軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第142話 クリス、14歳――『クリス14 シシギを撃て! 中編』

ハッターからクエスト依頼を受けた翌朝、早くオレとクリスは馬車に乗り込みシシギが現在住み着いている森へと向かう。

今回のクエストは人数が多いと、シシギに気付かれ逃げられる可能性があるため、オレとクリスの2人で向かっている。

リースが居ないため馬車の荷台には寝具や食料、武器一式などがごちゃごちゃと置かれていた。

森までは片道で1日。

往復で2日だが、それ以上の食料、水、消耗品を準備しておいた。

用心に越したことはない。

ココリ街を出発してすでに数時間。

「……昨日の奴ら、パウック達が待ち伏せや挟撃をしかけてくると思ったんだけど、来ないな」

『シシギ病』に効果あるほど新鮮なシシギの肉は美味で、高値が付くらしい。

『ハッターの依頼を蹴って、肉を市場に売らないか?』と、パウックという名の人種族に昨日話を持ちかけられた。

捨て台詞も残していたし、オレ達が2人になった所で数的優位を確保した段階で襲ってくるかと思ったんだが……。

「わざわざPKMも準備したっていうのに」

オレは荷台にある発砲準備を終えているPKMに視線を飛ばす。

『多分、私達がシシギを取った後、帰り道に襲うつもりでは?』

なるほど、まさに一石二鳥だな。

一応用心してPKMを用意しておいたが、クリスの指摘通り帰り道が本命だろうな。

「どっちにしろ馬車にはPKM、AK47、手榴弾、対戦車地雷、パンツァーファウスト諸々持ってきたからドラゴン相手でも完勝出来るぞ」

お陰で2人しかいないのに、少々馬車重量が過剰なのはご愛敬だ。

馬車をさらに進め、数時間後。

昼食のため、一度馬車を止め角馬達も休ませる。

オレが角馬達に水や塩を与えている間に、クリスが食事の準備をする。

準備といっても、草原にシートを広げお弁当や水筒に入れておいたお茶などを並べるだけだ。

準備が終わる頃にシートへ腰を下ろす。

お弁当箱にはサンドイッチがギッシリと詰まっている。

残念ながら妻達が作った物ではない。シアが訓練している護衛メイド見習い達に料理練習として作らせたものだ。

シア曰く、メイドたる者、料理ぐらい出来なければならないらしい。

オレは早速、その1つに腕を伸ばす。

「うん、美味い。さすがに純潔乙女騎士団時代、持ち回りで料理当番をしてただけはあるな」

『はい、美味しいです』

クリスもオレと同じハムサンドを食べながら、ミニ黒板を嬉しそうに掲げる。

見渡す限りの草原で、シートを広げて嫁と2人お昼を食べる。

天気も良く、見上げれば青空が視界一杯に広がっている。

これがただのピクニックなら、食後はクリスの膝枕で一眠りしたいぐらいだ。

「そういえばクリスが指導しているスナイパー組はどんな調子?」

『みんな、頑張ってますよ』

彼女はにこにことミニ黒板をかざす。

クリスが指導する偵察狙撃隊のメンバー達だけは、新・純潔乙女騎士団グラウンドではなくココリ街の外で訓練をおこなっている。

さすがにグラウンドで250mや500mの場所は取れない。

250mなら何とか出来なくもないが、他の訓練に差し障ってしまう。

クリスが指導する団員達は、新・純潔乙女騎士団メンバーでも特に視力がある者達で構成されている。ラヤラも観測手として努力しているらしい。

ラヤラで思い出したが、個人的に彼女には期待している。

まだ実現出来るかどうか分からないが、オレのある思いつきに付き合ってもらう予定だ。

直属の上司であるクリスにも、話を通しておかないとな。

そんなことをぼんやり考えていると、クリスが小さな指で自身の頬を指さす。

「お兄、ちゃん、ほっぺ」

どうやら卵サンドを食べた時、口元を外れて頬についてしまったらしい。

クリスは自分が取ると指を伸ばす。

人差し指で卵の欠片をすくうと、そのまま自身の口元へ迷い無く運ぶ。

赤い舌で卵の欠片を舐め取ると、幸せそうに微笑んだ。

「美味、しい」

その微笑みがたまらなく可愛い。

ついつい見蕩れてしまうほどに。

「お兄、ちゃん?」

「く、クリス~~~!」

「きゃッ」

オレの見つめる視線にクリスは小首を傾げることで尋ねてくる。

長い金髪の髪が青空から降り注ぐ光を反射し、睫毛の陰翳をより濃く見せる。そのせいか幼いが整った顔つきや肌の白さが際だつ。

草原には人影無し。

思わず押し倒してしまうのもしかたないのだ。

「お兄ちゃん、危ないで、す」

「ごめん、ごめん」

言葉では批難しながらも、表情はまったく怒っていない。

オレは謝罪を口にしながら、押し倒したクリスに唇を重ねる。

「んっ……」

クリスは草原に人気がないため、口内に押し込んだ舌にも素直に自身のを絡めてくる。だが、やはり外でキスをするのが恥ずかしいのか、いつもと比べて動きがぎこちない。

そのぎこちなさが、さらにオレのハートに火を付ける。

その時――草花の擦れる、異変の音。

「「!?」」

オレ達は弾かれたように側にあったAK47、SVD(ドラグノフ狙撃銃)を異音へと向ける。

そこには白黒兎が顔を出し、踵を返して離れていった。

互いに無言で銃口を下げる。

先程まであった甘い雰囲気は、草原の風に吹き飛ばされたように霧散していた。

オレは咳払いをしてから、

「お、お昼ご飯の続きでもするか」

「そう、ですね」

オレ達は何事もなかったように食事を再開した。

目的地の森に着いたのは太陽がしっかり落ちた夜だ。

馬車は森の側ではなく、100m程離した地点に止めた。

魔物対策のため、馬車から角馬も放す。

今夜はここで野営だ。

睡眠はクリスと交互に歩哨に立って取る。

最初はオレからだ。

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朝食を摂った後、早速森に入る準備に取り掛かる。

周囲に人影は無いがクリスは馬車内部で、オレは外で戦闘服へと着替える。

ALICE(アリス) クリップを装着。

腰回りに予備弾倉、手榴弾、ナイフなどを装備した。水筒も限界一杯まで入れておく。中途半端に入れておくと、移動する度に『ちゃぷちゃぷ』音がするためだ。

持っていく銃器は、オレは『MP5SD』。

シシギ対策で 減音器(サプレッサー) 付きを選んだが、どこまで効果があるのやら。

「あれM700P? SVDじゃないのか?」

『少しでも正確な射撃をしたいので』

SVD(ドラグノフ狙撃銃)はセミオートマチックだ。弾発射の直後に再装填が自動で行われる。その時、内部で動く部品の振動が射撃に影響を与えてしまうため、命中精度がボルトアクションライフルより低くなってしまう。

その点を考慮してより正確な射撃が出来るボルトアクションのM700Pを選択したらしい。

(でも、クリスの腕前ならSVDでも問題ないと思うけどな)

だが、彼女の考えた選択を横から口を出して否定するのも具合が悪い。オレは黙っていることにした。

準備を終え、いざ森の中へ。

さぁシシギ狩りの始まりだ!