作品タイトル不明
第106話 軍団、初クエスト依頼
「 軍団(レギオン) ――『 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 』様ご指定でクエスト依頼が来ております」
竜人大陸へ戻ってきて半年以上が経過していた。
オレ達はその間、休息に時間を費やした。
生活費など、必要な資金は貯金がまだ沢山あるからだ。
スノー、クリスはリースに家事のやり方を教えていた。
オレはメイヤと一緒に防具、武器などの開発を行っていた。
たまに時間を見付けてはウォッシュトイレの改良作業に手を出すなど――なかなか充実した時間を過ごしていたのだが。
そんなオレ達の元に名指しでクエスト依頼の手紙が届いたらしい。
朝、使いである少年が、自宅の扉を叩き 冒険者斡旋組合(ギルド) へ来て欲しいと告げられた。
オレはスノー、クリス、リースといった嫁達を連れ、 冒険者斡旋組合(ギルド) を訪ねた。
顔を出すとすぐ個室へと通される。
オレ達と一番面識があるという基準から、いつもの 魔人種族(まじんしゅぞく) の受付嬢だ。
その彼女から、台詞と共にクエスト内容が書かれた紙を手渡される。
「依頼人は純潔乙女騎士団特別顧問、ガルマ様という方からのご依頼です」
ガルマ!?
エル先生に結婚を勧めてきた敵じゃないか!
思い出しただけで腑が煮えくりかえる。
しかし今は仕事の時間。
怒りを表に出さずに手紙を受け取る。
「拝見させて頂きます」
手紙には仕事の依頼内容と簡単な現状が書かれてあった。
現在、純潔乙女騎士団が警備を務め、治安を守る街で魔術師が狙われる事件が多発している。
恐らく腕の立つ『魔術師殺し』の仕業だ。
しかし、現在の純潔乙女騎士団にそんな凄腕の『魔術師殺し』を相手取る力はない。
そのため『 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 』の助力を願う。
報酬は要相談。
『魔術師殺し』―― 冒険者斡旋組合(ギルド) に登録する冒険者によって、多々得意分野が違う。
魔物退治専門なら ――モンスターハンター
遺跡、迷宮専門なら――トレジャーハンター
護衛任務専門なら ――ガーディアン
対人戦専門なら ――傭兵、賞金首ハンター
対魔術師専門なら――『魔術師殺し』と呼ばれる。
魔術師ばかりを狙うのと、ガルマが元冒険者だから『魔術師殺し』なんて名称を使っているのだろう。
オレは手紙を読んで気になった部分を質問する。
「あの 軍団(レギオン) が 軍団(レギオン) にクエストを依頼……助力を求めてもいいんですか?」
「はい、特別に珍しい話ではありませんよ。いくつかの 軍団(レギオン) が共闘し、ドラゴン複数を倒した――なんて話も多々ありますし」
受付嬢が何気ない風に断言する。
態度からして本当に珍しいことではないらしい。
さらに受付嬢が指摘する。
「それに皆様は、 軍団(レギオン) を作る前――双子魔術師を無傷で倒してらっしゃるじゃありませんか。あの双子魔術師を生け捕った『魔術師殺し』って、冒険者達の間では結構有名になったんですよ。だから、今回名指しでクエストの依頼があったんじゃないでしょうか」
その話は初耳だ。
確かにオレ達は過去、冒険者レベルを上げるためのクエストを受注した。
その際、護衛途中で双子魔術師と遭遇。
クリスのスナイパーライフルのお陰で、被害を受けずに生け捕りにすることが出来た。
まさかその件で『魔術師殺し』として、冒険者の間で有名になっていたとは知らなかった。
「それで受理しても宜しいでしょうか? 緊急案件ではありますが、1~2日ぐらいなら考える時間はありますよ?」
受付嬢が営業スマイルを浮かべながら尋ねてくる。
その問いにオレは――
「はい! もちろんお断りします!」
満面の笑顔でお断りした。
同じソファーに座っていたスノー、クリス、リースが愕然とする。
スノーが代表して聞いてくる。
「どうしてクエスト受けないの? エル先生のお友達からの緊急案件なんだよ? それに『 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 』の理念は、『困っている人、救いを求める人を助ける』じゃなかったの?」
「確かにそれが『 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 』の理念だ。でも、ガルマはエル先生に結婚相手を紹介する敵だ。しかもツテで条件の良い男を紹介するなんて言葉巧みに誑かそうとした質の悪い輩。そんな敵に情けをかけちゃいけないんだぞ?」
「条件の良い男性を紹介……ッ!?」
オレの言葉になぜか正面のソファーに座る受付嬢が反応し、目の色を変え立ち上がる。
いや、別に貴女に紹介する訳ではないので、落ち着いてください。
彼女はオレ達から向けられる冷たい視線に職務を思い出したのか、咳払いして何事もなかったように座り直す。
スノー達が改めて説得を開始する。
「でも、いいの? エル先生の友達の依頼を断って。エル先生のお友達からの依頼なら、『 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 』の初クエストとしてちょうどいいと思うんだけど」
「それに今回の件を断ってエル先生さんに怒られるかもしれませんよ?」
『最悪、嫌われるかも……』
エル先生に怒られるのは怖い……が、彼女に嫌われるだとッ!?
「……っ!」
想像しただけで食道を酸っぱい物がこみ上げてくる。
オレは慌てて口元を抑えた。
ヤバイ! 想像しただけで胃に穴が開きそうだ!
オレは涙目になりながらも、力強い瞳で受付嬢へ向き直る。
「やります! いえ、そのクエストを是非、やらせてください!」
「わ、分かりました。では、 軍団(レギオン) ――『 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 』として受理させていただきます」
オレは妻達と共に声を合わせて『お願いします!』と返事をした。
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これはクエストを受注した後、 冒険者斡旋組合(ギルド) の帰り道に妻達から尋ねられた質問だ。
どのような男性ならエル先生の夫として認めるのか?
「真面目で、優しくて、働き者で、自分のことより妻を大切にして、他の女性に目移りしない一本気のある性格で、収入が安定していて、エル先生を守れる強さがあって、義理堅く、周囲から一目置かれ、地位や名誉に胡座を掻かず努力して、僕が尊敬――まで行かなくてもエル先生を『この人なら任せられる』と思える人なら許す」
そんな男性はこの世にいないと断言された。
最近、うちの妻達が冷たい気がする……。