軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第16話 初クエスト

冒険者斡旋組合(ギルド) からクエストを受注すると、魔物払いの薬水を買うために左隣にある 冒険者斡旋組合(ギルド) 協賛の道具店に入る。

店の広さはコンビニほど。

壁際に赤、青、黄色、紫などの液体が入った瓶や、薬草の束、大きさの異なる様々な石等が置いてある。それぞれの値札の数字はまちまちで、中にはただの石にしか見えないのに高額な値段が張ってあったりするものもある。

一通り見て回り、それから入り口側のカウンターに座る女性に、薬水がどこにあるか尋ねる。

女性は笑顔で正面の棚から、ひとつの瓶を手に取る。

250mlほどの青い瓶だ。

値段を見ると、銀貨1枚だ。

(高!? 高すぎるだろ! 魔術液体金属より高いじゃないか!)

声に出しそうになるのを堪える。

だが、少量を死体にかければいいと女性に説明を受け納得する。ならこの一瓶でもすぐには使い切らないだろう。

代金を払って薬水を購入し、道具店の女性に、ナイフがどこに売っているか尋ねる。

銃があるので剣はいらないが、さすがにナイフは必要だ。

正面にある武器・防具店が 冒険者斡旋組合(ギルド) 協賛店だと、教えてもらう。

お礼を言って、店を出て武器・防具店に移動する。

ナイフは、ひとつ銀貨3枚。

倒したガルガルの尻尾を切るのに使う、と言ったらやや肉厚で頑丈そうなナイフを選んでくれた。

一緒に尻尾を入れる革袋も買っておく。

こちらは大銅貨6枚だった。

一度宿に戻って、準備する。

ガンベルトに『S&W M10』リボルバー。全弾装填済み。

AK47にバナナ・マガジンを装填。特注で作った 革の紐(スリング) が外れないか確認する。

ガンベルトの左側に予備マガジンを2本入れた。

こちらも特注で作ったマガジンポーチだ。

リュックの両側にはそれぞれひとつずつ、予備のマガジンを入れておく。またリボルバー用の弾薬も1箱入れた。

さらに腰の後ろに買ってきたばかりのナイフを装備。

これで武装は完了。

他に、リュックには革袋、魔術液体金属で作った水筒、サンドイッチ(カリカリに炒めた肉、トマトに似た野菜、固く焼いた卵焼き入り)が入っている。

念のため魔術液体金属を500ミリリットル分だけ持っていく。入れ物は魔術液体金属で作ってあり、念入りに封がしてある。

魔物払いの薬水の瓶も割らないように布で包み一番上に置く。

リュックを背負い、AK47を肩にかけて宿を出る。

「さて、とりあえず西門から抜けて森沿いを歩いてみるか」

冒険者関連の建物が集まる西区を抜け、門を出る。

門番にタグを見せたらすぐに出ることが出来た。

そのまま歩いて畑や家畜場を抜け森側をなぞるように歩く。

約30分ほど歩くと。

100m先に、森から4足歩行の生き物が姿を現した。三匹いる。

狐のような三角耳、鋭い牙、すばしっこそうなやせ細った体躯、尻尾が竹箒のように広がりそこだけ毛のボリュームがある。

まるで野犬だ。あれがガルガルか。

前世の世界における実戦空手の父、大山倍達曰く――『人間は日本刀を持ってやっと猫と互角』

確かにあれだけ敵意剥き出しの魔物相手に、素人が剣や槍などで戦ったら苦戦は必死だろう。

『オオオオォッォッォォォッォォォッ!!!』

3匹のガルガルはオレを獲物ととらえ、遠吠えをあげ疾駆してくる。

魔物にとって子供の肉はご馳走。

剣も持たず、1人でぶらぶら歩いているオレは、奴らからしたら『鴨が葱を背負っている』状態なんだろうな。

だがオレは慌てずAK47を肩から下ろす。

安全装置を解除。

フル・オートに合わせる。

コッキングハンドルを引き、 薬室(チェンバー) にまず弾を1発移動。

肉体強化術で身体能力を向上。

右膝を地面につけ、左足の爪先を相手に向ける膝射姿勢。

ストックを肩に。

銃口をガルガルへ向ける。

ガルガルはもちろんアサルトライフルなど知らない。

だから、銃口を向けても逃げ出さず、真っ直ぐ獲物に向かって疾駆してくる。

オレは3匹全て仕留めるため、逃がさないよう十分引きつけた。

距離が30mを切る。

息を吸い、吐く――射撃の邪魔にならないように呼吸を止めた。

引き金を絞る。

タン! タタタタタタン!

