軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第53話 ロランの妥協

第二部隊から協力を拒否されたロランは、部隊間会議を開くことにした。

上から命令するばかりだけではなく、彼らにも発言させることで、自主的な参加を促し、プロジェクトへの責任感と当事者意識を養うのだ。

こうして顔を合わせて意見を言い合わせることによって、部隊間の価値観の違いをすり合わせ、わだかまりを解消し、連帯感を持たせようという狙いもあった。

ギルド長が会議を招集すれば、各部隊の隊長及び幹部は応じなければならない。

会議には第一部隊から第三部隊まで各部隊の主だった面々が顔を揃えた。

「みんなよく集まってくれた。今回の議題は他でもない。現在、目下進めている『魔界のダンジョン』の経営に関することだ」

ロランは第二部隊の隊長イストを初めとする面々にチラリと意味深な視線を送った。

イスト達はそれに気付かないフリをする。

仕方なくロランは、会議を進める。

「細かいことは、ドーウィン、説明を頼む」

「はい。我々ドーウィン隊は、ギルド長から『魔界のダンジョン』で『鉱山のダンジョン』に収益性で匹敵する資源を探すよう命じられ……」

「異議あり!」

イストが突然、弾かれたように立ち上がって発言し始めた。

「なぜ、わざわざ『魔界のダンジョン』の開発を進めるのですか? これまで通り『鉱山のダンジョン』の攻略を狙えばよいじゃありませんか」

「イスト。ドーウィンの説明はまだ終わっていない。着席しろ」

ロランがたしなめるように言った。

しかし、イストはいうことを聞かず、その後も喋り続けた。

イストを着席させるのに少し時間がかかった。

(見え見えの時間稼ぎしやがって)

イスト達が議事妨害するのは、このまま何も決まらないうちに、会議を終えてしまおうという魂胆に違いなかった。

早くも内心でイライラしてきたロランだが、どうにか平静を装って再び議事を進行させる。

「『魔紅岩』?」

「はい。魔力を宿す紅色の岩で、耐久力の非常に高い岩です。が、その下には有効活用できる様々なアイテムが埋まっています。『キメラの羽』も……。そして、鉱山においても、大規模な鉱床の上に魔紅岩の岩盤が覆い被さっていることが分かりました。『鉱山採掘』Aのスキル持ちでも掘ることはできません。破壊するには平均100以上の威力が必要です」

「威力100か……」

「並みの冒険者では、傷一つ付けられんな」

「高ランクの 戦士(ウォーリアー) でも怪しいぞ」

「そこで 槍斧(ハルバード) や大剣を扱えるBクラス以上の 腕力(パワー) の 戦士(ウォーリアー) と『攻撃付与』B以上を使える支援魔導師が必要です。ご存知の通り、ダンジョン経営期間は、ダンジョンの資源を採集するだけでなく、ステータスを調整する期間でもあります。 腕力(パワー) だけで、あるいは支援魔法だけを頼りに無理して『魔紅岩』除去作業を行えばステータス調整に狂いが出ますし、かと言って、省エネで作業するようでは採算が取れません」

「効率よく資源の採取を進めるには、第一部隊と第二部隊の協力が必須……ということだ」

アリクが言葉を継ぐように言った。

「しかもスキル『アイテム鑑定』を使えば、『魔紅岩』の下に埋まっているアイテムを透過できることが分かりました。そこでダンジョンが消滅する来月が来る前に、至急アイテム鑑定のスキル持ちとBクラス以上の 戦士(ウォーリアー) が必要というわけです」]

「と、言うわけでスキル『アイテム鑑定B』以上の鑑定士が3名、 腕力(パワー) がBクラス(60〜80)の 戦士(ウォーリアー) が20名ほど必要だという結論になりました。これらの人員を確保するために、第二部隊から人員を派遣していただくのが最も適切かと思うのですが……」

「我々の第二部隊にそのような余裕はありませんな」

イストが突っぱねるように言った。

「君達の部隊は現在、特に何の任務もなく、訓練をしているのみだったと思うが?」

ロランは嫌味っぽく聞こえないよう、なるべく優しく言った。

「まさしく、我々はその訓練に忙しいのです。来期こそ、『魔法樹の守人』から『鉱山のダンジョン』を奪還する。その訓練に!」

(こいつ、まだ『鉱山のダンジョン』を言い訳にするのか)

