軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第213話 タイヤ問題

リュート、16歳

装備:H&K USPタクティカル・ピストル(9ミリ・モデル)

:AK47(アサルトライフル)

スノー、16歳

魔術師Aマイナス級

装備:S&W M10 2インチ(リボルバー)

:AK47(アサルトライフル)

クリス、15歳

装備:M700P (スナイパーライフル)

:SVD (ドラグノフ狙撃銃)

リース、ハイエルフ182歳

魔術師B級

精霊の加護:無限収納

装備:PKM( 汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) )

:他

ココノ、15歳

元天神教巫女見習い。

天神教事件から数ヶ月後の昼休み。

昼食を取り終えたスノー、クリス、リース、ココノ、シアにグラウンドへ集まってもらた。

オレは咳払いをしてから話を切り出す。

「皆に集まってもらったのは他でもない。実験的にある物を開発したんだけど、そのテストに付き合ってもらいたいんだ」

オレの願いに嫁達が元気よく応えてくれる。

「もちろんだよ、リュートくん!」

『お兄ちゃんのお願いなら喜んでお手伝いします』

「リュートさん、私に出来るこならなんでも言ってください」

「私でお役に立てるか分かりませんが、リュート様のために頑張ります」

「ありがとうみんな。それじゃシア、例の物をもってきてくれ」

「畏まりました」

シアに頼んで今回の実験に使う例の物――自転車&一輪車を持って来てもらう。

なぜ自転車&一輪車を製作したかというと、そろそろ軍用車を製作する予定だからだ。

製作するに当たっていくつか問題があった。

代表的な物としてエンジンや燃料問題だ。

さすがにオレも前世、地球の車に使われているようなエンジンを急に製作するのは難しい。

そこで思いついたのが、ミニ四駆などに使われているモーターだ。

『あれぐらいの簡単なモーターなら、こちらの世界でも作れるのではないか?』と思い至ったのだ。

そして前からメイヤに相談しており、暇を見付けては色々2人で実験をしていた。お陰で魔術文字&魔石を使用してモーターを開発することに成功。

これでモーターを魔力で動かすことができるようになり、わざわざガソリンを精製する必要もなくなった。

この魔石モーターを使用して自動車を作る予定だ。

正直、自動車というより巨大なミニ四駆を製作する気分だ。

まぁ簡単な電気自動車のような物と思えばいい。

次に問題だったのはタイヤだ。

この異世界で随分と長く生活したが、ゴム製品を見たことがない。

前世、地球ではゴムの木から採取するか、化学的に作り出していた。

しかし、こちらにはどうもゴムの木に類似する物がないようだ(単純にまだ見付かっていないだけかもしれないが)。

色々、探した結果、もっともゴムに近い素材を発見することが出来た。

それは『毛無熊』と呼ばれる魔物の皮だ。

名前から分かるとおり毛が無い熊型の魔物である。

今のところ、この魔物の皮が最もゴムの材質に近い。

しかし、毛無熊は魔術液体金属の元になる金属スライムに比べて個体数があまり多くない、珍しい魔物だ。

あまり市場に入ってこないため、入手が難しい。

なんとか実験用に確保することが出来たが、いきなり自動車のタイヤに使用するには躊躇いがあったため、練習&実験を兼ねて自転車と一輪車を製作してみたのだ。

これで耐久性、材質など問題がないようなら、タイヤ製造に踏み切ろうと思っている。

一通り集まってもらった皆に、事情を説明し終える。

彼女達は納得して、早速実験に付き合ってくれることになった。

ちなみにスノー達の恰好はというと、動きやすい服装ということで体操着――ではなく、ココノとシア以外は野戦服姿だった。

ココノは天神教の巫女服で、シアはいつもどおりのクラシックなメイド服姿だ。

いつか嫁の分だけでも体操服を作りたいな。

え? 何に使うかって?

そりゃ夜の大運動会に使うに決まっているじゃないか!

