軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第96話 新メンバー

ルナが走り去った後、飛行船の出発準備が整ってしまう。

オレは見送りに来てくれたハイエルフ王国、エノールの国王と言葉を交わした。

「どうか、娘を頼む。ガンスミス士爵」

「はい、任せてください!」

結局、家名は『ガンスミス』にした。

リュート・ガンスミスだ。

語呂も悪くないし、扱っている魔術道具(武器)も現すというウィットにも富んでいる。

紋章も『ガンスミス』をある意味強調するため、『リボルバーと6発の弾丸』という図案にした。

最後までAK47の図案と迷ったが、後者だと革命ゲリラっぽいので最終的には前者になったのだ。

ちなみに前世の世界、『スミス』とは英語で『職人』という意味になる。

ウォッチスミスなら、時計職人。

ロックスミスなら、錠前職人。

だがガンスミスは勘違いされやすいが、言葉の意味としては『銃器職人』だ。

しかし業務は銃の加工や調整が主で、1から銃器を制作したりはしない。

銃を所持する依頼人の要望に沿って、銃をカスタマイズ(カスタムパーツの組込み等)するのがガンスミスという仕事である。

基本的にガンスミス専門のスクールや先輩ガンスミスに弟子入りして技術を学ぶ。独学で学ぶことも可能だが、一般的ではないらしい。

国王の『娘を頼む』発言は、側に控える大臣、衛兵達は留学に対しての言葉だと思っているだろうな。

そして、スノー達もお世話になった人達と挨拶を交わしていく。

飛行船に乗り込み出発。

飛行船が飛び立ち、見送りの人々が小さく認識出来なくなるまでオレ達は手を振り別れを惜しんだ。

その中にルナの姿は無い。

周囲に心配を掛けまいとクリスが常に微笑みを浮かべているのが痛ましかった。

その日の夜。

夕飯を食堂兼リビングで摂り終えると、クリスに声をかけた。

オレに割り当てられた私室で、クリスと2人っきりになる。

ベッドの端に腰掛け並んだ。

『お話ってなんですか?』

「ルナのことなんだけど……」

今、この場にオレしかいないため、彼女は人前では見せない悲しそうな表情を浮かべる。オレは堪らず彼女の肩を抱き寄せた。

「あんな形でお別れしちゃったけど、きっと彼女もまた会う時はきっと分かってくれるよ」

そっと柔らかな髪を撫で慰める。

クリスはギュッとオレの服を掴んできた。

さらにオレは彼女を抱き締める。

そこに、ノック音もそこそこにスノーが慌てた様子で部屋に入ってきた。

「リュートくん! クリスちゃん、大変だよ!」

「何かあったのか!?」

彼女の慌てようにオレ達は身を堅くする。

「とにかく、2人共来て!」

スノーに促され、彼女の背中に慌てて付いていく。

食堂兼リビングへ着くと、そこには――

「クリスちゃん! また会えたね!」

「!?」

食堂兼リビングにはなぜか喧嘩別れしたはずのルナが居た!

