軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百二十二話 煙もくもく

段ボールから取り出したものを目の前に並べた。

とりあえず5つ購入してある。

フォレストアーミーアントの巣がどれだけ大きいのかはわからないけど、これだけあれば巣の全体に回ってくれるだろう。

『それでだ、これは何なのだ?』

「フフフ、これはね異世界製の殺虫剤だ。これに水を入れると煙が出てきて蟲を駆除してくれるんだ。あとは2、3時間放置しておけば駆除完了ってわけさ」

俺が購入したのは強力な燻煙タイプの殺虫剤だ。

これならばフォレストアーミーアントの巣もきっと根こそぎだろう。

『ほ~、お前のいたとこじゃそんなのがあるんだなぁ』

「こうやって取り寄せたものはどれもかなり効き目があるから、これも期待できると思うぞ。それじゃあ準備するから」

俺は、パッケージを外して準備を始めた。

「よしと、これで準備OK。あとは水を入れた容器にこれを入れると、少ししたら煙が出てくるはずだ。フェル、これを巣の前に設置したら煙がこっちに来ないように入口に結界を張ってくれ」

『了解だ』

「それから煙が出たら巣の奥まで届くように、そよ風程度の風を送り込んでくれるか」

『む、そういう細かな調整が必要な魔法はドラの方が得意だろう。ドラがやれ』

『へいへい』

「それじゃあ始めるぞ」

水を入れたプラスチック容器に薬剤の入った缶をセットする。

そして、斜め下へと続く巣穴の入口に急いでそれを設置した。

「フェル、結界をお願い」

『うむ』

フェルが結界を張った直後に殺虫剤から次々と白い煙が噴き出した。

『うわぁ、煙もくもく~』

興味津々なスイが結界に張り付きながらそう言った。

「ドラちゃん、風をお願い」

『ドラの前だけ結界を薄くした。そこから風を送り込め』

『了解だ』

ドラちゃんの魔法の風がフォレストアーミーアントの巣に送り込まれる。

すると、坂のように斜め下へと続く巣へと殺虫剤の白い煙が風に乗って流れ込んでいった。

「これでよしと」

『何だ、これで終わりか?』

「そうだよ。あとはさっき言ったとおり、このまま2、3時間待つだけだ」

『そうなると暇だよなぁ』

『よし、なら飯に……』

「飯にはしないよ。昼飯にはまだ早いでしょ。俺だってそれくらいは分かるんだからな」

『ぐぬぬ』

「そんな顔しなさんなってフェル。その代わりおやつでも食ってゆっくり待とうぜ」

『む、そのおやつとは何なのだ?』

「間食だな。まぁ甘いものを食うことが多い」

甘いものと聞いて喜んだのはスイだ。

『甘いの~! スイ、ケーキがいいなぁ』

ポンポンと飛び跳ねてケーキをおねだりしてくるスイ。

「それじゃあおやつはケーキにするか。あ、3つずつな」

『ヤッター! ケーキー』

『ケーキか。我はいつもの白いのがいいぞ』

『俺は当然プリンだな』

フェルには生クリームたっぷりのイチゴショートを3つ、ドラちゃんには限定のカボチャプリンとミルクプリン、それから定番のカスタードプリンの3つ、スイには希望を聞きながら大好きなチョコレートケーキのほかホワイトチョコレートケーキとイチゴのミルフィーユの3つだ。

フェルもドラちゃんもスイも甘いものは嫌いじゃないから、嬉しそうにケーキやプリンを頬張ってる。

俺はプレミアムモンブランなる限定ケーキを選んでみた。

それに合わせるのは今日の気分でコーヒーだ。

豆はキリマンジャロ。

酸味と苦みがバランスよく調和されたキリマンとモンブランのコクのある栗の甘みがなかなかに良い組み合わせだった。

そんな感じで俺たち一行は、おやつタイムを挟みながら時を過ごした。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

『よし、もうそろそろいいだろう』

口の回りを満足そうにペロペロと舐めながらフェルがそう言う。

「何がもうそろそろいいだろうだよ」

おやつタイムを終えたあと、フェルとドラちゃんとスイは昼寝に突入。

フェルの結界で安心なこともあって、俺もまどろみながら時を過ごしていた。

もうそろそろ頃合かなと思い、フェルたちに声を掛けると、今度は腹が減ったの騒ぎ。

フェルが『もうそろそろ昼飯なのだからいいだろう』と言うし、ドラちゃんも『アリの巣に入る前の腹ごしらえだ』とか言うもんだから、先に昼飯にしたよ。

作り置きしていたオーク肉のカツサンドをしこたま食って、みんなが満足したところでようやく昼飯終了。

おかげで時間が押してるよ。

まぁ、燻煙殺虫は終わってるはずだから急ぐ必要はないんだけどさ。

「それじゃあ巣の中を確認してみますか」

俺たち一行はフォレストアーミーアントの巣の中へと足を踏み入れた。

フェルとドラちゃんは真っ暗な巣の中を躊躇なく降りていく。

そしてスイは……。

『いっくよー』

ボールのように坂をコロコロと転がっていった。

「エッ、エェ~、ちょっ、スイッ、大丈夫なのか?!」

『わーい、たっのしー! もう1回やりたーい!』

俺の心配をよそにスイのそんな声が聞こえてきた。

へ?

