軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第116話 紅甲冑との戦闘

『お姉様からお預かりしている甲冑に傷を付けやがって! 返り血でしか汚してはいけない甲冑に傷をつけやがって! 殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す! 生きたままはらかっさばいて、自分の臓物を喰わせてやるぞ!!!』

40mmグレネード弾の直撃を受け、店から吹き飛んだ紅甲冑が立ち上がると、手で掴めるほどの殺意を垂れ流し絶叫する。

魔術的処置を施しているせいか声で性別を判断するのは難しい。絶叫している今は、人というより野生動物に近いさえ気がする。

『そこのメイド! オマエは絶対に殺すからな!』

紅甲冑は背中の大剣を掴み構えると一閃。

「おわ!?」

距離があるのに、オレ達が居る店の壁を切り裂く。

「どうやらあの剣には風の魔石が込められている魔術武器みたいですね」

名指しで『殺す』宣言を受けているのにシアは冷静に状況を確認している。肝太過ぎるだろ……。

しかし40mmグレネード弾の直撃を受けて、こんなにぴんぴんしているとは……さすがに予想外だった。背中を冷や汗が流れる。

オレは彼女に小声で話しかける。

「MP5Kの残弾は幾つ残っている?」

「0です。先程で撃ち尽くしてしまいましたから」

つまり、現状銃器は0か。

これならリースを連れてくればよかった。

彼女がいれば『無限収納』から溢れるほど銃器を取り出せるのに。

オレが焦っていると、シアが何気ない口調で告げる。

「大丈夫です、若様。そろそろ姫さ――お嬢様達が到着する頃です」

「はっ? いや、だってリース達は純潔乙女騎士団の本部で待機の筈――」

オレが台詞を言い切る前に、紅甲冑が再度爆発、吹き飛び地面を転がる。

『うギゃあああッッッ!!』

「リュートくん、大丈夫!?」

「リュートさん、怪我はありませんか!?」

紅甲冑の悲鳴と同時に、店の前にリースをお姫様抱っこしたスノーが着地する。

リースの手には『GB15』を装着したAK47が握られていた。

どうやら先程の爆発は、彼女が撃った40mmグレネード弾らしい。

「スノー! リース! どうしてここに!?」

ドジっ娘であるリースは怪我をしないようお姫様抱っこされていたらしく、スノーの腕から下りて地面に足を付けながら頬を染める。

姿を現した彼女達に尋ねたのに、なぜか隣に居るシアが答える。

「奥様方――とくにお嬢様が女性の 軍団(レギオン) 代表者とお会いになるのを心配していて、若様には内緒で監視――ではなく、警護しようという話になったのです」

「し、シア! その話は内緒だって言ったでしょ!」

リースが顔を赤くして『わたわた』と慌てて、自分の護衛メイドを叱る。

えぇ~、つまり浮気を心配されていたんですか? マジッすか。オレ、そんなに信用ないんですか?

オレの内心を読んだのかリースが弁解する。

「りゅ、リュートさんを信用してない訳ではありませんよ。ただ前回、女性だけの 軍団(レギオン) 代表者に言い寄られてたとシアから聞いて、少し様子を窺いたくなったというか……」

リースは顔を赤くしてモジモジと体を揺する。

嫉妬してくれるリース、可愛い!

