軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第263話 8.8cm対空砲と第二次世界大戦の3大発明

『砲』という兵器がある。

砲という兵器と聞いて、一般的には質量のある弾を飛ばす大砲を思い浮かべるだろう。

しかし、厳密な技術用語としては、そういった火薬を使って弾を飛ばすのを『砲』とは呼ばない。

『砲』とは、昔は城を攻める時などに使われる投石機等のことを指していたためだ(故に左側に石の字が入っている)。

ここでいう大砲などの場合、『火砲』と呼ぶことになっているのだ。

火薬を使って弾を飛ばす砲――だから、火砲。

なので以後、『砲』とは言わず『火砲』と呼ぶことにする。

さて、初めて大砲(火砲)が戦争に用いられたのは1247年で、当時は石で作られた弾を飛ばしていた。

そして16世紀には鉄の弾が普及し、さらに火砲の性能を大きく向上させ始めたのは18~19世紀頃に弾道の研究が始まってからのことである。

そして気が付けば火砲は、戦場になくてはならない兵器となっていた。

各種の火砲が戦術・戦略的に状況を左右するようになり、現代の軍でも火砲を所持していない国家はないほどにである。

現代の陸戦でも、死傷者の過半数は砲弾によるものと言われているほどだ(小火器は戦闘に使用するというよりは、制圧に使用される事が多い)。

前世地球で日本で一人暮らしをしていた時、テレビニュースか何かでやっていたが『地上兵士が戦場でもっとも怖い攻撃は何か?』と質問されて1番が重火器(火砲)による攻撃だと即答していた。

音もなく攻撃を受け、死んでしまうから――らしい。

空からの空爆などは、まだ爆撃機が見えて爆弾を落としてくるため回避する方法はある。

しかし、重火器(火砲)の場合、数km先から音よりも速く弾が飛んできて爆発するため回避のしようがないのだ。

それ故、戦場で砲弾の破片を防ぐため軍用ボディーアーマーが発達した。

なぜなら怪我を防ぐだけではなく、兵士の精神的安定にも役立つからだ。

ちなみに地上兵士が2番目に怖い攻撃が、狙撃手らしい。

こちらも気が付くと音より速く、攻撃を受け死亡または負傷するからだとか。

――話を戻す。

つまり、大陸間弾道ミサイルや航空機などが発達した前世地球のハイテク戦場でも、山岳拠点に潜伏するテロリストゲリラの制圧でも、重火器(火砲)というものは必要かつ今後も重要視される兵器の一つだということである。

それほど重要な兵器の一つである火砲が将来的に、この異世界でも必要になる日が来るかもしれないとオレは思い続けてきた。

だからオレは PEACEMAKER(ピース・メーカー) の兵器研究・開発部門を立ち上げると、すぐ火砲の研究&開発に取り組んだのだ。

そして、『どの重火器(火砲)の研究と開発をするか?』を何日も考え続け、最終的にある重火器(火砲)を採用することにした。

その重火器(火砲)とは――ドイツが開発した 8.8cm対空砲(8.8 Flak) である(実際に開発したのはFlak18。以後年式数字は省略)。

アハト・アハトとも呼ばれる(8のドイツ語がアハトのため)。

第二次世界大戦でもっとも活躍した火砲の一つだ。

ではなぜ、オレがこの 8.8cm対空砲(8.8 Flak) を開発しようと思ったかというと『趣味!』ではなく……『好きだから!』でもなく……『対空砲として開発されたが対地攻撃にも活用できる性能を持つ』ためだ。