スイちゃん、心配させないでよね、も~。

気を取り直して俺も下へと降りていく。

フェルたちみたいに真っ暗な巣の中を降りていくのは無理だから、いつも使っているランタンタイプのLEDの懐中電灯で照らしながらだ。

滑り落ちないように壁に手をついて慎重にゆっくりと降りていった。

そして、降り立ったのは第1の部屋。

『おい、遅いぞ。やはり我の背に乗ったほうが早いのではないか?』

「却下。こんな暗い中でジェットコースターはノーサンキューです」

『むぅ、何を言っているのか意味が分からんが嫌だということは分かった。それならば、我等を待たせるなよ』

「俺は慎重派だからしょうがないの。しかし、自分でやっておいて何だけど、すごいことになってるな」

第1の部屋はフォレストアーミーアントのドロップ品である、黒光りする頑丈そうな顎で埋め尽くされていた。

『おーい、これ全部拾うのかぁ?』

大量過ぎるドロップ品を見て辟易したようにドラちゃんがそう言った。

「まぁ低ランクの魔物のドロップ品だけど、とりあえずこの部屋のはある程度拾ってこうと思う」

『えー、面倒臭いな』

「そう言わないの。ほらスイだってああやって手伝ってくれてるんだから手伝ってよ」

『はい、あるじー』

拾い集めたドロップ品を渡してくるスイ。

『しょうがねぇなぁ』

「フェルも手伝ってよね」

『面倒だが仕方がないな』

フェルにマジックバッグを預けて手分けしてフォレストアーミーアントのドロップ品を拾っていった。

みんなで無心になって拾いまくった。

いくつか拾い残しがあるものの量的にはこれで十分となり、次の部屋へと移動する。

下へと続く坂道をフェルたちはすいすいと進んでいくが、当然俺は慎重に進んでいった。

既に次の部屋を眺めているフェルとドラちゃんはなんだかげんなりした様子。

「ん、どした?」

俺も部屋の中を覗いてみると……。

「げっ、またこれかよ」

『あるじー、拾うー?』

この部屋の中にもフォレストアーミーアントの顎が大量に落ちていた。

ったく、どんだけいたんだっての。

「フォレストアーミーアントのドロップ品の顎は十分過ぎるほどあるし、ここはもういいよ」

そう言うとあからさまにフェルとドラちゃんがホッとしていた。

ちょっと、そんな嫌がるほど拾わせてないでしょ。

『よし、次だ次』

ドラちゃんがそう言いながら次の部屋に向かって飛んでいった。

しかしながら、次の部屋も次の次の部屋も同じくフォレストアーミーアントのドロップ品の顎だらけだった。

『本音を言うとあんな煙だけで殲滅なんてできるのかって思ったけど、こりゃあすごい効き目だ。奥にいたアリまで全部死んでるんだからな……』

ドロップ品だらけの部屋を見てドラちゃんがそうつぶやいた。

『まったくだ』

フェルも部屋の状況を見て同意している。

「強力な燻煙タイプの殺虫剤だからな。煙が隅々まで行き渡るから効き目も抜群ってわけよ」

俺が作ったわけじゃないけど、なんだかちょっと誇らしくなった。

製薬会社さんありがとう。

あなたたちの作った殺虫剤は異世界で大活躍してます。

まぁ、そんなことは置いておいて、下りていった次の部屋が最後の部屋らしい。

すなわち……。

『あれがクイーンフォレストアーミーアントだな。しぶとく生き残っているぞ』

フェルがそう言いながら鼻先で指した先に、普通のフォレストアーミーアントの4、5倍はありそうなデカいアリが仰向けにひっくり返った状態で足をピクピクさせていた。

『これしかいないから、幼虫は全部死んだみたいだな。1匹も残ってないぜ』

ドラちゃんが言うように、最後の部屋にいたのはクイーンフォレストアーミーアントだけだった。

『お主がやったのだ。最後もお主がやれ』

「あ、ああ。分かった」

フェルに促されて、クイーンフォレストアーミーアントの前に立った。

そして、アイテムボックスからスイ特製のミスリルの槍を取り出した。

「そりゃっ」

クイーンフォレストアーミーアントの腹にミスリルの槍を深く突き刺す。

ピクンと動いたあとクイーンフォレストアーミーアントが息絶えた。

クイーンフォレストアーミーアントが消えたあとには、クイーンフォレストアーミーアントの顎と極小の魔石が落ちていた。

それから……。

『おい』

『ああ』

『あるじー、奥に何かあるよー』

クイーンフォレストアーミーアントの陰になって見えなかったそれが、クイーンフォレストアーミーアントが消えたことによって露になった。

「宝箱、だな……」

まさかこんなアリの巣の奥深くに宝箱があるとは思いもしなかった。