「けど、お陰でレグロッタリエは何の疑いもなく君の言葉を信じて、自ら『魔法核』を取り込み魔王となった。こちらの思惑通りに」

ララに裏切ったふりをさせて自身を殺すように見せかけたのも、全てはレグロッタリエの疑念を消し魔法核を取り込ませ喜々としてその力を使わせるためだ。

レグロッタリエはララがランスを背後からナイフで刺すまで、彼女を疑っていた。

何かの罠ではないかと。

だが、ララがランスを刺した後、自分が止めを刺すまで彼女は微動だにしなかった。

お陰で、ララが本気でランスを自分のモノにするため殺そうとしているのだと納得したのだ。

またララの『ランスを他の女に取られるぐらいなら、殺してでも自分のモノにする』という演技が真に迫っていたため、説得力がましたのだ。

ララ自身表には出さないし、ランスが望むなら他女性への元に行くのも構わないが――本心ではそう思っているのが上手く感情として出たのが功を奏したらしい。

ランスはララの髪を撫でながら、男女問わず虜にする笑顔で告げる。

「レグロッタリエが魔王として暴れてくれる間に、僕達は裏で次の計画へと移ろう。また少々大変な目に遭わせるけど、僕についてきてくれるかい?」

「はい、もちろんです! ついて行きます。世界の果てでも、たとえ地獄の底でも……ッ」

「ありがとう。愛してるよ、僕の可愛い人」

「あぁ、ランス様……ッ。私も愛しています。愛しています」

そして二人の影が重なり合う。

その影は暫くの間ずっと離れることはなかった。

<第16章 終>

次回

第17章 魔王編―開幕―