彼女はクリスを目にすると、いつもの態度で抱きつく。

「ど、どうしてここにルナが居るんだ!?」

「それがどうやら何時の間にか乗船していたらしく……」

シアが戸惑いながら説明する。

オレとクリスが私室に移動し話している間に、スノーとシアが異変に気付いた。

どうやら飛行船の倉庫部分で物音&気配に気付いたらしい。

そこでスノーとシアが2人で様子を見に行った。

そしたら夕飯を食べておらずお腹を空かせたルナが、食料を漁っていたらしい。

とりあえず確保し、食堂兼リビングへと連れてきた。

姉であるリースは、予想外の事態に隅で頭を抱えていた。

オレは混乱しそうになる頭を抑えながらも、何とか問い質す。

「と、兎に角だ。事情は把握したが、どうやって・何時、飛行船に侵入したんだ? 別れた後、乗り込む隙なんて一切なかっただろう」

そう、一切無いのだ。

乗船するには橋を昇らなければならないが、クリスと喧嘩別れした後、常に誰かしら橋の側にいた。その目を盗んで昇るのはまず不可能。

肉体強化術で橋を使わず侵入することも出来るが、そんなことしたら魔力を察知されてすぐに気付かれてしまう。

ルナはオレの質問に、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら説明を始める。

オレを油断させるため、ワザとくしゃみをして2重底の衣装箱に隠れていることを発見させた。これでもう倉庫に隠れていることはないだろうと。

クリスに差し出された絵本を拒絶したのも演技。

「本当はクリスちゃんを悲しませるマネなんてしたくなかったけど、その場から自然に立ち去るためにはしょうがなかったの。ごめんね、クリスちゃん!」

敵を騙すならまず味方から――か。

そして城に戻る振りをして、大きく迂回して飛行船の裏側に接近。

この時、オレ達は見送りの国王達と話をしていたため、注意がそれてしまいまったく気付くことが出来なかった。

だが、そのまま飛行船に侵入することは出来ない。

橋を使わなければ、少女の肉体で飛行船に乗り込むことは不可能だ。

「だから、飛行船の出発するのに合わせて、肉体強化術で身体を補助してリューとん達が皆に手を振っている間に飛行船に侵入して、船底に隠れていた訳よ」

その方法があったか!?

飛行船は魔石に溜め込んだ大量の魔力で飛行する。そのため飛行中は周囲で他者が魔力を使っても察知出来ないというデメリットがある。

その隙を付いてルナは飛行船にまんまと密航したのだ。

しかも事前にワザと密航を失敗させ、こちらの心理的警戒心を取り除いた上でだ。

ルナが抱きついていたクリスから手を離すと、笑みを浮かべたままオレの周囲をグルグル回り出す。

「ねぇねぇどんな気持ちwww 国を救った英雄様が出し抜かれて今どんな気持ちwww」

幼女(見た目は)をこんなに殴りたいと思ったのは初めてだ。

オレは拳を硬く握り締めブルブルと振るわせる。

(そうだ、落ち着けオレ。ここで怒るなんて大人げないぞ……ッ)

数度呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせる。

「とりあえず引き返してルナをエノールへ置きに行こう。今頃騒ぎになっているだろうし」

「あわわわ! ご、ごめんなさい! 調子に乗りすぎたわ! でも大丈夫、ちゃんと手紙でお姉ちゃんと一緒に留学するって書いておいたから。それにルナ、凄い役に立つから。だから、ここに置いてよ、いいでしょ、リューとん!」

「いい加減にしなさい! 貴女は本当に周りに迷惑ばっかりかけて! エノールに戻ったらお父様にタップリ叱って貰いますからね!」

さすがに怒ったリースに雷を落とされる。

ルナは首をすくめながらも、慌ててオレに対する売り込み攻勢を強めた。

「待ってよ! 本当にルナ、役に立つんだよ! これ、見て!」

「これって、リースが撃った空薬莢?」

ルナがポケットから取り出したのは、リースが竜騎兵達相手に撃ちまくった 汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) 、PKMの空薬莢だ。

兵士やメイド達が懸命に拾った筈だが、まだ取りこぼしがあったらしい。

「んで、倉庫で見付けたこの魔術液体金属を――」

ルナはミニ樽に入れた魔術液体金属に両手を入れ、魔力を注ぎ込む。

するとルナの手のひら一杯に同じ空薬莢が出現する。

『!?』

「どう? 凄いでしょ!」

湖外の屋敷で魔術液体金属で弾丸などを作っていたのは、クリス&オヤツ目的で通っていたルナは知っていた。

だが、彼女にそのやり方を一度だって教えたことはない。

オレとメイヤは目を白黒させながら、手のひらにある空薬莢をそれぞれ手に取る。

「……問題ない。すぐに使えるぞこれ」

空薬莢は形、厚み、質量、硬度、長さ――どれをとっても完璧だ。

後は 雷管(プライマー) 、 発射薬(パウダー) 、 弾芯(ブレットコア) 、 被甲(ジャケット) を詰め込めば 弾薬(カートリッジ) として使用可能になる。

天才魔術道具開発者のメイヤですら、オレが直接指導して数年掛けてこのレベルに達したというのに……。

「でもどうやって作り方を覚えたんだ? もしかしてこれがルナの『精霊の加護』の力とか?」

「いえ、この娘はまだ100歳になってないので『精霊の加護』はありません」

リースの指摘に『精霊の加護は100歳になってから』という条件を思い出す。

では、どうやって作り出したんだ?

