軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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飛び起きた。

ずっと水の中で息を止めていたみたいに、肩で呼吸を繰り返しながら動こうとして、止められる。誰かいるのだ。かすんだ視界でその影を認めて、サーラはなんとか口を動かした。

「つ、れて……って……」

「……動いては、だめだ。君は、ずっと眠ったままで」

「し、知って、ます……い、いかなきゃ、早く……!」

ぐらぐらしていた視界の焦点がじょじょに合っていく。

眼帯をした男の人だ。知らない人だが、おっかながっている時間はない。

「おね、がい、つれて……ってくだ、さい、みんなが、戦ってる、場所……っ」

「……どこに?」

男の人は静かにサーラを見つめ返す。ちゃんと話を聞いてくれる人だ。

「か、神の、娘です、私……っ役に立ちます、から」

「……だが、病人」

「でも行かなきゃ、リリアさんが、間に合わない!」

「――リリア?」

声が聞こえた。衝立の向こうに誰か座っていたらしい。その顔を見て、息を呑む。今度は知っている顔だった。

「セ、セドリック、様……」

「リリアと言ったか、今。どうしたんだ、いったい彼女に何が」

「つれ、つれてってください! お願い、助けたいんです!」

サーラとセドリックの視線を受けて、眼帯の男の人が考えこむ仕草をした。

「……。今、すぐにあの宮殿に行ける、手段……ひとつだけ、可能性がある」

すっと眼帯の男の人が立ちあがった。歩き出したその姿に、慌ててサーラも立ちあがって、よろけたところをセドリックに支えられる。

ずいぶん歩くのかと思ったら、そんなに遠くはなかった。つんと消毒液のにおいが強いその部屋の扉をあけて、さっきの眼帯の人が中の白衣の人に声をかける。

(……お医者さん?)

「……神の娘が、目をさました」

「ああ――びっくりした。でもまだ休ませておかないと」

「……アイリーン達のところへ、行きたいと」

部屋の中まで進んだサーラは、ふと寝台の上に誰かが寝かされていることに気づく。

「ええ? 無理だよ。ここに残っている魔物達は移動にも戦いにも向かない子達ばかりだし」

「……ひとりだけ、いる。魔物に命じられる、人間が」

話し合っていたふたりが同じ人に目を向けたのを見て、サーラは振り向いた。

「こ、この人なら、魔物に頼んでくれるんですか!?」

「……可能だ」

「この人が了承してくれるかはわかりませんがね。っていうかそもそもなんでそんな話になってるんです、ゴミ皇子もいるし……って、ちょっと」

「治します」

ふらふらしながら、寝台によった。呼吸をととのえて、ざっと一見する――傷はない。

「……怪我は、してない?」

「ええ。傷は塞ぎましたし、油断はできませんが一命は取り留めてます」

「――すごい、ですね。聖なる力もなく、治すなんて……」

素直に感嘆すると、白衣のお医者さんは少し眉間にしわをよせたあと、両腕を組んだ。

「でも目をさまさない。ただの怪我ではないみたいで、何か別の原因があるのかと」

ゆっくり目をこらしてさがしてみて、気づいた。

「……魂だけが、封印されてる……」

「はい?」

「あ、あの。なんか、体に魂が戻らないように封印されているっていうか……でもこの人、とっくに死んでてもおかしくないのに、すごい……」

抗って戻ろうとしているのだ。だが、器に戻れなければ先に魂が死んでしまう。唇を引き結んだサーラは、目を閉じ、胸の前で手を組んだ。

(……封印を、とく。それなら……!)

ぱりんと何かがわれた音がしたのは、サーラの頭の中だけだっただろう。だがゆっくりとサーラが目を開いた先で、寝台に眠っていたひとのまぶたが動く。

「……目を、さました、のか?」

「こ、こは……」

そのかすれた声に、白衣のお医者さんが急いで手首を取る。

「キースさん。俺です、わかりますか。クォーツ、水」

「わかり、ます。ああ……やっと、もう、ほんと夢見が、最悪で……」

お医者さんの手を借りて起き上がった人が、差し出された水を一口飲んで、息を長く吐き出した。

「魔物はせっかく新調したカーテンを破るしベルさんは窓硝子たたき割るし、主はふらふら行方不明……追いかけ回して叱ろうとしても必ず殺されるんですよ、なんですかあの夢。夢でも生き返るのも追いかけ回すのも叱るのも疲れるし。現実なら許しませんよ、あんな横暴」

「……夢だ、と思うが」

「あ、あの、お願いがあるんです。つれてって欲しいところがあって……!」

寝台脇の小さな棚に置いてあった、ヒビの入った眼鏡を取った男の人が、それをかけてじっとサーラを見たあと、ゆっくりと笑った。

「とりあえず状況を説明してもらえますかね?」