軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第185話 避難誘導――第三者視点

「対戦車地雷の準備を急げ! そこ、リードを扱う場合は魔術師に任せないように! 魔力が流れて起爆したら、一発で粉々になりますよ!」

シアの掛け声に、対戦車地雷に魔術液体金属製リードを接続しようとしてた冒険者の魔術師が、慌てて手を引っ込める。

リュート&メイヤが作り出した対戦車地雷は、前世地球の物と違い魔力を流すと起爆する仕組みになっている。

現在、リース、シア、メイヤの管理下の元、先程まで一緒に戦っていた冒険者達と一緒に観光地にもなっている巨大な城壁で準備を整えていた。

冒険者達は皆、浮き足立っていた。

それもそのはず、後数時間でノルテ・ボーデン史上最大、約100体の巨人族が姿を現すかもしれないのだ。

北大陸に住む者達からすれば、その事実は死の宣告に近い。

この事態に対処するための作戦は現在進行中で、雪崩を起こす作戦が成功すれば街に向かう巨人は少数のみになる。

今はその作戦を信じて迎撃準備に取り組むしかない。

シアが地上で一通り対戦車地雷を埋め終わると、一番外側の第二城壁に上がってくる。もし戦場になれば、ここが一番初めに巨人族と接触する城壁だ。

その城壁でリース&メイヤが 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) の設置をおこなっていた。

自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) とは、通常1発、多くても5~6発しか発射出来ない 榴弾(グレネード) ――『爆発する弾』――を、ベルトリンク式(機関銃のように弾をベルトで繋いでいる)で繋ぎ合わせ、30~50発連続で撃つことが出来る火器のことだ。

必然、多弾数化すれば本体は大型化してしまう。

そのため三脚を用いたり、運搬可能な車両等に搭載し、運用することが多い。

今回は城壁の中央に備え付け、 三脚(トライポッド) ――カメラの三脚同様、機関銃を載せられた 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) の銃口を、胸壁(城壁上部にある凸凸凸に並んでいる所の名称)の間から突き出す。

シアが合流すると、こちらもちょうど準備が終わった所らしい。

「お嬢様、メイヤ様、対戦車地雷の方、準備が整いました」

「ご苦労様、シア。こちらも一通り終わりましたよね? メイヤさん」

「ええ、一通り終わりですわ。後は巨人族を迎えるだけですわ。尤も! リュート様達が全て引きつけてしまっている可能性の方が高いですが! 何せ引きつける役を果たすのは、天上天下唯一神であるリュート様なのですから! たとえ魔物! 巨人族といえどその後光に反応して付いていってしまうに決まっていますわ!」

リースが落ち着きのない態度で尋ねると、メイヤは倍以上で返答してくる。

彼女は天を仰ぎ、さらに1人でリュートを讃える言葉を紡いだ。

そんなメイヤを放って置いて、他に漏れが無いかリース&シアは確認する。

「こちらは他に準備することはありませんか?」

「恐らく問題無いかと。冒険者達の配置などはこれからですが、彼らの懸命な動きから、それほどもたつくことは無いと思われます」

「では、私達も街へ出て避難誘導のお手伝いをした方が宜しいのでしょうか?」

「いえ、行くべきでは無いと思われます。この街の地理に詳しくないお嬢様方が出ても混乱を招くだけかと」

「そう、ですね……」

餅は餅屋に――と返されて、リースは肩を落とす。

確認を終えると、先程の落ち着かない態度がさらに顕著になる。

シアは気を利かせて、そっと背中を押す。

「迎撃準備は完璧だと進言します。なのでお嬢様が若様の下へ向かわれても支障はありません。この場は PEACEMAKER(ピース・メーカー) 筆頭護衛メイド、妖精種族黒エルフ族のシアにお任せください。全身全霊を持ってノルテ・ボーデンを守ってご覧にいれます」

「シア……」

リースはメイドに自身の胸中を見透かされていたことに頬を染める。

彼女はずっとリュート&スノーの心配をしていたのだ。その心配を煽るように、先程からずっと胸騒ぎがしていた。

だから、どうしても落ち着かず、今にも駆け出しそうになる気持ちをずっと抑えつけていた。

シアの後押しと、現状準備が一通り終わり、自分の出番が無いことを確認してリースはリュート達のところに行くことを決断する。

「ありがとうシア、では私はリュートさん達の後を追わせていただきます」

「リュート様達の後を!?」

この発言に1人、天上へ向け独白していたメイヤが反応する。

リースは彼女の問いに驚き、しどろもどろに弁明した。

「は、はい。現状、私のやれることはないので、リュート様達のフォローに向かおうと思っているのですが……」

「それでしたらわたくしもご一緒させて頂きますわね! わたくしは現状はリュート様の一番弟子! ですが、将来的にはぐふッ、ぐふふふッ、な関係になるのでずっとリュート様のご無事を案じていたのです! 将来的なにょほ! にゃほほほ! な関係となる者として馳せ参じなければならないと思っていたのですわ!」