これも新妻のリースが教えてくれた。

「ルナは昔から一度見たものは忘れない娘なんです」

完全記憶能力!?

「いや、だとしても強度はどうする? 決まった魔力をちゃんと注がないとこの強度にはならないだろう」

魔術液体金属は魔力を注ぐと硬くなる。

しかし一定以上注ぎすぎると途端に脆くなる性質性質がある。単純に魔力を注げばいいというものではない。

オレの問いにルナが快活に答える。

「そんなの簡単だよ。この音になる程度に魔力を注げばいいんだから」

ルナは空薬莢を指で弾き金属音を響かせながら、何気ない口調で告げる。

さらに絶対音感持ちかよ!?

ルナのハイスペックにただただ驚く。

苦労してその技術を身に付けたメイヤは――

「わ、わたくしがあんなに苦労したのに」と落ち込んでいた。

一方姉であるリースは――

「そうなんです。昔から姉様もルナも優秀で……なのに間にいる私は『傾国姫』と言われるほど才能もなく、ドジで……。どうして同じ両親から生まれてこれほど差があるんでしょうね。もしかしたら私だけ両親の子供ではないのかも――と考えていた時期もあったぐらいで」

と、なんかトラウマっている。

しかし、こいつは欲しい人材だ。

魔術師で魔力値も高く、無煙火薬を彼女に覚えさせたら大量に 弾薬(カートリッジ) を制作出来る。

汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) のPKMを製作したため、 弾薬(カートリッジ) はいくらあっても困らない。

オレが感心していると、ルナがめざとくさらに営業をかけてくる。彼女は冗談っぽくシナを作り、ウィンクを飛ばす。

「もしここに置いてくれるなら、リューとんのお嫁さんになってもいいよ? クリスちゃんと一緒に可愛がってね♪」

『それは駄目です。ちゃんとお兄ちゃんが好きならともかく、残りたいために身を売るマネをするなんて』

さすがに今の発言に、クリスが珍しくルナを叱責する。彼女は大好きなクリスの指摘のせいか、素直に謝罪した。

「ごめんね、クリスちゃん。リューとんも変なこと言ってごめんなさい」

「いや、気にしてないから大丈夫。兎に角、これからどうする?」

「もちろん、国へ送り返します。密航なんて、リュートさん達を騙すようなマネ、ハイエルフ族の王族として容認できません」

「ちょっと、お姉ちゃん!」

ルナは声を荒げるが、リースの判断が正しいだろう。

だがここでルナは手札を切る。

「騙すようなマネって……お姉ちゃんこそ、ルナのこと騙した癖に!」

「えぇえ! わ、私がルナを騙すなんてあるはずないでしょ!」

「あるもん! 大蠍(ジャイアント・スコーピオン) を倒しに行く旅に出る日――」

『――はぁー、無事今回の件が片付いて落ち着いたら、お父様にお願いして少し遠出をしましょう。だから今回は大人しくお城で待っていなさい、いいわね?』

約束してたーーー!!!

オレ達も討伐後、色々ごたごたがあってすっかり忘れていた。

リースも自分の発言を思い出したらしく、二の句が告げなくなっている。さすがドジっ娘姫。妹相手に綺麗に反論を喰らうとは。

「ルナ、楽しみにしてたのに……」

「え、えっとね、その……わ、忘れてた訳じゃないのよ。ただ色々忙しくて、後々に伸びていたというか……」

「王族は騙すようなマネはしないんだよね?」

「うぐ……ッ」

どうやら勝敗は決したらしい。

ルナの処遇について――とりあえず、仮の留学を認める形になった。

但しもし問題を起こしたり、こちらの言うことを聞かなかった場合などは問答無用で送り返すと約束させた。

一旦、近場の街に飛行船を止め、早馬でルナの無事を国に知らせる。

そして、用事を済ませると再び飛行船は飛び立つ。

向かう先はアルジオ領ホード、エル先生が待つ孤児院へ向かう。

そこで結婚したことを報告するつもりだ。

途中で色々問題はあったが、飛行船はオレが生まれ育った孤児院へと飛んで行く。

<第5章 終>

次回

第6章 少年期 日常編―開幕―