軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第179話 スノー奪還、そして……

スノーを人質に取っていた白兵士が、なぜ抵抗陣を作っていないとはいえ、『H&K USP(9ミリ・モデル)』を防げなかったのか。

オレはスノーに追いつく前に、USPの弾倉を特殊弾――『KTW弾』。別名、『 警察官殺し(コップキラー) 』と呼ばれるハンドガン用の徹甲弾の一種に取り替えておいた。

飛行船を襲撃された時に、白兵士の甲冑に9mm(9ミリ・パラベラム弾)が弾かれたため、念のために取り替えたのだ。

お陰で人質になっていたスノーを無事助け出すことが出来た。本当にKTW弾を作っておいてよかった。

しかしオレはスノーとの抱擁を長い時間は楽しまず、すぐに体を離す。

スノーとしてはそれが少しだけ不満らしいが、オレは付き合わず、粘土のような物を取り出し彼女に渡した。

スノーもその意図に気付き、すぐさま自分で首に巻かれている魔術防止首輪を粘土で覆う。

魔術防止首輪には3つ機能がある。

1つ――権限を与えられた者が目視出来る範囲であれば、首輪を縮め窒息させることが出来る。

2つ――首輪を嵌めている者の位置情報を把握することが出来る。

3つ――無理に首輪を取ろうとすると、首輪に施されていた魔術の力により装着者を死亡させる。

この粘土のような物は1つ目の力を封じるものだ。

過去、クリスの母親であるセラス・ゲート・ブラッド奥様が塔に囚われていた時に使用した物だ。効果は実証済みだ。

オレはスノーが作業している間に、苦悶している白兵士の顔を蹴り飛ばし気絶させた。

これで残るはオールのみ。

側近らしき大臣は、痛みに慣れていないのか肩を撃ち抜かれてすぐに気絶している。

オールは撃たれた肩口を押さえ、睨み付けてくる。

オレは油断無くUSPの銃口を彼に向けていた。

オールは肩口を押さえながら、増悪を満たした瞳で喘いだ。

「よくも計画を台無しにしてくれたな。だがきっと貴様等は後悔するだろう。『まだ殺されていたほうがマシだった』と思うことが、貴様らの身に起きるだろうさ! これは予言や負け惜しみなんかじゃないからな! 精々後悔し! 絶望しながら仲間共々死んでいくがいい!」

「その口ぶりじゃまだ隠し球があるみたいだな。いったい何をしたんだ?」

「ぎゃははははっはははははっは! 誰が教えるか! バァアアアァッァカ!」

オールは端正な顔を歪み、高笑いする。

狂気が表情を浸蝕しているのか、通常であれば端正な顔をしている彼からは想像も出来ないほど醜かった。

「……とりあえず、後で詳しい話を聞くから今は眠っておけ」

オレはオールへ近づくと、重い一撃を入れて気絶させる。

まだ他では戦闘が続いている。

オールばかりに構っている場合ではない。

オール達を拘束し、他の応援に行く前に、スノーに言い聞かせた。

「……スノー、頼むからもう二度とこんなマネはしないでくれ」

「こんなマネって?」

「僕を助けるためとはいえ、1人でオール達の目を引きつけたことだよ。今回はスノーに人質としての価値があったから、彼等は手荒なマネはしなかったけど、下手をしたら殺されていたかもしれない。場合によっては拷問されて、耳を削ぎ落とされたり、指を折られたり、目を潰されたかもしれないんだぞ。僕を守ってくれたことは嬉しいけど、もっと自分のことも大切にしてくれ!」

「……心配かけて、ごめんね。でも、もしまた同じような場面になったら、わたしは同じことするよ。だって雪山でも話したでしょ? リュートくんがわたし達を守ってくれるように、わたしもリュートくんを守ってあげるって」

それに――、と彼女は笑った。

「何があってもリュートくん達が助けに来てくれるって信じてるから……全然、平気だよ」

スノーは信頼しきった笑顔で言い切った。

そんな風に言われたら、もう何も言えなくなってしまう。

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スノーを無事に助け出し、オール達の拘束を終えた後、オレは皆の視線を集めるため指で弾いた『番の指輪』も拾い、首から提げる小袋に戻した。

一通り状況が片付くと、オレとスノーはクリス達やリース達の元へ駆けつけた。

クリス達はすでに牢屋からアム、領主のトルオ、そしてスノー両親&白狼族を助け出していた。

オレはオールが所持していた魔術防止首輪の鍵で、全員の首輪を外した。

リース達のところへ応援に行くと、すでに戦闘は終わっていた。

敵魔術師がシアの指示の元、怪我を負った衛兵や冒険者達の治癒をおこなっていた。まるで青空野戦病院状態だ。

処刑場を警護していた衛兵や冒険者達は、なぜか妙にシアを怖がっており、彼女の言葉に素直に従っていた。

オール派閥の秘密兵士部隊や大臣に、今度はオレ達が魔術防止首輪を付けて牢屋に叩き込む。

衛兵達は、アムとトルオが共倒れしてしまったとオールに騙されていた。そのためオールを一時的に領主とあおぎ、彼の指示に従っていただけだ。

冒険者達は金を払い雇われただけで、特にシアの恐怖を知った彼らは、オレ達とはもう争うつもりはないらしい。

とりあえず、彼らの処罰は後回しにして、現在は状況の整理・落ち着かせることに注力する。事態が完全に落ち着いたら、彼らの正式な処罰を決めよう。

極一時的な事態の収拾を図り終えると、謁見の間に関係者達が集まる。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバー、スノー両親、そしてアム、アイス。

領主の座にはトルオが座っているが、放心したように背もたれに体を預けている。

「まさか我が、オールの手のひらで踊らされていただけとはな……」

トルオはまるで10~20年歳をとってしまったように老けていた。

声にも張りが無く、ギラギラと野望で輝かせていた眼光も、今は火が消えたように無くなっている。

疲れを口から直接吐き出すように言葉を紡いだ。

「我の見る目の無さ、器の無さで迷惑をかけた……。許して欲しい」

トルオはその場に居る全員に深々と頭をさげる。

「今回の件の責任を取り我は領主の座から下りる。後任はアム、オマエに任せよう」

「……分かりました、父上。謹んでお受けします」

父、トルオは引退。実弟のオールは今回の騒動の主犯。

後を継げるのはアムしかいない。

トルオは再び深い溜息をついた。

「我は領地経営から完全に手を引く。オール達のことも全てオマエに任せた。オマエが思うとおりしなさい。我はもう疲れた。静かに隠居させてもらおう」

こうして領主の座はアムへと引き継がれることになった。

一通りの話が終わり、一段落が付くと急報が入る。

「し、失礼します!」

衛兵の1人が謁見の間に慌てて入ってくる。

激しく動揺しているせいで、礼儀作法という面では褒められた物ではなかった。しかし、彼が発する異様な空気のせいで、誰一人その異常な行動を指摘することはなかった。

衛兵は遠目でも分かるほど汗を掻き、絶叫するように報告する。

「た、ただいま監視塔から緊急連絡が入りました! 巨人族の群れが、この街、ノルテ・ボーデンに向かって進行中とのことです! その数、約100体以上!」

報告を聞いた全員が驚愕し、自分達の耳を疑った。

それはまさに凶報だった。

オレの耳に、オールの高笑いが再生される。