メイヤの熱い、鼻息荒い主張に逆らえる者などいる筈がない。

「そ、そうですか。それならメイヤさんも一緒に行きましょう」

「ええ! それではすぐ行きましょう! 今行きましょう! 疾風怒濤のごとく行きますわよ!」

「ま、待ってください! シア、それでは後のことは頼みます!」

興奮して先を行くメイヤに、リースはシアに一言かけてから彼女の後を追った。

シアは二人の背中が見えなくなるまで頭を下げ続けていた。

顔を上げると、一つ溜息をつく。

(これで最悪の事態は回避されましたね……)

シアにとってリュート達の安全確保が最上の使命。

仮にリュート&スノーが巨人族の進路変更に失敗し、約100体の巨人族が攻め込んできたとしても……この場にいない彼らが死ぬことはない。

たとえ自身やその他大勢の命を天秤にかけても、主の無事を確保する。

批難は謹んで受けるが、これこそ護衛メイドとしてのシアの矜持だ。

主を守護することこそが、彼女の存在理由なのだから。

「さて、では冒険者達がちゃんと配置についたか、責任者に確認しましょうか」

彼女は自身の仕事をこなすため歩き出した。

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「皆さん! 焦らず奥まで詰めてください!」

一方、ノルテ・ボーデンでは一般市民の地下道誘導がおこなわれていた。

元々、街全体に張り巡らされた地下道は、巨人族対策の名残だ。

まだ小さな村や町時代、一般市民はこの地下に逃げ込み避難していたそうだ。

そして街が大きくなるにつれ拡張工事を繰り返した結果、気付けば誰も全容を把握しない巨大迷路になってしまったらしい。

そのせいか現在まで地下道はまったく使われていなかった。

懸賞金を掛けられていた白狼族は、そんな地下道を利用して街での買い物をしていた。

お陰でこの場にいる誰よりも地下道に詳しい。

城の衛兵達が一般市民に避難を勧告して回り、白狼族が安全な地下道に案内するという役割をこなしていた。

仮に巨人族が侵入してきても人的被害を受けないよう、なるべく頑丈な地下道を選び一般市民を誘導する。

「そこの人、荷物を持ち込まないでください! 荷物があるときっちり詰められないでしょう!」

アイスも白狼族として、地下道誘導役に専念していた。

彼女は人種族の中年男性に注意する。

彼は衛兵の目を盗み、一抱えはある荷物を持ち込んでいたのだ。そのせいで人がきっちりと詰めることが出来ず、子供達が入れずあぶれてしまっている。

「う、うるさい! これはワシの財産だ! 財産を持ち込んで何が悪い!」

「ですから、荷物を持ち込んだら他の人が全員入れません。なので荷物の持ち込みは認めていないはずですよ」

中年男性に周囲に居る人々からも無言の圧力を浴びせられる。

男性は声を上擦らせながら、

「だ、黙れ! 黙れ! 白狼族の分際で人間様に指図するな!」

「黙るのは貴殿だ」

「あ、アム様!?」

アイスの側にアムが姿を現す。

中年男性はアムの登場に息を飲む。

「白狼族達はぼく達が無実の罪で懸賞金をかけ、追い回し一方的な迫害をしてきたのにもかかわらず、未曾有の危機に協力を申し出てきたのだぞ! そのような相手に自身の利己的欲望のためだけに、規則を破り声をあらげるとは……ッ。それでも北大陸の男か!?」

「……ッ」

中年男性はアムに叱られ、項垂れる。

「もしまだ貴殿に誇りがあるのなら、今すぐ外へ出て荷物を置いてくるがいい」

中年男性は項垂れると、外へ荷物を置きに行く。

お陰で子供達が奥まできっちり詰めることが出来た。

「アム様、ありがとうございます」

「何を言うミス・アイス。ぼくはただ次期領主としての勤めを果たしただけだよ」

アムはアイスに軽くウィンクする。

「さぁ、まだまだ避難者はわんさか居る。手分けして案内しようではないか!」

「はい、ありがとうございます」

そして2人はテンポ良く避難者に指示を出し、安全な地下道へと案内する。

その動きは幼馴染みだけあって、息が非常にあっている。

「ふふふ……」

「どうしたんだいミス・アイス?」

「いえ、たいしたことではありません」

アイスの瞳が遠い昔を思い出すように細められる。

「昔もお城を抜け出したアム様と一緒に協力して、雪兎を追いかけたことを思い出してしまって」

「ああ、あったなそんなことが」

2人は幼馴染み独特の、共有している過去の懐かしさを話し合う。

過去、2人は息を合わせて雪兎を追いかけ捕まえたりした。

今、まるで昔に戻ったかのように息を合わせて行動しているのがアイスはおかしかったのだ。

「またあんな風にアム様と一緒に遊びたいです」

「生き残ればまた昔のように遊ぶことが出来るさ! 嫌というほどね!」

「ふふふ、それでは楽しみにしていますね」

そして2人は顔を見合わせた後、再び作業に没頭する。