作品タイトル不明
第87話 レベリング 美学を取るか 実利を取るか
しっかりと休息をとって翌日。探索の再開である。
当然、道中寄れるスライムポイントで荒稼ぎをする訳だが、11階層に着くまでにレベルは1しか上がらなかった。
俺達の経験値の必要量が上がってしまったのもあるが、どうにも敵とのレベル差が縮まってきたっぽい。
いかにスライムが経験値の多い魔物とはいえ、格上から同程度の相手に落ち着けば、効率も落ちるという訳だ。
まあそれでも他の探索者と比べれば、遥かにレベリングが進んでいるわけだが。
「どうせならキリ良く20までは行ってから中層に入りたかったな。ねぇ拝賀君?」
「……」
とうとう拝賀君は口も聞いてくれなくなった。
流石にからかいすぎたか。拝賀君も20になるまでめっちゃ苦労したって言ってたもんな。なのにこんな簡単にレベルを上げてたら、そりゃ拗ねる。
からかうのはここまでにしておこう。こんな便利なパシリを手放したくないし。
もう拝賀君なしの人生なんて考えられないよ俺には! 本当にごめんねっ! 良い思いさせてあげるからこの遠征では我慢してなっ!
さて、気を引き締めて――11層。いわゆる中層と呼ばれる階層である。
全探索者の二、三割くらいしか辿りついていないという事実を鑑みれば、俺達も探索者として上澄みに入ったということだ。
そう思うと、ちょっと感動するな。俺なんかがその分野の一流レベルに食い込める時が来るなんて。
ここまでやってきたことを考えると、あんまり実感は無いけどな。
「どう? 中層にたどり着いた感想は?」
「感慨深い……ってことはないですね。正直、あんまり今までと変わらないかなって」
俺の素直な感想に、川辺達も続いた。
「実際、何も変わっているように見えないよな」
「うむ。ここが低層だと言われても信じてしまいそうだ」
「今までと感覚が変わらないというのは、安心できる面もありますけど、景色が変わらないというのも精神的にきついものがありますね」
「そうかも。ちょっと飽きてきちゃいましたっ」
確かにな~。ここまで代わり映えが無いと、気の緩みと言うか、途方にくれるような気分になってしまう。ちょっとくらいは変化が欲しい所だ。
そんな俺達の反応に、ミライさんは同意するように笑った。
「ふふっ、素直ね。何も変化がないように感じるけど、勿論ちゃんと違いはあるわよ。まず例によってフロアの広さね。ここからは更に倍の半径40キロ近い大きさになるわ。面積で行ったら小さな都道府県を超えるわね」
「一気にスケールがデカくなったな……更に先に行くと?」
「16階層になれば半径80キロで、四国と同じくらいかしら。深層と呼ばれる21階層では100キロ前後に届くけど、広さはこの辺りで打ち止め。40層以降がどうなっているかは行ったことがないから知らないけど、さらに広くなっても不思議ではないわね」
「いや、今の段階で十分ですよ。四国ってもう都道府県というか地方レベルじゃないですか。とんでもないな」
「それでも北海道よりはだいぶ狭いけどね」
マジかよ北海道。やべぇな……。
「広いってのは知っていたけど、北海道ってそんな広いんだな。漠然としたイメージしかなかったわ」
「うむ。知識としては知っているが、あそこだけは別格だな。もはや国ではないだろうか」
ほんとだよ。伊達に試されし大地とか呼ばれてねぇな。そりゃ人も足りんわ。
「そして魔物。ここからは最低でも二、三頭で固まっているし、群れを作っている種類も多い。群れの中に上位種の魔物が混じっていたりして、そいつが統率して手強くなっているわ。今までと同じ感覚で居たら痛い目に遭うわよ。そしてそんな階層だからこそ、逆に孤立しているような奴はそれだけの実力があるから、って判断して間違いないわ。不用意に手を出しちゃだめよ」
なるほど。どうやらミライさんの言うことは正しいようだ。
【魔物鑑定】
名称:グレイブバニー
レベル:21(保有魔力値2216)
ステータス:【MP】107【STR】176【CON】114【POW】98【DEX】198【INT】76
スキル: 【脱兎】【統率】【俊敏】【穿角衝】
弱点属性:火
すっかり見慣れた角ウサギの群れの中に一匹だけ、やたらと強そうな奴が居る。そう思って【鑑定】をしてみたら案の定、上位種だ。
その群れを作っている角ウサギ達も、平均してレベル17くらいと、相応のステータスをしている。
これが当たり前の階層なんだと考えると、気を抜いたら死んでもおかしくないな。
絶対にミライさんから離れないようにしよう。いざとなったら躊躇わず拝賀君に頼もう。俺は俺が可愛い。
「それじゃあ、早速行きましょうか。ちょうど次の入口のルートに、スライムのポイントがあるわ。少しでも強くなっておかないとね」
マジで感謝ですっ!!
