軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23.フォルツァの強さ

雨が降らなかったのはよかった。

森の奥は危険なので、街道の側まで来て日が昇るまで休息することになった。グレイドル先生から、学生は休ませてやろうということで私と二人で交代で見張りをすることにする。

先に眠って良いと言われたので木にもたれかかっていると、学生たちはすぐいびきをかいて眠りだした。

あと一時間ほどしたら魔物が襲ってきた想定でどれだけ早く体勢を立て直せるか見るかと起き上がったら止められた。

「いや、さすがにそこまではやめてやれ」

声を落として首を振る。

だが、初めての野営はこれが楽しいのだと思うのだが……。

セラフィーナも忘れた頃に強襲だと起こされたものだ。

「さすがに体力の限界だろう」

「もう、ですか?」

「おまえさんだって……いや、なんでもない。普通な、騎士団に入団して半年は体力作りに励むんだよ。それに今日気づけたこいつらは幸運だったってことさ」

「走り込みが足りませんね」

「……そうだな」

「夕食時の気の緩みも問題でした。森の中にいるというのに」

「……うん。こいつらは騎士団希望とはいえまだ学生なんだ。貴族籍の者がほとんどだ。今日はよくついてきているよ」

そんなものなのか。

「さあ、交代まで寝てくれ」

「わかりました」

虫除けの石を握りしめ、私はつかの間の休息に身を寄せた。

途中交代をして、日が昇りだしたら全員を起こす。

「体が、ギシギシする……」

「地面が冷たくて……」

「こんな硬いところで眠ったことなんてない」

野営に慣れていない生徒たちが互いに愚痴を言っている。これはまあ、同情の余地はある。なかなか学生が経験をすることはない。

「何をガタガタ言ってる。来月末の実習はこれと同じようなものだぞ」

「騎士団に入ってしばらくして同じような野外訓練がありますね」

「魔物の討伐に駆り出されりゃこれよりもっと長い期間野営の連続だよ。今から覚悟ができてよかったな」

グレイドル先生と私で交互に詰めると、黙った。

だが本当にいつかは通る道なのだ。グレイドル先生の言うことがもっともだった。

「今日は少し先で薬草の採取をして、帰ります。道中魔物に注意してください」

それじゃあ行きますよと元気いっぱい走り出す。

睡眠時間は短かったが、久しぶりに魔物と対峙し、剣を振り回せたのがかなり気晴らしになったと今更ながら気付いた。

騎士団でも定期的に森の魔物を減らしに狩りに行っていた。やはり体は鈍ってきているのだ。ただ、あの瞬間ウィンドショットを選択した自分もいた。

魔法と剣、両方使える。これはかなりいい。撃つ準備をしていれば、接敵するより前に先制攻撃に移れる。確かにそういった戦い方をする騎士がいたなと思い浮かべる。

魔法を使う騎士は対面するとわかる。魔力の圧が違う。

今の私はどうなのだろう。

ルーカスに会えたら以前と変わっているか聞いてみたい。騎士団のメンバーでもいい。

私はここでどんな成長をしたのだろう。

採取は問題なく終わった。学生たちは始終無言だったが、夕方寮に戻ったところで崩れ落ちていた。体力的に限界だったらしい。

体は清めてからベッドに入ってもらいたいものだ。

私も自室で身なりを整えるとそのままヴィクトリア王女を出迎えられるよう準備する。今日は王城に向かっている日だった。

「あら、もう帰ってきたのね。お疲れ様」

馬車から降りる王女に敬礼していると、後ろから現れたテリーサが言う。

「外に泊まったのでしょう? 疲れているだろうから、今日は護衛は大丈夫よ?」

「いえ! この程度は疲れのうちにはいりませんので」

「すごいわねえ、騎士って体力があるのね」

「走って行ったと聞いたが……」

ゾーイの質問に私は頷いた。

「学生がいたので、新人訓練のつもりでやってみろと、グレイドル先生が」

「……気の毒だな」

「いえ、問題なく終えることができました!」

ゾーイは無表情のまま軽く首を振っていた。

「よかったら夕食の時に狩りの様子を聞かせてちょうだい」

「生々しいのはダメだぞ」

ルシールから釘を刺される。

そこは、心得ている。学生の頃に失敗しているのだ。私の感覚でもダメだというのはわかってる。

食堂へ向かうと、デルウィシュ王子がすでに席に着いており、王女も食べるものを選ぶとテーブルへ向かった。私も野菜を中心にタンパク質を採る。外では簡易なものになってしまったので、今夜はしっかり食べよう。

「実習お疲れ様だね」

王子からそう言われて、あれは実習だったのかと疑問に思いつつも頭を下げる。

「狩りの様子を教えてちょうだいな」

王女がウキウキしている。王子も乗り気だ。今日の護衛はカノなのだが、彼は少し不安そうだった。

「そうですね、今回狩りに行ったのはロロノリア鳥と言いまして、身は旨く、羽根は高級な飾りとなり、魔石や爪、嘴は魔道具などの素材となる、捨てるところがない魔物です」

と、狩りの手順を中心に話したら、かなり面白かったようだ。お二人はなかなか体験できることではないので、興味深いのだろう。

「セラフィーナは魔物狩りも得意なのね」

「フォルツァ領は北の大樹林に接していますから、辺縁部分は常に狩りをしておかねばなりません。小さな頃から狩りにはついて行っていたので」

「小さなとは、どのくらいのときからだ?」

王子から尋ねられ、私は素直に答える。

「五歳の時に同行を許されました」

「五歳から……」

護衛のカノが思わず漏らしていた。

五歳が周囲に比べて早いのは知っている。だが、望んだのは自分だ。

「本当は四歳から行きたかったのですが、母が許可を出しませんでした。父を倒したら四歳でも許していただけると言われて、毎日奇襲に挑んだのですが、結局父を倒すことはできませんでした」

「フォルツァ辺境伯の強さは我が国にも聞こえてきている。以前合同軍事訓練の際に、辺境伯の強さに惚れ込んだ我が国の宰相が、是非とも娘をと願ったそうだが断られたと聞いている。宰相は力こそすべてを謳う、筆頭でな」

さらりと話された内容は、例の者の話なのだろう。

「そのフォルツァ辺境伯が鍛えたのだから、その子どもたちの強さも納得だな」

そう話は閉じられた。

食事を終え、トレイを片付けると食堂から出て行く、途中、先ほどの生徒たちと行き交うと、彼らは騎士団の敬礼をしてきた。

「やめなさい、ここは学園だし、それではトレイを落としてしまうだろう」

ふと目にした彼らの皿に、めまいがした。

肉だ。

ソースがたっぷりかかった肉。そして芋、パン。山盛りになっている。

「お前たち野菜は……」

「はは、肉を食えばすべては解決ですよ!」

「とにかく肉です!」

めまいがした。