軽快な発砲音。

横一列に並んでいた三匹のガルガルは7.62mm×ロシアンショートを頭部や肩に被弾し即死、転倒する。

戦闘は10秒もかからず終わった。

念のため薄くだが肉体強化術を維持したまま近づく。

足ででつつくが反応はなし。

確実に絶命している。

「思った以上にあっけなかったな……。これもAK47のお陰だ。てか、この程度の魔物相手だとオーバースペックだな」

一旦、AK47の安全装置をかけ、肩に担ぎ直す。

腰からナイフを抜き、尻尾を一通り切り落とした。

リュックから革袋を取り出し、尻尾を入れて口を縛る。

道具店で買った薬水を数滴、ガルガルの死体に振りかけた。

鼻で嗅ぐが匂いは別にしない。

人間が気付くレベルではないのだろう。

薬水と、尻尾を入れた革袋をリュックに詰め直す。

切った箇所を下にしたため、リュックからは尻尾の先が飛び出る形になってしまう。

後頭部に毛が当たる。

意外にも触り心地がいい。

戦闘の邪魔にはならなそうだ。

「今の凄かったね。あの肉食ガルガル数体を一瞬で倒すなんて」

「!?」

森の中から声をかけられ、とっさにAK47の銃口をむけてしまう。

「ちょ、ちょっと待って! 待ってくれ! 俺達は冒険者だ!」

男が1人両手をあげ、武器を持っていないとアピールする。

他にも手をあげている男の後ろから2人――男1人と女1人が顔を出す。

彼らに敵意はなさそうだ。

後ろに立つ男は憮然とした表情をしているが、元々そういう顔立ちなんだろう。

「おどかしてごめん、ごめん。ガルガルの雄叫びを聞いたから、気配を消して近づいちゃって。おどかすつもりはなかったんだよ」

最初に声をかけてきた金髪のイケメン猫耳男が、軽い調子で謝罪する。

猫耳から分かる通り 獣人種族(じゅうじんしゅぞく) だ。

腰には短い刃を2本装備している。

「いえ、こちらこそすいません。アサルトライフル――魔術道具を向けちゃって」

「冒険者よね? 見ない顔だけど新人君かしら?」

「は、はい。今日登録したばかりです」

後ろに立っていた女性が、興味深そうにオレの顔を覗きこんでくる。

銀髪をショートカットに切りそろえ、胸を革の鎧で覆っているがヘソは丸出し。肌は褐色。それからローライズなズボンを履いている。

手には弓、背中には矢を背負っている。

瞳は金色で瞳孔が縦に伸びている。見た目は人種族だが、どうやら 魔人種族(まじんしゅぞく) らしい。

「うはー! マジで新人なの!? なのにこれだけのガルガルを瞬殺なんて。まーた、俺達を軽々抜いていく奴がでてきちゃったよ。しかもまだ子供だし。ショックでかいな、エイケント!」