対空砲とは――空を飛ぶ航空機に対して迎撃するための火砲である。

そんな対空砲をドイツ軍は、対地――進攻してくる戦車などの迎撃のために使用したのだ。

ここで 8.8cm対空砲(8.8 Flak) が対空砲としてではなく、対地攻撃に使用された戦場の例を挙げよう。

1941年6月15日。

イギリス軍第7機甲師団、第4インド師団で構成された攻撃部隊によって、作戦は開始された。

イギリス軍の戦車約200両、兵士20000人以上の大部隊だ。

彼らの目的は、イタリア領リビアにあるトブルクのイギリス軍がドイツ軍に包囲され孤立しているその包囲を破り、エジブト方面にて優勢に立つためだった。

この作戦は当時のイギリス首相、ウィンストン・チャーチル自身が『バトル・アクス』と命名するほど力が入れられた作戦であった。

それを証明するように今回の作戦に使用された戦車は、当時の最新戦車『マチルダMk.Ⅱ歩兵戦車』である。

マチルダMk.Ⅱの簡単なスペックは以下になる。

主砲:40mm対戦車砲

最高速度:時速24.1km

前面装甲:75~78mm

マチルダMk.Ⅱ歩兵戦車の前面装甲は、約75mmもある。

当時、アフリカにある枢軸軍(ドイツ&イタリア軍)の戦車砲や対戦車砲(最大のもので50mm PaK38対戦車砲)などでも貫けないほど装甲が厚かったのだ。

そのためイギリス軍兵士達は、この最新鋭戦車に強い信頼を寄せていた。

そしてハルファヤ峠をマチルダ戦車を先行、歩兵を随伴させイギリス軍(第4インド師団)が進軍。

これに対してドイツ軍守備隊が砲撃し、戦いの幕を開いた。

だが――最初こそ悠然と進んでいたイギリス軍だったが、ドイツ軍陣地から敵砲弾が発せられるとマチルダ戦車の装甲を楽に貫通。破壊されてしまったのだ。

しかも距離、約1kmからというはるか彼方からの砲撃で、だ。

これにより、マチルダ戦車のほとんどは砲撃の餌食になり戦線を離脱、壊滅してしまう。

こうして、3日間の戦闘により結局、イギリス軍は敗北。

バトル・アクス作戦は失敗に終わる。

少々、話は長くなってしまったが、この戦闘でマチルダ戦車を破壊したのが 8.8cm対空砲(8.8 Flak) である。

ドイツはイギリスの『バトル・アクス作戦』を事前に察知。

8.8cm対空砲(8.8 Flak) を対地戦闘(対戦車用)に使用したのだ。

13門の 8.8cm対空砲(8.8 Flak) がこの戦いに投入され、それらによって3日間の戦闘でマチルダ戦車を含めた91台の巡行戦車を破壊したのだ。

では、なぜ 8.8cm対空砲(8.8 Flak) がマチルダ戦車の分厚い装甲(前面装甲78mm)を貫けたのかというと――

この戦いにおいて、 8.8cm対空砲(8.8 Flak) の 高性能徹甲弾(APCBC) の威力が飛び抜けていたためだ。

具体的な数値としては、 8.8cm対空砲(8.8 Flak) から放たれた 高性能徹甲弾(APCBC) は、約1.8kmから85mm(弾道角30度)の装甲板を貫通する威力を持つ。

この圧倒的な貫通力を持つ 高性能徹甲弾(APCBC) は、旦那様の防御力を持ってしても防げないだろう。

この事例だけで 8.8cm対空砲(8.8 Flak) がどれだけ凄い火砲か分かってもらえただろうか。

オレはいざというときのため、この 8.8cm対空砲(8.8 Flak) を研究&開発しておくことにしたのだ。

――話はアルトリウスが率いる魔物達が進攻を始める時より、少しだけ遡る。

戦いを前にして、オレ達 PEACEMAKER(ピース・メーカー) は整然と陣地構築をおこなっていた。

魔術で丘を作り、そこに穴を掘る。

穴の周りに土嚢を積み上げ補強。

そこに 8.8cm対空砲(8.8 Flak) を設置する。

通常、 8.8cm対空砲(8.8 Flak) は牽引車で引っ張り目的地に移動し、目的地に運んだ後は、牽引車から外し指定位置まで人力で押して運ぶ必要がある。

だが、オレ達にはリースが居る。

彼女の無限収納があれば牽引車などがなくても好きな場所に移動させることができる。

本当にリースの無限収納は万能だ。

穴の中に 8.8cm対空砲(8.8 Flak) を固定。

なぜ穴の中に入れるのかというと、敵に発見し辛くさせるためである。

そして、4台の 8.8cm対空砲(8.8 Flak) を並べる。

1台の 8.8cm対空砲(8.8 Flak) を操作するのに必要な人員は10名。

単純計算で4台あるため40人必要になる計算だ。

他にも、砲弾の時限信管の計算をする人員も必要になってくる。実際はもっともっと人数が必要なのだ。

しかし、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) にそんな人員はいない。

第一、砲弾の時限信管をセットするには、高度な計算が必要になってくる。

なぜ計算が必要になるかというと…… 8.8cm対空砲(8.8 Flak) は本来、上空約数千mなどの高度を、約300km/hで飛行する敵機を撃ち落とすための兵器だ。