……すみません、話がそれました。

オレは早速、手本として自転車に乗ってみせる。

自転車は前世、地球の日本にある別名ママチャリとそっくり同じ物を作った。

ハンドルの前には籠があり、後輪の上には荷物が置ける荷台部分もしっかりと作ってある。

もちろん使っている金属は魔術液体金属だ。

オレはハンドルを取ると、すでに高さを調整し終えているサドルに跨り走り出す。

久しぶりに乗ったが、転ぶことなく走ることができた。

新・純潔乙女騎士団本部グラウンドぐるっと走って、再びスノー達の所へ戻ってくる。

「車輪が2つしかないのによくそんなにスイスイと乗れますね」

リースが感心したように何度も頷きながら、褒めてくる。

「確かに車輪は2つしかないけど、見た目より簡単だよ。それじゃまず誰から乗ってみる?」

「はいはいはい! わたし、やってみたい!」

スノーが元気よく手と声を上げたので、まずは彼女が先に乗ることになった。

「それじゃペダルをこぎやすいように、サドルの位置を下げるから待ってて」

「ありがとう、リュートくん。でもこれぐらいの高さなら多分大丈夫だよ」

「え?」

そう言ってスノーがハンドルを掴むと、ひらりと跨る。

足は踵までは付かないが、爪先で問題なく地面に立つことができる。

(オレの方がスノーより背が高い。なのにスノーは問題なく自転車に跨れる。つまり。それって……)