「冒険者に年齢は関係ないだろ」

「あははは、確かにそうだ!」

金髪獣人の言葉を、背後にいる男が一蹴する。

エイケントと呼ばれた男は短く刈り込んだ髪をしていて、筋肉質の体を持ち、背丈も高く180センチはある。

顔に刻まれた深い傷がベテランであることを無言で主張している。

武器は背負っている無骨なロングソード。

見た目からオレと同じ人種族だろう。

彼は背を向け改めて森へと戻っていく。

「おい! どこいくんだよ!」

「……仕事に戻るんだ」

「ごめんね、エイケントは無愛想で。別に君に怒っているわけじゃないからさ。それじゃごめんね邪魔して。クエスト頑張ってね」

「いえ、気にしてません。そちらも頑張ってください」

「ちょっと2人とも置いていかないでよ!」

猫耳がエイケントの後を追い、褐色お姉さんもウィンクひとつしてフォローを入れて彼らに続く。

オレは新人冒険者らしく、先輩諸兄に頭を下げた。

普通は、彼らのようにひとつのクエストを数人でこなすのだろう。

将来的にはスノーがいる魔術師学校側の街に行くから、彼女と2人でクエストをこなすのもありかもしれないな。

スノーが忙しくない時に限るが。

「あいつの場合、オレが声をかけたら授業をサボって参加しそうだけど……」

あれ以上アホの子化が進むと、簡単に他人に騙されそうで困る。

この世界は危ないところだから、気をつけるよう言っておかないと駄目だろう。

「まあ、先のことはいいか。どっちにしてもここである程度経験を積んでからだ」

予想外のハプニングがあったが、初戦闘はまったく問題なし。

この程度の魔物なら楽に倒せる。

「さて、日が沈む前に、頑張って魔物退治をしておくか」

AK47を担ぎ直し、オレは再び歩き出した。

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その後、さらに森沿いを歩いた。

運が良いことにガルガル4~5匹の群れと連続で遭遇。

もちろんギリギリまで引きつけて全滅させた。

尻尾が30本を越えた辺りで、街へと帰還する。

街には日が完全に沈む前に戻ることができた。

夕陽を浴びながら、西門をくぐった側にある 冒険者斡旋組合(ギルド) 換金所に立ち寄る。

換金所付近は夕方で混み合っており、さながら市場のような雰囲気だった。

木箱に入った大量の鱗。虹色のキノコ。鋼鉄のような質感の大きな角――等々が大量に並ぶ。

換金の対象となるモンスターの一部は、優良なアイテムにもなる。そのため商人達まで集まり活気が溢れている。

自分のはサイズが小さいため、カウンターで問題ないだろう。

カウンターに立つオジさんに声をかける。

「すみません、ガルガルの尻尾を査定して貰いたいんですが。数は31本です」

「ほう!? 31本ですか。これをお1人で?」

「はい、運良く群れと連続で遭遇したんです」

オレはカウンターを担当する中年の人種族男性に、ガルガルの尻尾が入った袋を手渡す。

男はさらに、

「冒険者タグもおだし下さい」

「どうしてですか?」

「タグに冒険者さんの取引情報を一時的に書き込むためです。 冒険者斡旋組合(ギルド) でその情報を確認し、レベルをあげる物差しのひとつにしておるのです」

なるほどそういうことか。

オレは礼を告げ、首から提げていたタグを一緒に出す。

担当者は袋から尻尾を取り出し、数える。

2回数を確認して、受け皿に尻尾31本×銀貨1枚=金貨3枚+銀貨1枚を置く。

さらにタグに魔術道具の羽ペンで情報を入力する。

今度はオレが金額を確認して革袋の財布にしまい、タグを受け取る。

「そういえばこの尻尾ってなんのアイテムになるんですか?」

「ガルガルの尻尾はしなやかでかつ強靱なので、ばらせば色々な用途があるんです。あとは、高級はたきとかにもなりますよ。この尻尾の長さ、毛の柔らかさ、丈夫さ、どれもちょうどいいでしょう?」

言われてみれば、たしかにはたきに使えそうだ。

高級というからには値段は高いのだろうし、庶民には手が出ないだろうが。

冒険者斡旋組合(ギルド) 換金所を出て宿に戻り、一度荷物を全て置いてから隣の飲み屋で夕飯を摂る。

そして早々にベッドに潜り込む。

初クエストで疲れた。

冒険者斡旋組合(ギルド) へ報告に行くのは明日でいいだろう。

オレは目を閉じると、すぐに深い眠りに落ちていった。