ロランは内心で呆れた。

「『金色の鷹』は今後、『魔界のダンジョン』に注力する。それはもう決定事項だ。決まったからには従ってもらう」

「いいえ、決まってなどいません」

「イスト、いい加減にしろ。ギルド長の命令に逆らう気か?」

見かねたアリクが咎めるように言った。

「ギルド長命令だと? ならば前ギルド長、ルキウスからの命令はどうなる? 『金色の鷹』は『鉱山のダンジョン』を第一目標に部隊を編制し、ダンジョン攻略に取り組むべし、というのが前ギルド長の意向だったではないか!」

「前ギルド長の意向って……ルキウスはもういないだろ! そんなもん無効だ。無効!」

「いいや、無効ではない。前ギルド長の命令はまだ生きている!」

その後、会議は前ギルド長の命令がまだ生きているか、現ギルド長の命令と矛盾しているかどうか、現ギルド長の命令とどちらが優先されるべきか、前ギルド長の命令はいつまでが有効か、といった議論を巡ってしばし紛糾した。

議論では決着がつかなかったため、会議にはギルド会則や過去の議事録まで引っ張り出して、ああでもない、こうでもないと議論することになってしまった。

この時、ロランは初めて過去の会議の議事録を見ることになったが、その長さと内容の乏しさに思わずゾッとした。

彼らはこんなどうでもいい議論にこんなに何時間も延々と時間をかけて、不毛な言い争いをしていたのかと。

(冗談じゃない。こんなことをしていたら、どんな強力なギルドだって弱体化するに決まってるじゃないか!)

「とにかく!」

ロランはバァンと机を叩いて、人々が喋るのを中断させた。

「まとまった金が必要なんだ。今期の終わりまでに鉱山の開発と『キメラの羽』の採集を済ませる必要がある。それができなければ、何人か冒険者をクビにしなければならないんだぞ? この中にまとまった金を用意できる者がいるのか? いないだろう?」

こういうと、イスト達も流石に黙らざるを得なかった。

「ならばもうしのごの言わず、とにかくさっさと『魔界のダンジョン』の経営に乗り出すんだ! その後のことはそれからだ」

こうしてようやく第二部隊の面々は『魔界のダンジョン』の経営に協力することに渋々ながら同意し、どのようにダンジョン経営を進めていくかに議題は移っていった。

(ようやく本題に入ることができた……)

しかし、ロランはここまでで既にグッタリしていて、思考力はすっかり奪い去られていた。

ダンジョン経営における、実際の仕事の進め方についても、

第二部隊の面々は自分達の都合を押し付けることをやめなかった。

イストは臆面もなく以下のような発言をした。

「我々から人員を出して欲しいというのなら、条件があります。

1、第1部隊のダンジョン退去

2、第2部隊への権限移譲

3、第1部隊のダンジョンへの立ち入り禁止

4、『攻撃付与』を使える支援魔導師の補充

これらの要望を叶えていただきたい」

この第2部隊のあまりにムシのいい要求に、第1部隊の面々としても黙っているわけにはいかず、会議は再び混迷を極めた。

ドーウィンはうんざりする。

(はぁーあ。また始まったよ。部隊間の主導権争い。こればっかりはロランさんがギルド長になっても続くのかなぁ)

アリクもアリクで第二部隊の連中とやり合いながら、ロランの振る舞いを観察していた。

(『魔法樹の守人』での新部隊創設を見るに、ロランは部隊編成、新人の育成などの功績を見るに、現場指揮官としてはこれ以上ないほど有能だが、経営者としては少し脇が甘いところがあるように見えるな)

今も、ロランはどうにか第一部隊と第二部隊の溝を埋めようとしているが、二つの部隊の主張に振り回されている感は否めなかった。

ルキウスの方が根回しや権力闘争は上手かったかもしれない。

(どうにか助けてやりたいところだが、俺も部下達の手前、他部隊の主張をそうやすやすと受け入れるわけにはいかん。ここはロランに自力でなんとかしてもらわなければ)

「つまり、何をどうしてもこれ以上協力するつもりも、妥協するつもりもない。Bクラス以上の 戦士(ウォーリアー) を派遣するつもりもないし、鑑定士を派遣するつもりもない。そいうことだな?」

ロランは念を押すように言った。

(もし、これ以上協力を拒むなら第二部隊を解体せざるを得ないが……)

