軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

261.アイスゴーレムなら?

『ぬしらの攻撃はこんなものか?』

『ならば、次は我らの手番だ』

言うなり、石鎧たちが走りだした。抉るような勢いで地を蹴り、巨体とは思えないほどの加速を見せる。一体は僕の方へ、もう一体は体勢を崩したローウェルたちの方へ。

「トルト!」

ハルファの悲鳴を聞きながら、僕はストーンウォールで巨大な土壁を出した。時間稼ぎと目くらましだ。だけど――……

『 破(ハ) ッ!』

石鎧が鋭く叫ぶと、それだけで土壁はぼろぼろと崩れだした。さっきのゴーレムと同じ結末だ。

『まだわからぬか。万物は世界の理に支配される。その理を掌握した我らにぬしの力は通用せぬ』

世界の理? ルールってこと?

もし、それを掌握されたってことなら確かに太刀打ちできそうもないけど……さすがにそれはないかな。世界を好き勝手できるなら、人の命だって自由にできそうだ。なのに、彼らが操っているのは土だけ。ちょっと中途半端な感じだ。

まだ、詳しくはわからない。ただ、アイツらが言うほど、絶対的な力ではないような気がする、かな。

「わぁ! バラバラになれぇ!!!」

ハルファが石鎧の頭に向けてショックボイスを放った。街中では使いにくいショックボイスだけど、背の高い建物はほとんどないから、上方に向ければ被害はでない。ナイス判断だね。

『ぐぬぅ!』

頭部が吹き飛び、石鎧が悔しげな声を漏らす。

「捕まえるよ!」

石鎧は反撃する間もなく氷蔦によって絡め取られていった。氷蔦を操っているのはもちろんスピラだ。石鎧は煩わしそうに、氷蔦を払うけど、成長のスピードが速く完全には対応しきれていない。

向こうでは、巨大化したシロルとローウェルが連携して石鎧を抑えている。どちらにしても僕らが優勢だ。

ゴーレムが無効化されたのは驚いたけど、思ったほど強くない……?

だけど、その考えは甘かったみたい。

『くく……思ったよりはやる。だが!』

石鎧が声を発すると、呼応するように徐々にその体が膨れ上がっていく。足下から土を吸い取って巨大化しているみたいだ。壊れた頭部もすぐに修復されてしまった。そして、まとわりつく氷蔦を軽々と引きちぎる。

「ううぅ、これは……無理ぃ!」

限界まで拘束を試みたスピラは肩で息をしている。彼女のマナはほぼ無尽蔵なはずだけど、短期的に大量に使うと精神的な疲労が大きいみたい。つまり、それだけの力を使っても、石鎧を拘束できなかったってことだ。

それほどまでに、石鎧の力は強大だ。だけど、氷蔦は石壁やゴーレムみたいに一瞬でぼろぼろにはされなかった。力で強引に振りほどいたって感じ。やっぱり、全てを思いのままにできるわけじゃないみたいだ。

「わ! わ! わあああ!」

『くく……効かぬ効かぬ』

ハルファが連続でショックボイスを発動させる。そのたびに、石鎧の一部が破損するけど、すぐに回復するので焼け石に水だ。とはいえ、時間稼ぎにはなってるね。

「スピラ、大きな氷を出せる? アイツらよりも大きいヤツ」

「ただの氷でいいの? うん、出せるけど……」

疲れているスピラには悪いけど、ちょっと無理をしてもらう。

『ぬ、何を?』

石鎧がスピラの動きに気づいた。だけど、僕とハルファで牽制する。すぐに回復するとはいえ、その間は少し動きが止まるんだ。

「できたよ!」

「うん。ありがと!」

スピラの完成報告を聞いて、脇に出来た氷の柱を仰ぎ見る。とにかくでかい。前世で見た4、5階建てのビルみたいなサイズだ。これなら!

「どうするの?」

「もちろんゴーレムにするんだよ」

今のところ、アイツらが自由にできるのは土だけに見える。だったら、それ以外のものでゴーレムを作ればいいんだ。

「いけ、アイスゴーレム!」

全力でマナを注ぎ込む。巨大サイズだからマナが心配だったけど、意外とすんなりゴーレム化できた。スピラが生成したときのマナが残っていたからかな?

キシキシと音を立て、巨大ゴーレムが動く。一歩、歩くごとに地面が揺れる。凄い迫力だ。

『何!?』

気づいた石鎧が、焦りの声を上げた。やっぱり、土のゴーレムと違って、即座にどうこうはできないみたい。代わりに、石鎧は土を纏って、巨大化を図ろうとしている。

「――!」

そこにアイスゴーレムが拳を落とした。

石鎧は両手でどうにか防ぐ。でも、アイスゴーレムの腕をはねのけるほどの余裕はない。石鎧の体がギギギと音を立て軋んでいく。

「わぁ!!」

ハルファもショックボイスで援護した。石鎧の破損がさらに進む。

石鎧はじわじわと巨大化していたけど、ダメージが増えたことで回復するのに手一杯になった。このままなら押し切れそうだ。

『ぐぅ……これは! すまぬ、ドムダン。助力を頼む!』

『何? おお、これはデカい。ぬはは、やるではないか!』

追い込まれた石鎧が仲間に救援を求めた。ドムダンというのが、シロルたちが戦っている方の石鎧の名前みたい。

呼ばれたドムダンはすぐに駆けつけ、アイスゴーレムを横合いから蹴りつける。その程度で壊れちゃうアイスゴーレムではないけど、体勢が崩れた。そのせいで、もう一体の石鎧も自由になる。

『大丈夫か。ダムロス』

『うむ、助かった』

『ならばよし。我らが揃えば、掌握も叶おう』

二体の石鎧は協力してアイスゴーレムに対抗することにしたみたい。とはいえ、大きさではアイスゴーレムが圧倒している。二体揃っても攻めあぐねているように見えた。

もちろん、僕らだっている。隙を見ては、遠隔攻撃で石鎧の外殻を削っていく。回復する余裕がないのか、石鎧たちの体が徐々にボロボロになっていく。

今度こそ押し切れると思ったときだ。ピシリと何が割れるような音がした。見れば、アイスゴーレムの腕に罅に大きなひび割れができている。ピシリ。また音が鳴った。

『ぬははは、掌握はなった!』

『この世界のいかなる物質も我らの力からは逃れられん』

石鎧たちの勝ち誇るような声が響いた直後、アイスゴーレムの体が粉々に砕け、キラキラと輝く氷の粒をまき散らして消えていく。

どうやら、アイスゴーレムさえ無力化できてしまうみたい。ただ、土ゴーレムよりもかなり手間取っていた。そこら辺に攻略のヒントがありそうだ。