軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第252話 アルトリウスの魔術

『H&K USP』から放たれた9mmが、魔術師S級のアルトリウスを襲うが、彼は抵抗陣であっさりと防いでしまう。

オレは椅子を蹴り立ち、油断なく『H&K USP』を構える。

この攻撃に旦那様は表情を変えなかったが、ギギさんやスノーは驚いていた。

アルトリウスが口を開く。

「……まさか突然、攻撃をしかけてくるとは。 PEACEMAKER(ピース・メーカー) という名前の割りに意外と団長は好戦的なんだな」

「そんな条件を出されたら、好戦的にもなるさ」

「こちらとしては大分譲歩した条件だと思うんだが……。もし提示した条件に納得できないのなら、そちらの条件を教えて欲しいのだが」

アルトリウスは席に着いたまま、未だ構えも取らず余裕の態度も崩さない。

オレはそんな彼を睨み付けながら、返事をする。

「たとえどんな条件を出されても、オレ達は 始原(01) と同盟を結ぶつもりはない。オマエ達は結局、 静音暗殺(サイレント・ワーカー) ―― 軍団(レギオン) 、 処刑人(シーカー) の代わりを探しているだけだろ。自分達の手足となって暗殺する集団を。確かにそういう点でオレ達は適任だよな。なんていったって倒した張本人達なんだから」

「…………」

「そしてなにより真実を隠すため、事実を知った相手を殺すっていうのが気にくわない。もしオレ達が力のない弱小の 軍団(レギオン) だったら、こんな好条件で誘いはせず、さっさと潰していたんだろ?」

「……否定はしない」

アルトリウスの言葉に奥歯が軋む。

「だとしたらやっぱり同盟は結べない。オレ達、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の掲げている理念は、『困っている人や救いを求める人を助ける』だからだ」

だから、 始原(01) の考えとは相反しているため下につくことはできない。

「別にオレは『真実を絶対に伝えないといけない』とか『正義』を信望しているわけじゃない。ただオマエ達がやろうとしていることはいつかは確実に失敗する。だからその提案に乗るつもりはない」

「失敗か……だが、我々はこれまで『五種族勇者の真実』を保守しているが?」

「それがいつか絶対に失敗するっていうんだよ。実際、オレ達に世界に広まっている真実とやらがが嘘だとばれたじゃないか。今後、オレ達が吹聴しなくてもそんな奴等がどんどんでてくるぞ。そいつら全部を殺して口を封じるのか?」

「世界の維持のためにそれが必要ならな」

オレはUSPを構えながら首を振った。

馬鹿らしい。あまりにも馬鹿らしい考えだ。

「そんなこと実際できるわけないだろ。人の口に戸は立てられない。だいたいそんな労力をいつまでもかけられるわけがない。そして、罪もない人々を殺す片棒を担ぐ訳にはいかない」

彼らのやろうとしていることはついた嘘を隠すために、さらに嘘を重ねるようなものだ。

さらに矛盾点が生まれて嘘を付き、最後は取り返しの付かなくなる。

彼らの嘘も今はまだ有効だが、数年、数十年後、いつになるかは分からないがそれは確実に暴かれる。

そんな無駄で、意味のない虐殺ショーに PEACEMAKER(ピース・メーカー) を参加させるわけがない!

――しかも、あくまでオレの勘だが、その真実があばかれるのは遠い未来ではない。

『魔法核』を奪ったララは、 始原(01) と繋がっていたわけじゃなかった。ララ本人か、彼女の属する組織かは分からないが、誰かがこの世界の根底をひっくり返す何かをしようとしているのはまず間違いない。