オレは考えるのを放棄した。きっと気のせいに違いない。

「それじゃやってみるね!」

スノーはオレの混乱など気にせず、勢いよく声をあげ走り出す。

最初こそはふらついたが、すぐにスピードに乗ったお陰か問題なくグラウンドを走る。

さすが運動神経抜群のスノーだ。

「うわぁ! わぁ! 何これ! 自分の足で走るのとは全然違う! でも、楽しいし気持ちいいよ!」

スノーは自転車に乗るのが本当に楽しいらしく、ポニーテールを風に靡かせ気持ちよさそうに走る。

その姿はまるで自転車CMのモデルのようだった。

……着ているのはオリーブ色の戦闘服だが。

スノーが戻って来たところでクリス、ココノが続く。

さすがにクリス&ココノのためにサドルは下げた。

サドルを限界まで下げると丁度足がつく。

クリスは最初よたよたと蹌踉け、何度か足を付いたが一度も転ぶことはなかった。

最終的には問題なく乗ることができた。

意外にもココノは、スノーと同じように一度も蹌踉けることも、足を付けることもなくすいすいと乗りこなしていた。

次に乗ったのはリースだ。

もちろんドジっ娘の名前を欲しいままにしている彼女はというと――

「り、リュート様! 絶対に、絶対に手を離さないでくださいね!」

「分かっているよ。絶対に離さないから」

リースは荷台部分を掴み支えるオレに何度も念を押す。

自転車にリースが跨り、オレが後ろから支えている。

まるで休日に自転車に乗れない娘の練習に付き合う父親という状態だ。

「そ、それではこぎますね」

「おう、いつでもいいぞ」

リースは怖々とペダルをこぎ始める。

進み始めたはいいが、彼女の掴むハンドルが細かく左右に揺れ動く。そのせいで前輪も一緒に揺れていまいちバランスが取れずにいる。

「リース、こいで前に進むよりバランスを取ることに集中するんだ。そうすれば自然とこげて前へ進むから」

「わ、分かりました!」

オレのアドバイスが上手くきいたのか、リースはややよろめきながらも自転車をこぐことに成功する。

「いい調子だ。それじゃちょっと手を離すぞ」

「ええ! だ、駄目です! 今、手を離されたら……きゃっ!」

しかし手を離した途端、数メートルも進まないうちに彼女は転んでしまう。

「大丈夫か、リース!」

オレは慌てて駆け寄り、自転車の下敷きになっている彼女を引っ張り出す。

自転車を起こしてスタンドを立て固定すると、リースが自分で怪我を治癒しながら恨めしい目を向けてくる。

「酷いです、リュートさん。手を離さないでって言ったのに」

「ごめん、ごめん。あの調子なら問題なくこげると思ってさ」

「どうせ私は鈍くさい女ですから。私のような者は一生自転車には乗れないのです」

リースは拗ねて頬を膨らませる。

そんな彼女にオレはフォローを入れた。

「あくまで車輪とゴムの実験のための自転車だから。別に乗れなくても平気だって」

しかし、フォローを入れたのに彼女の頬は膨れたままだ。

「えっと……ほら! リースが乗れなくても、代わりにオレがこいでその後ろに乗ればいいんだから全然問題ないよ!」

「……リュートさんの後ろに乗るんですか?」

「そうそう、口で説明するより試した方が早いか」

オレはリースを自転車の荷台に座らせる。

「しっかり、掴まってるんだぞ」

「はい、よろしくお願いします」

リースは背後から手を回しオレの腰にしがみつく。

彼女の体躯に見合わない大きな胸の感触を背中越しに感じる。

相変わらず大きく、柔らかい!

