軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

213.確保ぉ!

銀の腕を刺激したくないので、少し距離をとったところで作戦会議をすることにした。

「結局、あれは何なんだろう?」

答えは出ないと思いつつも、疑問が口をついて出る。当たり前だけど、他のみんなにも心当たりはないみたい。少しの沈黙のあと、言葉を返してきたのは思いがけない声だった。

『みんな気付いてるみたいだけど、あれはガルナラーヴァの眷属じゃないよ』

『それどころではないぞ。明らかな異質な存在。まさか外世界からの干渉ではあるまいな?』

『なんで、ガルナちゃんが気にしてたのかも不思議ね。この辺りはガルナちゃんの勢力圏でもないんでしょ? どうして異変に気がついたのかしら』

声の主は順番に、廉君、精霊神様、幸運神様だ。ホログラムのような半分透けた姿で、車座になった輪の中にいつの間にか一緒に座っていた。幸運神様は奇抜な格好じゃなくて、ちゃんと女神様らしい格好をしている。良かった。

「あ、貴方たちは一体?」

突然の事態にアバルムさんが上擦った声で、廉君たちに問いただした。ただ神々しさのようなものを感じているのか、どこか畏れを抱いているようにも見える。

すごいなぁ。僕は全然そんなもの感じないんだけど……。ちょっと鈍いのかもしれない。

『僕たちは……まあ、彼らの関係者――いや、関係神だよ』

「は、はあ? 関係神?」

廉君がざっくりとした説明をするけど、当然ながらアバルムさんは意味がわかっていない。仕方がないから、僕が改めて神様について紹介した。アバルムさんは目を白黒とさせていたから、ちゃんと聞いていたかどうか怪しいけど。

「僕とハルファとシロルは運命神様、ローウェルとスピラは精霊神様の加護を授かっているんです。幸運神様は……何で出てきたんでしょう?」

『ひどい! あなたと私の仲じゃない!』

『こいつ、まだ瑠兎……トルトのこと狙ってるみたい。僕の 神域(とこ) に来て探りを入れてくるんだ。それで、今日もたまたま一緒にいたんだよ』

「というわけだそうです」

「……そうか。俺には理解が及ばんことだけはわかった。話の腰を折ってすまない。俺のことは気にせず、話を進めてくれ」

頑張って説明したんだけど、アバルムさんは虚ろな目をして理解を諦めてしまったようだ。まあ、いきなり神様が出てきたら冷静に受け止められないのかもしれないね。

その点、パーティーのみんなは慣れているのか、平然と受け入れている。幸運神様についても話してあるとはいえ、みんなは初対面なんだけどね。

『それで、ラムヤーダス様。結局、あの銀ピカは何なんだ?』

気配を消そうとしているアバルムさんを余所に、シロルが話を戻す。といっても、結局、アレの正体なんて誰にもわからないんだけど。

『やっぱり、ガルナちゃんに聞いてみるしかないんじゃない? 現状で一番把握してそうなのは、あの子でしょ?』

進まない議論に見切りをつけたのは幸運神様だ。ガルナちゃん――つまりは、ガルナラーヴァに直接話を聞けということなんだけど。

『どうやってだよ? あいつ、僕たちの話なんて聞いてないじゃん。呼びかけても出てこないでしょ』

と、廉君が反論した。まあ、千年も敵対関係なわけだし、交渉チャンネルなんてないよね。

だけど、幸運神様はその反論を予想していたみたい。ニヤリと笑って指を振った。

『甘いわよ、ラムちゃん! ガルナちゃんと直接話はできないけど、繋がってる人間はいるでしょ?』

なるほど。一方的にとはいえ、ガルナラーヴァの声を聞くことができる人間はいる。大体は邪教徒だから、話が通じない可能性は高いけど、唯一交渉可能な人がいるね。

「ああ、わかった! デムアドさんだ!」

僕よりも先にハルファが声を上げた。正解だったみたいで、幸運神様も微笑んでいる。

元々、この場所を探してみようと考えたのも、デムアドさんに届いた声が原因なわけだしね。彼の目を通して、この場所を確認することがガルナラーヴァの目的だったとしたら、コンタクトは取れそうな気がする。

さて、肝心のデムアドさんはオルキュスで仕事をしているので、連絡をとるにも時間がかかる。もし、ここに連れてくるなら二週間以上必要だろう。とはいえ、あの銀色の腕をそんなに長期間野放しにするのも気が引けるので、ここはちょっと強引な手を使おう。

用意するのは、闇ゴーレムと夢見の千里鏡&魔道具強化クリームだ。ちょっと面倒だけど、僕が何回か転移すれば鏡を回収した状態でデムアドさんをこの場に連れてくることができる。

というわけで――……

「連れてきました!」

「おいおい、ここはどこだよ。俺には仕事があるんだ。二人を養うためにも真面目に働かないとだな……」

突然連れてこられたデムアドさんはぶつくさ言っているけど、緊急事態だからね。ちょっとだけ我慢して欲しい。

ちなみに、神様の三柱は姿を消している。デムアドさんの視界をガルナラーヴァが共有していた場合、警戒させてしまうだろうからね。

「ここは、ベルヘスの東ですよ。たぶん、ガルナラーヴァが気にしていたっていう」

「ああ、なるほど。結果だけ教えてくれれば良かったんだが……。で、結局何かあったのか? ずいぶんと険しい崖だが、特段おかしなものはなさそうだぞ」

銀の腕はゴーレムが壁になっているので見えない状態。だから、一見すると異常はないように見えるんだ。

「あのゴーレムの隙間から覗いてみてください。できるだけ大きな声を出さないようにお願いしますね」

「お、おお。これ、ゴーレムだったのか。いったい何が……」

デムアドさんは、崖だと思っていた一部がゴーレムだったことに多少面食らったようだけど、本当の驚きはこんなものじゃないんだよね。

「な、なんだ、こ……!?」

ゴーレムの隙間から銀の腕を見たデムアドさんが大きな声を上げそうになって、咄嗟に自分の手で口を塞いだ。若干手遅れだった気もするけど、幸いなことに銀の腕に反応はない。代わりに反応があったのは、彼の頭上。ぼんやりとした人影が苦々しい顔で銀の腕を睨んでいる。若い女性の姿だけど、おそらくアレがガルナラーヴァ!

『なんということじゃ。まさか、ここまで――……』

『確保ぉ!』

ガルナラーヴァが何か言いかけたとき、姿を消していた廉君たちが現れた。そして、あっという間にぐるぐるの簀巻き状態にしてしまった。