恐らく、その時、『五種族勇者』の子孫が隠している真実は白日の下となるだろう。

「……なるほど分かった。 PEACEMAKER(ピース・メーカー) とは争うしかないわけか。できれば、我々と同盟を結んで欲しかったのだが」

「悪いがそれはできない」

「まったく、世の中というのは自身の思うとおりには中々いかないな――ならばしかたない。話を広められても面倒だ。ここで始末をつけておくか……?」

「ッ!」

アルトリウスが席を立つ。

友好的だった空気から一変。溢れ出るほどの敵意を向けられる。

オレも負けじと奥歯を噛みしめ、対峙する。

この場で同盟を蹴ったのには先程述べた理由以外にもある。

始原(01) は強い。

軍団(レギオン) ランキングトップの 神鉄(オリハルコン) だ。

もし彼らと同盟を組み、銃器の知識を提供すれば PEACEMAKER(ピース・メーカー) と 始原(01) の強さは二度と埋められないほど広がる。

唯一、対抗できるのはまだ銃器の知識を与えていない『今』しかないのだ。

また今なら 始原(01) 団長、アルトリウス1人である。

団長である彼をこの場で倒すことができれば、わざわざ強大な 始原(01) という組織全体と戦う必要はない。

さらに現在、こちらは旦那様やギギさんが居る。

「今、同盟を決めてくれるなら裏切り防止のため、ガンスミス卿の嫁を差し出してもらうつもりだったが、船内に居る恩師に変えても構わないぞ?」

「貴様……ッ!」

「落ち着けリュート!」

アルトリウスはあくまで好意として条件を提示したつもりのようだが、嫁とエル先生を引き合いに出され、カッと頭が熱くなる。

ギギさんの叱責を耳にしながらも、体が動いた。

手にしていた『H&K USP』全弾をアルトリウスに向け発砲する。

彼は余裕の態度を崩さず、抵抗陣を形成。後方へ下がりながら、船首方向へと向かう。

話し合いは決裂――と見て取ったスノー、シア、ギギさん、旦那様も攻撃へと移る。

「踊れ! 吹雪け! 氷の短槍! 全てを貫き氷らせろ! 嵐氷槍(ストーム・エッジ) !」

スノーの攻撃魔術と連動するようにギギさんが風×風の中級魔術で腕に風の刃を纏わせアルトリウスに迫る。

ギギさんを回避しても、旦那様がさらに控えている。

「若様!」

シアの呼びかけに『H&K USP』を仕舞い、腕を伸ばす。

彼女は船内に戻り、リースからAK47を取ってきてくれた。

クリス、リースも武装済みで、船首ギリギリに追い詰められたアルトリウスにPKMとSVD(ドラグノフ狙撃銃)で狙いを定める。

オレはAK、シアはいつものコッファーで狙いを付ける。

ダン! ダダダダダダダダダン!

複数の発砲音が重なり、アルトリウスに迫る。

抵抗陣を作り出すか、肉体強化術で身体を補助して左右どちらかに周り込んで回避すると読んでいたが――彼は迷わず飛行船から飛び降りてしまう。

「なっ!?」

オレはその行動に驚き慌てて、駆け出し彼が落ちた船首から顔を出す。

下は草原で、街道が延々と伸びているが落ちたはずのアルトリウスの姿、形はどこにもない。

太く、でかい影がオレ達の乗る飛行船の陽光を遮る。

反射的に顔を上げると、ドラゴンが羽ばたき鷹揚に空を飛んでいた。

ちょっと待て! こんな巨大な飛行物体、今までどこにも飛んでいなかったぞ!?

しかもドラゴンの体は炎のように赤く、1キロ先からでも目立ち発見できる。

こんな近く接近されるまで気付かないなんてありえないぞ!

ドラゴンはゆっくりと旋回する。

その背中に見知った顔を発見した。

飛行船から落ちたと思ったアルトリウスが、腕を組んでこちらを見下ろしていた。

「ふむ、やはり興味深いな、ガンスミス卿が持つ魔術道具は……。やはり今ここで殺すのは惜しいが……」

アルトリウスはまるで食堂の注文でどちらを頼むか迷うような素振りをする。

何か思いついたらしく、こちらに視線を向け一人呟く。

「ガンスミス卿はまだ若い。だから、鼻っ柱がまだ強すぎるのだろう。なら、若者特有の無駄な自信を少々潰せば大人しくなるかもしれんな……」

まるで暴れる犬をどう躾ければいいか思案するような態度だ。

アルトリウスは方針が決まったのか、両手を広げ天を仰ぐ。

すると、彼の体中を強大な魔力が漲り、周囲に10の巨大な魔法陣が浮かび上がる。

その魔法陣からは色や体格、頭の数すら違うドラゴンやグリフォンなどが姿をあらわす。

「な、なんだよこれ……」

一体でも倒すのが困難な魔物が軽く10体も姿を現したのだ。

驚愕するなというほうが無理だろう。

呆然と周囲を見回すオレ達に、アルトリウスが告げる。

「我が『特異魔術』で呼び出した眷属達だ。ガンスミス卿、その尖った鼻を直々にへし折ってやろう」

彼はドラゴンの背に乗り、腕を組んだまま告げる。

「この『 万軍(ばんぐん) 』、 始原(01) 団長、アルトリウス・アーガー直々にだ」