軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第117話 狂気の卵

紅甲冑の襲撃があった翌日、昼前。

純潔乙女騎士団、顧問室。

対面のソファーに座るガルマが言いにくそうに語り出す。

「まず現状なんだが……他2つの 軍団(レギオン) ――『 狼剣(ウルフ・ソード) 』『 百合薔薇(リリ・ローズ) 』は陽が昇ってすぐ街を出て行ったよ。曰く『硬いし、素早いし、攻撃力も高い。あんなのが赤い奴の他にも居るかもしれないんだろ? 冗談じゃない! あんなヤバイ奴らが目標とは思わなかった。あれを相手にするぐらいならまだレッドドラゴン1匹と戦った方がマシだ! 俺様達は手を引くぞ!』。『 私(わたくし) 達、 百合薔薇(リリ・ローズ) もこの件から手を引きます。わ、 私(わたくし) 達は PEACEMAKER(ピース・メーカー) と敵対するつもりはありませんから。手を組むというお話も無かったことで、どうかお忘れください』と言ってね。どちらの 軍団(レギオン) 代表者も、昨夜の君達と紅の甲冑との戦いを見て尻込みしたようでね」

意外な形で問題の1つ、他 軍団(レギオン) からの横やりを片付ける結果になった。

これだけなら、ガルマも苦い顔を作らない。

むしろ諸手を挙げて喜ぶだろう。

彼は問題の方を口にする。

「次は、 冒険者斡旋組合(ギルド) から昨夜の戦闘について事情を聞きたいと……。なんでも傷ついたり破壊された建物が、全て 冒険者斡旋組合(ギルド) 関係の物だったらしくてね。関係者から 冒険者斡旋組合(ギルド) を通して苦情と賠償金を求められているんだよ」

そのせいで昨夜の戦闘に関わった人物達に事情を聞きたいため、速やかに 冒険者斡旋組合(ギルド) へ出頭するようにと厳しい口調で言われたらしい。

「賠償金ですか……」

オレを守るため、先に手を出したのはシアだ。

その後、建物や石畳等の破壊もオレ達がしてしまった。

つまり、全ての原因は自分達にある。

恐らく PEACEMAKER(ピース・メーカー) で負担……つまり建物や石畳、住人達への賠償金等はオレ達が全額負担することになるだろうな。

こちらの心情を察したのか、ガルマが口を開く。

「 PEACEMAKER(ピース・メーカー) は、現在純潔乙女騎士団と協力関係にある。だから、今回の賠償金は純潔乙女騎士団からも一部支払わせてもらうよ。ただ――君達の協力要請金を支払ったため、ウチは現在そこまで余裕がないからあまり期待はしないでくれ」

純潔乙女騎士団からはクエスト依頼金として結構いい金額を支払ってもらう約束を取り付けている。オレ達が飛行船で来たため、その分も上乗せされているからだ。

だが、なるべく早急に来るよう依頼されていたため、批難を受けるいわれはない。

「兎に角、魔術師殺し問題は引き続き残るが、結果として他2つの 軍団(レギオン) を街から追い出してくれてありがとう。純潔乙女騎士団の顧問として礼を言うよう。団長にも言わせたかったんだが、彼女は朝から雑務に出て行ってしまってね。すまない」

「いえ、別にお礼なんていりませんよ」

オレは頭を下げてくるガルマへ手を横に振り告げる。

ただ街中で暴れただけで、本当にお礼を言われるようなことはしていないからだ。

そしてオレは顧問室を出ると、嫁達が待つ部屋と向かう。

彼女達に 冒険者斡旋組合(ギルド) の件を話さなければならないからだ。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

現在、オレ達は純潔乙女騎士団本部で寝泊まりしている。

飛行船もグラウンドの端に置かせてもらっている。

オレ達に与えられている部屋は3階の客間。

建物は老朽化が進みボロいが、客間の内装は手入れが行き届いており外観とのギャップが激しかった。

置かれている家具も高級品ではないが、品の良い物が多い。

その客間が3部屋与えられている。

一部屋はオレ、スノー、クリス、リース。

一部屋はメイヤ。

一部屋はシアが使用している。

現在はオレ達夫婦が使っている客間に集まり、先程ガルマから聞かされた内容を皆に話す。

話を聞き終えると案の定、メイヤが怒声を上げ立ち上がる。

「納得いきませんわ! 天下に名を轟かせるリュート様にわざわざ出向いて事情を説明しろと! リュート様、今すぐ命じてください! ありったけのパンツァーファウストで 冒険者斡旋組合(ギルド) を壊滅せよと!」

「いやいや、言える訳ないじゃんそんなこと」

どうどう、と鼻息荒いメイヤを手振りで落ち着かせる。

「とりあえず、昨日の件について話をしにいかないといけないから、申し訳ないけど、みんな一緒に付いてきて欲しい」

皆がそれぞれの言い方で返事をする。

「あっ、メイヤは昨日の件に参加してないから、一緒に来なくても大丈夫だぞ」

「そんな! わたくしも一緒に行きますわ!」

「いや、だから、一緒に行っても話すことないだろ。昨日の紅甲冑との一戦には参加してないんだから。それより船の工房で新しい兵器制作の準備に取り掛かって欲しいんだ」

「まぁ! 新しい兵器ですか!」

新しい兵器、という言葉にメイヤは文字通り目の色を変える。

先程まであった憤怒の色は消え、星をばらまいた夜空のように目を輝かせる。

スノーがシアの淹れてくれたお茶を両手で包みながら尋ねてくる。

「リュートくん、どうして今頃新しい武器なんて作るの?」

「現在の装備だとあの紅甲冑を相手にするには火力が足りないからだよ」

AK47の徹甲弾、MP5Kの9mm(9ミリ・パラベラム弾)は弾くし、40mmアッドオン・グレネードの単発では素早すぎて回避されてしまう。

攻撃力、防御力が高く、動きも素早い。まるで小型のドラゴンレベルだ。そんなのが紅甲冑以外にも、オレ達を襲った銀色の甲冑など他にも居る可能性がある。

そりゃ他2つの 軍団(レギオン) も手を引くわ。

「だから、そんな素早くて硬い甲冑野郎を仕留めるための兵器を開発しようと思うんだ」

「それで一体どんな兵器を新しく開発するつもりですか!」

メイヤはエサを前にした犬のように息荒く、胸の前で手のひらを重ねて待つ。

オレは今にも涎を垂らし、抱きついてきそうな彼女にやや尻込みしながら、これから手を出す兵器の名前を口にする。

「甲冑野郎を仕留めるため新しく開発する兵器は『対戦車地雷』だ」

その名を告げると、『狂気の卵』達の産声が、微かだが聞こえた気がした。