軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百二十三話 宝箱の中身そしてギガントミノタウロスの炭火焼ステーキ

俺たち一行の前に鎮座する宝箱。

古びた木製の宝箱だ。

フォレストアーミーアントの巣とは言え、当然のことながらここもダンジョンの一部ということなのだろう。

鑑定してみたが、特に罠などは仕掛けられていないようだ。

「罠はないみたいだ。開けてみるぞ」

慎重を期して槍先で宝箱をこじ開けた。

ガタンという音と共にフタが開く。

俺、フェル、ドラちゃん、スイ、みんなで恐る恐る中を覗くと、中にはペンダントが1つ入っていた。

チェーンをつかんで上に持ち上げる。

ペンダントヘッドは、銀色の幾何学模様が描かれたメダルのようなものでその中央にはオパールのように虹色に輝く石がはめられていた。

『ほう、なかなかのものだぞ。それは』

先に鑑定を済ませたのか、フェルがそう言った。

急いで俺もペンダントを鑑定してみる。

【 解呪のペンダント……どんな呪術も1度限り無効化するマジックアイテム 】

「これは……」

ゴクリと唾を飲み込む。

『おい、何だったんだよ?』

ドラちゃんが何なのかと答えを急かす。

「解呪のペンダント、だって」

『ふーん、興味ねぇな』

『お肉が入ってればよかったのに~』

ドラちゃんとスイは一気に興味が失せたよう。

逆に俺にとっては……。

「な、なぁ、フェル、これって、一度限りの使い捨てではあるけど、 どんな(・・・) 呪いでも無効化するってことなんだよな?」

『うむ。我の鑑定ではそうなっておる』

フェルの詳しい鑑定でもそういう風に出たということはだ、どんなに強い呪術でも無効化するってことだ。

「ということは……」

『お主が身に着けているのが良かろうな』

思い出してみてほしい。

俺には神の加護があるけど、全てにおいて(小)であることを。

神様曰く、『神の加護(小)とは言っても、即死効果のあるものや余程強い呪術でもない限り状態異常無効化の力は発揮されるし、魔法の発動が良くなる』とのこと。

ここで注目してほしいのは“余程強い呪術でもない限り”というところだ。

そう、強い呪術は無効化できないということになるのだ。

後になって加護(小)が追加されて、重ねて加護(小)がついているから普通の加護と同様の効果があるとは聞いているものの、正直に言えば不安がまったくないとも言えない。

何せ加護(小)だしさ。

ということで、ここは素直に俺が使わせてもらうことにする。

「ああ。俺が使わせてもらうよ」

早速俺は解呪のペンダントを首にかけた。

フフフフフ、これで懸念していたことが1つ減ったぜ。

まぁ、強い呪術なんて受けることはないだろうけど、万が一ってことがあるからね。

これがあれば俺としても安心だ。

あとは即死効果を無効にするマジックアイテムでも出れば嬉しいんだけど。

そんな都合のいいことはないだろうけどさ。

『ここにはもう用はないだろう。出るぞ』

フェルにそう言われて、俺たち一行はアリの巣から脱出した。

出るときはフェルの背中に乗せてもらったかららくちんだったよ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

フォレストアーミーアントの巣から帰還し、地上(?)に戻った俺たち一行は再び森の探索を開始した。

出てくる魔物を迎撃するのはもちろんスイだ。

ジャイアントキラーマンティス、ジャイアントセンチピード、ヴェノムタランチュラ、パラライズバタフライ等々のほか、出なくてもいいのにヌメヌメ系の魔物も出てきた。

ヌメヌメ系の魔物は見るだけでもゾワッとくる嫌な魔物だけど、スイが率先して倒してくれたから何とかなった。

フォレストアーミーアントの巣から遠のくほどに徐々に獣系の魔物も出てくるようになり、少しだけど皮やら肉のドロップ品も取得することができた。

そうこうするうちに夕飯時に。

夕飯は、フェル、ドラちゃん、スイの希望でギガントミノタウロスの肉を使うことにした。

「またギガントミノタウロスの肉か。何にしようかな。いい肉なのは間違いないし、シンプルにステーキが一番いいような気がするけどいつもそれじゃあねぇ……。あ、森の中だから煙を気にする必要もないし久々にBBQコンロを使ってもいいかも。まぁ厳密に言ったらダンジョンの中だから、森の中ってのは違うかもしれないけどもさ」