思わず前屈みになりそうになる。

「? どうかしましたかリュートさん?」

「い、いやなんでもない。それじゃこぐぞ」

オレは慌てて誤魔化し、自転車を走らせる。

最初、2人分の重さによろめいたがスピードが出ると安定して走ることが出来た。

「風が気持ちいいです。確かに足で走るのとはまた違った気持ちよさですね」

リースは先程の不機嫌が嘘みたいに、機嫌よさげな声音を漏らす。

オレ達はまるで青春映画の少年・少女のように自転車を2人乗りする。

グラウンドを1周して、スノー達の元へ戻ると。

「リュートくん、リュートくん! 今度はわたしを後ろに乗せて!」

『私も是非お願いします!』

「わ、わたしは……リュート様がご迷惑でなければ……」

スノー、クリス、ココノが勢いよく主張してくる。

いや、君達全員、普通に自転車に乗れるじゃないか……。

結局、3人に押し切られ順番に荷台に座らせグラウンド一周した。

いちいち交替で座らせて走るのはやや手間だったが、3人とも凄くいい笑顔を浮かべていたからよしとしよう。

最後はシアだ。

彼女もスノーに負けず劣らず運動神経がいい。

問題なく自転車に乗ることが出来た。

……しかし、メイド服姿のシアにママチャリが凄く似合っている。

前世、地球の日本では非現実的光景なのだが漫画やアニメ、ライトノベル、ドラマなどのせいかメイド服で自転車に乗るシアの姿が妙にハマって見えてしまう。

メイド服姿でママチャリに乗ってスーパーに買い物へ行くシア。

狙っていたタイムセール品を無事買うことに成功するシア。

溜めたポイントで帰り道に肉まんを買い食いするシア。

ヤバイ、簡単にそんな姿が想像つく。

オレは妙な興奮を覚えてしまった。

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次は一輪車だ。

オレは真剣な表情で皆に向き合う。

「最初に言っておくが……この一輪車、作ってはみたがオレも乗れなかった。だから、手本は見せられないんだ」

『それなら、なんでこんな物を作ったんですか?』

クリスは小首を傾げ尋ねてくる。

「む、昔、本で読んでこういう乗り物があるって知ってさ。折角だから作ってみたんだよ」と適当な台詞で誤魔化す。

オレはシアから一輪車を受け取り、皆へと促す。

「最初に誰が乗る?」

「それじゃ折角だから、わたしが最初に乗ってみるよ」

自転車の時と同じで、スノーが挙手して立候補してくる。

オレは彼女に一輪車を手渡した。

スノーがサドルを調整せずそのまま跨る。

「こ、これはさすがに……よっ、ほ! む、難しいよ」

スノーは両手を広げバランスを取り、こぎ出そうとしたが――上手くいかず足をついてしまう。

流石に運動神経のいいスノーも一輪車は初見では乗れないようだ。

何度か練習して、スノーはヨロヨロと数メートルぐらいは進めるようになる。

次にクリス、リース、シアと続くがやっぱり乗れなかった。

最後にココノが挑戦することになったが――

オレはココノが乗りやすいようにサドルを下げる。

「これで丁度いいはずだ。ココノも無理するなよ。あくまでタイヤの感触を確認するための実験なんだから。こんなことで怪我をしても馬鹿らしいからな」

「心配してくださって、ありがとうございます」

「当たり前だろ、ココノはオレの大切なお嫁さんなんだから」

「リュート様……ッ」

ココノはオレの言葉に恥ずかしそうに口元を押さえる。しかし心底嬉しいのか、瞳は潤み頬が薔薇色に染まる。

「もうリュートくん、いつまでココノちゃんと見つめ合ってるの?」

スノーの指摘でオレとココノは我に返る。

結構、長い時間見つめ合っていたのか珍しくスノーにツッコミを入れられてしまう。

「ごほん! そ、それじゃココノ乗ってみてくれ」

「は、はい! それでは失礼します!」

オレは誤魔化すように咳払いしてからココノに一輪車を勧める。

ココノも指摘された恥ずかしさを堪えながら、一輪車に足をかけた。

彼女は両足をペダルに乗せると、上下に動かしスルスルと走り出す。

「「「おおおおぉ!」」」

オレ、スノー、リースは思わず驚きの声をあげる。

クリスは表情だけで、シアは眉一つ動かさなかった。

誰も乗れなかった一輪車をココノは苦もなく乗りこなしたからだ。

しかも、まるで何年も乗っているかのように動きが滑らかで、オレ達を中心軸にグルグル回ってみせる。

その速度は思ったより速い。

オレは初めて生で一輪車に乗っている人を見た。

さらに彼女は、足を付かずその場に停止する。

「確かに先程の自転車よりもバランスを取るのが難しいですね。あまり上手く動かせません」

「いやいやいやいやいや! 十分上手に乗りこなしてるから!」

オレは思わず彼女の言葉にツッコミを入れてしまう。

むしろ、どうして足も付けず停止していられるんだ? 魔術を使っているわけじゃないよな?

オレだけではなく、スノー達も興奮してココノに話しかける。

「凄いですココノさん、こんなに軽々と一輪車を乗りこなすなんて……!」とリース。

「わたしなんて、少しふらふら~って進めるぐらいだよ!」とスノー。

『ココノちゃん、何か一輪車に乗るコツってあるの?』とクリスが尋ねる。

「コツですか? そうですね……一輪車の気持ちになって体を動かせばいいんです。そうすれば一輪車も素直に答えてくれますよ」

ココノは五芒星を指で切り、胸の前で手を握り締め祈るように告げる。

まるで宣教師が聖書の内容を告げるように無茶なことを言い出した。

なんだよ『一輪車の気持ちになって』って……スノー&リースも反応に困ってオレと同じ微妙な表情を浮かべていた。

『分かったよ、ココノちゃん!』

「えっ!? 分かっちゃったの!?」

しかしクリスは意外にもココノの言葉を理解したらしい。

さらに驚いたことに、ココノのアドバイスを聞いた後、クリスが何度かの挑戦の後、ふらつきながらも一輪車に乗れるようになった。

なんだろう……クリスは射撃の天才で、ココノはもしかして乗り物系の天才なのかもしれない。だから、2人にだけ通じ合う何かが、シンパシーがあるのかもしれないな……。

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これで実験は一通りお終いだ。

どうやらタイヤとして十分使用出来そうだ。

もちろん自動車のタイヤと自転車&一輪車のタイヤは別物だが、ある種の練習や指標にはなった。

後は実際に車輌に使ってみてテストするしかないな。

オレはシアに後片付けを任せて、スノー達と一緒に本部へと戻る。

クリスとココノが年下同士キャッキャッと楽しげに会話をしている。

スノー&リースはこの後の仕事について会話を交わしていた。

そんな中、オレはというと……眉間に皺を寄せ腕を組む。

どうも何か腑に落ちないというか……物足りない思いにかられる。

別にこの実験に何か見落としがあるわけじゃない。

では何が問題なのか?

オレは腕を組んだままで、考え込んでしまう。

「どうしたのリュートくん? そんな難しい顔して」

スノーがめざとくオレの表情に気付き尋ねてくる。

「……いや、何でもないよ。今回の実験で色々分かったから、車輌開発にどう生かそうか考えていただけだよ」

スノーや他の皆を心配させるのも心苦しいので適当に誤魔化す。

そしてオレは皆に遅れないように歩調を早めた。