♦ ♦
「準備はいいか?」
俺が皆に声をかけると、静かに頷く。その表情は久しぶりに緊張した物だ。
もはやただの作業と化していたスライム狩りだが、ミライさんから今回ばかりは注意して臨んだ方がいいと助言を受けた。
中層での魔物の変化が、スライムにも現れているからだ。
「よし。こーいこいこいこい……こい――来たっ! ってデカッ!?」
ちょっとずつスライムが溜まった沼に近づくと、反応して続々とスライムが沼から這い上がってくる。その動きはやはり緩慢だが、小さなスライムの中に二回りは大きいスライムが混ざっているのを見て、思わず声を上げる。
【魔物鑑定】
名称:ヒュージスライム
レベル:22(魔力保有値4215)
ステータス:【MP】189【STR】98【CON】283【POW】205【DEX】29【INT】35
スキル:【群主感覚】【分体生成】【物理耐性】【溶解】
弱点属性:―
――強い! 当然ながら、スライムをそのまま強化したようなステータスだ。おまけに【群主感覚】に【分体生成】? 名前で想像するだけで厄介そうなスキルを持っている。流石に上位種なだけはある!
――だけど多い! 魔力保有値が多い! 強さ相応に、経験値がとんでもないことになっている! これを見たらステータスからくる恐怖も吹っ飛ぶ。美味しすぎる獲物だ!
デカかろうが所詮スライム。俺はそのように甘く見ていたのだろう。
恐怖も忘れて、俺はいつものように笑みさえ浮かべ、〈蒸発薬〉を投げつけた。
――ピギイイ! ピギッ……ピギギッ!
「マジか!? 耐えやがった!」
「「――シッ!」」
効いていないわけではない。その証拠に普通のスライム共はいつも通り死んでいるし、ヒュージスライムも苦しんでいる。ただ、それだけだ。ボコボコと沸騰している様子は見せつつも、じりじりと距離を詰めてきている。
流石に上位種ともなると低層素材で作ったアイテムでは威力が足りないかっ! 流石に舐めすぎていた。詰められる前に対処しなければ!
……というか、気のせいか? 今後ろから気合の入ったというか、なんか喜んでいるような拝賀君とミライさんの声が聞こえた気が……いや、まさかな。今はスライムに集中しよう。
「――ファイアナイフ!!」
俺が動く前に、伊波が先に動いた。
名前通り、小さな火の投げナイフが幾本もスライムの群れを襲う。火の【魔術】を使ったのは、蒸発薬を使っているからだろう。せっかく沸騰しているのに冷やして邪魔をするのもな。
まだ使い慣れていない火の【魔術】だが、有効打にはなっているらしい。〈蒸発薬〉と同等の被害をもたらし、ヒュージスライムの動きを鈍らせている。これなら続けていればこっちに届く前に倒せそうだ。
このまま伊波に任せてもなんとかなりそうだが、俺も攻撃に参加する。威力が足りなかろうが、二人掛かりなら早く倒せるだろう。
「――うらっ!」
同じように、〈蒸発薬〉を生き残ったデカいスライムに投げつける。だが、その結果は思ってもみなかったものになった。
――ピギャアアアアアアアアアアア!
