軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第192話 獣人大陸での再会

レンタル飛行船を獣人大陸の港街で返す。

そこから馬車をココリ街までレンタルして、新・純潔乙女騎士団本部へと帰ってきた。

馬車での移動途中、顔見知りになっていた商人達とすれ違い声をかけあう。

北大陸では色々ありすぎたため、まるで何年かぶりに帰ってきたような感覚だ。

ココリ街に到着すると寄り道せず、真っ直ぐ新・純潔乙女騎士団本部へと帰った。馬車は後日レンタル屋に返すことになる。

グラウンドでは10人の新・純潔乙女騎士団メンバーが訓練に励んでいた。

新・純潔乙女騎士団では、20人が街を守護して、本部待機をする10人が訓練をするシステムになっている。

今日はシアの下についているメイド達だ。

訓練している団員が全員メイド服で、室内に見立てた木の枠組み内部で動き方、攻撃方法、突入方法などの訓練をおこなっている。

オレ達に気付くと、訓練の手を止め駆け寄ってきた。

代表して妖精種族、フーリ族のミーリアが言葉をかけてくる。

前にシアがメイド訓練として、オレにお尻を触らせようとしたメイドだ。

「お帰りなさいませ、若様、奥様方、メイヤ様、そしてシア様」

『お帰りなさいませ!』

ミーリアの言葉に合わせて他メイド達が一礼する。

オレは軽く手を挙げ挨拶を返す。

「ただいま。訓練を邪魔してごめんな。僕達がいないあいだ、何か問題はあったかい?」

「街の警邏に関しては細々とした揉め事が起こりましたが、こちらで対処出来る物だけでしたので問題ありません。ガルマ顧問が事務を放棄し逃げ出そうとしたので捕らえ、現在は軟禁している最中です」

ガルマはエル先生の知り合いで、元純潔乙女騎士団の顧問を担当していた。

新・純潔乙女騎士団になってから、顧問引退を考えていたらしいが無理矢理引き止めた。事務仕事、交渉役など仕事は山ほどあるためだ。

オレ達はその仕事を手伝ったりしていたが、ここ最近はずっと北大陸へ行っていた。

そのため、事務仕事などはうんざりするほど溜まっていたのだろう。

彼の苦労は分かる。だが、だからと言って逃がす訳がない。今さら一人、楽をしようとおもうのが間違いなのだ。

「ナイス判断だ。今後もガルマ顧問が逃げ出そうとしたら捕らえていいから。僕の権限で許す」

『サー・イエス・サー!』

メイド達の元気な声がグラウンドに響く。

「他には何かあったかい?」

「はい、2つほど。1つは若様にお会いしたいという天神教司祭様と巫女様がいらっしゃいました。しかし若様が不在で何時ご帰宅するか分からない旨をお伝えしたところ、ご帰宅したらご連絡頂きたいと言付けをお預かり致しました」