ロランは第二部隊の解体も辞さない覚悟で相手の返答を待った。

「現状、そうせざるを得ませんな。しかし……」

ここでイストは可笑しそうに笑って、少し態度を和らげた。

「そうですな。鑑定スキル保有者の派遣についてなら、協力しても構いませんぞ。我々も鑑定スキルの育成には力を入れたいと思っていたところです」

「そうか。協力してくれるか」

ロランはホッとして言った。

(19日までに鑑定士を派遣してくれるのなら、なんとか『キメラの羽』の収益化に間に合う)

「ただし、20日からになります」

「20日? ダメだよ。それじゃ遅すぎる」

「そうは言ってもですねギルド長。こちらにもあらかじめ決められた予定というものがあるのですよ」

「それはそうだけど……、ならせめて19日から。それでどうだ?」

イストはロランのこの態度を見て、ほくそ笑んだ。

(19日までに鑑定スキル持ちが必要というのは本当らしいな)

「もし、こちらの予定を崩してまで鑑定スキル保有者を派遣したいと言うのならば、まず第1部隊にダンジョンから退去していただきたい」

「ふざけるな! なぜ、こちらが退去しなきゃならないんだ」

アリク隊の幹部の一人が噛み付くように言った。

「第一部隊がいては、作業も落ち着いてできんわ」

「なんだと!?」

「だいたいお前らは、いつもいつも……」

「おい、落ち着けって」

会議はまた紛糾して、しばらく収拾がつかなくなった。

ようやく落ち着いたのは1時間も経った頃だった。

「とにかくだ。先にダンジョンを担当していたアリク隊を退去させるわけにはいかない。どうにか協力する方法を探そう」

ロランはそう言ったが、第二部隊の人間は「我々にも立場というものがあります」と言って頑として譲らなかったため、結局その日は決着がつかなかった。

「会議では『第二部隊もダンジョン経営に協力する』ということ以外、何も決まらなかったみたいよ。とりあえずは私達の思惑通りね」

鍵の閉められた控え室、二人きりの状態で、ディアンナはギルバートに言った。

「ロランの奴、まだお前に泣きつかねーのか?」

「ええ。私の方でもあれから何度も助力を申し出たんだけれどもね」

「ふーん。そうか」

ギルバートは酒の肴を突きながら思案顔になる。

(ロランはすでにアリク隊からの支持も失いつつあるはず。ここまで孤立してもまだギブアップしないとは)

「なかなかしぶとい奴だな」

「ホントよ。さっさと私達に任せればいいのに。何を拘っているんだか分からないわ」

ディアンナは呆れたように言った。

「ロランは引き続き第二部隊との折衝を続けるつもりみたいよ。各部隊のダンジョンでの行動範囲や滞在時間を分ける、といった条件を提示するつもりみたい。流石にアリク隊をダンジョンから退去させることまでは受け入れられないって言ってたわ」

「よし、それじゃあ第二部隊の連中にはあくまでダンジョン退去まで粘るように伝えよう」

「? それじゃあ、交渉決裂して、話がまとまらなくなっちゃうんじゃないの?」

「まとまってもらっちゃあ困るんだよ。ロランと第二部隊の連中にはとことん、いつまでもいつまでも、末永く、喧嘩してもらわなくっちゃあな。あくまでも解決の手を差し伸べるのは俺達だ」

ジルは『魔界のダンジョン』に行く前に、『金色の鷹』に寄っていた。

(最近、『精霊の工廠』の方にばかり出勤していたから、『 金色の鷹(こっち) 』に来るのは久しぶりだな)

ジルは、たまたまロランと鉢合わせになるのを期待して、建物内をわざとゆっくり歩いた。

(ロランさんは今なにをしているのかな? やっぱり忙しいのだろうか。ギルド長室まで行くのはさすがに迷惑かな?)

ジルがそんなことを考えながら廊下を歩いていると、控室から話し声が聞こえてきた。

「例のギルド長さ……」

「えっ? マジ?」

(ギルド長? ロランさんのことについて話しているのか?)

