軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第193話 それぞれの配置

――数週間後、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 入団試験終了。

現在、オレ達は新・純潔乙女騎士団本部のグラウンドに集まっていた。

そこには立派な一人の戦士がいた。

カチャ、カチャ、カチャ――

3つ眼族のバーニー・ブルームフィールドが、野戦分解されたAK47をその場で瞬く間に組み立てる。

組み立て終えると、コッキングハンドルを後方一杯まで引いて初弾を 薬室(チェンバー) へ。

セレクター・レバーを真ん中のフルオートへ。

100メートル先の的へ狙いをつけ発砲する。

ダン! ダダダダダダン!

全弾が的へ命中。

華奢な細腕だが、肉体強化術で身体を補助。

発砲時の衝撃を吸収している。

『バニちゃん、凄いです! 全弾命中させるなんて!』

「ありがとうございます、マム!」

バーニーはクリスの称賛に直立不動になり返答する。

「これも全て教官方のご指導ご鞭撻のお陰です、マム!」

つい数週間前まで、『戦うとか苦手だから事務希望なのに』と落ち込んでいた彼女の瞳は鋭く、上官の命令なら死地にも迷い無く突撃する光が宿っている。

『バニちゃん! もう試験は終わったんだから普通に喋ってくれていいんだよ!』

そんな彼女にクリスは戸惑い、肩を掴んでガクガク揺らしていた。

「バニは影響受けやすい子だから。後2、3日もすればもとに戻るから安心しなさい」

ラミア族、ミューアは相も変わらず飄々とした態度で、クリスに声をかける。

「素晴らしい訓練だったな! できれば実家の兵士達にも取り入れたいぐらいだ! しかもリュート達が扱っているあの魔導具! 本当に素晴らしいな! 他にももっと凄いのを作るという話だが、いったいどんな物を作るつもりだ! 私には想像も付かないぞ!」

ケンタウロス族のカレンはテンションが高く、いかに試験中の訓練が素晴らしかったかを語る。彼女はAK47の威力・射程距離・頑丈さなどに興奮しっぱなしのようだ。

なんという脳筋。

「お姉ちゃん、ちゃんと試験合格したよ! これでみんなと一緒に PEACEMAKER(ピース・メーカー) へ入団してもいいんだよね!」

「合格したのならしかたないですね。でも、もし勝手なことをしたり、問題を起こしたらすぐに国へ帰しますからね」

「了解、了解!」

ルナは変わらず、悪戯っぽい笑顔を姉へと向ける。

所変わって、大広間。

そこにはオレ、クリス、リース、シアの他に、ルナ、バーニー、ミューア、カレンにも集まってもらった。

これから彼女たちの配属先を決めるからだ。

シアがそつなく全員分の 香茶(かおりちゃ) を配る。

オレは彼女にお礼を告げながら、ルナ達に向き直った。

「それじゃ改めて、試験合格おめでとう! PEACEMAKER(ピース・メーカー) は皆を歓迎するよ。それで、皆の配置だけど……」

「はっ! 自分は是非! 歩兵部隊へ! 戦場で戦わせてください! サー!」

バーニーが直立不動の姿勢で声を張り上げる。

……事務仕事希望じゃなかったっけ?

「と、とりあえずバニは事務についてくれ、さすがにガルマ顧問から泣きが入っているから」

「サー・イエス・サー!」

希望を口にした割りには事務配属に不満を出さず、すぐに返答する。

この辺も洗脳――もとい訓練の成果だろう。

んで、次はミューアだ。

「ミューアは希望変わらず、外交担当でいいんだよな?」

「ええ、リュートさんさえよければ、お願いします」

「それじゃ、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の外交はミューアに一任するよ。必要な物があったら、すぐに声をかけてくれ。準備するから」

「その時は是非、お願いしますね」

ミューアは微笑を浮かべ、頷いた。

今後は彼女を通して様々な仕事の依頼や他 軍団(レギオン) ・ココリ街の商会組合との交渉等をしていく。さらにそれだけではなく、他街との組合との交流も深めていく予定だ。

将来的に、新・純潔乙女騎士団のメンバーが増えれば、昔のようにココリ街だけではなく他都市に支部を置くことになるかもしれないな。

次がカレンだ。

「カレンは歩兵部隊でいいんだよな?」

「ああ、本当はクリスと同じ部隊に配属になりたいが、私では不向きだ。だから歩兵部隊を希望する。今はまだ一兵隊だが、将来的には百人隊や千人隊を率いる指揮官を目指すつもりだ」