「……天神教の司祭と巫女?」

オレは首を捻る。

天神教とはこの世界を作り出した天神様を崇める宗教だ。

この異世界でもっともメジャーな宗教である。

実際、オレとスノーがいた村でも、秋の収穫祭で天神様に捧ぐ献花を子供達だけで採って来るという宗教儀式をおこなってきたぐらいだ。

しかし、前世の地球、キリスト教やイスラム教のような厳格さはなく、神道に近い。

この異世界の一般生活に宗教儀式が浸透しているようなものだ。

そんな天神教の司祭&巫女がいったいオレに何のようだ? まさか異端審問会にかけられ裁かれるとかじゃないよな。

オレの不安に気付かず、ミーリアが報告を続ける。

「最後に、その……」

「ミーリア、報告ははっきりと正確に。基本中の基本として教えたはずですよ」

「失礼しました、シア様」

ミーリアが言い淀んだことをシアが叱責する。

彼女は一礼すると、改めて報告を続けた。

「最後にクリス様のご友人、リース様の妹君を名乗る方々が客室にお泊まりになっていますが、いかがなさいましょう?」

……ミーリアの言葉がすぐに理解出来なかった。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

「リューとん、お姉ちゃん、お帰りなさい!」

「お帰りなさい、クリスちゃん! リュートさん、皆さん! お久しぶりです!」

「本当に久しぶりよね。ちらほら、知らない顔も交じっているようだけど。ほら、カレンも挨拶をしなさい」

「ちょっと待て、今逆転の手を考えているから話しかけるなミューア! 10連敗などビショップ家の……って! クリス達が帰ってきたのか!?」

発言の順番に紹介すると――リースの実妹で、ハイエルフ王国、エノールの第3王女、ルナ・エノール・メメア。背はクリスと同じくらいで、金髪ツインテールの美少女だ。

そしてクリスの幼馴染み3人組、3つ眼族のバーニー・ブルームフィールド。

見た目は普通のセミロングの可愛らしい人間だが、額にも眼がある。

だから3つ眼族と呼ばれている。

次が下半身が蛇で上半身が人のラミア族、ミューア・ヘッド。

下半身は蛇のままで、上半身は着物のような衣服に袖を通していた。胸も大きく、クリスと同い年とは思えないほど色っぽい。

そして最後は下半身は馬で、上半身は女性。

ケンタウロス族のカレン・ビショップだ。

髪型も一族名にひっかけているのか長いポニーテールにしていた。

カレンはルナとリバーシをしていた。

盤面は真っ黒で、白のカレンが逆転できる形勢ではない。

いや、そんなツッコミよりなぜ彼女達がここにいるのかだ!

オレが疑問を口にするより早く、リースが実妹に問い質していた。

「ルナ! どうしてここに! 貴女は竜神大陸にいたはずでしょ!?」

「だって、いつまで経ってもお姉ちゃん達が戻って来なかったから寂しかったんだもん。だいたい異国の地、他人の自宅に実妹を長年放り出すなんて、いくらなんでも非常識過ぎない?」

「うぅ、そ、それは……」

痛い所を突かれてリースが黙る。

姉なのに妹のルナに口でやりこめられるとは……。

「そして竜神大陸で暇してたら、カレン達が尋ねてきて意気投合したんだ!」

オレ達の視線がクリスの幼馴染み3人組に向けられる。

「皆様はどうしてここに? いえ、まずどうして竜神大陸へ行かれたのですか?」

「リュートさん、もう貴方はブラッド家の執事ではないのでしょう? だから、私達のことは友人として接して欲しいのだけど、駄目かしら?」

ミューアが大人っぽい色香を振りまき小首を傾げる。

『友人として接して欲しい』、そう言われたら、確かに断る理由はない。

「もちろんです、じゃなくて……もちろんだよ。それで3人はどうしてここに?」

「実はわたし達、魔人大陸の魔術学校を卒業して、クリスちゃんからリュートさんが 軍団(レギオン) を作ったって手紙で知ってたんです。だから、どうせならクリスちゃんが居る PEACEMAKER(ピース・メーカー) に就職出来ないかと思って尋ねてきたんです」

3つ眼のバーニーが説明する。

3人とも無事、魔人大陸にある魔術学校を卒業し、魔術師B級の魔術師になったらしい。

……魔術師のランクまで一緒なんて仲が良いな。

そしてカレンが説明を引き継ぐ。

「しかし竜神大陸にある自宅を訪ねたら、クリス達が居なくてな。そこでルナと出会って、リュート達が獣人大陸へ行ったことを教えられた。それで彼女の案内でこのココリ街まで来たのだ」

そしてオレ達が北大陸から戻るまでの間ずっと、新・純潔乙女騎士団本部で待っていたわけか……。行き当たりばったりもいいところだな、留守だったら追い返されるとは考えなかったのだろうか。

まあ、ルナはリースの実妹で顔を見れば分かるし、年齢を考えれば不審人物ではないから、大丈夫か。それにカレン達3人はクリスの幼馴染みで、これまで送り合っていた文通の手紙などを見せれば皆に信じてもらえるか。

それにこうして会えたんだ、結果オーライだな。

ちなみに彼女達の希望職は――

3つ眼族のバーニー・ブルームフィールドは事務、会計、経理希望。

ラミア族、ミューア・ヘッドは外交担当を希望。

ケンタウロス族のカレン・ビショップは、クリスと轡を並べて戦いたいと希望する。つまり兵士として戦いということでいいんだよな?