ジルは入り口の影に隠れて聞き耳を立てた。

「だからさ、ギルド長はもうすぐクビになるみたいだぜ」

「マジかよ」

「ああ、幹部達の間で孤立してるらしい」

「まだ、就任して間もないっていうのに、不甲斐ないねぇ奴だな」

「ははは、違いねぇ」

「ま、出資者の犬にふさわしい末路だな」

ドゴォ、という衝撃音が背後からして、彼らはギョッとした。

振り返ると、そこには壁に拳をつけて怒りの形相で立っているジルがいた。

室内は頑丈な建てつけにもかかわらず、しばらくの間、グラグラと揺れ、天井からは砂埃がパラパラと落ちた。

「ヒッ」

「ジ、ジルさん?」

「お前達、鍛錬をサボって、ギルド長の陰口とは、いいご身分だな」

「す、すみません」

「し、失礼しました」

「待て!」

ジルは立ち去ろうとする会員達を呼び止める。

「今、何を話していた? ロランさんがもうすぐ失脚するとかなんとか。なんでそんな根も葉もないことを言うんだ」

「えっと、その……」

「そういう噂を聞いたもので……」

「噂だと? いいか、ロランさんがギルド長を辞めることは無い。今後、そのようなデマカセは絶対に口にするな。分かったな?」

「……はい」

二人は肩を落としてうなだれる。

「さあ、さっさと鍛錬に行け! 余計なことは一切話すな」

「は、はいっ」

ジルにどやされた彼らは、追い立てられるようにして部屋を出て行った。

(しばらく顔を出さないうちにこんなことになっていたなんて。ロランさんが孤立している? ロランさんっ)

ロランは再びイスト達をギルド長室に呼び出して交渉していた。

(これ以上の猶予はない。今日ここでイスト達を説き伏せなければ、『魔界のダンジョン』の経営は頓挫してしまう)

「19日までに、鑑定スキル保有者を『魔界のダンジョン』に派遣してもらう」

「ギルド長、昨日の会議でも申し上げましたが、我々は鑑定スキル保有者を20日まで派遣するつもりはありません」

「では、こういう条件でどうだろう? アリク隊の『魔界のダンジョン』での行動範囲を制限する」

「行動範囲を制限?」

「そうだ。行動範囲を制限してお互いにバッティングしないようになれば、二つの部隊が同じダンジョンに入っていても問題ないはずだ。例えば、第一部隊は12階層には立ち入らない。第二部隊は11階層には立ち入らない、といった風に」

「話になりませんな」

イストは呆れたようにギルド長室を出て行こうとする。

「待て! 分かった。それなら部隊毎にダンジョンに入る時間を決めて、交互に入るというのはどうだろう? 少し効率は悪くなるけれどそれで二つの部隊が同時に入る弊害は防げるはずだ」

「ギルド長!」

イストはまるで怒ったように声を荒げた。

「そのように我々の価値を値切るようなことはしないでいただきたい! もし本当に我々の助力を得たいというのなら、ギルド長の出せる最大限の誠意を持って応じていただけませんかな? それができないというのなら、我々はこれ以上『魔界のダンジョン』の経営に協力いたしませんぞ」

ロランはグッと詰まった後、葛藤するように目を瞑ってから、意を決したように再び話し始めた。

「……分かった。では、アリク隊を一旦ダンジョンから引き上げよう。ただし、これが最大限の譲歩だ。これ以上を要求するというのなら、僕にも考えがあるよ」

ロランとイストは少しの間、駆け引きをするようににらめっこした。

「ふー。分かりました。アリク隊をダンジョンから引き上げるんですね。それで手を打ちましょう」

イストは不承不承という感じで、条件を受け入れ、ギルド長室を退室した。

ロランはグッタリと机にうつ伏せになって、しばらく動けなかった。

しかし、いつまでもこうしてはいられない。

今度はアリク達を説得しなければならなかった。

(たかが、人員の提供を受けるのにここまでもつれるとは。だが、分かったこともある。やはり第二部隊を裏で動かしているのはディアンナだ。彼女に話した内容ピッタリにイストも妥協ラインを合わせてきた。しかし、腑に落ちないな。なぜ第二部隊の連中はこうまでディアンナの思惑通りに動くんだ? 一体何が目的でここまで僕の邪魔をするんだ?)

