軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

研究ルークは知っている

全く持って非常に世話の焼ける連中である。

船医であり狂気的な実験野郎であり研究者であり……不名誉な肩書がいくつか肩に乗っている男、ルークは心底そう思った。

彼が見ている寝台の上には、複数の人間が意識不明で目を閉ざしている。

その数は十人をくだらない。

この十人以上の人間すべてが、……なんと驚き、いにしえの魔神相手の挑みかかった命知らず達なのである。

「陸の上は落ち着かないんだ、さっさと出ていきたいと言うのに」

ルークはそう言ってぼやいた。彼が文句をこぼすのも無理はない。彼はそもそも陸で頭がおかしいと言われた結果、務めていた診療所のある神殿を追い出されて、流浪の旅を行った後に、キッドの船に乗船したという経歴の持ち主なのだ。

自分に石は投げなかったものの、罵詈雑言を浴びせてきたのが陸の人間というわけで、彼は陸に上がるのがどうにも落ち着かない。

しかし医者として補充しなければならないものがある場合に限り、気分が悪くなりながらも陸に上がっていたという男でもあるのだ。

その男がこうして、渋々ながらも陸の看護施設にいるのには、深いわけがある。

「キッドもミックも、ぴくりともしない。これは本当に生きているのか死んでいるのか。まあ胸は上下しているから生きているわけだが……これの結果が出次第、色々と論文を書くのも進むんだがなあ」

これだった。

この二人もまた、この部屋の片隅の寝台で目を閉ざしているのである。

「ルーク先生、状態は?」

そう言って入ってきたのは、本当にさぶいぼが立ちそうだとルークが思うような身分の高い相手……なんと国王その人である。アルケイア国の国王フェルダ本人なのである。

海賊のところの船医ふぜいが、こうして敬意を込めて言葉をかけられるような相手ではない。

しかしながら、その事実をなんとか飲み下して、ルークは答えた。

「どちらも、まだ目を覚ましません。本当にこのままあの世に旅立ったとしてもおかしな話ではありませんでしょう」

「……そうだな。しかし、二人には目を覚ましてもらわなければならないと思うのだよ」

「そうでしたか」

「引き続き、看病の方を頼む。特に……ミックの方は、あの時に何が起きて何を体験したのかを、聞かなければならない相手だからな」

何も進展がないことにがっかりした調子ながらも、忙しい国王は官僚に耳打ちされて去っていく。扉が閉まってようやく、ルークは深く息を吐きだした。

とにかく国王相手の言葉は非常に気を使うので、あまり喋りたくなかったのだった。

とんでもない財宝がその島に眠っているに違いない。

その噂だけで海賊たちは色めき立ち、皆々お宝の気配に目をギラつかせてその、小さな島を目指したのだ。

それは船長の交代した、ルークの乗る海賊船も同じだった。

しかし、簡単には到着できないがお約束というわけなのか、海は荒れに荒れて容易くは上陸を許さない。

数々の名のある船が沈んでいくのを見た結果、一旦船は退却を選ぼうとして……小舟に乗る男を発見したのである。

この小舟に乗った男こそ、自分たちが追い出した元船長……キッドだったのだ。

キッドが生きているという事実に仰天した船員達だが、この嵐をくぐり抜けるには、歴戦練磨の熟練者であるキッドの指示を仰いだほうが早い。

その現実的な考えの結果、急ぎ彼を救助し船に乗せて、一時的に指揮権をわたし、なんとか船はまともな海域に戻ったのである。

ここで一悶着があったわけだが、キッドは島の方に戻りたいという意思表示を見せ、しかし装備も足りないだろうと言うことで、一番近い街があるアルケイア国に、渋々ながらも立ち寄ったのであった。

そこで、国王からのお触れで、あの島に入るならば国の勇士を乗せること、それの往復に成功すれば頭ほどの大きさの黄金を渡すというお触れに、現在の船長であるジャスティの目がくらんだ。

その結果、船員達の意見を二分したものの、黄金がそれほどあればうはうはであると口先でジャスティが言いくるめ、勇士達を乗せて、装備を整えて、船はまたあの荒れ狂う海に戻ったのだ。