BBQコンロか、それならば……。

「BBQコンロでギガントミノタウロスの炭火焼ステーキと洒落こむか」

アイテムボックスからBBQコンロを取り出して準備をした。

「よしと、炭もいい感じだしもうそろそろ焼き始めてもいいだろう」

適度な厚みに切って塩胡椒を振りかけたギガントミノタウロスの肉を網の上に並べていく。

ジュッという音とともに肉の焼ける美味そうな匂いが立ち上っていった。

「たまらんなぁ、この匂い……」

炭火でじっくり焼くためにしばしの時間を置く。

ギガントミノタウロスの肉から脂が滴り落ちて炭の炎がボッと燃え上がる。

もうちょい、もうちょい、よしいいだろう。

いい具合に焼けたギガントミノタウロスの肉を次々とひっくり返す。

くっきりと格子状に付いた焼き目が目にまぶしい。

「絶対美味いだろ、これ」

ゴクリと思わず唾を飲み込みながら、そんなことを1人つぶやいていると、BBQコンロの網に何かの雫が垂れてジュッと蒸発した。

何だと思って上を見上げると、フェルが涎をダラダラ垂らしながらギガントミノタウロスの炭火焼ステーキをガン見していた。

「ちょちょちょっ、フェル汚いだろうが!」

『汚いとは何がだ』

「何がだじゃないよっ! 涎ダラダラ垂らしてるでしょうが。しかも網の上に垂らしやがってー」

『おっと、すまん』

「すまんじゃないよー。フェルの涎のついた炭火焼ステーキなんか食いたくないからな。見るならもうちょっと下がったところから見ててよ」

『むぅ、まだ出来んのか?』

「もうちょっとだよ」

『この匂い、我慢できねぇ……』

『早く食べたーい!』

フェルの横でホバリングしているドラちゃんとフェルの頭の上に乗っているスイもフェル同様に炭火焼ステーキに目が釘付け状態だ。

「もうちょっとで焼けるから、な」

そう言い含ませて、再びステーキに目を移した。

ジュー―――。

焼け具合をジッと窺う俺の頭上から聞こえる荒い鼻息。

「だぁかぁらぁ、フェルはもう少し後ろにいてよー。って、ああ! お前俺の肩にも涎垂らしてー!」

ベッタリと肩についたフェルの涎を急いでタオルで拭いた。

「ったくもう何やってんだよ。フンフン、フンフン鼻息も荒いし」

『仕方がないだろう! その肉の焼ける匂いがたまらんのだ。腹が減っている我にその匂い嗅がせながら我慢しろというのが殺生過ぎるのだ』

「何が殺生過ぎるのだだよ。肉を焼いてるんだから匂いもするだろ。焼き上がる間くらい我慢しろよな」

『ぐぬぬ』

『まぁまぁ。しかし、フェルの言うことも分かるぞ。空きっ腹にこの匂いはいかんわ。ジュルッ……』

『あるじー、お肉まぁだ? スイ、早く食べたいー』

ドラちゃんまで涎すすってるし。

スイは待ちきれなくてブルブル振動してるよ。

「ああもう分かったって。あとほんのちょっとだから!」

もうちょい、もうちょい、よしっ。

「はい、焼きあがったぞ」

それぞれの皿の上にデデンとギガントミノタウロスの炭火焼ステーキを数枚ずつ載せて出してやるとフェルもドラちゃんもスイも無言でがっついている。

第2陣を焼き始めるが早くも食い終わったフェルが次のステーキを待っていた。

『おかわりはまだか?』

「今焼き始めたところだから、もうちょい待って」

そう言ったにもかかわらず、フェルはそわそわしながら『まだか』って何度も聞いてくる。

そうこうしているうちにドラちゃんとスイも食い終わってスタンバイしている。

ようやく焼けたところで出してやると、またもやみんながっついていた。

「ステーキ醤油はかけなくていいのか?」

『む、かけてくれ! ニンニクのやつだぞ』

『俺も! この肉には絶対ニンニクのやつが合うはずだ』

『スイもー!』

炭火焼ステーキにニンニク風味のステーキ醤油をかけてやる。

合わないはずがないね。

思わず俺の喉もゴクリとなるが、まだまだギガントミノタウロスの肉を焼かねばならないだろう。

思ったとおり、フェルとドラちゃんとスイの食欲は止まらない。

ニンニク風味に続いておろし風味、玉ねぎ風味、バター風味のステーキ醤油と次々とステーキを出していく。

一巡したところでドラちゃんが脱落。

ポッコリしたお腹をさすりながら満足そうに大の字になって横になっている。

『我はまだ食うぞ』

『スイもまだ食べるもんね~』

フェルとスイの腹は底なしかよ?

恐ろしい子。

さらにニンニク風味と玉ねぎ風味のステーキ醤油を掛けた炭火焼ステーキを食ったところで、ある程度食欲も落ちついてきたのかがっつく感じがなくなった。

ようやく落ちついたってことで、俺もギガントミノタウロスの炭火焼ステーキをいただくことにした。

俺の分は食べやすいように一口大に切ってからだ。

切っている最中も肉汁があふれ出てくるし、切った断面も程よいピンク色。

ものすごいイイ感じに焼けている。

その肉に付けるのは最近密かにマイブームとなっているブレンド塩。

わさび塩とレモン塩を用意してみた。

まずは切り分けた炭火焼ステーキにわさび塩をチョンと付けてパクッと頬張った。

「なんだこれ、超美味い」

わさびの爽やかな香りと辛味がほんのりと鼻を抜ける塩が肉汁あふれる炭火焼ステーキに絶妙にマッチしていた。

「ヤバイ。いくらでも食えるぞ」

わさび塩を付けた炭火焼ステーキ肉を頬張る手が止まらない。

「おっと、こればっかり食ってちゃダメだな。レモン塩の方も試してみないと」

今度はレモン塩をチョンと付けてパクリ。

「レモンの香りが爽やか~。こっちも美味いなぁ。これなら肉だってさっぱりといけちゃうよ」

今度はレモン塩を付けた炭火焼ステーキ肉を頬張る手が止まらない。

「こりゃあ甲乙付け難いね」

そんな感想を言いながらレモン塩を付けた炭火焼ステーキ肉をパクッと頬張ったところで、こちらをジーッと凝視する視線が。

『おい、それは何なのだ?』

「えーっと、わさび塩とレモン塩」

『この肉に合うのか?』

「うん、バッチリ」

『何故そういうものを早く出さないのだ! 我にもよこせ!』

『スイにもちょーだーい!』

「はいはい、分かりました」

そう言ってフェルとスイの分を用意していると、大の字になって寝ていたドラちゃんがガバリと起き上がって『俺もちょっと食うぞ!』だって。

ダンジョンの中だってことをついつい忘れて、ギガントミノタウロスの炭火焼ステーキを思いっきり堪能してしまった俺たちだった。