ロランはアリク達を説得すべく『魔界のダンジョン』に向かったが、説明を聞いたアリクは、当たり前だが簡単には首を縦に振らなかった。

彼も部下達の手前、そう簡単に譲るわけにはいかない。

「ロラン、『魔界のダンジョン』を任せると言ったのは、お前の方じゃないか。なぜ後から来たイスト達のために我々が退去しなければならないんだ」

「頼むよ。アリク。今回だけは、第二部隊の奴らの言い分を優先してくれ。この通りだから」

ロランはアリクの部下達が見ているにも関わらず、頭を下げる。

「分かった。ここはお前に免じて、こちらが譲歩しよう。ただし貸し一つだぞ」

アリクはため息をつきながら、不承不承という感じで言った。

「ありがとう。恩にきるよ」

ロランがいなくなると、アリクの部下達は口々に不平不満を言い合った。

「また、第二部隊のゴネ得か」

「全く。いち早く新ギルド長に協力した我々が損を見るなんて」

「新しいギルド長になっても、結局、こういうとこはルキウス時代と変わりませんね」

「お前達、そう言うな。ギルド長も就任したばかりで何かと大変なんだ」

アリクはそう言って部下達をなだめた。

(しかし、確かにこんなやり方では、『金色の鷹』を回していくことなんてとてもできんぞ。どの道、22日には、第1部隊と第2部隊で共同して作業にあたる必要がある。どうするつもりだ? またこんな風に頭を下げて回るつもりか? 俺にも部隊長としての立場があるからこれ以上妥協するわけにはいかんぞ)

イスト達、第二部隊の面々は、ロランとの会談を終えた後、意気揚々と酒場に集まって酒盛りをしていた。

その様は、まるでダンジョンを攻略したかのような喜びようだった。

「ふはは。やったぞ。ついにアリク達をダンジョンから追い出した」

「やはりギルバートからの情報は正しかったようだな」

「ああ、おかげでギルド長を手玉に取ることができた」

「目に見えて焦っていたなギルド長は」

第二部隊の面々が祝勝気分に浸る中、ギルバートだけは、一人憮然とした顔をしていた。

(チッ。ロランめ、まさかアリク隊をダンジョンから追い出すとは。ディアンナの奴、ロランはアリク隊をダンジョンから退去させないんじゃないのかよ。いい加減な情報渡しやがって。使えねえな)

「やはりギルバートは頼もしいな」

「これからも頼むぞ」

「ん? ああ、たりめーだろ。任せとけって」

イスト達に話を振られたギルバートは、不機嫌な顔を引っ込めて、得意げに言った。

「さて、ギルド長からの譲歩も勝ち取ったことだし、そろそろ我々の真意をギルド長に伝えてもいい頃じゃないか?」

「お、そうだな。そろそろ和解の頃合いかもしれん」

「そうだな。潮時だ」

「おい、ちょっと待てよ」

ギルバートが鋭い声をあげた。

「言っただろ。こっちの要求をバラしちゃダメだって。それじゃ足元見られるんだ。それにアリク隊は一時的に退去させられたに過ぎねえ。俺達が大人しくなったと思われたら、またロランはアリク隊をダンジョンに戻して優遇し始めるぞ」

「しかし、お前の言う19日まで待っても、結局、我々の要望は叶わなかったぞ」

「うむ、確かに。アリク隊をダンジョンから退去させるのは、我々の真の目的ではない。どれだけギルド長から譲歩を勝ち得ても我々の本来の目的が達成されないようであれば意味がないぞ」

「だから言ってんだろ。ロランの奴は22日までに 腕力(パワー) B以上の 戦士(ウォーリアー) が必要なんだ。それまでは奴の方から交渉を中断することはない」

「しかし……、もしそれまでに向こうが我々の要望を持ちかけてこなかったら?」

「そうだ。ギルド長も我々の要望を知らなければ叶えようがないではないか」

「安心しな。そこはタイミングよくスパイを通してロランに伝わるようにするからさ」

「そうか。それならいいが……」

「とにかく、この件は俺に任せてくれ。万事うまくやるからよ」

「うむ。まあ、お前がそこまで言うのなら……」

(ふぅー。ったく、世話の焼ける奴らだぜ。今、お前らにギルド長と和解されちゃあ困るんだよ。ちゃんとディアンナを通して和解しなきゃ、あのバカ女の権力が回復しねーだろ)

ギルバートは気合を入れ直すように酒を煽った。

(とにかくここが勝負どころだ。次は一切妥協しない。覚悟しとけよロラン、お前がディアンナに泣きつくまで徹底的に締め上げてやるぜ)