千人隊って……まず PEACEMAKER(ピース・メーカー) がそこまで成長するか分からないし、装備を調えるだけで難しいだろ。

しかし、カレンはやる気で鼻息が荒い。

そんな彼女にわざわざ水をさすこともないだろう。

最後はルナだ。

「ルナは兵器研究・開発部門でいいか?」

「えぇー、できればクリスちゃんと同じがいいのに」

ルナは不満そうに頬を膨らませる。

しかし、彼女の能力が一番生きるのは兵器研究・開発部門だ。また戦闘をさせて怪我をさせても面白くない。

説得するため口を開くが、先にクリスがルナにミニ黒板を突き付ける。

『私もルナちゃんと一緒の部隊で戦いたいです。でも、それ以上にルナちゃんに私たちの命を守る武器や防具を作って欲しいです』

「分かったよ、クリスちゃん! ルナ、クリスちゃんのために兵器研究・開発部門で頑張るね!」

チョロ! クリスの一言でルナはあっさりと兵器研究・開発部門へ入ることを了承する。

いくらなんでもチョロすぎるだろ……

ま、まぁいい。とりあえずルナが無事、兵器研究・開発部門に入ってくれてよかった。

『そういえば兵器開発で思い出したんですが、お兄ちゃん達に作ってもらいたいものがあったんです』

クリスがミニ黒板を突き付けてくる。

「作って欲しいもの?」

『はい、前回、スノーお姉ちゃんを処刑台から助ける時のことですが』

クリス曰く、前回の北大陸でスノーがあわや処刑させれる寸前だった。

その際、彼女がSVD(ドラグノフ狙撃銃)で処刑を中断させたが、弾倉交換のタイミングでスノーを城へと連れて行かれてしまった。妨害することが出来なかったのだ。

原因はSVDの発砲音だ。

1発目を撃った時点で、位置がバレてしまったため警備をしていた冒険者や衛兵がクリスへ殺到。彼らを倒している隙にスノーが城へと連れて行かれてしまったのだ。

だから、今後のことを考えて発砲音が低くなるMP5SDのようなスナイパーライフルが欲しいとのことだった。

「なるほどMP5SDのようなスナイパーライフルか……」

『ちなみにそんなライフルはあるんですか?』

「あるぞ。そういう専用のスナイパーライフルが。ただ、いくつか問題があるんだよ。今、そっちに手を出してもいいのかどうか……」

「ええ! いいじゃん、折角のクリスちゃんのお願いなんだし、作ろうよ! ルナも手伝うから!」

ルナが身を乗り出し、後押ししてくる。

確かにあって困る物ではないし、将来的に必要になるかもしれない。

大型兵器開発を進めようとも思っていたが、まだ『何を作るのか?』すら決めていない。ウォーミングアップを兼ねて、まずはこの辺りから作って見るのはありかもしれないな。

「よし! それじゃルナの兵器研究・開発部門配置、一回目の仕事として取り掛かってみるか!」

「やったぁ!」

『ありがとうございます、お兄ちゃん、ルナちゃん!』

クリスとルナが、きゃっきゃっとはしゃぐ。

この姿を見られただけでも製作を決断したかいがあるというものだ。

こうして配置も決まり、新たにつくる銃器―― 減音器(サプレッサー) 付きスナイパーライフル――が決定した。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

「若様、失礼いたします」

その日の夜。

カレン達の配置も終わり、自室でくつろいでいるとシアが姿をあらわす。

手には銀のお盆があり、その上に一枚の手紙が載っていた。

「先程、天神教の使者様から返答のお手紙が届きましたので、お持ち致しました」

「ありがとう。スノー達は?」

「奥様方はまだ入浴中です。今夜はカレン様、ミューア様、バーニー様、ルナ様もご一緒のため、若様はお入りにならない方がよろしいかと思います」

新・純潔乙女騎士団本部には大浴場がある。

これはまだ純潔乙女騎士団に活気があるころ、団員達が一度で大勢入れるようにと作られた風呂場だ。

活気が失われると同時に使われなくなったが、最近業者に頼んで修理してもらっていたのだ。

オレはシアの返事に呆れた表情で手を振る。

「聞いてみただけで、入ろうとは思っていないよ」

まさか彼女は本気で女子会状態に風呂場に突撃するとでも思っているのだろうか?

嫁達だけだったら迷わず突撃してるけどね!

咳をしてから、封筒を受け取る。

ペーパーナイフで封を切り、中身を確認する。

内容は当たり障りのない物だった。

その内容は、近日中に伺うというものだ。

なぜオレを訪ねてくるのか、理由は書かれていない。

さて、一体彼らはどのような用事でオレへと会いに来るんだ?

その答えも彼らと会って話をすれば分かるだろうが。