もはや聞きなれたスライムの断末魔。二度目の〈蒸発薬〉では、なんとヒュージスライムは他のスライム同様、一気にその身体を崩壊させた。同時に、かっと体が熱くなりレベルアップを知らせてくれる。
嬉しい知らせなのだが、今の現象に気を惹かれてそれどころではなかった。
「あれ? なんでだ? 何が起きた?」
「今の、明らかに効果が上がっていなかったかい? 一度目はそこまででもなかったのに」
そうだよな? でも同じアイテムだぞ?
違いといえば、スライムの体力が減っていたことくらいじゃないか? だけどそれで効きが変わるってありえるか?
大量が減っただけじゃなくて、耐性が落ちたのかな? あるいはクリティカルが入った? それだとちょっと確かめようがないな。でもどっちにしろしっくりこない……あ。
【人物鑑定】
名称:小畑楓太
〈アイテム使い〉【アイテム理解】レベル―【アイテムスロー】レベル1【効果上昇】レベル2
【効果上昇】――アイテムの効果を上昇させる。
「ああ~。なるほど。〈アイテム使い〉で【効果上昇】のスキルを覚えていたわ。しかも一段飛ばしでレベル2。これで〈蒸発薬〉の効果が上がったんだな」
「おおっ。いよいよ〈アイテム使い〉っぽいスキルを覚えたね」
「というか戦闘中に新しい力に目覚めたのか。なんだその主人公みたいなムーヴは。狙ったのか?」
狙ってねぇよ。伊波じゃあるまいし、そんな厨二病はとっくの昔に卒業した……とは言いきれないかもな。曲がりなりにも現役探索者だし。
たぶん、威力が足りないとか考えたからだろう。あの威力を見る限り上げ幅は結構デカそうだから、これからも使い道のあるスキルだけど、やっぱりスキル取得の感度は高いわ。いつか要らないスキル覚えそうで本当に不安。
「でも良いスキルを手に入れましたね。これならこれからもスライムレベリングが出来そうですし」
「うんうん。最悪もう駄目になっちゃうかと思っていました! これからも楽にレベル上げが出来ますねっ!」
「そうですね……出来ちゃいますね……」
喜ぶ七海姉妹と違い、拝賀君はどこか落ち込んでいる様子だった。
なんだよ、喜ばしいことだろうが。一緒に喜んでくれよ……。
だが拝賀君とは違い、ミライさんはほっとした口調で言う。
「だけど、あくまで楓太君が居るからこそという話でもあるわね。誰でも真似出来るのはここまでで、これ以上先は他の人には――」
「あっ。それなんですけど、ちょっとお願いしていいですか?」
スキルでアイテムを強化出来るのは本当にありがたい。
だけど、もっと簡単な解決方法があるんだよな。
「少しだけ採集の時間くれませんか? ここからは中層素材が見つかりますよね? なら、もっと効果のある〈蒸発薬〉が作れると思うんです」
「…………いいわよ」
許可は出してくれたけど、めっちゃ躊躇ったじゃん。
何が不服なんだよ。
♦ ♦
加熱によって強い乾燥効果をもたらす〈赤焦草〉。
魔力を込めることにより、安定した気化効果をもたらす〈軽露石〉。
この階層で見つかった素材で作った、対スライムに効果のありそうな〈中和胆〉。
流石に中層素材と言うべきか、低層と比べて明らかに効果の大きい素材に感嘆する。
ここの素材を流用するだけで、今まで作ったアイテムの性能が一段階は上がるだろう。
そして、その中級素材を使って進化した〈蒸発薬〉がこれ。
〈中級蒸発薬〉――液体をより強く蒸発させる効果を持つ。スライムなどの粘性生命体にも効果あり。
またシンプルな名前のアイテムが出来上がっちまったな。
まぁポーションだって上級ポーションっていうらしいし、無難なところか。
重要なのは名前じゃない。その効果だ。
果たしてこのアイテムをスライムに使った、その結果は――!?
――ピギャアアアアアアアアウォオアアアアアアアア!!
普通の〈蒸発薬〉では致命傷に至らなかったヒュージスライムが相手でも、この通り。実に気持ちのいい断末魔が!