そんなに高く、高速で動いている物体をスナイパーライフルのようにピンポイントで当てるのは不可能である。

そのため 8.8cm対空砲(8.8 Flak) の場合――まず 8.8cm対空砲(8.8 Flak) を約80~100mの間隔で正方形の形に4台を配置する。

まだレーダー照準が無い時代、高射算定具と呼ばれる横に長い望遠鏡がくっついた装置で空を飛ぶ敵機の射角、方位角を割り出す。

高射算定具で計算されたデータは、ケーブルで接続された諸元誘導装置を通して電気信号で4つの砲へとデータが送られる。

そのデータを元に手動で砲弾運搬員が、砲弾が爆発する時限をセットするのだ。

しかし、計算された時間に砲弾運搬員が、手動で砲弾の時限をセットする時間は含まれていない。

そのためそうした 時間(デッド・タイム) を差し引いて計算する必要があった。

またここまで計算しても、1台の 8.8cm対空砲(8.8 Flak) で敵機を撃ち落とすのは難しい。だから空を飛ぶ敵機の未来位置を計算、4台で発射し箱形に弾幕を構成するのだ。

だが、さすがにオレでも高射算定具、電気信号で各砲にデータを送る装置なんて作れないし、知識もない。

満足な人員もいない。

航空機迎撃に必要な高射算定具、諸元誘導装置などを作る技術もない。

だが、そういった技術はないが、魔術的技術なら十分にある。

そこでオレは魔力に反応して爆発するVT信管の開発に着手していたのだ。

では、VT信管とはどういったものなのか?

前世、地球の第二次世界大戦で兵器の3大発明は何か知っているだろうか?

正解は『原子爆弾』『レーダー』『VT信管』と言われている。

『原子爆弾』『レーダー』は多くの人がどのような物か知っているだろうが、『VT信管』は馴染みが薄いだろう。

『VT信管(Variable Time Fuse=自在式時限信管)』は当時、アメリカが開発した新しい信管だ。

先程説明していた時限信管は、手動で爆発する時間を設定しなければならない。

しかしこのVT信管は、発射後、敵機に近づくと勝手に爆発するのだ。

なぜ敵機に近付くと自動で爆発するかというと――発射後、砲弾内部にある送受信装置が作動。砲弾の周囲15mの範囲に円状の電波を放射する。

発射後、目標(敵機など)に電波が触れると、反射波を信管が受信して自動的に爆発するのだ。

VT信管の効果は高く、当時の日本特攻機の多くがこれによって落とされてしまったらしい。

また現在の地球では、対空砲弾以外にもVT信管が使われるほど広がっている。

オレはこのVT信管を、魔術文字や魔石などを使用し開発することを決意した。

だが、さすがにそうそう簡単には作り出すことができなかった。

まず電波を発生させたり、反射波をキャッチして反応する仕組みが作り出せなかった。

第一、メイヤやルナが電波や反射波などを理解するのが難しく、オレ自身説明が上手くできなかった。

そこでオレは電波や反射波のことは一旦忘れて、魔力に反応して爆発する仕組みを作り出すことに切り替えたのだ。

これならメイヤやルナもイメージしやすい。

その結果、出来たのが設定した魔力に反応して、自動で爆発する『MVT信管』を作り出すことに成功する。

仕掛けはそれほど難しくない。

砲弾内部に魔石をセット。発射後、魔石を閉じこめている陶器が破損して同時に砲弾内側に刻まれた魔術文字に魔力が流れ込む。

そのまま砲弾頭部に描き込まれた魔力を察知するための、魔術文字に魔力が流れ込み起動する。

この外側の魔術文字が約10m以内にある一定値の魔力に反応すると自動で爆発するのだ。

魔術師や高位の魔物などは、微かながら魔力を漏らしている。

その魔力に反応するよう設計したのだ。

これによりオレ達は細かい計算をして時限信管をセットすることから解放された。

お陰で 8.8cm対空砲(8.8 Flak) を担当する人数は、砲手1名、砲の操作要員2名、砲弾の装弾手1名、全体を指揮する班長1名、計5名に抑えることができた。

