軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第186話 巨人族防衛――第三者視点

リース、メイヤが居なくなって約1時間――『ズゥン……ズゥン……ズゥン……』という音、そして次第に感じる地震のような揺れが、城壁に上がっていても感じられるようになる。

「き、来た……ほ、本当に巨人族の大軍が来やがった……ッ」

ガチガチと、配置についた冒険者達が歯を鳴らす。

北大陸に住む者なら、巨人族が群れで押し寄せてくるのがどれほどの恐怖か身に染みている。

日本人でたとえるなら、非常に強い地震が後数分で確実に起きると知るようなものだ。

「畜生……あんなに来やがって! 作戦は失敗したのか!?」

「まさか引きつける役の奴等、自分達だけ逃げたんじゃ……」

冒険者の1人が声を荒げる。

巨人族が20体ほどノルテ・ボーデンに向けて侵攻してくる。街始まって以来の大軍だ。

多くても数年に一度、2~3体程度。

それが今回は約20体。大軍だと言っても間違いではない。

しかし、シアが叱責する。

「口を慎みなさい」

「ヒィ! す、すいませんシア様!」

シアに一睨みされ、愚痴った冒険者が震え上がる。

「最初の報告では数は約100体。この街に来たのは約20体。若様達が引きつけてくださったお陰で、この程度ですんでいるのです」

彼女の指摘に側に居た冒険者達が項垂れる。

確かに報告された数より圧倒的に少ない。

これで文句を言ったら罰があたるというものだ。

シアが冷静に指示を出す。

「伝令を。事前に指示した通り行動するよう厳命しなさい」

「は、はい! すぐに!」

冒険者達はシアの指示に、慌てて立ち上がり伝令へと走る。

現状、配置は以下になる。

シアは一番外側の第二城壁に佇み、側に複数の冒険者達を並べている。この第二城壁がノルテ・ボーデン守護のメインだ。

彼女は城壁の胸壁上部に立ち、これから戦場になる場所全部を見回せる位置に付いていた。

彼女がこの場の指揮管だ。

第一城壁にも予備隊が待機している。

念のためパンツァーファーストを第二城壁メインと第一城壁予備隊にそれぞれ配布している。

本来は PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバー以外に触らせたく無いが、現状人手が足りないため目を瞑るしかなかった。

『ズゥン……ズゥン……ズゥン……』

音がだんだん近づいてくる。

今は音だけではなく、体のヒビや欠けている部分すら鮮明に見えるほど近づいて来ている。

「シア様! まだですか!?」

「まだです。もっと引きつけないと」

巨人族達はこちら側の作戦など関係なく動く。

先行する5体が槍を構える仕草を見せる。

シアがすぐさま第二城壁に集まっている魔術師達に指示を飛ばす。

「槍が来ます! 協力して防ぎなさい!」

魔術師達が返事をする間もなく、巨人族が槍を投擲。

数十トンはある 質量兵器(槍) が5本飛来する。

魔術師達が協力して抵抗陣を張り、 質量兵器(槍) を防ごうとするが――3本は完全に防ぐことが出来たが、2本は勢いを殺しただけで第二城壁の一部を大きく削り取る。

さらに今の攻撃で一部魔術師が魔力をほぼ使い切ってしまった。

質量+速度+落下エネルギーの単純な破壊力。

たとえ巨人族が1体だけでも恐れられる理由がよく分かる。

地震のように城壁が揺れて、さすがのシアも屈み胸壁を掴みバランスを取った。

その体勢で素早く指示を出す。

「歩みを止めさせるな! 攻撃開始!」

『オ……オオォォオオオオォォォォォォォオォッ!!!』

恐怖を振り払うかのように冒険者達が声を上げて攻撃を開始する。

クロスボウの矢が一斉に放たれた。

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地下道がまるで空襲を受けた防空壕のように振動し、腹に響く重低音、天井から細かい砂が落ちてくる。

あちこちで悲鳴が上がる。

声を上げない人も、肝が据わっている訳ではない。青を通り越して土気色で震えていた。

「ひぃっ、お、お姉ちゃん……」

「大丈夫よ、ここの地下道は天井が分厚いから、何があっても皆を守ってくれるわ」

アイスは左右から抱きつかれている人種族の幼女の背中を撫で、慰めていた。

そんな彼女と一緒にアムが声をかける。

「安心するがいい子供達よ! いざとなればこのぼく! 『光と輝きの 輪舞曲(ロンド) の魔術師』! アム・ノルテ・ボーデン・スミスが出陣して巨人の100や200体華麗に退治してみせよう!」

微震が続く中、前髪を弾く。

照明がある訳ではないのに、なぜか輝いて見えた。

彼を前に先程まで怯えていた人々が微かに笑う。それは苦笑いや微苦笑――決して、褒められた物ではない。

それでも、一時的に恐怖に怯えていた人々の心の緊張を解きほぐしたのだ。

アイスはそんなアムをつい見詰めてしまう。

(この人は本当に変わらない)