「これだよ、これ。スライムはやっぱりこうでないと……!」
「吉報だけど、まさかスライムの上位種が相手でも同じことが出来るとはね」
「というか、明らかにオーバーキルだよな? 楓太のスキルが乗った分、よりエグイ効果が出ているのか」
「でもでもっ! これだけ効くなら楓太さんのスキルがなくても、他の人達も真似できますねっ!」
「そうね。それどころか、深層でも同じことが出来そうね。今まで恩恵に預かっておいてなんだけど、ここまでくると逆に申し訳なくなるような……」
七緒ちゃんは謙虚だな。そんなこと考えなくてもいいのに。
これは俺達の努力の形なんだから。ただ他の人とは成果が桁違いなだけだよ。
俺達だって、皆と同じように頑張っているんだっ!
「……いえ、いいんです。僕だってアイテムを融通してもらえれば……いや、でも……」
「そう、出来ちゃうの。深層と同じことが……でもやらないと私は……」
良い結果が出たというのに、拝賀君とミライさん――だけではなく、〈百花繚乱〉の皆が微妙な顔をしている。
……まぁ、惚けるふりはそろそろ止めようか。明らかに嫉妬と怒り、そこからくる苛立ち。それを抑え込まなきゃいけないという理性で苦しんでいる。
気持ちは分かるんだけど、正直、器が小さくない?
俺が育てば、小畑会全体の利益になるんだよ? なら飲み込んでもいいじゃん。
というか、仲間の成長を喜べないとか最低だろ! いい加減にしろ!
……駄目だ。ふざけようとすると逆に俺が最低な人間になってる。もう止めとこう。
「楓太君は五人なのよね。なら、拝賀も今回はレベリングに混ぜてもらったら? 私達は無理だけど、今のレベルなら拝賀も混ざれるでしょ?」
「ああ。そういえばそうですね。次は拝賀君も入る? ボロ儲けだよ?」
おいでおいでと手招きする。が、拝賀君は名残惜しそうな顔をして、それを断った。
「いえ。それをやると仲間とのレベル差が出来てしまいますから。有難い話ですが、僕はアイツらとレベルを上げますので、今回は遠慮します。お気になさらず……どんどんレベルを上げちゃってください……僕よりもっ、強く……!」
ギリィ、と歯を鳴らし、拝賀君は絞り出すような声でそう言った。
この子、なんだかんだ仲間想いだよなぁ。まぁ一度スキルを隠して裏切ったからこれ以上は、みたいな思惑があるのかも知らんけど。
そんな拝賀君の気持ちを察したのか、ミライさんはフッと力ない笑みを浮かべた。
「拝賀。貴方も成長したのね。立派だわ。だけど、そっか……深層でも同じことが出来ちゃうのね……そっかぁ……」
♦ ♦
ちょっと休ませてくれる? ミライさんの要望に従い、俺達はそこで休憩を取ることになった。
十分くらいの小休憩かなと思っていたのだが、既に三十分ほどの時間が経過している。
その間、ミライさんは――サバンナの平原を眺め、黄昏ていた。
「………………」
無言。まったく喋らず、一人離れて変わりなく、景色を眺めている。時折首を傾げたり、振ったり、俯いたりしているが、それだけだ。
黙って悩んでいる美人、というのはまぁ絵になるんだが……いい加減、気になってきたな。
「あの、ミライさんは何をやっているんですか? もう結構時間が経っているんですけど」
「お姉さまはおそらく、自分と戦っているんだと思いますっ!」
俺の疑問に、カコちゃんが答えてくれた。
いや、しかし意味が分からん。自分との戦い? なんで?