一方、スノーは快活に笑う。

「わたしとクリスちゃんはリースちゃんの付き添いだよ。ね、心配しなくても、リュートくんがわたし達を傷つけるようなマネなんてしないでしょ」

スノー&クリスは心底オレを信じ切っていたようだ。

これはこれで本当にありがたいし嬉しい。

『ちくしょうが!』

吹き飛び、瓦礫に埋もれた紅甲冑が、怒声と共に立ち上がる。

『生ゴミにたかる虫みたいに増えやがって! オマエ達もブチ殺してやる!』

紅甲冑が風の魔石が嵌められた魔術武器を振るう。

再び、鎌鼬のような鋭い風の刃がオレ達に襲いかかってくる。

スノーが間に割って入り、魔術を行使。

「我らを守護し敵の 腕(かいな) を防ぎ、阻みたまえ! 氷の精霊! 氷砦(アイス・フォート) !」

オレ達の周囲に氷壁が生まれ風刃と衝突し砕け散る。

その輝きを目眩ましに、リースの『無限収納』からオレやシアのAK47を取り出す。

スノーの影に隠れながら、 ALICE(アリス) クリップ付きのピストルベルトを装備していく。

「スノーはリースの護衛! オレとシアが奴を叩く。装甲が無茶苦茶硬いから7.62mm×ロシアンショートじゃ歯が立たないから気を付けろ!」

オレとシアは準備を整わせ駆け出す。

AK47に装備した『GB15』の40mmアッドオン・グレネードを発射! しかし、紅甲冑は回避する。

『そう何度もボカスカ当たるか!』

甲冑を着込んでいるとは思えない敏捷性。

鋭い動きで切り込んでくる。

「おわ!」

咄嗟に回避。

金属の塊が鋭い音を立てて側を通り過ぎる。

流れるような動きで、手首を返し切り上げてくる。

相手にリーチがありすぎて、回避が間に合わない!?

――ガン!

大剣が何かに弾かれ軌道がそれる。

『今度は一体何!?』

さらに立て続けに発砲音。

紅甲冑は警戒してバックステップで距離を取るが、追いかけるように発砲音が続く。

約150m。

クリスが屋根の上に俯せになり、SVD(ドラグノフ狙撃銃)で牽制射撃をしてくれているのだ。

『雑魚が! 調子に乗るな!』

紅甲冑は魔石の光量を増大。

屋根に居るクリスへ先程とは比べものにならないほど強い風刃を飛ばす。

クリスが慌てて体を起こし、逃げ出そうとする。

風刃によって屋根が砕け散ってしまった。

「クリス!?」

「大丈夫です、上手く回避したのを確認しました。それより目の前の敵に集中してください」

夜目が利くシアが言うのだから、間違いないだろう。

視界の端、リースがいつの間にか取り出したPKM―― 汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) を紅甲冑に向ける。

オレは慌てて紅甲冑から距離を取る。

「行きます! ファイヤー!」

ダン! ダダダダダダダダダン!

7.62mm×54Rが雨霰と紅甲冑へと降り注ぐ。

相手は堪らず大剣を突き立て風壁を生み出し防御に徹するが、そんな紅甲冑にシア、スノーが示し合わせたように互いのAK47に装備している40mmアッドオン・グレネードを発砲。

『!?』

リースのPKMに足止め&注意を引きつけられていた紅甲冑は、今度こそ40mm弾の直撃を受けた筈だ――と、思ったが立ち上る煙を切り裂き、敵が建物屋根へと着地する。

最初は鮮やかだった紅の甲冑だったが、現在は一部焦げ、表面の細工も欠けていた。まるで美術品だった品物が、空爆にあった後のようだった。

オレは思わず舌打ちする。

「硬い上に、すばしっこいなんて反則だろ。クソッ、決定打にかけるな。いっそ、 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) で一気に畳みかけるか?」

だが、さすがに 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) を街中で使用した場合、敵と一緒に目の前の家々などが廃墟状態になるのは請け合いだ。

さすがに街中での使用は躊躇われる。

紅甲冑も今まで戦ってきた相手と比べて異質な攻撃を繰り返してくるオレ達に危機を覚えたのか、

『今夜はこれで引く! けど、絶対に甲冑を傷つけたオマエ達の首は切り落とす。絶対にだ! 毎日、毎夜、怯えながら過ごせ!』

捨て台詞を吐き出すと、紅甲冑は背を向け証言通り屋根伝いに風より早く移動し、あっという間に姿を消してしまう。

残されたオレ達は、引いたと見せかけて隙を突き襲撃してくるのを警戒して暫し辺りを伺い続けたが……再度の襲撃は約10分経っても起こらなかった。

どうやら本当に紅甲冑は逃走したらしい。