さらにクリス幼馴染み3人から刺激を受けたのか、ルナまで PEACEMAKER(ピース・メーカー) 入りを希望してきた。

もちろんリースが反対する。

「何を言っているのですか! 勉強の方が大切に決まっているでしょ! 入団なんて認めません! ルナはすぐに竜人大陸へ帰りなさい!」

「さっきも言ったけど、お姉ちゃんは異国の地、他人の自宅に実妹を長年放り出すなんていくらなんでも非常識過ぎない? 保護者としてそれはどうなの?」

「そ、それは……」

ルナは再び急所を突く。

リースは反論できず言葉を詰まらせてしまう。

ルナは攻勢の手を弛めず、さらに自分を売り込んでくる。

「それにリューとん、これから団員達も増えていくんでしょ? だったら、ルナを軍団に入団させておいたほうがお得だよ。ちょっと見てて」

彼女は魔術液体金属が入った小樽をテーブルの下から取り出し、自身の性能を見せる。

彼女は手を入れ、魔力を流し込む。

まるで手品のように、魔術液体金属はAK47そのものになる。

「!?」

ルナは魔術液体金属から直接、AK47を生み出したのだ!

オレ達でさえ、部品をひとつ、ひとつイメージして作り出し組み立てているのにだ!

「はい、手にとって確認してみて。問題は無いはずだよ」

「お、おう」

ルナから出来たてほやほやのAK47を受け取る。

各主部品を分解し、テーブルに並べる。

銃身内にはちゃんとライフリングが刻まれている。

問題なく使えそうだ。

「嘘だろ。いったいどうやって……」

「だって、リューとん達が帰ってくるまで暇だったから、AK47を借りて分解して全部パーツを覚えちゃったんだよ。後はそれをイメージして魔術液体金属に魔力を流せば完成でしょ?」

簡単に言ってくれる。

一番初期、魔術液体金属を手に入れた初め、オレもルナのように一括でリボルバーを作り出そうとした。

しかし、イメージする部品があまりに多く、複雑で断念した。

それを彼女はAK47でやってみせたのだ。

だが、彼女なら出来ても不思議ではない。

ルナは一度見たら二度と忘れない、完全記憶能力者だ。

もちろんAK47の部品同士が他より緩く作ってある特製もあり、ある程度の誤差を吸収しているのかもしれない。

それでも規格外の力だ。

彼女が居れば、どれだけ団員数が増えてもAK47や他の銃器を安定して作り出すことが出来るかも知れない。

これから研究所を作るにあたって正直、喉から手が出るほど欲しい人材だ。

しかし、リースの手前もあり、軽々に採用する訳にはいかない。

折衷案として、提案する。

「それじゃ4人には入団試験を受けてもらう。もし無事通過することが出来たら、ルナも採用っていうことで。リースもそれでいいか?」

「……リュートさんがそう仰るなら。ですが、妹だからと言って試験中甘い顔はしませんからね」

「ありがとうお姉ちゃん! リューとん!」

「他の三人もそれで問題ない?」

ミューア達にも了承を取る。

「入団試験って一体何をするの?」

3つ眼族のバーニーが不安そうに尋ねてくる。

「 PEACEMAKER(うち) は特殊な魔術道具を使っているだろ? だから、その道具に慣れてもらうための訓練をしてもらうんだよ」

「うぅ~、わたし、戦うとか苦手だから事務希望なのに。でも、クリスちゃん達と一緒に働くためにも頑張らないと」

『頑張ってください、バニちゃん!』

肩を落とす親友をクリスが励ます。

「私は問題ありませんよ。リュートさんが作った魔術道具には前から興味もありましたし」

「私も問題ない! たとえどんな試練でも乗り越えてみせよう!」

「いえ、試練ではなく、試験ですから」

ミューアはクリスと同い年とは思えない妖艶な微笑みで、カレンは脳筋的返答をしてくる。

こうしてルナ、ミューア、バーニー、カレンの4人は、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 入団試験を受けることになった。