全く分かっていない俺に、補足するように今西さんが続ける。
「人は努力という研磨を経てこそ、真の美が得られる。それがお姉さまの美学。楽して得た仮初の美に価値はない。よく広告で見る飲めば痩せる薬、なんて物がいい例だよ」
「そんなミライさんにとって、スライムレベリングはまさに邪道も良い所。しかしこの先それを取り入れなければ、自分が置いて行かれることになるのは明白。だからこそ、悩んでいるのでしょう。本当にこれを取り入れていいのか? あるいは、美学を曲げてでも取り入れるべきではないのか、と」
補足する刻子さんに、へ~と、俺は適当な返事をする。
いやまぁ、確かに意識の高さは凄いなと思う。実際ミライさんの美はそうやって作られているんだろうし。でもさぁ、別に良くね? 力は力だぞ。つうか俺達が邪道の極みとでも言いたいのかあのババア。
というかそれを言ったら俺、本物の痩せ薬とか作れるんだけど、それ出したらどうなんのかな? 更に言えばさ、じゃあそもそも〈美肌薬〉はどうなの? アウトじゃねぇの?
基準が分からねぇ……。
「でも、カコは信じていますっ! お姉様なら必ず乗り越えてくれると!」
「そうだね。いざという時は自分を曲げて利益を取れる。それがミライお姉様だよ」
「ええ。そんなミライさんだからこそ、私達はついていっているのだから」
信頼がこもった眼差しで、三人はミライさんの背を熱く見つめている。
素晴らしい信頼関係だな、と感心しかけたが、よくよく考えると最終的にはプライドより実を取ります、って言ってるだけだな。
それが素晴らしいことのように感じているのだから、狂信って怖いな。
固い絆で結ばれた〈百花繚乱〉。そんな中、ボソリと日向さんは呟いた。
「どんな方法でも、力は力でしょ……悩むまでもないじゃんこんなの……アホらし」
どうやら〈百花繚乱〉も一枚岩ではないらしいな。
というか、日向さんおどおどしているくせに結構容赦ないな。いや、そんな素質はちらほら見えてた気はしてたけど。
「まぁ確かに、スライムレベリングにも問題が無い訳ではないよね」
なんとなしに、伊波がそう言った。
「確かにこの方法はレベル上げの最高効率だ。だけどその代わり、実戦経験が少ないまま強くなってしまう。仮初の力を得た敵キャラが、しっかりと努力を積んだ主人公、もしくは仲間に技術で負けるのは物語の鉄板。スキルの熟練度上げという意味ではむしろマイナスだろうね」
「――そうよねっ!?」
さりげなくこっちの話を聞いていたのだろう。
ミライさんはパァッ! と明るい顔で、嬉しそうにこっちを振り返った。不覚にもちょっと可愛いとか思ってしまった。屈辱だ。
でも、伊波の言うことは一理あるな。ゲーム的に言えば、格上の相手と戦うことでスキル熟練度が上がりやすくなっている、というのは十分あり得る。
それを無しに俺らは進んでいる訳だ。生産の俺はともかく、他の四人には結構痛いことなんじゃないか? このままだと、レベルはあるのにスキルが弱い探索者に――
「いやでも、まずはレベルじゃね?」
伊波の意見に反論するように、川辺が言った。
「上がり辛くなるかもだけどさ、スキルレベルが高くたって地力が低かったら意味ねぇじゃん。楓太みたいなぶっ壊れスキルもあるかもだけど、基本的に地力が伴ってこそだろ。というかさ、実戦でスキルまで磨くって普通に危なくないか? まずは強くなって安全を確保して、スキルはそれからでも十分に間に合うだろ。実際、俺は兵藤さんに教わって成長出来ている訳だし」
「……そうよね」
川辺の真っ当な意見に、ミライさんはショボンと肩を落とした。くそっ、不覚にもまた可愛いとか思ってしまった。恥辱だ。
でも、どちらかと言えば俺も川辺の意見に賛成だな。
結局レベルを上げた方がやれることも増えるし、何より深い階層に進める。低層、中層であればより安全になる。
死なないことを第一にしている俺達は、まずはレベルよ。方法なんざどうでもいいわ。レベリングの早さこそが正義よ!
うんうんと納得して頷いていると、拝賀君が呆れた目をしながら言った。
「ミライさんがどうするかはどっちでもいいですけど、そろそろ先に進みませんか? このままだといつまで経っても深層に辿りつきませんよ?」
ごもっともです。