……ここで嬉しい大誤算が起きた。なんと船は、船底になにかがいるかのようにするすると、荒れた海など何のそので島に進んでいき、あっけなく島に到着したのである。

これには誰もが顎が外れそうな驚きを示したものの、船員達は上陸してすぐさまお宝探しを始め、キッドはミックの居場所を探し回り始めた。

どちらも良い結果はなかなか訪れず、ルークはここで、ミックにつけた魔導骨の一部が残っているから、それに接続すれば居場所がわかりそうだということを思い出して、キッドにそれを埋め込むことを持ちかけ、彼はその話に乗った。

乗って、多少の手術の後に彼の腹に魔導骨が埋め込まれ、キッドが探すミックが、岩崩で塞がった洞窟の中にいることが判明した。

ここで、アルケイア国の勇士達が探す邪悪もまた、その洞窟の中にいることが巫女の力により判明した。この巫女こそ聖女である。巫女はほとんどの力を失っていたものの、邪悪の気配だけはなんとか感じ取れたのだ。

ミックは邪悪に囚われている。というわけでキッドは勇士たちと手を組み、塞がった洞穴の瓦礫をどかし、中にはいったらしい。

そこまではルークも見ていたから知っているが、その洞穴の中で何が起きたのかまでは知らない。見ていないものは知らない。

そこで、なにか大きな何かは起きたのだ。それによりその洞穴が吹っ飛び、天高く禍々しい光が立ち上り、……魔神が姿を表したのだから。

魔神はなんだかよくわからないものだった。なんだかのたのたしてぬめぬめして、軟泥のようなもので、周りに触手のようなものを伸ばそうとしていた。

これに勇士達の一部は恐れをなして逃げたが、ここで海賊一行は目ざとく、それの中に黄金のきらめきがいくつも見えることに気づいて、お宝を手に入れんと我先に挑みかかったのである。

結果魔神と海賊と勇士の乱戦が始まり、ルークは安全なところからそれを見守り……船医に戦闘能力はあまりない……キッドもまた何かを探すように魔神に挑み、それが起きたのだ。

それまで誰の攻撃も意味がないと思うほど、魔神の状態は変わらなかったのに、キッドが激情に任せて吠えたその時に、変わったのだ。

キッドが吠えたのはただ一言。

「ミック!!」

たったそれだけの言葉が、魔神の力を大きく弱めた。魔神は動揺したようにぐねぐねと蠢き、痛みを覚えたように細かくさざなみ立ち、そこでキッドの位置からは、なにかが見えたようだった。

だからキッドは、そこをめがけて飛びかかり、短剣を突き刺したのだ。

そして短剣が突き刺さったところから、押し出されたように、魔神の内部とつながっていたのだろう痕が痛々しいミックが吐き出されたのだ。

「ミック!!」

キッドがそう言って彼女を抱きしめる。彼女の意識は戻らない。そこで、キッドが、ルークの推測であるものの、魔導骨の連結を強めたのだ。

そんなことをすれば、骨がより多くの骨を探して、埋め込まれている腹をふっとばすというのに。

こうしてキッドの腹の一部は吹っ飛び、ミックの意識は戻ったようだった。

ミックの意識が戻ると同時に、魔神はもう養分を失ったと言わんばかりにしぼみ、しぼんでかっすかすの干からびたわかめのような姿になり、そこに空から真っ白な稲妻が直撃したことで、魔神は黄金を残して消滅したのである。

残されたのは、腹が吹っ飛び出血の結果意識不明のキッドと、キッドが魔神を刺した時に、一緒に胸のあたりを刺してしまったミックの二人で、ルークはそれを認識した瞬間に、逃げた勇士の尻を叩き鼓舞し、二人を船の医務室に放り込み、大急ぎで治療を行ったのである。

彼にはわからないものの、聖女は癒やしの力があるはずなのに、魔神の消滅とともに力を完全に失いただの女の子になったので、役に立たないながらも助手のようにこき使い、他の戦った者たちの治療も行い、こうしてアルケイア国に戻ったのである。

戻った途端に、事の次第を知ったフェルダ王がミックもキッドも国賓のように扱い、王宮の医務室に寝かせて治療を続けさせ、他の勇士たちも意識不明のものはそこに寝かせたわけである。

「研究途中の培養内臓が成功していれば、二人とも目を覚ますわけなんだがなあ」

ぜひとも成功してほしい。これが成功すれば研究は一層進む。