4台で20人に抑えることができる。

また現在は、 8.8cm対空砲(8.8 Flak) を設置後、MVT信管を装填し終えたメンバー達は、他の作業を手伝っている。

細かい照準は敵が来てからすればいい。

塹壕はスノーとカレンが手分けして魔術で土を製作してくれた。普通に掘るより圧倒的に早い。

細かい修正に数人が駆り出されている程度だ。

鉄条網はリースが無限収納から取り出した束を、旦那様が素手で掴み事前に決めていた場所に杭を突き刺して回っている。

もの凄い速度で鉄条網が完成していくのは有り難いが……痛くないのだろうか?

むしろ対戦車地雷設置に手間取っている。

こちらは完全に人海戦術を使って一つずつ設置していた。

オレはというと――ラヤラが上空へ上がり、 始原(01) 陣地を確認。下りてきて地図へと配置を描き込んでいく。

またクリスもその目の良さを使って観察。

地図にラヤラの位置からは気付かない情報を描き込んでいく。

「あちらさんの兵力は約1万か……」

その兵力全てをアルトリウスが召喚したというのだから呆れる。

さすがに5階建てマンションのような羽根のない巨大なドラゴンが現れた時は自分の目を疑ってしまった。

だってもうあれはドラゴンと言うより、怪獣じゃないか。

しかも、そんな怪獣が3体出現した。

普通の 軍団(レギオン) や国、軍隊ならこの時点でサジを下げている。

あんな動く城のような怪獣と戦えなんて誰だって嫌だろう。

他にも確認した限り、飛行型のドラゴンが500体。

アルトリウスによって強化された魔物の兵士が9000体以上。

さすが『世界と1人で戦える男』と言われる人種族最強の魔術師である。

こんなの個人がひょいと軽く出す戦力じゃない。

魔術師S級が『人外』『化け物』『怪物』と呼ばれる理由がよく分かる。

あちらの戦力を一通り把握し、自分の戦力と比較してオレは答えを出す。

「よし、予想の範囲内だ」

オレは一人頷く。

最悪の事態も想定して、オレとメイヤ、ルナで時間いっぱいまで今回使用する兵器を量産し続けてきて良かったと心底思う。

始原(01) もこちらの予想通り、戦力にものをいわせて正面突破をしてくるだけのようだ。

どうやら作戦変更の必要もないらしい。

「リュートくん、塹壕作り終わったよ」

スノーに声をかけられ、地図から顔を上げる。

他の担当からも準備完了の報告をもらう。

どうやら開戦時間に無事、間に合ったようだ。

オレは集まった PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバー達を前に指示を出す。

「作戦に変更はなし! 事前におこなった打ち合わせ通り頼む! 驕り高ぶり踏ん反り返ってこちらの実力も見抜けないトップ 軍団(レギオン) に、文字通り痛い目を見せてやろう!」

