軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28.使命は特にない

「トルト、どうした!」

僕が突然変な声を上げたせいか、レイが心配そうにこちらを見ている。慌てて事情を説明した。

「ごめん。心配はいらないよ。この腕輪にシロルが触れた瞬間、シロルの言葉がわかるようになったんだ」

「シロルとお喋りできるの? いいな~! 私もお喋りしたいよ~。その腕輪を借りたら、私もお喋りできるの?」

羨ましそうに、そう言うのはハルファだ。シロルを一番可愛がっているのもハルファなので、僕だけが話せるってことだとちょっとかわいそうな気はするね。

どうなんだろうか。問うように視線を送ると、シロルはフルフルと首を横に振った。

『絆の腕輪の貸し借りはできないぞ。あくまで、トルトと僕の絆の証だ! でも、お喋りくらいなら、腕輪なしでもできるぞ!』

シロルは足取りが覚束無い二足歩行でハルファの前まで歩いていくと、右前足を上げて挨拶をした。

『お前、名前つけてくれてありがとな! 僕は聖獣のシロルだ。これから、トルトの相棒としてついていくつもりだから、よろしくな!』

「うわぁ! 私はハルファだよ! よろしくね、シロル」

今度の挨拶はシロルだけじゃなくてみんなに聞こえたみたいだ。さっき見たステータスに【思念伝達】っていうスキルがあったから、その効果かな。

そんな能力があるのなら、なんでさっき使わないの。さっきのジェスチャーゲームはなんだったの。

「相棒ってどういうこと? 一緒にくるのは構わないけど」

シロルがみんなに挨拶して回ったところで、気になったことについて尋ねてみた。

『相棒は相棒だぞ。駄目か?』

「いや、駄目ってことはないけど。なんで僕を選んだのかなって」

『同じラムヤーダス様の眷属だし、気が合うかなと思ったからだな!』

ラムヤーダス様というのは、運命神様のことだね。僕を含め基本的には運命神と呼ぶけど。なんでだろう? もしかしたら、みだりに神の御名を口にしてはならない、みたいな戒律があるのかも?

それにしても、僕はいつの間に運命神様の眷属になってたんだろうか。少なくとも鑑定したステータスにはそんな表記なかったけどなぁ。【運命神の微笑み】にはお世話になりっぱなしだから、眷属になるくらい構わないんだけどね。

「ってことみたいだけど……」

成り行きでシロルを連れていくことになったけど、みんなの反応はどうだろうか。女性三人はモフモフの仲間が増えて嬉しそうだ。レイだけはちょっと違う反応。なんだかやる気に満ち溢れてる。

「聖獣が相棒か。何か使命はあるのか?」

ああ、なるほど。

神の使命を授かり、聖獣を相棒に世界を救う。英雄譚の主人公とかにありそうなシチュエーションだよね。レイがロマンを感じるのもわかる気がする。

でもなぁ。僕に限ってそれはないんじゃないかな。縮む前ならともかく、今のシロルもそんな感じじゃないよね。

『使命か? 特にないぞ! 強いて言うなら、美味しいものを食べさせて欲しいぞ。それが使命だな!』

やっぱりね!

いや、美味しいものを探すのは立派な使命だと思います!

だけど、レイとしてはガッカリな使命だったみたいだ。明らかにテンションが下がってしまった。代わりにサリィが疑問を口にする。

「最初は大きかったのに、今は小さくなっちゃったのはなんで?」

『トルトの影響だぞ。聖獣は相棒次第で在り方が変わるんだ』

もしかして、能力が低かったのはそのせい? 最初にあった凛々しさとか、今はまるで感じないしね。僕の影響と言われれば納得しかないね。でも、縮んだのは絆の腕輪を装着する前だったはずだけど。あの時点で、仮契約的な状態だったのかな。

「トルト……」

レイが恨めしげに僕を見ている。僕の影響で使命がなくなった、と思われているのかもしれない。

いや、性格とか能力は僕の影響かもしれないけど、さすがに使命云々は僕に関係ないと思うよ! こいつに使命を託しても達成できるとは思えないからやめとこうとはならないでしょ、たぶん。

……いや、候補が複数いたら、そういうこともあるかも? なんかあり得る気がしてきた。うん、この考えは黙っておこう。

「連れて行くにしても、そのまま連れ歩いてもいいものなの?」

「従魔の印が冒険者ギルドで貰えるはずだよ。それを首輪につけるのが一般的かな」

僕の疑問は物知りサリィが解決してくれた。そういう印がないと、野良の魔物かどうか判別できないもんね。間違って従魔が討伐されたりしたら大変だ。

問題はシロルが納得してくれるかどうかだけど。

『むぅ、首輪か。窮屈だけど、少しくらいは我慢するぞ。だけど、普段は消えているからあんまり気にしなくても大丈夫だ』

事情を説明すると、あっさりと納得してくれた。やっぱり、意思疎通できるのは大きいよね。

ただちょっと気になることを言ってたよね。

「消えるってどういうこと?」

『待ってろ。今、見せてやる』

シロルはそう言うとニヤリと笑った――と思う間もなくその姿がすぅっと消えてしまった。

「シロル、ホントに消えちゃってる!」

ハルファが、さきほどまでシロルがいた位置を探っているけど、その手は空を切るばかりだ。どうやら、透明になっているのではなく、本当に消えているみたいだ。

『どうだ、消えてるだろう! 僕は腕輪の中にいるんだぞ。あ、ちなみにこの状態だと、トルト以外とはお喋りできないからな』

シロルが言うには姿を消しているときは絆の腕輪の中にいるみたいだ。中にはシロルの住処があって、意外にも快適な環境らしい。

『あ、そうだった。この状態なら扉も開くだろうから、問題なく戻れるぞ』

ああ、今はボス部屋にボスがいない状態なのか。だから扉が開く、と。それなら、シロルがいなくなったあと、ボス部屋はどうなるのかな?

『本来のボスが出現するはずだぞ。僕はダンジョンを誤魔化して間借りしてただけだからな!』

なにそれ?

誤魔化したり、間借りしたりってできるものなの?

それに、特に声を出したわけでもないのに、答えが返ってきたんだけど。もしかして、僕の考えはシロルにだだ漏れ状態なのかな?

『ある程度、伝えること伝えないことはコントロールできるはずだ。でも、今はだだ漏れだな!』

だだ漏れなのかよぅ。

まあ、いいや。そのことは後で考えよう。今は取りあえず、みんなに状況を説明して外に出ないとね。ぼやぼやしてると、ボスが湧いちゃうかもしれない。