軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22.ロロノリア鳥の捕獲方法

穴を八つ掘るのにも理由がある。

ロロノリア鳥の狩りグループはだいたい六羽なのだ。どういったコミュニティー形成かはわからないが、最大六匹、少なくとも四匹で狩りを行う。

四匹なら四方から、六匹なら囮と反対側に五匹が展開する。たまに、穴を外れて我々の側まで来るものがあった。

穴に落ちて優位に立てないロロノリア鳥はなかなかに狂暴で、今の彼らには難しいかもしれない。私はすぐに居場所を交代する。

「ロロノリア鳥の弱点は首の根元だ。足がわりと長く、かぎ爪は毒を持つ。風魔法を使ってくるので注意だ。マキナ先生、いざというときはウィンドディヴィジョンを!」

マキナ先生は得意が二属性あり、一つが風だ。もちろんウィンドディヴィジョンもできる。

「学生は魔法を使おうなんて思うな」

魔力を練っている者がいるが、付け焼き刃は怪我をする。やめておいた方が無難だった。

毒消しもあるし、薬もきちんと持ってきている。酷い怪我でなければなんとかなるだろう。

囮役のロロノリア鳥も同時に入ってくるが、そちらは進行方向に最低三つの罠がある。確実に落ちる。それよりも後ろ側からの強襲だ。

バラバラではなくまとまってくるので確実に、一匹はすり抜ける。

今回は運悪く二匹。だがそのすぐ横には使われなかった罠がある。

「ウィンドディヴィジョン!」

進行方向少し左寄りに突如出現した風の壁に、外れた一匹が思い切りぶつかり、反動で跳ね飛ぶ。そしてその先にあるのはすり抜けたはずの罠だ。

残り一匹。

学生には一応、すり抜けたものは私がやるとはいっているが、剣を構えたまま待ち構えている気概のある者ばかりだった。

それは、悪くない。

だが、爪の毒、風魔法。正面から当たろうとするのは愚かなことなのだ。

「ウィンドディヴィジョン」

マキナ先生の風の防御壁が生徒たちを覆う。

「先生!?」

「君たちにはまだ早いです。セラフィーナさんの動きを見ていてください」

真っ直ぐ走って来たロロノリア鳥だが、私が素早く横に避けると、すぐさま向きを変えた。こういったときに上手く風を使うのだ。

「落ちなかった一匹の素材は諦めます。肉だけ楽しめればいいというスタンスで行きましょう」

素材は惜しいが、命の方がもっと惜しい。綺麗に捕獲は諦めるのが吉。

再びこちらへ突っ込んで来つつ、羽根を広げた。細かい風の刃が私を襲う。もちろんそのまま受けるわけがなく、横へ回避するが、そちらはロロノリア鳥にわざと逃げ道を作られていた場所だ。

本当に、ずる賢いのだ。

だから小さな頃は罠を掘るまで。あとは罠の中央で美味しい餌になって待つのみ。父や兄、騎士たちがこぼれ入ってきた分は片付けていた。

誘い込まれたロロノリア鳥のキルゾーン。

だが私は誘い込まれた。

「ウィンドショット」

ごくごく細い一本の風の玉がロロノリア鳥の首を貫通する。

普段ならここでナイフを五、六本投げるのだ。風でねじ曲げてもどれかが当たるように。もちろんトドメではない。弱点は首の後ろ、ウィンドショットは隙だ。

体を傾げて走ってくるロロノリア鳥の真横へ地面を思い切り蹴って移動すると、地面がえぐれ土煙が立つ。その中でも獲物の首筋を正確に剣で叩く。斬り落とす。

土煙が収まる頃には胴体と首が離れたロロノリア鳥の姿があった。

おおお、と学生たちが騒ぐが、これからなのだ。

「見ていてわかったでしょう? 風を使う魔物は厄介です。飛び道具の軌道は反らされてしまいます。さあ、次はあなたたち。罠に捕らえた鳥たちを始末します。あまり長い間放っておくと、中を削られ飛び出して来ますよ」

風魔法を使っても、自身の体は浮かせない。しかし、周囲の土は削れるのだ。早くトドメを刺さなければ這い出てくる。それくらいの知能は当然ある。

「一番早いのは上から背中に飛び乗り、首の後ろの辺りを一撃で仕留めることです。一撃で仕留められねば体を震わせ、振り落とされて踏み潰されます」

私の言葉に学生たちは真っ青だ。

「魔法が正確に使えるのならば、魔法で首を落とすこともありですが……下手すると素材の価値が落ちます。火魔法は美しい羽根が焼けるので危険ですね」

数人の学生が視線を落とす。

やはり火魔法は多い。

私はちらりとマキナ先生を見やる。すると先生は笑って私の隣に立った。

「まあ、普通このしびれ薬を上から撒きます。即効性ですので、大人しくなったところを首後ろを刺して始末しますが、もちろん人にも効きますからね。マスクを着用してください。

一人一羽体験できて良かった。

一番大きな囮役を与えられた生徒は、かなり怯えていたがなんとか切り落とす。

そこからは解体だ。マスクをして私が穴に入り、下からロロノリア鳥を押し上げると、生徒たちが引き上げた。

「普通は風魔法使いが引き上げますよ」

「そんなことに魔法を使っているのはもったいないですよ、先生。数人で協力すればさほど問題はありません」

「フォルツァではそうでしょうね」

そう、これが日常の光景。

まずは羽根を傷付けないように毟り取り、解体用の大きめのナイフで腑分け、爪は毒耐性のある手袋をして切り分け、嘴もきちんとはずす。

「これが魔石です。だいたい心臓の横にありますね。人の魔石も同じです。そこに魔力がたまるのです」

心臓の横、正確には心臓に付着しているのが魔石だ。

「かなり大きい魔石ですね。よかったです。いい材料になりそうですよ」

マキナ先生もご満悦だ。

「さあ、早く解体して場所を移動しなければ魔物が寄ってきます。急ぎましょう」

次々穴から引き上げ、三人一組で解体してもらう。五匹分の肉はかなりの量になる。掘った穴に埋め、掘り起こされないようしっかりと土をかぶせておいた。魔物の肉は三週間は保つので、後で回収に来るよう手配しよう。貴族の食卓にのぼるような食材なので、かなり高いのだ。

爪や嘴は分担して運ぶ。

マキナ先生が通信の魔道具で連絡を取っている。かなり離れたところを拠点としたグレイドル先生の方も三匹綺麗に狩ることができたそうだ。負傷者もなし。森を出たところで落ち合うと話して、通話を終えた。

「かなりの収穫ですね。よかったよかった」

ほくほく顔のマキナ先生に、十分恩は売れただろうと安心した。