軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27.白いモフモフ

白い獣はさきほど大開きにした口を閉じ、今度はむにゅむにゅと動かしている。さっきのはあくび……だったみたいだね

なんだろう。

なんだか思ったのと違うなぁ。

僕が思わす首を傾げると、白い獣も真似するように首を斜めにする。なんだこれ。

「かわいい!」

ハルファが黄色い声を上げた。

モフモフした体に愛らしい仕草。確かに可愛らしいと思う。見上げるほどの巨体であることを除けば、だけど。

そういえば、険しく見えた獣の表情も今では穏やかになっている気がする。もしかして、さっきは寝起きで少し不機嫌なだけだったのかも?

なんにしろ、僕たちは逃げるタイミングを逸したし、逃げる必要性もあまり感じなくなった。どうやら、白い獣には僕たちと敵対する意思がなさそうだからね。

「これ、どうしたらいいのかな?」

とはいえ問題は別にある。白い獣との戦闘は避けれたとしても、このままでは扉が開かないんだよね。なので、部屋から出ることができないんだ。もちろん、帰還クリスタルはあるけど、危険がないなら使わずに済ませたい。

「わふ~?」

ちょっと困っていると、白い獣が気の抜けるような鳴き声を上げた。

いや、それだけじゃない。その直後、白い獣の体はみるみるうちに縮んでいって、最後には小型犬くらいのサイズになったんだ。

「わぁ、小さくなったよ!」

「かわいいね~」

「そ、そうね」

尻尾をフリフリこちらに駆け寄ってくる獣に僕たちの視線は釘づけだ。特に、女性陣の食いつきがすごい。一応、警戒は忘れていないつもりなんだけど、子犬みたいサイズで一生懸命走る姿を見てると、どうしても警戒が緩んじゃうよね。

白き獣は、スピードを落とすことなく、どんどん僕たちのほうに駆け寄ってくる。

あ、これ。僕たちというより、ターゲットは僕だ!

「うわぁ! ちょ……!」

そう気づいた瞬間には白い獣は僕に飛びついてきた。衝撃はそれほどでもなかったから助かったよ。小型サイズになったことで体重まで軽くなっているみたいだ。それでも、ちょっとびっくりしたこともあって、体勢を崩してしまったけど。

白い獣は尻もちをついた僕のことなんてお構いなしに顔を舐め回してくる。尻尾を大きく振って、ご機嫌な様子だ。

危険はないみたいだけど、なんでこんなことになるのやら。顔がベチョベチョだよ……。

「ふわぁ……! モフモフだぁ!」

「本当だね~。ミルも触ってみたらいいよ」

「あ、アタシはその……」

僕が困っているというのに、サリィとハルファは白い獣をモフモフしてる。ミルも気になるのか、控えめながらそろりと手を伸ばしているみたいだ。レイだけが、苦笑いを浮かべて同情的な視線をくれるけど、助けてくれるわけでもないんだよね。

結局、その状態は白い獣が満足するまで続いた。おかげで僕の顔はもちろん、外套までよだれでベロベロになってる。〈クリーン〉の魔法があって、本当に良かったよ。

さて、白い獣はというと――

「今日から、君はシロルだよ」

ハルファが勝手に名前をつけてる。当の獣も嬉しそうにしているので、名前はシロルになった。

シロルがほぼペット状態になったから、本当に危険はなくなったと思うんだけど、部屋から出られるわけでもないんだよね。入り口のドアは未だにビクともしない。

「シロル、どうすれば出られるか、知らない?」

「わふ!」

冗談のつもりで尋ねたら、シロルは突然前足を上げて残る二本足で立ち上がった。そして、前足で胸をポンと叩く。

え、なに?

任せろってこと?

「わふわふ!」

シロルは僕をビシリと指したあと、前足で四角形を示すようなジェスチャーをする。なんだろう。

「トルト君で四角いものといえば、パンドラギフトかな?」

サリィが呟く。

その認識はどうなんだろうと思うけど、今までの行動から否定もできない、よねぇ。

シロルも両の前足で丸印を作ってるから、正解みたいだ。

よくわからないけど、収納リングから一つ取り出して見せると、シロルは開けろと急かすようにパンドラギフトをテシテシと叩いた。

一応、みんなとのお話合いの結果、【運命神の微笑み】の致命傷回避効果が未発動のとき、誰かと一緒ならパンドラギフトを開けてもいいというお許しを得ている。こっそり隠れて使って悪い効果で倒れてしまわないか心配されているみたいだ。申し訳ない。

でも、たぶん、今日は【運命神の微笑み】発動済みなんだよね。博打打ちの錫杖の暴発で被害を受けずに隠し通路を見つけたときに。さすがに【運命神の微笑み】の効果なしでパンドラギフトを開封するとなると躊躇いがある。

「あっ!」

なかなか開封しようとしない僕に痺れを切らしたのか、シロルが勝手にパンドラギフトを開けてしまった。止める間もない早業だ。

出てきたのは……腕輪?

鑑定ルーペで覗いてみると、アイテム名は『絆の腕輪(仮)』だった。いや、ホントに。効果は『聖獣との絆を結んだとき、その真価を発揮する』とある。

「どんな効果だったの?」

「んー? よくわからないや」

ワクワク顔で聞いてくるのはサリィ。魔道具だとあたりをつけたんだろうけど、これは魔道具なのかな? 説明を読んでも効果がいまいちわからない。

聖獣とはなんだろうか? 流れ的にシロルがその聖獣なんだと思うけど。一応、断りをいれてから、シロルを鑑定させてもらう。

―――――

名 前:シロル

種 族:聖獣

年 齢:0

レベル:5

生命力:44/44

マナ量:35/35

筋 力:28

体 力:26

敏 捷:33

器 用:22

魔 力:26

精 神:26

幸 運:69

スキル:

【思念伝達】【ひっかき Lv5】【かみつき Lv5】

【雷魔法 Lv2】【念動 Lv5】

特 性:

【運命神の眷属】

魔法:

〈雷纏い〉〈雷撃〉

―――――

シロルはやっぱり聖獣だったみたいだ。おまけに【運命神の眷属】らしい。もしかして、やたらと懐かれてるのはこのせいかな? 僕には【運命神の微笑み】があるから、仲間意識を持っているのかもね。

あと、気になるのはシロルの能力値。思ったより……というか、全然強くない。年齢も0歳になってるし。あの巨大な獣とは別個体なのかな? でも、目の前で縮んだしなぁ。

よくわからないまま、絆の腕輪を装着する。収納リングは左手につけているので、右手にだね。

腕輪を装着しただけでは特に何も起こらなかった。変化が起きたのは、シロルが腕輪に触れたときだ。腕輪が一瞬、淡く光った。

「ん? 今ので絆が結べたのかな?」

『そうだぞ、トルト。よろしくな!』

「うえぇ!?」

驚いたことに、どう聞いても「わふわふ」と鳴いているようにしか聞こえないシロルの言葉が何故か理解できるようになっていた。