オレの掛け声に、メンバー達が元気よく声を返してくれる。

皆、あれだけの戦力を前にしても、誰一人心折られている者はいない。

全員、きびきびと持ち場へとつく。

オレはそれを見送りながら、自分自身の担当場所へと移動する。

暫くすると戦闘開始時間になり、 始原(01) の軍勢が動き出す。

地響きを鳴らし、何の策もなく突撃してくる魔物の軍隊と巨大な羽根のないドラゴン。

約500体の飛行型ドラゴンは、羽根を広げて飛び上がり真っ直ぐこちらへと向かってくる。

さすがに空を飛べるドラゴン達は速い。

敵の地上部隊より早く、オレ達の陣地へと到達するだろう。

そのため先に倒す――という理由もあるが、地上部隊を倒すためにもさっさと制空権は確保しておきたい。

通常、対空射撃をする場合、測距儀と呼ばれる横に長い筒を用いて敵飛行機までの直線距離、高低角を測り2つの値から三角関数の計算から高度をはじきだす。

そこから敵飛行機の移動する未来位置を算出し、そこへ向けて射撃をおこなう。

一応、試作段階だが測距儀を製造した。

しかし、実験をしてみてクリスが目算で指示を出した射撃の方が目標に当たることが判明。測距儀がまだ試作段階のせいもあるが、今回は時間がないためクリスに射撃指示をおこなってもらうことになっている。

オレは隣に立つクリスからドラゴン達の未来位置を聞き、声を上げて各4つの 8.8cm対空砲(8.8 Flak) に射撃する方位(方向)、射角(角度)の指示を出す。

ドイツ軍のように電気信号で位置や弾頭の時限を伝えられると楽なのだが……。

準備を終えた 8.8cm対空砲(8.8 Flak) 部隊達へオレは、右手を挙げ開戦を告げる声と共に振り下ろす。

「撃てぇぇッ!」

爆音。

真っ赤に燃える放火。

MVT信管榴弾は、光の矢の如くこちらへ向かってくるドラゴン達の群れへと迫る。

刹那、信管が魔力に反応し爆発!

密集していたドラゴン達がバラバラと落ちていく。

発砲後、空薬莢が自動的に排出される。

8.8cm対空砲(8.8 Flak) の場合、発砲後、空薬莢をわざわざ取り出す必要がないのだ。

そのお陰もあり、慣れた兵士達ならば1分間に15発の砲弾を発射することも可能だ。

訓練する時間があまり取れなかったため、オレ達で平均1分間に10~12発だった。

それでも4台から1分間に最低10発として、40発が発射できる計算になる。

すでに次弾が装填され、発砲の合図を待っていた。

オレは再び右手を高々と上げ、振り下ろす。

「撃てぇぇッ!」

再度の爆音。

1回目の砲撃で無事だったがドラゴン達も、2回目の砲撃でその大部分が木の葉のように落ちていく。

だが、この砲撃で飛行型ドラゴン達を皆殺しに出来るとは思っていない。

今回、砲撃に使っているのは榴弾である。

榴弾とは早い話が、破片手榴弾のようなものだ。

通常、弾殻(粉砕壁とも呼ばれる)の内側に起爆薬、高性能炸薬が充填されている。

爆発すると多数の弾殻破片、爆風で敵機を攻撃するのだ。

この榴弾でドラゴンが倒せるならそれにこしたことはない。

だが、この攻撃で死にはしなくても、羽根を破られたり、爆発音に驚き落下しその衝撃で動けなくなったりするだけでもいいのだ。

最終的に飛行型ドラゴンを空から排除し、こちら側が制空権を取れればいいのだから。

また地上に生きたまま落下すれば、後から来る 始原(01) 地上部隊の足止めになってくれる。

予想通り、落下したがまだ息のある飛行型ドラゴン達を踏みつぶす訳にはいかず、5階建てマンションほどの高さを持つ羽根の無いドラゴンが立ち止まる。

魔物の兵士達も突然の出来事に困惑している。一部はドラゴン達を迂回し、こちらに攻めてこようとしていた。

一方――空中にはすでに50体ほどのドラゴンしか残ってはいなかった。

これだけの威力を見せ付けているのに、飛行型ドラゴン達は懲りずにまだ愚直に真っ直ぐこちらの陣地へと突撃してくる。

元々約300km/hで飛行する航空機を相手に設計された対空砲で、さらにMVT信管の榴弾を使用している。

なのにただ真っ直ぐ突撃して、その砲弾から逃れられると本当に思っているのだろうか?

だが、相手は所詮大きなトカゲだ。

そんな判断もつかないのかもしれない。

とりあえず、まだ地上部隊は無視してオレは、制空権を確保するべく3度目の発砲指示を出す。

発砲音。

砲火――この3回目の砲撃により空中のドラゴン達は一掃される。

……さて、次はいよいよ地上部隊に対応しようか。