子供の頃もそんな空気の読めないポジティブさで、無意識に周囲へ元気を振りまいていた。そんな姿を幼馴染みとしてずっと眺めていたせいで、気付けば心を奪われていた。

アムを好きになって良かった――と、彼女は胸中で呟く。

「しかし、残念かな。恐らくぼくの力を振るうことはないだろう。なぜなら――」

アムがアイスの熱い視線に気付かず、再度前髪を弾いた。

「地上で戦っている彼らがきっと、巨人族達を倒してしまうからね」

アムはまるで戦闘の結末を見てきたような声音で断言する。

そこには人々を勇気づける響きが備わっていた。

振動は未だに続く。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

「撃て撃て! 倒そうとは思うな! これは引きつけるための攻撃だ!」

相手は巨像。

こちらの言葉を理解することはない。

だからシアは苛烈に檄を飛ばす。

冒険者達も彼女の言葉に従い弓矢を放つ。

もちろん刺さる筈もなく、体に虚しく弾かれて終わる。

クロスボウではなく、弓矢で届く距離まで迫っていた。

細かい傷や凹み、巨人族の個体差まで確認出来る距離だ。

「シア様! シア様! まだですか!?」

足下にいる冒険者が、神に縋るようにシアへと問いかける。

彼女は彼の訴えを聞き入れたのか、高々と手を挙げ、

「爆破!」

シアが手を振り下ろすと同時に、魔術液体金属で作られたコードに魔術師の1人が魔力を流し込む。

コードは地面に埋められ、延々と伸びて第二城壁の隅に設置されていた。

地球での電気式起爆を、この異世界では魔力を流し込むと爆発するようにしたのだ。

シアの掛け声に続き、埋められた対戦車地雷が爆発する。

舞い上がる土砂、土煙、巨人族の破片。

踏んでも起爆しないように設定し、側面にあるソケットを使用した。お陰で巨人族を十分に引きつけ爆破することが出来たのだ。

しかしさすがに全部とはいかない。

土煙が薄まると後方にいた5体が残っている。

仲間が一斉にやられたのにもかかわらず、黙々と攻撃を再開しようとする。

残り5体が手に持った槍を構える。

だが、その槍を投げさせるほどシアは愚かではない。

彼女はいつの間にか、 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) に腕を伸ばし、照準を残りの5体に合わせていた。

両手でハンドルグリップを握り締め、両親指で『凹』の形をしたトリガーを押す。

ボシュ! ボシュ! ボシュ!

マシンガンよりは遅い発砲音を響かせ、シアは40mmグレネード弾を残り5体の巨人族に浴びせる。

同時に爆音と衝撃が、巨人族に襲いかかる。

30発入りアモ・ボックスがほぼ一瞬で空になる。

予備のアモ・ボックスはあるが、交換している時間はない。

舞い上がった土煙を切り裂き、1体の巨人族が姿を現したのだ。

どうやら一番後ろに居て、先程の 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) も仲間を楯に凌いだらしい。

しかし、さすがに無傷とはいかなかったようだ。

両腕が無く、槍も砕かれ満身創痍だった。

最後の1体はせめて一矢報いようと、土煙をカーテンに特攻して来たのだ。己の質量を武器に、第二城壁へと倒れ込んで来る。このままではシアや他の冒険者達が押しつぶされてしまう。

パンツァーファウストを撃っている暇もない。

城壁に居た冒険者達は逃げ出そうとしたが、唯一、シアだけが両手に旅行鞄サイズのコッファーを掴み、倒れ込んでくる巨人族へと突撃する。

彼女は肉体強化術で身体を補助。

胸壁上部を蹴り、コマのように勢いよく回転!

そのまま両手に掴んだコッファーで、倒れ込んでくる巨人族の頭部を殴りつける。

コッファー側面が巨人族頭部に衝突する刹那――シアは素早く取っ手部分のスイッチをオン!

二つの側面から40mmグレネード弾が発射される。

巨人族の頭部はコッファー二つと一緒に爆砕してしまう。

シアは抵抗陣を全力で張り被害を受けず、落下。

クルクルと体操選手のように膝を押さえて回転しながら、地面に着地する。

同時に頭部を失った最後の巨人族が背中から倒れ、辺り一面を振動させた。

最後の巨人族が倒れるのを確認した冒険者達は一斉に生き残った喜びと、シアを讃えるように勝ち鬨を上げる。

まるで雄叫びが豪雨のように降り注いでくるようだった。

そんな中、シアは1人満足そうに呟く。

「やはりコッファーこそが最強の武器ですね」

こうしてノルテ・ボーデンへ侵攻していた巨人族達は殲滅された。